2:決戦準備その1
2016/08/31 8:01 難航中です。細かい所は後で調整しますが基本的に、設定の変更は無いです。何卒よろしくお願いいたします。
「えっと、クラフティング、板と、木の蔓で作ったヒモ、木の板にはフリック入力で彫金っと」
未来的なフォルムに反し、どこか間の抜けた佇まいの、少年顔のサイボーグ。
鋤灼驗少年の、詳細スキャンデータを元にして自動生成された、サイボーグ頭。キャラクタアカウントが作成された時点で、自動的に適応され、デフォルトのハンサムサイボーグ顔が、変形したモノだ。
”驗が、もしもサイボーグだったら” +ちょっと余計に、格好良い程度。
少しハネてるが、切りそろえられた髪、やや閉じ気味の眠たそうな双眸。高くはない鼻と、大きくはない口。一見、格好良い灰色髪のサイボーグ少年。その実、よく見れば、まごう事なく”ザ・スキヤキシルシ”だ。
やる気のない中にも、微かに愛嬌のある口元のモールド。よく見ると、腹話術人形のようにも見えてしまうので、あまり、じっくりと見ないでやって頂きたい。
「出来たぞ! 装備して見ろ」
『試作68番目』と書かれた板を、嬉しそうに首から下げる、美少女。
美少女の頭の上から、「お客様、とてもよく、お似合いです」とでも言うように鳴き声が掛けられる。
「いらんわい、こんな食えもしないモノ!」
バリーンと美少女に叩き折られる板。
「あの、小っこくて長ぁーいのが、また来るってのに、バカやってる場合じゃないよ!? シルシ!」
「■コンナ板1枚デハ、角攻撃ハ疎カ、獣声スラ防ゲマセンガ、ハテ?」
美少女と、宇宙服が胸中を吐露する。
「これは、そういうこっちゃ無えんだよ」
と言って、驗は、折られた”試作68番目”の札を拾って後ろに放り投げた。
折れた板が山盛りになってる天辺に、積みあがる68番目。
シルシボーグは69番目の工作に取りかかる。
「クラフティング、ワルコフに切り出して貰った、”板”と、コウベに切り落として貰った”蔓”で作ったヒモ、木の板には俺がフリック入力で彫金」
手に取った物体が、チカチカと瞬きながら、まるで店先につり下げられていそうな立派な、”掛札”に変貌した。ただし、彫り込まれた文字は『営業中』ではなく、『試作69番目』。
「■決戦期限ハ、ソレホド、残ッテイマセンガ?_」
厚紙みたいな質感の地面に、置かれているレシート。開始期限の時刻は、発行日の午後3時00分まで。
顔の長い猫たちが、そこに書かれた、雄々しい一角獣を、何事かと、覗き込んでいる。
ブリーフィング後、モノケロスの特性、驗の謎のリングアイコン、いま地底深くへ送り込める物資、LV0でも装備できる全武装。
状況を、徹底的に、精査、可能性のある要素を絞りこんだ結果―――
鋤灼驗は、小さな工作に没頭していた。
そして、出来あがる側から、米沢首に手渡していく。米沢首は掛札を首に掛け、叩き壊す。
宇宙服は、山積みになった”残骸”を、頭突きして、セッセと飲み込んでいた。
コレは、ハッキングでもなく、ワルコフの基本技能らしいので、スターバラッドのレギュレーションの範疇と言うことだった。
驗たちの周りを、ふわふわと漂っている、映像空間から解説が飛ぶ。
「ザザッ―――決戦期限までぇ、あと2分でーっす!」
うを!? いそげいそげ。決戦開始時刻の猶予を聞き、ヒートアップする驗。
「ザッ―――始まってしまえばぁ、勝敗が決するまでぇ、時間無制限なのでぇ、そこに活路を見いだしまーす。ひたすら凌いでぇ、万が一ぃ、いいえぇ、億が一の勝率をぉ、10%位にまでぇ跳ね上けまぁーす!」
「10%なら、悪くねえ……いや、悪すぎっけど、ほかに手は無ぇ! 決戦期限まで、これ、続けるからな」
驗は、70回目の工作に取りかかる。
「えー、もう飽きたヨー」
弱音を吐く美少女。
「ピピューーイ♪」
小鳥が高らかに鳴く。さっきまでの軽口混じりの応援と、明らかに音色が違ってる。 なんだ? とシルシが顔を上げると、手もとの掛札が光り輝き、ファンファーレを鳴らした。
『SIGN†ORGE___/工作LV1』
空中に浮かぶ、スキルアップの文字。
手元を見ると、さっきまでの、ふつうの掛札と違って、紐の材質や、板の細工が高級になっている。
「良し来た! 思ったよか早かったな!」
ガッツポーズの驗。やや、疲労の色が見える。
一回眺めて悦に入った後で、コウベへ手渡す。
「あれ? これは結構カッコいいじゃないの。ふふん」
『試作70番目』と彫り込まれた板が、お気に召したっぽい。
「いいから続けろー、お前の分解スキルも、作戦の勘定に入ってんだからなー」
えー、こんなに格好良いのにと文句を言う美少女に、モノケロスに勝ったら幾らでも作ってやるよ、と約束する驗。
えーほんとだかんね。嘘付いたら、特選おやつ100個だかんね。
「ザッ―――じゃあ、そのおやつは……あてぇが出しましょ。……30個くらいしかないけど、……それで我慢しなせえ」
と、細身の巨漢と化している骸骨マスクの項邊歌色。
「ちっ、しけてやがんな」
自分と瓜二つの、姿形で、悪態を付かれるのも、見方によっては面白いのかもしれない。
ザッぷははは! 破顔の項邊。
「ザザッ―――いや、笑ってる場合じゃ……あらしまへんがな、……コウベあんたはん、……もうちょっと、……女らしゅうせんと、……鋤灼はんに、……嫌われますえ?」
「えっ!?」
ばきぃ! 力余って折れる、コウベのお気に入り。
「ぎゃーっ!」
折れた掛札は、ファンファーレを発した。
『米沢首___/分解LV1』
空中に浮かぶ、スキルアップの文字。
手元を見ると、さっきまでの、ふつうの壊れた掛札と違って、結び目のない紐や、まっさらな板にバラケている。
「良し来た!」
ガッツポーズの驗。ほっとした顔で、安堵の色が見える。
「あり? へし折ったのに? 変なの! ギャッハハハッ!」
コウベは一回眺めて悦に入った後で、驗へ手渡す。
驗は、そのまま紐の絡んだ板をワルコフの頭の上めがけて放り投げた。
顔面頭突きをかます、船外作業用宇宙服。
板と紐は、音も立てずに掻き消える。
呑み込んだモノを咀嚼するような動きを見せる宇宙服。
「■アレ? コレハ結構平タイデゴザルナ。ムハハ_」
彫り込まれたはずの板が、平らになってた所が、お気に召したのだろうか。
何の変哲もない『素材』だが、NPCたちの、心の琴線に触れる何かが有るのかもしれない。
真ん丸いバイザーから、やや電子音に加工されたファンファーレが、鳴り響いた。
『WARKOV___/格納LV1』
宇宙服の”平タイ”発言に、映像空間の中で、肩をピクリとさせ、胸元を手で隠す、禍璃と項邊。
「お前の丸呑みスキルも、作戦の勘定に入って……は無えけど、まあ、環境保全に役立つからなー」
「ザザッ―――宇宙服はんも、……想定外のスキルアップ……しましたなあ」
「ザッ―――曲がりなりにもぉ、スターバラッドのぉレギュレーションチェックをぉパスした以上ぉ、ゲームクライアントがぁ”特殊スキル”としてぇ、見なした様ですねぇ」
「ザッ―――この、工作系スキルがLVアップするのって、回数一律で決まってるのかしら? みんな同時じゃないの」
「ザッ―――そうとは限らないけどぉ、戦闘用スキルと違ってぇ、有る程度LV毎にー、統一されてますねー」
「ピピピピピュピュピピ♪」
不意に、小鳥がコウベの頭の上で、愚痴のような、だらけた音階を奏でた。




