1:ブリーフィングその1
2016/09/08 0:23 ゲーム用語修正。
2016/08/25 8:39 兆暫定版。よろしくお願いします。
「姉さんの講座テキストには、書いて無いことばっかり、もう、ついてけなーい」
「さすがに、あの、ワルコフ祭りは、もう勘弁してほしいぜ」
「なんにしても……無事キャラ登録出来て……よおございましたな。……それじゃ、細かいキャラ設定、……特にスキル周りを早速……やってしまいますか?」
「シルシのスキルポイントは、アタシがちゃんと、やっといてあげたから、大丈夫だよ。そういえば小鳥の野郎は?」
「■マコトニ、ゴ迷惑ヲオカケイタシマシター_」
「ワルさあぁん。今回ばかりはぁー厳重注意じゃすみませんよぉー!?」
「え? スキルポイントやっといてくれたんですか? 結構悩むタイプなんで、”ガトリング・マシーナリー”に最適にしてくれたなら、かえって良かったかも」
「え? なんのお話どすか? ……スキルポイントの振り分けなんて、……特に初期スキルポイントの振り分けなんて、……キャラメイク最大の……お楽しみで……責任重大じゃないですか!? ……やだー! 他人に任せるなんて……あらしまへんっ!」
「え? いま、やっといたから大丈夫ー小鳥はどこだー? って―――」
テーブルの上で、環恩に貰った特選おやつを、制服の小さなポケットから取り出している美少女と眼が合った。
「おまえかよ! だめだ同じ声だと、紛らわしい! そして、ちょっと待て、俺のスキルポイントどうしたって!?」
なんかゴソゴソしてた、刀風少年が、いきなり、アクセル全開。
「アファファファファファファファファファファファファ!」
「なあにー!? どうしたのぉー!?」
環恩が、何事かと目を丸くしている。
刀風愛用の、携帯ゲーム機に、表示されている、『SIGN†ORGE』ステータス画面。
『VRE研究部』パーティーメンバーなら、誰でも見られる、公開用のキャラ名刺の裏側だ。Rボタン長押しで見れて、プレイヤーカードとかパーティーギルドカードなんて呼ばれてる。
刀風はそれを、その場の全員に向ける。顔を寄せる一同。
ステータス画面の中の、基本スペックの横、”スキル設定”により、補正された箇所。
つまりスキル補正値が、赤や緑で強調されている所。その一部にあり得ない表記を発見する。
攻撃力補正 0 クラス無し
防御力補正 0 クラス無し
回避補正 0 クラス無し
武器命中率補正 0 クラス無し
射撃補正 ー10 クラスー100%<失中>
投擲補正 +23 クラス+230%<的中><派生コンボ>
装備補正 0 クラス無し
撃破補正 0 クラス+10%<業>
スキルポイント…………0
どういうワケか、スキルポイントのすべてが、『投擲』スキルに振り分けられていた。
あと何故か、『射撃』スキルがマイナスになっていた。
「なんだこれ?」
「アファファファファ!」
「あははははっ!」
刀風に、つられて、笑いだすコウベ十数センチ。テーブルの上に足を投げ出し座っている制服姿は、一息ついて、環恩に貰った特選パフェに囓り付いた。
「なんだよこれ!?」
驗は、テーブルの端へ腕を伸ばした。そして、コウベ十数センチの後ろ襟をVR・AR両対応のマイ箸で掴んで、目の前に持ってくる。
慌ててAR対応テーブルの天版上をトトトットトトッと追ってくる小鳥。
「言ってる場合じゃねーが、やっぱり、仲良い……のか? お前等」
すり寄る小鳥を、無下にするコビトサイズの美少女。具体的には、プリーツスカートが捲れるのも気にしないで、水平に足を突き出し蹴ってる。
ドドドドッ!
攻撃にあわせて、微妙に打点をずらす小鳥。
白丸で縁取られた眼を細める鳥類実物大。ポキポキと首を鳴らして、反対側を向く。「ピュイ♪」
「反対側もマッサージしてくれだとう!? フン、じゃ、ちょっと待って、コレ食べてからね」
「……ほんと、仲良いわね~」
テーブルに肘を突き、顎を支える禍璃。
「コレはどういうことか、説明して見ろ」
激高しながらも、冷静に問いただす驗。
刀風は、コウベの脇に、自分の携帯ゲーム機を置く。
「あっちゃぁー、これわ、致命的にダメかもぉー」
覗き込み肩を落とす、笹木講師。
「銃火器の扱いが……メインのキャラ設計なのに、……銃器による射撃が……絶対当たらないって、……どういうことですのん!? ブホッフォッ!」
自分が設計したNPCの、しでかした事とはいえ、ツボったらしい。
「だって、シルシは、こう、ピストルを投げつけて、設計師の事、一方的に倒してたじゃないっ! キシャァァー!」
威嚇混じりに、反論。
「は? そりゃ、チャットのオマケのミニゲームの話か?」
「あー、鋤灼君に、紐つけられてたからぁ、なんか、概要わぁ、伝わってたみたいですねぇー」
「ああいう才能は、永久メンバーである、ア・タ・シが延ばしてあげなきゃ!」
なぜか、VR専門家、その妹様、そして、自分を設計した設計師までもを、睨めつける。
カチン×3。この心の音は、少年たちには届かなかった様だ。
小鳥は一瞬青ざめた後で、横に置かれた粉チーズの容器と、ほぼ同じサイズのコウベを嘴で小突いた。いで! なにすんだ!? 歯向かうチビな美少女。
「でも、この、射撃補正ー100%ってえのは一体なんだぜ?」
「それは、……投擲の方に全振り……してもうたから、……不利スキル発動による……弊害でっしゃろな」
すぱん。顔の前で、両手を打ち合わせる。
「鋤灼はん、……堪忍したってえな!」
「あー。いや、こいつはコウベ、NPC米沢首の、仕業で、たぶん100%の”好意”すから。気にしないでください」
少年は偉かった。意気消沈する項邊歌色を気遣う。
「あれ? でも不利スキルで、マイナスになった分のポイントは戻ってくるはずじゃなかったかしら?」
射撃補正 ー10 クラスー100%<失中>
<失中>スキル換算で10ポイント。
マイナスをそのままにして、さらにブースとを掛けていくかどうかが、スターバラッドのキャラクタシステムの肝でもあり、醍醐味の一つだ。
「じゃ、そいつで、穴埋めすれば、人並みには射撃が当たるように、なるかも?」
僅かに顔を持ち上げる、シルシボーグ。
『スキルポイント…………0』
トン。と指を指す、刀風。
「無え! やい、戻ってきた俺のポイントどこやった!?」
シルシボーグは、テーブルを手のひらでと、やや強めに叩いた。
「し、しらないよー。ひぃひぃひゅー♪」
へたくそな口笛を吹いて、踵を返すコウベ。
そしてそのセーラー襟を、クチバシで啄み、旋回する抹茶色のクレーン。
再び驗の前に、降ろされる人形サイズの美少女。
「何に使ったんですか?」
少年はマイ箸をひっくり返して、その太い方を美少女の頭へ乗せた。
微妙な力加減で、重石のように、頭の上に乗せ続ける。
負荷を掛けすぎれば、映像は壊れて、再登場するが、ゲーム内では無いので、戦績などの増減は無い。
微妙な圧迫感に耐えかねた”AR映像”が、あっさりと折れた。
「はい。ごめんなさい。重力補正に使いましたー」
「重力? え? 何補正?」
「自重おー、コントロールしてぇ、軽くしたりー、重くしたりー、出来るスキルねぇー」
「だって、前に、シルシが、ダイエットしろって言ったんだもん!」
それはっダメねぇ! そうね鋤灼。そら、仕方ないかも……しれへんどすな。
「そんなの言ったっけかなぁ。まあ、それならしゃーねーな。キャラ自体出来たんだし、良しとすっか!」
「良いんかよ。これ結構響くぜー?」
代わりに刀風が頭を抱えだす。
というブリーフィングは、注文したメニューが到着し、中断された。
「カフェサンドセットのお客様~」
「はぁーい。私でーすぅ!」
「姉さん。あんまり、はしゃがないで。子供みたい」
「笹木、ここ数日で、笹ちゃん先生の扱い、ぞんざいになってねえか?」
「まあ、溺愛の方向性がシフトしてきてる気はするな」
スタイル抜群の姉のお世話を、容姿は悪くないのだが、若干寸足らずな妹が、甲斐甲斐しくしている。
具体的には、肘に引っかけそうな位置にあるコーヒーカップを自分の側へ引き寄せたり。購買に新入荷した、猫型のメモパッドを余分に買っておいたり。
「妹ちゃんは、……おかんどすな」
項邊歌色は、隣に座る、驗にしか聞こえないくらいの小声で、ボソリと呟いた。




