1:ブリーフィングその2
2016/08/25 16:11 これも、暫定版。申し訳ありませんが、よろしくお願いします。
ここは、公園隣接のカフェテリア。
午前中の、部活動を終えた、昼食タイム。
テーブルの隅に青い角の付いた人形。
その重石の下には、一枚のレシート?
「俺のキャラ爆死の件は、あとで、お知恵を借りたいんですが、さしあたって、これ、どうしましょう?」
驗は人形を手に取り、レシートを指で滑らせ、テーブル中央へ。
それは第珊VR教室の教卓に付いてる、小さな汎用プロッタから出力された物だ。
頭頂部すべてを覆い尽くすほどの太い角。反り返る首筋からの流れのまま、やや後ろへ反り返り、先端部分が前方へ向かってカーブしている。
雄鹿のようなスラリとした体躯には、似付かないほどの巨大な一本角。
身長よりも長く、そびえ立つ、蛇腹のような規則正しい、その節目。刻まれた幾つもの傷が、歴戦の凄まじさを物語っている。
フルカラーのドット絵で描かれた。崖に颯爽と立つ、なんか格好良い四つ足の一角獣。
その下には、SBT表記で、受理時刻が印字されている。
さらに、その下に、きらきらと7色に変化していく文字が大きめに書かれている。
『”LV52ーMΘNΘCERΘS”からの決戦申請証』
荒いドット文字だが、何とか読める。
決戦申請証は、モンスターサイドからの、要請で発行される。経験値2倍、宝箱の数も2倍、モンスター固有のレアアイテムが有る場合には、必ず宝箱に入ってる。
「でも、なんで、こんな高レベルの伝説級の激レアモンスターが、あんな、詳細不明の地下にいて、しかも、鋤灼なんて目の敵にしてんのかしら?」
画素対応テーブルの、隅に表示させている”スターバラッド攻略本”から、ちらりと、眼だけを、締まらない顔の少年に向けた、小柄な少女。
「おい、ご挨拶だぞ……もぐもぐ」
山盛りポテトを前にして、何故か楽しそうな、締まりの無い顔の少年。
「鋤灼は兎も角、コウベもワルも、ひと鳴きでノックアウトってのは無えぜー!」
マルゲリータを切り分けながら、ちらりと、眼だけを、ポテト大王に向けた、大柄な少年。
「おい、旧友。もっと、オブラートに包もうぜ」
身振り手振りを交えて、ますます楽しげになっていくボサ髪の少年。
「たしかに、そおどすなあ。……あてぇの娘ぉも、……スタバにコンバートしたばっかりで、……LV0じゃしゃあないにしても、……無敵の宇宙服まで、……手も足も出えへんてのは、……驚きどすな」
「■ハハハハ。ウケルー。拙者モ、LV0デンガナ~_」
「なに言うてはりますの? ……そんなウソ言うても、……ちゃんとわかりますえ」
「いや、項邊さん、ホントに、LV0ってなってるわよ?」
禍璃も、自分の携帯ゲーム機でプレイヤーカードを見てる。
テーブルに上を向けて置かれる、真っ赤なSSGMR400ーRD。
刀風のゲーム機より、幾分、薄型だ。
宇宙服の描かれた公開用のキャラ名刺。
『WARKOV__/LV0』
そのLVは、驗や米沢首と同じだった。
「ほんまやがなぁ! ……どういうことでっしゃろ?」
「たぶんー、スターバラッド内でのぉ、撃破数がゼロだからぁ、……ズズズズ……LVUPに制限が……ズズ……掛かってるんだとぉ、思う……あちっ」
……特別講師は猫舌のようだ。
ちなみに、ワルコフの、文字化けだらけの、システムログを、環恩がざっと読んだ結果。赤達磨の内訳は、こんなだった。同じ事を項邊も試みたが、開始30秒で読み上げ始めた環恩の声を聞いて、悲鳴を上げた。
ア:パーティーメンバー登録してある鋤灼驗のキャラクタが、検索にヒットした。
イ:ゲームキャラとして大事な、”キャラクタアカウントの登録”がされていない驗のキャラの整合性チェックをしようとしたが、何故かエリア間電送が出来ない。
ウ:禁止事項のリアルタイム回線の、ハッキングを、多重に強行。
エ:整合性チェック開始、自身の”自作のキャラクタアカウント”の整合性エラーが検出されてしまう。
オ:整合性チェックの一部に、公式のライブラリを使用していたため、自動的に読み込まれたキャラアカ修復プログラムと、自作キャラアカに内蔵の自己修復プログラムが、食い合いになる。
カ:超高負荷のため起動中のバトルレンダが暴走。
キ:驗が、自家中毒状態のワルコフに、取り込まれたまま、ワルコフの再起動過程に立ち会う。
ク:米沢首は、驗がやっと、キャラクタ作成したので、喜んで飛んできたら、巻き込まれた。
ケ:経緯は理解しましたぁ。ワルさんはこの際ぃ、普通のスターバラッドNPCとしてぇ、レベル上げに邁進されてはいかがぁ? もちろんー、普通のぉハッキングも無しでぇー。早い話がぁー、鋤灼君達の護衛任務ですぅ。期限は、私たち残りのパーティーメンバー全員との合流まで―――
「フルトインフェルノをご注文のお客様ー?」
長い前髪、丸眼鏡、地味な着こなしの割に、体つきが矢鱈と派手な、ウエイトレス乱入。
ワルコフシステムの、口頭によるログサルベージは寸断され、意気消沈の宇宙服十数センチは、ヨタヨタしながら、テーブルの隅へ歩いて行く。
「はーい俺、俺です!」
軽い腰を上げ、自分で受け取りにいく驗。
フルトインフェルノとは、3本150円の赤と黄色たっぷりの、長大カリカリソーセージの、超特盛りVERの事だ。
30本で1200円とかなりの特価メニューだが、そのすさまじい見た目の分量に恐れを成すために、滅多に注文されない。
その山盛りのソーセージの乗ったデカイ皿を、リアル項邊の前へゴトンと置く驗。
「昨日、刀風と話してたんですよ、項邊さん、すんげえがっかりしてたから、なんか奢ってやろって」
少年は立派だった。気落ちした美少女成人女子生徒を元気づけてやろうというのだ。
「そうだぜ、ホントなら、自動学食捕まえて、もっと、ちゃんとご馳走したいとこだけど、今日は居ねーみてーだから、名物で我慢してくれ」
違うな、我慢ってのはカフェに失礼だ。
「言葉の文だぜ、気にしないでくれ」
と人数分の取り皿を持ってきてくれた、ウェイトレスを手伝い始める刀風。
驗も、自動学食アプリを確認した。『出没予測……0%』。
「へー、それ、まだ動いとるん? ……自動学食アプリでっしゃろ?」
やや、気落ちしてた項邊が、会話に参加する。
「え? 知ってるんですか?」
「だって、ソレ、……あてぇが作ったモンどす」
頬を指先で掻きながら、言葉をこぼす。
「「っへーーーーーーー! そうだったのーーー!?」」
仲良く声を張り上げる、環恩と、驗。
”レタスたっぷりハムカツサンド”に伸ばした手は離さない。VR専門家兼大食漢。
「もぐもぐ……はんはひ仲良いと、……むぐっ……ひっぱたくわよ」
”カルボナーラとバニラアイスのセット”をパクついていた禍璃が、驗を睨んで、色めき立つ。
驗は、項邊の前に、こんもりと積み上げてもまだまだ余る、長大なフルトを取り分けて差し出す。
「皆も、よかったら喰ってくれ、午前中、心配かけちまった詫びだ」
「当然ね。でも、項邊さんには、お裾分けしてもらう、お礼を言わなきゃ」
禍璃は刀風と驗以外には至って、礼節を重んじる性格である。話の流れから本当にそう思ったのだろう。
それでも、項邊は、また少し、居心地悪そうにする。
「はっはっはっはっはー! 気にしないで良いよう! ドンドン食ってくれい!」
小鳥に寄りかかって、ふんぞり返る米沢首。
その様を、ちらりと盗み見たあとで、「そうね、凄く美味しそう」と項邊VR設計師は気を取り直した風だ。自分の皿の、ホットケーキの一枚を手に取り、超長めのカリカリソーセージを、フォークで3等分して乗せていく。
「…………やっぱり、コイツの呼び方、考えねえと、紛らわしいすね」
驗は、小鳥の首に噛み付いてる、小さい美少女に、眉をひそめながら、赤と黄色たっぷりの、長大カリカリソーセージに囓り付いた。




