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ワルコフに気をつけない  作者: スサノワ
13:サインオーガ爆誕!

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69/153

1:ブリーフィングその1

2016/09/08 0:23 ゲーム用語修正。

2016/08/25 8:39 兆暫定版。よろしくお願いします。

「姉さんの講座テキストには、書いて無いことばっかり、もう、ついてけなーい」


「さすがに、あの、ワルコフ祭りは、もう勘弁してほしいぜ」


「なんにしても……無事キャラ登録出来て……よおございましたな。……それじゃ、細かいキャラ設定、……特にスキル周りを早速……やってしまいますか?」


「シルシのスキルポイントは、アタシがちゃんと、やっといてあげたから(・・・・・・・・・・)、大丈夫だよ。そういえば小鳥の野郎は?」


「■(ワルコフゥ)マコトニ、ゴ迷惑ヲオカケイタシマシター_」


「ワルさあぁん。今回ばかりはぁー厳重注意じゃすみませんよぉー!?」


「え? スキルポイントやっといてくれたんですか? 結構悩むタイプなんで、”ガトリング・マシーナリー”に最適にしてくれたなら、かえって良かったかも」


「え? なんのお話どすか? ……スキルポイントの振り分けなんて、……特に初期スキルポイントの振り分けなんて、……キャラメイク最大の……お楽しみで……責任重大じゃないですか!? ……やだー! 他人に任せるなんて……あらしまへんっ!」


「え? いま、やっといたから大丈夫ー小鳥はどこだー? って―――」


 テーブルの上で、環恩(ワオン)に貰った特選おやつを、制服の小さなポケットから取り出している美少女と眼が合った。


「おまえかよ! だめだ同じ声だと、紛らわしい! そして、ちょっと待て、俺のスキルポイントどうしたって!?」


 なんかゴソゴソしてた、刀風(カタナカゼ)少年が、いきなり、アクセル全開。

「アファファファファファファファファファファファファ!」


「なあにー!? どうしたのぉー!?」

 環恩(ワオン)が、何事かと目を丸くしている。


 刀風(カタナカゼ)愛用の、携帯ゲ(RRGMDー)ーム機(4000OR)に、表示されている、『SIGN†ORGE(サインオーガ)』ステータス画面。

 『VRE研究部』パーティーメンバーなら、誰でも見られる、公開用のキャラ名刺の裏側だ。Rボタン長押しで見れて、プレイヤーカードとかパーティーギルドカードなんて呼ばれてる。


 刀風(カタナカゼ)はそれを、その場の全員に向ける。顔を寄せる一同。

 ステータス画面の中の、基本スペックの横、”スキル設定(ふりわけ)”により、補正された箇所。

 つまりスキル補正値が、赤や緑で強調されている所。その一部にあり得ない表記を発見する。


 攻撃力補正 0 クラス無し

 防御力補正 0 クラス無し

 回避補正 0 クラス無し

 武器命中率補正 0 クラス無し

 射撃補正 ー10 クラスー100%<失中>

 投擲補正 +23 クラス+230%<的中><派生コンボ>

 装備補正 0 クラス無し

 撃破補正 0 クラス+10%<業>


 スキルポイント…………0


 どういうワケか、スキルポイントのすべてが、『投擲』スキルに振り分けられていた。

 あと何故か、『射撃』スキルがマイナスになっていた。


「なんだこれ?」

「アファファファファ!」

「あははははっ!」

 刀風(カタナカゼ)に、つられて、笑いだすコウベ十数センチ。テーブルの上に足を投げ出し座っている制服姿は、一息ついて、環恩(ワオン)に貰った特選パフェ(VRおやつ)に囓(かじ)り付いた。


「なんだよこれ!?」

 驗(シルシ)は、テーブルの端へ腕を伸ばした。そして、コウベ十数センチの後ろ(セーラー)襟をVR・AR両対応のマイ箸で掴んで、目の前に持ってくる。

 慌ててAR対応テーブルの天版上をトトトットトトッと追ってくる小鳥(抹茶色)。

「言ってる場合じゃねーが、やっぱり、仲良い……のか? お前等」

 すり寄る小鳥を、無下(ムゲ)にするコビトサイズの美少女。具体的には、プリーツスカートが捲(めく)れるのも気にしないで、水平に足を突き出し蹴っ(ケンカキック)てる。


 ドドドドッ!

 攻撃にあわせて、微妙に打点をずらす小鳥。

 白丸で縁取られた眼を細める鳥類実物大。ポキポキと首を鳴らして、反対側を向く。「ピュイ♪」

「反対側もマッサージしてくれだとう!? フン、じゃ、ちょっと待って、コレ食べてからね」


「……ほんと、仲良いわね~」

 テーブルに肘(ひじ)を突き、顎(あご)を支える禍璃(マガリ)。


「コレはどういうことか、説明して見ろ」

 激高しながらも、冷静に問いただす驗(シルシ)。


 刀風(カタナカゼ)は、コウベの脇に、自分の携帯ゲーム機を置く。


「あっちゃぁー、これわ、致命的にダメかもぉー」

 覗き込み肩を落とす、笹木講師。


「銃火器の扱いが……メインのキャラ設計なのに、……銃器による射撃が……絶対当たらない(・・・・・・・)って、……どういうことですのん!? ブホッフォッ!」

 自分が設計したNPCの、しでかした事とはいえ、ツボったらしい。


「だって、シルシは、こう、ピストルを投げつけて(・・・・・)、設計師(カイロ)の事、一方的に倒してたじゃないっ! キシャァァー!」

 威嚇混じりに、反論。


「は? そりゃ、チャットのオマケのミニゲーム(イースターエッグ)の話か?」


「あー、鋤灼(スキヤキ)君に、紐(ひも)つけられてたからぁ、なんか、概要(映像空間)わぁ、伝わってたみたいですねぇー」


「ああいう才能(・・・・・・)は、永久メンバー(パートナー)である、ア・タ・シが延ばしてあげなきゃ!」

 なぜか、VR専門家、その妹様、そして、自分を設計した設計師までもを、睨(ね)めつける。

 カチン×3。この心の音は、少年たちには届かなかった様だ。

 小鳥は一瞬青ざめた後で、横に置かれた粉チーズの容器と、ほぼ同じサイズのコウベ(サムネイル)を嘴(くちばし)で小突いた。いで! なにすんだ!? 歯向かうチビな美少女(卓上調味料サイズ)。


「でも、この、射撃補正ー100%ってえのは一体なんだぜ?」


「それは、……投擲(とうてき)の方に全振り……してもうたから、……不利(マイナス)スキル発動による……弊害(へいがい)でっしゃろな」

 すぱん。顔の前で、両手を打ち合わせる。

「鋤灼(スキヤキ)はん、……堪忍したってえな!」


「あー。いや、こいつはコウベ、NPC米沢首(ヨネザワコウベ)の、仕業で、たぶん100%の”好意”すから。気にしないでください」

 少年は偉かった。意気消沈する項邊歌色(コウベカイロ)を気遣う。


「あれ? でも不利(マイナス)スキルで、マイナスになった分のポイントは戻ってくるはずじゃなかったかしら?」


 射撃補正 ー10 クラスー100%<失中>

 <失中>スキル換算で10ポイント。

 マイナスをそのままにして、さらにブースとを掛けていくかどうかが、スターバラッドのキャラクタシステムの肝でもあり、醍醐味の一つだ。


「じゃ、そいつで、穴埋めすれば、人並みには射撃が当たるように、なるかも?」

 僅かに顔を持ち上げる、シルシボーグ。


『スキルポイント…………0』

 トン。と指を指す、刀風(カタナカゼ)。


「無え! やい、戻ってきた俺のポイントどこやった!?」

 シルシボーグは、テーブルを手のひらで(パシン)と、やや強めに叩いた。


「し、しらないよー。ひぃひぃひゅー♪」

 へたくそな口笛を吹いて、踵(きびす)を返すコウベ。

 そしてそのセーラー襟を、クチバシで啄(ついば)み、旋回する抹茶色のクレーン。


 再び驗(シルシ)の前に、降ろされる人形サイズの美少女。


「何に使ったんですか?」

 少年はマイ箸をひっくり返して、その太い方を美少女の頭へ乗せた。

 微妙な力加減で、重石(おもし)のように、頭の上に乗せ続ける。

 負荷を掛けすぎれば、映像は壊れて、再登場(リスポーン)するが、ゲーム内では無いので、戦績などの増減は無い。


 微妙な圧迫感に耐えかねた”AR映像(コウベサムネイル)”が、あっさりと折れた。

「はい。ごめんなさい。重力補正に使いましたー」

「重力? え? 何補正?」


「自重おー、コントロールしてぇ、軽くしたりー、重くしたりー、出来るスキルねぇー」


「だって、前に、シルシが、ダイエットしろって言ったんだもん!」

 それはっダメねぇ! そうね鋤灼(スキヤキ)。そら、仕方ないかも……しれへんどすな。


「そんなの言ったっけかなぁ。まあ、それならしゃーねーな。キャラ自体出来たんだし、良しとすっか!」


「良いんかよ。これ結構響くぜー?」

 代わりに刀風(カタナカゼ)が頭を抱えだす。


 というブリーフィングは、注文したメニューが到着し、中断された。


「カフェサンドセットのお客様~」

「はぁーい。私でーすぅ!」

「姉さん。あんまり、はしゃがないで。子供みたい」

「笹木、ここ数日で、笹ちゃん先生の扱い、ぞんざい(ラフ)になってねえか?」

「まあ、溺愛の方向性がシフトしてきてる気はするな」

 スタイル抜群の姉のお世話を、容姿は悪くないのだが、若干寸足らずな妹が、甲斐甲斐しくしている。

 具体的には、肘に引っかけそうな位置にあるコーヒーカップを自分の側へ引き寄せたり。購買に新入荷した、猫型のメモパッドを余分に買っておいたり。


「妹ちゃんは、……おかんどすな」

 項邊歌色(コウベカイロ)は、隣に座る、驗(シルシ)にしか聞こえないくらいの小声で、ボソリと呟いた。

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