1:接触6
2016/07/22 3:53 暫定。よろしくお願いします。
リアルコウベの内手首に積層表示された画面には、演出の砂嵐に浮かぶ『NO≡SIGNAL』の文字。
リアコウは、NPCコウベの、顔を指さした。
ポップアップする、
『たこ焼き大介作成:米沢首Ver:2.1.0*』
自己進化型と銘打つだけの事はあるようで、小まめなマイナーバージョンアップがされている。
気の利くルフトがナノサーフェス仕様の何の変哲もない、真っ白い厚紙を差し出す。ソレを「見やすくて、……ええどすな。おおきに」と受け取る大介。
大介は、HUDの後ろへ掲げた厚紙へ貼り付けるように、掌で、HUDを圧着した。
米沢首の、頭の上から切り離される、ステータス表示。
「お? なんか送信リンクが出来てる!?」
覗き込む驗が、見慣れた表示の下に、見慣れないボタンが出来ているのを見つける。
「本当に? うっそ、やったやないの! 『ゲームへの登用申請』、本当に出来るやんか!」
いつの間にか追加で出した、小さいハンマーを振り回し、狂喜乱舞するリアコウ。
頭の上の小鳥部分が分離し、ハンマーの切っ先を避けている、NPCコウベ&小鳥。
「へーやったじゃないですか!」
おめでとうございますと、軽く礼をする少年。さりげなく、ハンマーを取り上げたが、リアコウはそれどころでは無いようだった。
てへへへへへへ。ども。と新設された、『ゲームへの登用申請』ボタンを、満面の笑みで押す”たこ焼き大介”。
ピピッピ♪ ヴァパパァン♪
『◆ゲームへの登用申請を受け付けました。』
なぜか、逃げまどうPLOTーANや、雑魚キャラ達のイラストを背景に申請受理のダイアログ・メッセージ。
「ほ、本当に、……で、出来た!」
感動に打ち震える、真っ白いワンピースが、とても良くお似合いの、大介。
「やったじゃないすか!」
「おめっとさん。……下世話な話だけど、幾らぐらいになるんだぜ?」
ワルコフ狩りを止めて、ニヒヒヒと、寄ってくるガタイの良い少年。
「確か、一律で、……300万宇宙ドル……やったと思う」
驗の腕のデータウォッチが、キーワードに反応して、自動的に表示した。
『※2016年6月17日現在―――YEN=8.854S$』
本日のレートでは、やや歩留まり感が有るモノの、大学初任給×1.5倍くらいの金額にはなる。他では何の足しにも成らないが、ここ特区なら十分にやっていける。
「へー。VR設計師てのも案外悪く無えぜ」
刀風の意見に驗も頷く。
「お金って言えば、このデバッグモード、今もお金掛かってるんですよね? 切らなくて大丈夫すか?」
「そへんね、……デバイスを多重起動……させとるから、……負荷が分散する分、……課金さはる単価は……半分になるんやけど……」
「音声入力」
「……バイナリ時空間分割:オン」「……エリア指定:解除」「課金表示:オン」
「おーやーつ……ブッツ」
即座に光の粒子となる、実物大NPCコウベ&小鳥&ワルコフ。
ポポン♪ ポポン♪ 両腕の、危険色表示が、通常の単層表示に切り替わる。
左手首の、甲へ向けて付けていたデバイスを取り外す。
右手内側の表示を、最後に指先ではじいた。
『現在の累積課金__4,320円』
「4,320円……どすか。……思うたより、……内部処理が複雑どすなあ、……高う……付いてもうた」
リアルコウベは、悲しげな表情をした。
「「今の一回分で!?」」時間にして、7分程度。
「おいおい、4,320円って、それだけあったら、ゲームアーカイブで、どれだけ買えると思ってんだぜ!?」
「そうだな、せめて、宇宙$建てで決済して、ランキング決済ptsで20%分回収したいな」
「……あんはんたち、……結構VRゲームまーりに……詳しいさかいすね……どえらい見直したんや」
「現役のβ生徒を舐めちゃいけねえぜ」
「そだな、金欠とスタバが生活の全てと言ったら過言だけどなー。俺はまだ、キャラメイクすらして無ぇーし」
「……そないなら。なんや、……結果的に申請……出来はったことやし、……これも何やのご縁って事で、……あてぇが、あんたはんの……キャラメイク見てあげまひょか?」
「お、良いんじゃね? 俺も結構苦労したし、禍璃に至っては、1週間掛かったって豪語してたぜ?」
「そっか、そしたら、お願いしちゃおっかなー」
両手を組んでクネクネし出す、気持ちの悪い鋤灼少年。
うふふふふ。あはははは。へへへへへ。
和んでいる間にも、登録申請の結果が帰ってきた。
『(C)たこ焼き大介/NPC”米沢首”はゲーム内キャラクタとして正常に登録されました。つきましては、下記の受領届けを持って契約締結とさせていただきます。』
厚紙を、ひっくり返し、印刷品質の文面を、驗達へ見せる。
にこにこにこ。拍手で返す、男子生徒&ルフト親子。
ビ。速攻で押された受領の為の指紋認証。
チャリーン♪
なぜか、鋤灼驗のデータウォッチが、即座に返答を返す。
チャリーン♪
ん? なんぞ? なんだぜ?
チャリーン♪
驗が引っ張って、15センチ四方の大きさに広げたSMS。
チャリーン♪
『VRエンジン研究部顧問代理様へ―――
貴 VRエンジン研究部所属の、”米沢首”が、スターバラッド・オンライン・ユニバース の正式NPCとして登録されました。つきましては下記の通り、300万宇宙ドルを進呈するとともに、NPC/米沢首との永久メンバー登録の締結を通知いたします。』
チャリーン♪
「おいこりゃ、どういう事だぜ!?」
チャリーン♪
「あ、アカンやないの!」
チャリーン♪
「昨日、コウベ達が通信途絶したのって、俺が入部届使って、PBCに格納したからで―――」
チャリーン♪
「あ、アカンやないの!」
チャリーン♪
「……所属と管轄が、VRE研究部に移ったからって事か―――!?」
ポンと手を打つ刀風。
チャリーン♪
ちなみに、驗のデータウォッチは、入金金額1万円ごとに、1回入金ベルが鳴る設定になっている。
チャリーン♪
「……もう、帰るわ」
肩を落としてションボリしたまま、ハンマーを全てワンピースの中へ格納した。
チャリーン♪
とりつく島もないほど、意気消沈した美少女社会人。一介の男子高校生2人には、それ以上掛ける言葉がなかった。
チャリーン♪
「……ソレデワ、コミューターヲ、オ貸シイタダケマスカ?」
と、気の付くルフトが申し出る。
「私ガ、ゴ自宅マデ、オ送リイタシマス」
言葉を引き継ぐ子ルフト。
健康管理フレームへ照会したときに最低限の個人情報を入手できたのだろう。
チャリーン♪
玄関先まで見送る男子生徒。
チャリーン♪
コミューターの過充電状態は解消されていて、もちろん燃料は満タンだった。
チャリーン♪
座席下の荷物入れの部分に収まる1/6ルフト。
足を伸ばして、背が高くなったルフトに、安全性は実証済みの、フルフェイスのメットを装着されるままになっている”たこ焼き大介”。バイザーは格納されてるため、押し込められた顔の様子が見える。
足を拭かれ、玄関先に出しっ放しだった、突っ掛けを履かせられる様は、子どものようにしか見えなかった。
チャリーン♪
ウォロロン。ピーコンピーコン♪ バックしていくコミューター。
つまり、うなだれ、座席に座る、生気の失せた大介の顔が痛々しい。
チャリーン♪
驗は無言で手の平を見せる。刀風は両手を体操するように振り回した。元気付けのつもりらしい。
チャリーン♪
大介は細い腕をわずかに持ち上げ、そのまま旋回し、夜の町へ消えていった。
チャリーン♪
「一応、防犯機能ヲ作動サセマシタ、ウチノ子モ居マスノデ、危険ハ無イデス」
と、ルフトさんの補足説明。
チャリーン♪
チャリーン♪
チャリーン♪
入金ベルは、驗が、設定変更方法を、突き止めるまで、このあと、31回鳴り続けた。
チャリーン♪
「―――明日、お金はちゃんと返すけどさ、そう言うことじゃ、無いんだろな」
チャリーン♪
「―――そうだな、明日、”自動学食”出たら、元気づけに、何か奢ってやろうぜ」




