0・5:出た! キャラ設定ダイアログ
2016/08/23 9:52 ぐぐぐ。デカイ要素が後1個。よろしくお願いします。
直径2メートルくらいの大きさの、真っ赤な血塗れ。
なんかすっげえデケえ、丸いのが、壁から飛び出してきた。
「うっわうわうわっ!?」
なんだよ! これ、楽しく無ぇー!
コレゲームじゃん!? くそ!
ようやく、ダイブオンしたってのによ!
もう、眼と鼻の先に迫る赤くて血濡れの赤い球。
飛んできた血しぶきが、俺の頭に降りかかる。
俺の頭は解像度が高いのか、荒い粒子になったりしないで、そのまま額に垂れてくる。
しかしデケエなあ。このワルコフの頭。俺のサイボーグ姿の全身、そっくり実物大で楽に写り込んでる。
教室で飛びかかってこられたときは、もっとふつうに小さかった。
あん時も、ワルコフの顔に俺の顔が写り込んでたっけ。
ガキンッ!
そう、あんな風に、手甲からナックルガードを飛び出させて……
ん? ナックルガード?
目の前のワルコフの腕は付いちゃあ居るが、背後の胴体が付いた先、すっと後ろの方だ。
それは、赤い半球状の水面に写り込んでいた。
全身が写り込んでいる俺の隣。降ってくる結構でかい鏡の破片も一緒に写り込んでる。その破片の中を、白いワルコフが拳を伸ばしてくる。
その放電が走る拳が、視界の隅で煌めく。
俺は、教室で、コレをどうやって、躱したんだっけ?
ネゴシエイト中の意識拡張と意識閉塞がキツくなってきてる。
なんか、ガラスの割れる音に混じって、すぐ後ろから、小さく怒声が届く。
なんか、教室でも”何かしろ”って言われたような。
なんか、なんだったっけ!?
緩やかな曲面を描く、赤い板。表面を覆う赤い液体。巨大ワルコフのバイザーが、俺のオデコにぶち当たる。
俺は、渋めの兄さん声で、「バ」って言った。
ぶち当たる巨大ワルコフの頭を、少しでも避けようと、首を回した先に、デカ目の鏡の破片が浮いてる。
ソコに移り込んでいる、白いワルコフ。俺と一緒に巨大血濡れに写り込んでた、小さい方のワルコフだ。返り血を浴びて所々、赤いし、バイザー自体も真っ赤だ。
それでも、その顔の中央に描かれた白文字を、俺の頭が、骨髄反射的に、読み上げた。
なんか、まだまだ思い通りに動かせてねえけど、俺は、このハンサム顔が気に入ってきた。そいつが、わざわざ声にした『バ』を、無碍にも出来ねえとか、『バ』って何だよとか、思ってたら思い出した。状況はそっくりじゃねえか。
昨日有ったばっかだし、前回のワルコフ戦の、鮮烈さは忘れてねえ。
いや、忘れてたけど―――
「―――トルレンダ起動!」
もう俺の顔面は、顔面ワルコフにぶち当たってた。
俺の顔面で支えられてる、巨大な顔面ワルコフと、その先に繋がってウネってる胴体。
む?
俺は体を後ろへ倒して顔を離す。
ワルコフの頭は、巨大な光球に変化し空中で停止した。
すぐ横のでかい破片の中のワルコフはワルコフのままだ。
割れた分厚い鏡の向こうは、崩れたコンクリの壁だった。ソコから胴体が生えてやがる。
鏡の厚さは、せいぜい、2メートルと言ったとこで、上げ底だった。
そして―――
ギュヴォンヴヴヴォンヴォン。
また出た。何もセットされてねえ、リングアイコンみてえなヤツ。
俺の胸の前あたりに、半透明の小さい丸が出てきて、ダイヤルっぽく、クルクル回る。
第珊教室で、ワルコフの頭突きをかわした時の―――役立たず。
違うか……コレを操作してる間、ワルコフの野郎に高負荷を掛けられんのは、事実だし、それだけでも大手柄だ。……大手柄なんだけどよ。
相変わらず、遅延ゼロで|操作感は抜群に良い。クルクルと回転させて、選択されてる拡大された丸を叩けば、実行できる。
そして、相変わらず、選択項目自体は無えんじゃ、何も起こるワケが―――。
ヒュリン♪
バーン!
『キャラクタアカウント設定ダイアログ』 ヒョコッ♪
出た。何でか出やがった。何も起こらねえのが俺のバトルレンダだと思ってたけど、空っぽを、くるくる回してる内に、その一つを選択したっぽい。
そしたら、その空きスロットに、何故か、スターバラッドの、プレイヤーキャラクタの設定画面が、出た。
割れた鏡は、空中で小刻みにブルブルして停止してっけど、ワルコフの光球は、その光の輪郭を、グワワっと急激に小さくしてる。
『作成したあなたのキャラクタに名前を付けて上げてください。』
プレイヤーがキャラクタを設計した後、まず最初にする事は、プレイアブルキャラクターとしての名前登録だ。
光球はドンドン小さくなってく。ワルコフはもうすぐ処理を再開すっだろう。この一瞬で、入力できる、キャラクターっぽい名前の心当たりは無えっ!
いつも、どれだけ悩んで入力してると思ってんだ!
『A』とか『ああああ』とかは、いやだ!
けど、なんか、それなりのを入力して、キャラクタ設定、済ませちまわねーと、
また、ここまでのを頭から、やり直させられたら皆にも悪りぃし……。うぐぐぐ。
タン♪
ええい、無えよかマシだ。
フリック入力で最速のショートカット。押してはなせばネーム入力が決定される。
『SIg_』ビ。
『SIGN†Or_』ロ。
『SIGN†ORGE』ン。
俺は、登録した。
”サイン、ダガー、オーガ”の入力で、”サインオーガ”って読む。
真ん中の”†”は、最初、『SIGN☆ORGE』って入れたら、誰かすでに、そんな素敵ネームで登録してやがったから、仕方なく、使える記号の中から適当に決めたんだよな。
コレは、VRーSTATI◎Nで連勝ネームを残すときの―――
まだ視界のほとんどを締める、ワルコフの巨大な頭が光を失う。
即座に迫る、赤い壁。再び顔面の半分にめり込む。
せっかくのオニューの、基本ボディーだけど、しゃーねー。
コレは死ぬか? でも、キャラ登録さえ出来りゃ、たぶん便利にゃなるだろよ。
ビビビッ♪
『同じアカウント名で、すでに登録済みの、サービスがあります。同期させますか?』
「え、なんだそれ?」
このネーム入力に設定してある、最後の決定はトグルオーガの、連勝記録エントリーを終了させる分の決定が、追加で入れてあった。
自動的に、選択されちまう。
同じアカウント名で、すでに登録済みの、サービスに同期されちまった。
視界を埋めて無え、もう半分。つまり、まだ見えてる方では、何でか、見覚えのあるような無えような光景が、繰り広げられてる。
立体的に大きく割れた嘘つき鏡の中。白ワルコフが、霧になって霧散、霧が斑に変色し即座に凝縮する。
ツルンとしたワルコフの頭に、艶やかな栗色の長い髪が生える。
無機質で直線的な体が、華奢な、それで居て、それなりに凹凸のある体に引き締まる。先生の猫耳ヒューマノイドみたいな、SF風味で、ちょっと露出の高いコスチューム。後ろへ靡く、長い髪を、耳の後ろで纏めるように、出現した赤いリボンで、自動的に結ばれ―――
パリーーーーーン!
ガシャララッ!
清楚系美少女が、鏡をぶち破って、飛び出てきた。
そのポーズはナックルで殴るワルコフそっくりだ。
清楚系美少女は、引いていた側の手にナックルガードを装填した。
あー、なんか、ワルコフの洗練された感じのじゃなくて、鳥の足跡みてえな突起がいっぱい付いてて、なんか火薬搭載型のブービートラップみたいに、チカチカ赤いランプが点滅してる。細く2つに纏められた髪の先に、火花が点る。
ボシュシュルルーーーーーーーゥ!
揺らめく火花は、推進力の増減や、ベクトルの偏向もできるっぽい。
空中だってのに姿勢制御してやがる。実に頼もしいな。
そのまま、俺に、のし掛かる、巨大赤達磨を迎撃―――
あれ? おかしいぞ? ギリギリ見えてた、片眼に最後に飛び込んで来たのは、両目を真っ赤にした清楚系美少女と、ググンと迫る、ナックルガードの打突面。なんか火薬搭載型のブービートラップみたいに、チカチカ赤いランプが点滅して……。
ドッゴッガアアアアアアアアアアアアァァァァァァァン!
案の定、正当派清楚系美少女優等生風味のカミツキ・ガールは、―――
―――ワルコフじゃなくて、俺に拳をぶち当てた。
何故か轟くサウンド♪
『彼の地に万有が降り立ち―――』
何この勇ましいナレーション?
いつもの、初期フロア登場前のと、声が違う。
ズムズムズムズム。
えー? 最近のスターバラッドのキャラ登録には、こんなかっけー演出が付いてんのかよー? うふふー。
―――んなわけあるかい! コウベのやろうが、俺のこと撃破しやがったんじゃねえか!
まあいい。どこに再生される?
目の前に、閃光のように、入るヒビ!
パリン!
なんかショボい感じで、画面全体が更新された。
コレと比べたら、ワルコフ鏡面体の割れっぷりは、凄かったなーとか思った。
薄暗い密林。地面からは10メートルくらい。飛び降りるには高すぎる高さが、どんどん降りていく。
落ちている1メートルくらいのギザギザした円盤。
俺の複製主観に視線制御が戻ってくる。
ジジジジジッ!
見えている視界に、稲妻で、一足先に、手足のシルエットが表示される。
あの、落ちてるヤツは俺がぶち抜いた、初期フロアの床じゃん。
顔の長い猫が、何匹か乗って遊んでる。ははは。
ジジジジジッ!
ジジジジジッ!
俺の両脇にも、誰か電送されて、降りてくる。
実体化するまで待たなくても、稲妻のシルエットで確認できた。
右の方はデカイ頭に、モコモコした手足、背中に箱。
左の方は、体の線がよくわかる。出るとこが出てて、耳の後ろでくくった長髪。
まだ、トチ狂ってたら、今度は、俺も迎撃すっかな。
なんか武器はねえかと思ったら、
ヒュパパッパパパパパグイイイイイインンッ♪
各種表示が点って、グリングリン動き出した。
「システムHUDでた! やっと、スターバラッドっぽくなってきた!」
「よし、武器はー、……1個も無えな」
辺りを見回すと、顔の長い猫が、なんか、見たことの無え、小さい振りのダンスを俺に披露している。
何となく『上の方を、見てみたら良いんじゃないでしょうか?』って感じの控えめなダンス。
ん? どーしたの? 俺も、そのダンス覚えなきゃな。
コウベとワルコフにも、おまえ等の事、紹介してやらなきゃな~。
◇◇◇
スタッ。スタッ。
ジャングルへ降り立つ追加2名。
上空を見上げる彫りの深い顔が、モコモコと泡立ち、しまりのない少年の様な顔に変形していく。
その隣で、同じように上空を見上げる、栗色の髪の美少女と、宇宙服。
後ろ髪を留めているリボン以外に、赤い色は無い。
その涼しげな顔が、緊張の色を帯びていく。宇宙服の方は何故か嬉々として、バックパックから、棒を取り外している。
上空から投げつけられる衝撃波。
ンギャオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!
凄まじい音圧だ。少年と少女は耳をふさいで倒れ込み。
宇宙服は棒を落とし、真後ろに倒れた。




