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ワルコフに気をつけない  作者: スサノワ
10:VRーSTATI◎N

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46/153

10:バックヤード4

2016/07/22 2:15 作中の日付表示修正。

2016/07/10 19:03 誤字修正。

2016/07/10 18:11 暫定。よろしくお願いします。

「え? 何か?」

 若干、訝(いぶか)しがるプロトたん女史。


「いえ、何でもありません、ありませんよぉー! ソレより、結構良いモノが沢山あって、迷ってしまいますぅ~」

 身振り手振りを交え、誠意を持って、取り繕う笹木特別講師。


「そーですよねー。ご要望の多い定番物とか、人気商品の見本としてストックして置いた物ばかりですしねぇー。……それ抽出(ピックアップ)リスト?」


「はいそうでーす」「ちょっと拝借」

 禍璃(マガリ)はノートを手渡す。


 ピアスにぶら下がっていた、小さい棒(赤色のサラミ)を外して、片手で機構(ギミック)を伸ばす女史。

「それでは、概算出してみましょう」


「あらぁ、超高精細(ドット・パー・エイム)のペン(スタイラス)ー❤」

「? 欲しいですか?」

 女史は開いた胸元に手を突っ込む。そして、何かを掴んだ猫手を環恩(ワオン)へ向けた。

「はいどうぞ」


 環恩(ワオン)が手のひらで作った椀(わん)へ、バラバラと落とされる赤色のサラミ。

「わ、こんなに一杯!」


「ソレ、支給品ですし、原価250宇宙ドル位なので、どうぞ、お気になさらず」

 掛けていないメガネをクイッと持ち上げる女史。


「わぁーい。ありがとうございますぅー」

 ハシャぐ、顧問。飛びつく部員生徒達。


『※2016年6月17日現在―――1YEN(JPY)=8.854S$(SPD)』

 驗(シルシ)の、手首に巻かれたデータウォッチが、キーワードに反応して、自動的に日本円で算出表示している。参照する者はいないが、小さいラムネ菓子の実売程度。


「君たちにも、差し上げましょうか?」

 再び、胸の谷間へ手を突っ込む、目つきはキツいが、美人講師にも引けを取らない、巻き毛の似合う魔女娘(プロトたん)。

 不意を付かれ、だらしない顔を、実在型PLOTーANの胸元へ向けてしまう男子生徒2名。

 男子生徒の間、やや低い位置から伸びる白く細い殺戮の鎌。

「ごるぁあ! 慎ましくも、ささやかな、ワタシに対する当てつけか(・・・・・)貴っ様らーっ!」

 首を狙ったブレーン・クロー! 所謂(いわゆる)、喉輪(のどわ)攻めである。比喩的表現で無く、実際に泡を吹く男子生徒達。いけ、そこだ!


「君たち、禍璃(マガリ)ちゃんも、ケンカしないのぉー。ちゃんと分けてあげるからぁ」

 環恩(ワオン)は、生徒達へ1人2個ずつ、赤いサラミを手渡していく。


 寸劇が済んだところで。計算を始める女史。

 ピッ♪ 音を立てる女史の手の中のペン(スタイラス)。



 ー欲しいものー

・1人用イス型コミューター

・VR関連ゲーム機各種

・ウェアラブル系入出力デバイスとデータマテリアル規格の玩具

・入力機器各種と量子サーバーのプロダクトキーカード

・情報暗幕とPBC・開発者用デバッグ機器

・小さい冷蔵庫

・VRケーブル

・魔女帽子S3規格まで対応

・兜S2規格まで対応

・トグル<鬼>オーガ筐体対戦台一式

・真っ黒S1規格まで対応


 合計必要pts(ポイント)__270,000pts

 所持pts(ポイント)_____80,000pts



「おう、結構行ってたぜ!」「3倍ちょっとはヒドいな」

「わちゃー! す、すみませーん。ここからぁ、より厳選しますのでーっ」


 女史の手元に群がり、盗み見る生徒達と顧問講師。


「音声入力」

 禍璃(マガリ)のノートをペンで弾いてから、さらに唱える女史。

「原価pts(ポイント)算出:時価会計」「技術レベル+(プラス)3」


 禍璃(マガリ)の手書き入力したリストが、清書される。

 女史はノートを広げて、

「こっちのページも使って良いかしら?」と確認した。


 頷く禍璃(マガリ)の了承を得て、

「概算実行:評価AI:規定値」と、長めの呪文を唱えた。


 スススススッ。

 リスト項目の一つ一つから、草木が茂るように、伸びていき分岐する矢印(アロー)。

 様々な、非暗号接続子(オープン・リンク)項目を追加して結合、横へ伸び、ページ境界(ノド)を越えていく。

 女史がペン先で突(つつ)いた、見開きの対となるページへ、魔法のように再構成されていく禍璃の(マガ)リスト。



 ー手に入るものー

 1:1人用イス型コミューター

  ※積層メモリ併用型物理電池補償金回収のため、健康管理フレームへの接続必須

 2:VR関連ゲーム機

  ※データマテリアル規格テスト専用機としての提供

 3:スタンドアロン(概存)型量子サーバー構築

  ※ハードを情報暗幕とPBCで構成

 4:ウェアラブル系入出力デバイス

  ※オールインワンデバッグ機器への管理者権限登録必須

 5:帽子タイプVRHMD・S3規格

  ※S4規格用VRケーブル利用でキャッシュバック期間中

 6:兜タイプVRHMD・S2規格

  ※アカデミック版VRE購入

 6:トグル<鬼>オーガ筐体1基

  ※下位VERからのアップデート及び、VRゲーム機対応入力機器と、ヒツジテック社製小型冷蔵庫内蔵回線利用で対戦機能を構成

 7:未登録タイプVRHMD・S1規格

  ※現在、購入できません


 合計必要pts(ポイント)___80,900pts

 所持pts(ポイント)_____80,000pts



「昨日(さくじつ)、差し上げたポイントで、大体、賄(まかな)えますよ?」


「はらぁ? ほんほひ全部手にはひるぅ?」

 口に両手の指を突っ込んで取り乱す顧問。


「でも、900pts(ポイント)足りない」

 自分のノートに書かれた赤文字を指さす禍璃(マガリ)。

「それじゃ、さっき”御馳走になったジュース代”と言うことで、いかがかしら」

 片目を閉じ、ほほえむ女史。赤くなる禍璃(マガリ)。


「おい、鋤灼(スキヤキ)」

「おう、刀風(カタナカゼ)」

「やっぱり、高性能(キレ)過ぎだな、この姉さん」

「だな、用心して置こうぜ」


 1歩近づき、ノートの赤文字を指さす驗(シルシ)。

「この注釈(※印)ばっかり、の所は、”魔法(・・)”か何かですか?」

 へらへら笑顔(冗談まじり)で聞いた驗(シルシ)は、この不用意な発言を後悔することになる。


「ふむん」

 プロトたんは、ツリ眼の目尻を、意図的につり上げ、驗(シルシ)少年を見据える。


「君は、鉄の塊に乗って空を飛ぶことが出来ますか?」


「で、出来ません」

 気圧されるままに返答する驗(シルシ)少年。


「じゃあ、セスナ飛行機の全パーツを手渡されて、セスナ飛行機に組み立てることは出来ますか?」


「……出来ません」「……俺も無理だぜ」

 刀風(カタナカゼ)が驗(シルシ)の横に並ぶが、”分(パワーバランス)”に変化はない。


「じゃあ、”セスナ飛行機組立キット”を渡された場合、セスナ飛行機を完成させることは出来ますか?」


「さ、さっきよりは、出来そうな気がします」

 女史から感じる圧力的な態度(プレッシャー)には代わりがないが、驗(シルシ)少年は真っ直ぐ見つめ返す。


「おう、それなら少し出来そうだぜ」「ワタシも」

 驗(シルシ)の影に隠れてるが、刀風(カタナカゼ)と禍璃(マガリ)も、女史を見つめ返している。


「じゃあ、身も蓋もない、例(たと)え話を、続けさせていただけるならば、早い話、”セスナ飛行機”は270000pts―――」

 息をつく(ブレス)。

「―――”セスナ飛行機の組立キット”は80000pts、差額分の能力の持ち合(・・・・・・・・・・)わせはございますか(・・・・・・・・・)という、大変不躾(ぶしつけ)なお話です。先生ごめんなさい」

 生徒達への圧力的な態度を謝罪する白焚畄外(シラタキルウイ)。


 いえいえいえいえっ!

 お辞儀と、否定の首振りが融合し、錐揉(きりも)み状態の笹木環恩(ササキワオン)頭部。

 目眩(めまい)を起こし倒れる姉を、すんでの所でガッシリと支える、意外と筋力のある笹木禍璃(ササキマガリ)。


「もちろん、100人力とは行きませんが、必要な知識と情報のすべては私がお教えします」

 仁王立ちのS(スター)B(バラッド)O(オンライン)U(ユニバース)所属、PLOTーAN(メインヒロイン)。余談だが、PLOTーAN本人(NPC)は、これほどスタイルが良く無い。


 妹に体を支えられながら、環恩(ワオン)は尋ねる。

「私ぃ、恥ずかしながらぁ、応用・運用が専門でしてぇ、フルダイブ機器の基礎理論の再現はS1規格まで(・・・・・・・・・)が、関の山なのですがぁ、大丈夫なお話でしょうかぁ!?」

 頭をぐらつかせ、視線が定まらないまま、泣きそうになる笹木VR専門家。


 グワッ! 眼力を込めて、見開く白焚(シラタキ)女史。

「ひぃいぃぃっ!」

 倒れ込んだまま、情けない声を上げる、環恩(ワオン)。

 スッと身を屈め、環恩(ワオン)へ手を差し出す白焚(しらたき)女史。


「在野《ざいや》の技術者が、ハードウェアレベルで、S1規格を再現(センシング・ワン)って、それ―――」

 ビクリ。掴(つか)もうとした手を止める環恩(ワオン)。

「―――たぶん、……特区全体でも(ジオフロント含めても)、講師先生だけですよ!?」

 怒られたと思ったのか、手を引っ込め、そのまま、禍璃(いもうと)に縋(すが)りつく環恩(ワオン)。ふえぇえぇぇん。

「姉さん落ち着いて!」禍璃(マガリ)が宥(なだ)めるも効果なし。

 地の、子ども声によって、まさに泣く子と化す。


「やっぱりー。師事してた教授にも、いっつも、『こんな事を(・・・・・)、平気で出来るのは(・・・・・・・・)、君位(・・)のもんだ』って怒られてたしぃー。ふえぇぇぇん!」

 禍璃(マガリ)の胸に、顔を埋(うず)めたまま話す環恩《ワオン》。


 声がくぐもる事無く届くのは、宇宙服(ワルコフ)の言葉を借りれば、『音声ヲ伝播スル物質ガ有ル』からであり、禍璃(マガリ)の言葉を借りれば『慎ましくも、ささやかな、』禍璃(マガリ)の体型(スタイル)の功績(こうせき)であった。


 白焚畄外(シラタキルウイ)は言った。

「先生、ソレって、―――褒(ほ)められてたんじゃないんですか?」

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