1:接触5
2016/07/22 1:40 色々暫定部分がありますが基本このまま行きます。よろしくお願いします。
たこ焼き大介は、自分の右手首に内向きについているゴツいデバイスから、指に張り付けた画像を指先で放り投げた。
テーブルの1メートル上空。垂直を軸に回転する、15センチ程度の画像。
ソレには見覚えがあった。
『”自動生成され過ぎ!? ワンダリングボスクラス発見&UMA討伐クエスト”に参加して、宇宙船を手に入れよう!』
カラフルな色合いの、イベントチラシ。
クルクルと回り続けるフライヤー。
「……音声入力」「……選択中:最大表示」「……ポイント:視線入力」
NPCコウベが体育座り、その頭の上で、小鳥がニワトリ座りしている後ろ側。
広い壁の中心へ視線を向ける、白い方のコウベ。
いや、NPCコウベも肌は白い方だが、受ける印象は健康的。白い方のコウベの白さは、見慣れてくると、やや不健康に見える。
大介の指示で、リビングの壁面に、印刷品質で、フライヤーが表示される。
コレは通常の”壁面を利用した拡張表示”。
むしろテーブル上の中空に、フライヤーを表示していた事の方がイレギュラーで、大介が発動中の何かに因るモノである。
驗は真っ白い方のコウベ、いや、”たこやき大介”へ問う。
「さっきのとか、コイツ等の実像表示とか、ワルコフのハッキングと同じようなモノですか?」
テーブルの上のあたりと、向こうの実物大NPCどもを、指さす驗。
「……WARKOVって……読むのどすね。……その宇宙服、……1個体の事なんて……まるっきし解りゃしまへん」
「でも、この、全部一緒くたに処理しちまう手口って、ワルコフのハッキングそのものだぜ?」
「……コレは、開発者ツールで、……デバッグモードの一種に入っただけどす。演算にかかる負荷を一切……度外視した強権発動中どす。課金が掛かるけど、……量子的な内部処理ぐち、すっぺり、GUIで操作……できるねん」
「つまり……!?」
同時に首を傾げる、男子生徒2名。
「簡単に言うたら、……今の状態で、コイツでひっぱたけば、……その無敵の……宇宙服でさえ、……ほんに粉砕でけるわ」
「へー、そいつぁ、おもしれぇーなー。なぁーワルコフー?」
驗から馬鹿でかいオレンジ色を、ひったくり、宇宙服へ詰め寄る刀風。
「■ハハハハ……良イ、爆砕ハンマーデスネ」
ボボボッ、シュゴゴゴッ!
脚を投げ出して座っていたワルコフは、スラスター点火。
天井の、天窓まで吹き抜けになっている部分へ、飛び上がって降りてこなくなった。
驗は、NPCコウベをじっとみる。
よく見れば、頭の上の小鳥との接触面とか、輪郭の一部とかに、若干のノイズが生じている。それと、向こう側が透けて混色しているために、全体的に薄暗い。
「確かに、ワルコフが使う、完全な実体映像とは違うみてえだぜ?」
刀風も気づいたようだ。
「そういや、先生も、処理落ちしてたワルコフに、直接攻撃みたいな事してたっけなー」
「先生……?」
「あーうちの顧問っつうか、VR講座の特別講師の先生」
「顧問……?」
「VRE研究部。ひと言で言うと、コイツ等を保護する手続き上、即興で立ち上げた学園βの部活」
NPCコウベとワルコフを適当に指さす驗。
「部活……楽しそう……どすな」
なんか寂しげに、微笑む、大介美少女。
「それで、このフライヤーが、どうしたんですか?」
驗は敬語で、話の先を促す。
「そうだったぜ、鋤灼がどうのって話、聞かせて下さいよ」
刀風は、巨大ハンマーで宇宙服を牽制しながら、驗に習って話の続きを催促した。
通常サイズのハンマーを1本手に取り、尖った方で、壁のフライヤーの1番下を指し示す大介。
『※スターバラッド統括デザイナー:鋤灼Pが自ら作成した、ボスクラスNPCを討伐して宇宙船を貰おう。』
「鋤灼Pって、誰だぜ? 知り合いか?」
「いーや、知らねっ」
「かといって、こんな旨そうな名前、そー無えだろうし、……鋤灼って、兄ちゃん居なかったか? なんか、特区がらみの仕事してる……」
「兄貴なら、なんか、お堅い基礎研究を地下でやってるって、前に聞いたことあるけど……こんな華やかな催し物に、好き好んで出るとは思えん」
「ん? これ、夕方見た、フライヤーと画像は同じだけど、ぜんぜん違う記事だぜ?」
「なになに? ここからは、VR設計師や開発関連会社向けの記事となります……」
自分の顔の前で、指をちょいちょいと突き上げる刀風。
スクロールして現れたのは、記事でインタビューを受けた人物の顔写真。
「ぶっひゃひゃひゃひゃひゃっ!」
崩れ、折れ曲がる長身。
「なんだこれ!? 鋤灼!? ARめがね掛けた時の、おもしろい顔のオマエじゃん!」
「わ、マジで兄貴じゃねえか。なにしてんだあの研究ヴァカは!?」
「ほんに、……そっくりどすね。……とゆーより、……本人・ど・す・な!?」
サスペンス映画の後半、真犯人と対峙した名探偵、又は、名探偵に追い詰められた真犯人のように、驗をきつく睨みつける、白い大介美少女。
「わー、待って待って! だから、これ兄貴だから、俺じゃないから! それで、兄貴が何したの!?」
『自由な発想で、作り上げたご自慢の、会話型NPCを、弊社運営中のスターバラッドオンラインユニヴァースで、大活躍させてみませんか?』
訝しんだまま、ハンマーで指し示す。
「―――ってぬかして、大募集しよったくせに、……いざ、規定値クリアしたら、……こん悪魔が! うわーん!」
重さを感じない、玩具みたいなハイプラスチック製のハンマーを、泣きながらワルコフへ投げる、大介女史。
ハンマーはワルコフの踵をかすめ、ノイズを撒き散らした。
◇◇◇
「そやかて、……WARKOVは……あてぇの作ったNPCが……後ちびっとで……会話型アブダクションマシン……になるってトコばっかり狙って……すっぺり潰す……んやも……んっ!」
興奮したせいか、また”WARKOV”と呼び、憎しみの色を募らせていく”たこ焼き大介”。
周囲には、平面がズラリと浮かんでいる。
光る平面には、彼女の試作したNPCが、信号途絶直前に|接触した対象が記録されていた。そこには当然のように、『warkov』という固有識別IDが羅列されている。その隣には宇宙服が、細長い棒で放電を放っている姿が転写されていた。
中には、画面中を覆い尽くす、薄暗い円と、ソコに写るNPCの恐怖にゆがむ顔。
「最終通信地点と、……周囲のオープンチャンネルを……アウトライン検出して、……やっとの事で……到着したんえ」
指で開き、拡大した転写画像には、驗と激突した”緩衝エリア”のあたりが俯瞰で写っている。
再び、玩具みたいなハンマーを吹き抜けへ向かって投げつける大介。
「あぶねっ!」
咄嗟に、デカいハンマーで、小さいハンマーをブロック。
落ちてきたハンマーをつかむ刀風。
もちろん、宇宙服を庇ってのことではない。
さっき、投げられたハンマーは危うく、遠くの、陶器製の傘立てに激突する所だったからだ。
大介はガクリとうなだれ、意気消沈した。
「なによ、……今まで投入した……NPC43体、……すっぺり、潰すか囓るかしたのよ……ソイツっ!!」
「ええと、よくわからんが、ウチの兄貴が公募したNPC募集に際して、兄貴謹製のNPCで迎撃するのはオカシイと」
確かに公式NPC、PLOTーANなんかに混じって、ワルコフも(宇宙的なスケールで)写り込んでいる。
腕を組み、考える驗。
「囓るってのは、バイザーから取り込んじまうアレか? 俺の『クイズ! ○×ガンマン!』早く返せよっ!」
刀風は、宇宙服迎撃を再開する。
「えー? 何々ー!? おやつ? おやつの話ー!?」
NPCのコウベは、暇になったのか、無理矢理、会話に割り込んできた。
「……えっと、コウベって、たこ焼き大介製品だったよな?」
「……そだよーたぶん。だから、早くおやつくれよ!」
「忘れとった、……あんはん方は、昨日から信号途絶しとんのに、なんで稼働してるのどすか!?」




