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ワルコフに気をつけない  作者: スサノワ
10:VRーSTATI◎N

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45/153

10:バックヤード3

2016/07/10 16:59 進んでいます。進んでいますが、もどかしい。よろしくお願いします。

「ココは防災用のテントに携帯食料なんかのセット」

「今回必要なし……と」

「「「異議なーし」」」


 ツカツカツカ。ぞろぞろぞろ。小さな親ガモ禍璃(マガリ)に、追従する立派な体格の部員&顧問(子ガモ)達。


「次はコミューター!? 1人用のヤツ? こんなの有ったかしら?」

 禍璃(マガリ)が引っ剥(ぺ)がしたシートカバーの中から、かなり小振りで、半球タイヤの他に、小さな間接付きのゴム足を持つ、イス型コミューターが出土した。


「それー、特区建設当初に、現場監督さんが、広範囲の移動が大変だから、管理者サイドで(私たちが)急遽作成した物なんですよ~。もしよければ、それを選んでいただいても宜(よろ)しいですよ~!」

 事ある毎に、会話へ参加してくる、白焚(シラタキ)女史。

 ヒソヒソヒソ。少年少女達は、やっぱり、寂しいんだぜ。きっとそうよ。などと揶揄(やゆ)している。見かねた環恩(ワオン)が、本当に寂しがり屋さんだとしたら、余計に止めてあげなさい。とまるで、講師のように、やさしく諭(さと)す。


「……結構便利そうねー」

 禍璃(マガリ)が座席(シート)を押して座り具合を確かめている。


「もちろん階段も上れますよ~」と女史の補足。


「階段上れるのは良いな」「通勤にいいわねぇー」「やべぇ。欲しくなって来たぜ」

 概ね高評価(イス型コミューター)の、必要ポイントを驗(シルシ)が確認する。

「えっと、一台で、60000(3人分の)pts(ポイント)……無いな」


「箱に入ってない大きい物も、すべて、お渡しできますのでー!」


「はぁーい! 解りましたぁー! ありがとうございますぅー!」

「「「……ございあーす!」」」

 声に一抹(いちまつ)の優しさが込もった。



   ◇◇◇



「そろそろ、半分くらいまできましたね」


「そうねぇ、さっきはああ言ったけどぉー、ワルさん達が心配だからぁー、出来るだけ急いでぇ済ませちゃいましょ」

 拳を顎に当てる環恩(ワオン)。


「そうですよ。”ワルコフ”と”小鳥騎士(メジロナイト)”なんてもう、どう考えても(何もしでかさない訳がない)心配(・・)な組み合わせじゃないですか」

 諦観(あきらめ)気味に驗(シルシ)は言った。


「じゃぁー、どんどん行くわよぅー!」

 拳を突き上げ、2歩先行、次の箱に手をかける顧問講師。

「ウェイトトレーニングの機械ぃ?」「いらないわね」


「空調・換気(簡易シェルター)機能付きぃハイテク寝袋ぉ」「俺ちょっと欲しいかも」

「鋤灼(スキヤキ)の部屋には、もう寝袋有るじゃないの。いりません」


 机ぇ、いらない、イスぅ、いらないぜ。

 VR関連ゲーム機各種ぅ、これちょっと保留(・・)で。

 小さく手を挙げる驗(シルシ)。


 普通の贈答用のぉ缶詰とかハムぅ、ルフトさん喜びそうだなぁ、いらないわよ。

 VRじゃない映像機器と映像ライブラリが凄ぇ一杯、んー今回いらない。

 詰め合わせに心奪われる鋤灼(スキヤキ)少年。

 映像ライブラリの目録に目を通す刀風(カタナカゼ)少年。

 見もせずに一蹴していく禍璃(マガリ)嬢。


 データグローブとかぁウェアラブル系とデータマテリアル規格の玩具ぅ、ちょっと気になるわねぇ保留(・・)でぇ。

 箱を開け、確認し、禍璃(マガリ)に記入させる。


 入力機器各種と量子サーバーのプロダクトキーカード、はいはぁーい保留(・・)でぇー。

 冷暖房器具、いらない。

 情報暗幕とPBC・開発者用デバッグ機器、保留(・・)。


 服ぅ? いらな……ちょっとかわいいけどぉ、我慢する、いらなぁい。

 ぬいぐるみ、あぁ、だめそれ、強者(・・)が潜んでそうだから、フタして、早く。

「あらぁー?」「姉さん、次々」姉の背中を押し、奥へ進む妹。


 白物家電だぜ、いらないわねぇ。

 この区画は大きい物が多いため、棚の間の横板が所々、外されている。

 あ、俺、この小さい冷蔵庫ほしいかも。えーなんで? いや、これから部員(おまえら)が俺の部屋に集まることもあるじゃん。そのときに飲み物出したいなーって。んじゃ保留で。


 貴金属に特区ブランドのバッグ、興味なしぃ。


「あっ! 導念(SuperEEG)ケーブルゥ!」「近(ちか)ぁいぃ!」

 禍璃(マガリ)は、|授業で使っている50枚綴(つづ)りのノート《電子ペーパーノート》に、棚の区分番号と”VRケーブル(品名)”を手書き入力している。


 ケーブルを引っ張り出している環恩(ワオン)を追い越し、次の棚に張られた、品目リストへ目を通す禍璃(マガリ)。

「あった! VRデバイスって書いてあるわよ」

「でかい段ボールが続いてるぜ」

「じゃあ、見てみましょうか」

 禍璃(マガリ)は腕まくりした。


 まず禍璃(マガリ)が開けた段ボールには、笹木講師(姉)と同じデザインの魔女帽子タイプのVRデバイス。

「これ、姉さんのと同じ! ……でも、色が違う?」

 笹木環恩(ワオン)特別講師が使用している魔女帽子は”オレンジ(右脳側)”と”赤(左脳側)”のド派手なヤツ。

 対して、笹木禍璃(マガリ)受講生が手にしているのは、形状は瓜二つだが、カラーリングと、脳波顕微鏡(レンズ)から突き出ている衛星アンテナ(無骨な突起)の有無(が無い所)が違っている。禍璃(マガリ)が魔女帽子を試着する。


「あらぁ、禍璃(マガリ)ちゃぁん! それ良いじゃなぁい! 色もすっごく似合ってる! このシリーズは材質が柔らかいから、丸めて、鞄に入れておけるし便利よぉー」

 ”白(右脳側)”と”ラベンダー(左脳側)”の幾分落ち着いた色合い。


「これ、姉さんのと、性能も同じ?」

「屋外でのPBC稼働に制限が付くわねぇ。でも、特区内ではあんまり意味無いから平気よぉ。あとぉ、S(センシング)規格が1段落ちるくらいー?」


「……そうね、私、コレにする」

 とても気に入ったようで、頬に赤みが差している。


 入り口に有ったアルミ製のスーパーの籠(カゴ)みたいなのを持たされていた、刀風(カタナカゼ)を呼びつける禍璃(マガリ)。

「ちょっと、刀風(カタナカゼ)、コレの付属品一式揃えておいてよ」

 試着したままの、モコモコしたシルエットの魔女帽子(白・薄紫(ラベンダー))を指さす。

「あああん? 何で俺が!?」

「じゃあ、アンタ、記録係代わってよ」

「面倒そうだなソレ」「はっきり言って面倒ね!」

「解った、かせ」と禍璃(マガリ)の頭から魔女帽子を引っこ抜く。


 カゴに魔女帽子(モコモコ)を突っ込んだ少年が、屈んだ目の前の箱を試しに開けてみている。

「お? コレもVRデバイスなのか。コレちょっと良いな」

 魔女帽子と同じメーカーの物で、騎士の兜のようなソレは、禍璃(マガリ)の物と、ほぼ同じ性能で、ポイントは半額だった。

「俺、これでいいぜ」「鋤灼(スキヤキ)もコレにしちゃえよ」


「んん~開発者用のVRデバイスは結構なポイントするわねぇ」

 魔女帽子と比べるとかなり先鋭的なデザインのVRデバイスを手にした環恩(ワオン)が、ちょっとポイントが足りなーいと嘆(なげ)く。

 ヘルメットとバイザー部分が一体化したシャンパンゴールド。SF感満載のデバイスには、リング状に光る脳波顕微鏡(レンズ)が、前後に2つ付いている。


「俺は、コレなら欲しいかな。やっぱり自分用のVRデバイスなんて、早々買えねえし」

 環恩(ワオン)の開発者用のVRデバイスのそばに置いてある、ふつうのフルフェイスのメットに必要なユニットを無造作に張り付けただけにしかみえない真っ黒。


 VRデバイスにしては破格(・・)の低pts(ポイント)。2つ付いた脳波顕微鏡(レンズ)から突き出した、導念(SuperEEG)ケーブルは剥(む)き出しのまま。ユニットの隙間を這わせて、結束バンド(ケーブルタイ)で保持している有様(ありさま)。

 ひとまず機能を成立させただけという、製品(プロダクト)デザインされていない実証機(デモンストレーター)。恐らく何世代も前の物ながらもギリギリS1規格までに対応。


 ペタリと張られた、大きめの付箋紙に書かれた情報。食い入るように見つめる驗(シルシ)。口元に浮かぶ好意。

「なんか、見た目、格好良くは無ぇし、顔のバイザーがワルコフみてぇだけど」

 と驗(シルシ)も、ゲーム機とVRデバイスの両方を諦めてはいないようだ。


 カツカツカツカツン!

「どうですか、何か良いモノ有りましたか?」

 勢いよくPLOT-ANブーツのヒールを、鳴らしてヤってきた推定寂しがり屋(プロトたん風女史)。


「「「「やっぱり、寂しいんだ」」」……のかしらぁ?」


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