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ワルコフに気をつけない  作者: スサノワ
11:靴とハンマー

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52/153

1:接触6

2016/07/22 3:53 暫定。よろしくお願いします。

 リアルコウベ(たこ焼き大介)の内手首に積層表示された画面には、演出の砂嵐に浮かぶ『NO≡SIGNAL(信号途絶)』の文字。


 リアコウは、NPCコウベの、顔を指さした。

 ポップアップする、

『たこ焼き大介作成:米沢首(ヨネザワコウベ)Ver:2.1.0*』

 自己進化型(アブダクションマシン)と銘打つだけの事はあるようで、小まめなマイナーバージョンアップがされている。


 気の利くルフトがナノサーフェス仕様の何の変哲もない、真っ白い厚紙を差し出す。ソレを「見やすくて、……ええどすな。おおきに」と受け取る大介。

 大介は、HUDの後ろへ掲げた厚紙へ貼り付けるように、掌(てのひら)で、HUDを圧着した(貼り付けた)。

 米沢首(ヨネザワコウベ)の、頭の上から切り離される、ステータス表示。


「お? なんか送信リンク(・・・・・)が出来てる!?」

 覗き込む驗(シルシ)が、見慣れた表示の下に、見慣れないボタンが出来ているのを見つける。


「本当(ほん)に? うっそ、やったやないの! 『ゲームへの登用申請』、本当(ほん)に出来るやんか!」

 いつの間にか追加で出した、小さいハンマーを振り回し、狂喜乱舞するリアコウ。

 頭の上の小鳥部分が分離し、ハンマーの切っ先を避けている、NPCコウベ&小鳥(メジロナイト一式)。


「へーやったじゃないですか!」

 おめでとうございますと、軽く礼をする少年。さりげなく、ハンマーを取り上げたが、リアコウはそれどころでは無いようだった。


 てへへへへへへ。ども。と新設された、『ゲームへの登用申請』ボタンを、満面の笑みで押す”たこ焼き大介(色の薄い美少女)”。


 ピピッピ♪ ヴァパパァン♪


『◆ゲームへの登用申請を受け付けました。』

 なぜか、逃げまどうPLOTーAN(プロトたん)や、雑魚キャラ達のイラストを背景(バック)に申請受理のダイアログ・メッセージ。


「ほ、本当(ほん)に、……で、出来た!」

 感動に打ち震える、真っ白いワンピースが、とても良くお似合いの、大介(美少女)。

「やったじゃないすか!」


「おめっとさん。……下世話な話だけど、幾らぐらいになるんだぜ?」

 ワルコフ狩りを止めて、ニヒヒヒと、寄ってくるガタイの良い少年。


「確か、一律で、……300万宇宙ドル……やったと思う」


 驗(シルシ)の腕のデータウォッチが、キーワードに反応して、自動的に表示した。

『※2016年6月17日現在―――YEN(JPY)=8.854S$(SPD)』

 本日のレートでは、やや歩留まり感が有るモノの、大学初任給×1.5倍くらいの金額にはなる。他(・)では何の足しにも成らないが、ここ特区(・・)なら十分にやっていける。


「へー。VR設計師てのも案外悪く無えぜ」

 刀風(カタナカゼ)の意見に驗(シルシ)も頷(うなづ)く。


「お金って言えば、このデバッグモード、今もお金掛かって(課金されて)るんですよね? 切らなくて大丈夫すか?」


「そへんね、……デバイスを多重起動(・・・・)……させとるから、……負荷が分散する分、……課金さはる単価は……半分に(・・・)なるんやけど……」


「音声入力」

「……バイナリ時空間分割:オン」「……エリア指定:解除」「課金表示:オン」


「おーやーつ……ブッツ」

 即座に光の粒子となる、実物大NPCコウベ&小鳥&ワルコフ。


 ポポン♪ ポポン♪ 両腕の、危険色表示が、通常の単層表示に切り替わる。

 左手首の、甲へ向けて付けていたデバイスを取り外す。

 右手内側の表示を、最後に指先ではじいた。


『現在の累積課金__4,320円』


「4,320円……どすか。……思うたより、……内部処理が複雑どすなあ、……高(たこ)う……付いてもうた」

 リアルコウベは、悲しげな表情をした。


「「今の一回分で!?」」時間にして、7分程度。

「おいおい、4,320円って、それだけあったら、ゲームアーカイブで、どれだけ買えると思ってんだぜ!?」

「そうだな、せめて、宇宙$(ドル)建てで決済して、ランキング決済pts(ポイント)で20%分回収したいな」


「……あんはんたち、……結構VRゲームまーりに……詳しいさかいすね……どえらい見直したんや」

「現役のβ生徒を舐めちゃいけねえぜ」

「そだな、金欠とスタバが生活の全てと言ったら過言だけどなー。俺はまだ、キャラメイクすらして無ぇーし」


「……そないなら。なんや、……結果的に申請……出来はったことやし、……これも何やのご縁って事で、……あてぇが、あんたはんの……キャラメイク見てあげまひょか?」


「お、良いんじゃね? 俺も結構苦労したし、禍璃(マガリ)に至っては、1週間掛かったって豪語してたぜ?」

「そっか、そしたら、お願いしちゃおっかなー」

 両手を組んでクネクネし出す、気持ちの悪い鋤灼(スキヤキ)少年。


 うふふふふ。あはははは。へへへへへ。

 和んでいる間にも、登録申請の結果が帰ってきた。


『(C)たこ焼き大介/NPC”米沢首《ヨネザワコウベ》”はゲーム内キャラクタとして正常に登録されました。つきましては、下記の受領届けを持って契約締結とさせていただきます。』

 厚紙を、ひっくり返し、印刷品質の文面を、驗(シルシ)達へ見せる。

 にこにこにこ。拍手で返す、男子生徒&ルフト親子。

 ビ。速攻で押された受領の為の指紋(生体)認証。


 チャリーン♪

 なぜか、鋤灼(スキヤキ)驗(シルシ)のデータウォッチが、即座に返答を返す。

 チャリーン♪

 ん? なんぞ? なんだぜ?


 チャリーン♪

 驗(シルシ)が引っ張って、15センチ四方の大きさに広げたSMS《パーソナル・メッセージ》。


 チャリーン♪

『VRエンジン研究部顧問代理様へ―――

 貴 VRエンジン研究部所属の、”米沢首(ヨネザワコウベ)”が、スターバラッド・オンライン・ユニバース (TM)の正式NPCとして登録されました。つきましては下記の通り、300万宇宙ドルを進呈するとともに、NPC/米沢首(ヨネザワコウベ)との永久メンバー登録の締結を通知いたします。』


 チャリーン♪

「おいこりゃ、どういう事だぜ!?」


 チャリーン♪

「あ、アカンやないの!」


 チャリーン♪

「昨日、コウベ達が通信途絶(ロスト)したのって、俺が入部届使って(・・・・・・)、PBCに格納したからで―――」


 チャリーン♪

「あ、アカンやないの!」


 チャリーン♪

「……所属と管轄が、VRE研究部(俺たち)に移ったからって事か―――!?」

 ポンと手を打つ刀風(カタナカゼ)。


 チャリーン♪

 ちなみに、驗(シルシ)のデータウォッチは、入金金額1万円ごとに、1回入金ベルが鳴る設定になっている。


 チャリーン♪

「……もう、帰る(居ぬ)わ」

 肩を落としてションボリしたまま、ハンマーを全てワンピースの中へ格納した(仕舞った)。


 チャリーン♪

 とりつく島もないほど、意気消沈した美少女社会人。一介の男子高校生2人には、それ以上掛ける言葉がなかった。


 チャリーン♪

「……ソレデワ、コミューターヲ、オ貸シイタダケマスカ?」

 と、気の付くルフトが申し出る。

「私ガ、ゴ自宅マデ、オ送リイタシマス」

 言葉を引き継ぐ子ルフト。

 健康管理フレームへ照会したときに最低限の個人情報を入手できたのだろう。


 チャリーン♪

 玄関先まで見送る男子生徒。


 チャリーン♪

 コミューターの過充電状態は解消されていて、もちろん燃料(RPM)は満タンだった。


 チャリーン♪

 座席下の荷物(メット)入れの部分に収まる1/6(子)ルフト。

 足を伸ばして、背が高くなったルフトに、安全性は実証済みの、フルフェイスのメット(シャンパンゴールド)を装着されるままになっている”たこ焼き大介(美少女社会人)”。バイザーは格納されてるため、押し込められた顔の様子が見える。

 足を拭かれ、玄関先に出しっ放しだった、突っ掛け(サンダル)を履かせられる様は、子どものようにしか見えなかった。


 チャリーン♪

 ウォロロン。ピーコンピーコン♪ バックしていくコミューター。

 つまり、うなだれ、座席に座る、生気の失せた大介の顔が痛々しい。


 チャリーン♪

 驗(シルシ)は無言で手の平を見せる。刀風(カタナカゼ)は両手を体操するように振り回した。元気付けのつもりらしい。


 チャリーン♪

 大介は細い腕をわずかに持ち上げ、そのまま旋回し、夜の町へ消えていった。


 チャリーン♪

「一応、防犯機能ヲ作動サセマシタ、ウチノ子モ居マスノデ、危険ハ無イデス」

 と、ルフトさんの補足説明。


 チャリーン♪


 チャリーン♪


 チャリーン♪

 入金ベルは、驗(シルシ)が、設定変更方法を、突き止めるまで、このあと、31回鳴り続けた。


 チャリーン♪

「―――明日、お金(300万S$)はちゃんと返すけどさ、そう言うことじゃ、無いんだろな」


 チャリーン♪

「―――そうだな、明日、”自動学食”出たら、元気づけに、何か奢(おご)ってやろうぜ」

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