↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ワルコフに気をつけない  作者: スサノワ
8:小鳥ファイル解凍

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
28/153

8:小鳥ファイル解凍その3

2016/06/02 4:23 すこし補足追加。更に、ややこしく、長大になりました。

2016/05/31 16:43 少し整頓。

2016/05/31 4:42 唯一、シナリオ通りに行動してくれるキャラクタが誕生しました。ルフトさんです。よろしくお願いします。

 量子コンピュータの特性を利用した、完全ホログラフィー技術、”画素”。

 光分子を投射し半永久的に定着させる事が出来る。

 ”発生原理が解らないまま使い方だけ収斂(しゅうれん)した”、特区を代表する謎技術(ブラックボックス)のひとつ。”完全ホログラフィー技術”と言われるのは、やろうと思えば、何もない空中に(・・・・・・・)、物理的な解像度で(・・・・・・・)、表示出来る(・・・・・)からだ。

 現在、様々な理由から、特区内でも”物理解像度での空中投影”は、禁止されている。


 ”画素”を表示する際に、表示要素以外の情報を入れ込むことで、情報を処理することも出来る。

 しかも、映像解析技術や圧縮プロトコル、ひいては、量子的特性を複合的にリソース化していった結果、飛躍的に処理速度を上げることが出来てしまった(・・・・・・・)のである。既に、謎技術《ブラックボックス》以外の部分は、”量子描画プロトコル”として公開されている。


 ”画素”技術が公表された当初、複雑で入り組んだ狭い所へ投影するのに、量子演算を持ってしても、膨大な解析時間を必要としていた。

 だが、投影すればするだけ増す処理速度(量子描画プロトコル)を獲得したことにより、むしろ、不得手(ふえて)なほど、効率が良いという、不気味(魔術的)なポテンシャルを開花させるに至(いた)る。

 特区周辺なら、たとえ密閉された空間内でも、なんの装置もなく物体表面に、印字品質の精細さで、投影できる。


 個人使用(ユース)としては、固定映像用の画素面をあらかじめ、物理的に位置決め(ポジショニング)し、精査し整列させ、バックライトを搭載したモノを、モニタ兼量子コンピュータ端末(ターミナル)として使用するのが一般的である。

 具体的には、対応モニタや対応平面構造に、空間認識用アダプタ(ドングル)を付ければ良い。


 大規模な演算発生中や、映像チャンネル混雑時などに、周辺の固定映像用の画素面が、鏡面化(・・・)してしまうのは、演算中のデータ保護を優先させるためだ。


 驗(シルシ)達が、今しているのは、画素面の、物理的な位置決め(ポジショニング)だけでは不可能な、情報のリフレッシュレート自体の高速化、つまり下回りの補強(バスクロックアップ)だ。

 より物理的に(ハード上で)高速処理させるために、専用(・・)の回路図を直接(・・)書き込んでいる。

 VR界隈での呪文、”正式な手順さえ踏めば、あとは機械が全部やってくれる”の、

”正式な手順(・・・・・)”と”機械(・・)”を繋ぐ部分なので、厳密な作法で一遍(いっぺん)の誤りも無く行わなければならず、工程は、かなり複雑になる。


 1:高出力で内蔵の”画素(・・)”を多重点灯させる。

 2:その発熱で転写した光回路図(パターン)を、”画素”上に永久定着させる(焼き付ける)。

 3:定着した上から、別の反転した様なパターンを転写して重ねる。

 4:分子レベルでの積層化により、数十枚重ねられているパネルの内の、1枚の中に、”機械作動式”の、計算機を作る。


 ―――ざっと説明したVR専門家(ワオン)に返る言葉は、当然こうなる。

「「「「さっぱり解らない!」ないわ!」ねえぞ!」なぁいぃ!」


 説明したVR専門家(ワオン)までもが、声を揃えて”解らない”と宣言するほどの、複雑さだ。

 実際には、既に用意されているプログラム”画素”の1枚目を、VR専門家(ワオン)の個人用クラウドから、開発者権限で表示し、実行(ラン)するだけで良いので、理解する必要は全くない。


 因(ちな)みに、当然失敗すると壊れる。それと、量子データセンター直通の画素は、どんな表示をしても発熱しない。

 カーネル(スーパーバイザー)として、量子ビットの監視をさせるため、積層パネルの一枚を占有する。本来、このTVモニタの持つ、256量子ビットマシンとしての性能(ポテンシャル)を、多少スペックダウンさせてしまう事になる。

 しかし、下回りの補強(ボトルネック解消)により、それを補って有り余る性能を引き出せたと、豪語するVR専門家(ササキワオン)。彼女の言う事が本当ならば、個人で、量子コンピュータへアクセスする環境としては、フルダイブ型VRヘッドセット以外では、最高のモノが出来上がった事になる。


                ◇◇◇


 ココまでが、開発者コンソール化(・・・・・・・・・)に耐えうる環境(ハード)づくり。

 ココからは、実際の、開発者コンソール化(・・・・・・・・・)の作業(インストール)に取りかかるわけですがぁ、モニタに、ヒビが入らないように、ゆっくり冷ましてるぅ間に~、折り詰め、頂きましょぉうかぁー。たぶん、賞味期限ぎりぎりだしぃ。と汗を拭うVR専門家。


 ルフトは、室温が下がるのを見計らって、残りの折り詰めを抱えて持って来てくれる。部屋が暑くなるので、隣の部屋に待避させて置いた分も、1/6ルフトが1個ずつ運んでくれている。


 付箋紙(ふせんし)が張られた、折り詰めを手に取る驗(シルシ)。


「ソレハ階下ノ、住人達カラノ伝言デス」

 補足するルフトから、折り詰めをどんどん受け取る、刀風(カタナカゼ)。

 1/6ルフトから1個ずつ、折り詰めを受け取る笹木講師。

 箸や紙皿を出して、テーブルを整える禍璃(マガリ)。

 会食の準備に関しては2回目なので、非常に手際が良くなっている。


『自動屋台のごちそう、こんなに沢山有り難う。遠慮なく頂きます。』

 大きめの付箋紙に、偉く達筆な筆致で書かれており、小さくも、立派な御礼状の様に見える。驗(シルシ)は付箋紙を外し、テーブルの真ん中へペタリ。


「鋤灼(スキヤキ)君? 1階にも学生さん達いるのぉ?」と笹木講師。

「学生さんは居ないけど、外周のアミューズメント施設で働いてる方達が、何人か」


「連絡シタ所、先ホド、沢山ノ同僚ノ方ヲ引キ連レテ、オ戻リニナラレマシタ」

 気の利くルフトは、開いている窓を閉めながら、言葉を続ける。


「沢山!? そんなに居るなら、足りねーんじゃ無ぇの? 下に置いてある分だけじゃ」

 刀風(カタナカゼ)は折り詰めに付いた、小さな醤油入れ(鯛)のフタを、回して外している。小刻みにピクピクと動くフサフサの猫尻尾を禍璃(マガリ)が鋭く睨み付けている。


「でも、コレ、結構ずっしりと、重いし、ふつうの駅弁とかよりは、量有ると思う」

 と猫手を脱ぎながら禍璃(マガリ)が言う。各人の前に4つずつ置かれているテーブルを見て彼女は顔を少し赤らめているようだ。


 ルフトは、1/6ルフトと見つめ合い静止する。

 チ・チ・チーと、小さな発信音が漏れているので、どこかと通信している様子。

 砕けた感じの男性の声と、明るい声色の女性の声で、

「えぇーー!? 十分十分、美味しく頂いてまーす!」

「ちょうど人数分足りてるよー! シルシっち、サンキュー! ブツッ」

 と1/6ルフトから、返答が帰ってきた。

「ダソウ……デス」

 フルサイズルフトは、流暢(りゅうちょう)で気弱な合成音声《マシンボイス》で締めくくる。


 部屋付きの小型端末機(ターミナルボット)同士は、電話の子機のように通話する事が出来る。恐らく、1階にいる別の小型端末機(1/6ルフト)と通話したのだろう。

「あらぁー。小さいルフトさん便利ねぇー」

 ムギュリ。胸の谷間で1/6ルフトを抱える、笹木環恩(ワオン)特別講師の顔には、「コレ欲しい」と書かれている。


 シルシは、引ったくるように1/6ルフトを取り返して、隣にいた刀風(カタナカゼ)へ手渡した。


 ガシーン。刀風(カタナカゼ)は、笹木特別講師と同じポーズで、1/6ルフトを抱えて、ニヘラっとしている。刀風(カタナカゼ)は外見的には、非の打ち所のないイケメンで有る。


 禍璃(マガリ)は、脱いだ猫手袋を、残念なイケメンに投げ付けた。


「痛って! やんのかっ!?」

 筋骨隆々の少年が、血気盛んに立ち上がり、抱えていた1/6ルフトを、フルサイズルフトへ、優しく手渡す。

「良いわねっ! もう姉さんに気安くしないで欲しい所だったしねっ!」

 やや、ミニマム体型の、ロングヘアーをカチューシャで纏(まと)めた少女が、威勢の良い振る舞いで、立ち上がる。驗(シルシ)は、その声を聞いて頷(うなず)いている。笹木姉も、やっぱり禍璃(マガリ)ちゃん、イイ声~と頷(うなず)く。


 2人とも揃って、後ろ手に構える。


「彼の地に万有が降り立ち―――」

 此処(ここ)まで、”簡易給仕ロボ(ラジコン・カート)”を操縦してきた、携帯ゲーム機を取り出す。型番は最新型のRRGMD(ゲームモード)ー4000OR(オレンジ)。


「彼の地に万有が降り立ち―――」

 まるで聖剣を掲げる女騎士のように、大げさに携帯ゲーム機を取り出す。型番は最新型のSSGMR(ゲームローズ)400ーRD(レッド)。ほぼ、同形状だが、こっちの方が薄型に見える。


 音声入力(ワード)による、高速起動、それぞれのキャラクタが即座にロードされる。ゲーム機の表示パネルから、はみ出る形で、半透明のHUDが幾重にも重なって表示されていく。表示パネルを含め、直径15センチ以内の半透明ホログラフィーは目視可能なので、AR眼鏡をかけていない、驗(シルシ)達にも見える。


「ア、アノ……」

 今まさにゲームとはいえ、殴り合いの喧嘩をしようって2人の間に、事もあろうか、気弱なルフトが割って入った。


「おう、ルフ公、止めんなよ! コレはぁ、歴(れっき)とした、男と男の勝負だぜぇ!」

 と言いつつ、ルフトを気遣い、横に逸(そ)れようとする男前(カタナカゼ)。


「どわれがぁ! 男かぁあ! 付いとらんわぁ!」

 禍璃(マガリ)は回転し、刀風(カタナカゼ)へ背を向け、飛び上がる。

「なんだ!? 今更止め―――」

 背を向けた相手を、追う形になった刀風(カタナカゼ)の腹を、射貫(いぬ)くように、後ろ足を振り上げる禍璃(マガリ)。

 舞い上がる制服(チェック)のプリーツスカート。

 回し気味にピンと伸びた足の下で、ルフトは「賞味期限ガ……迫ッテイマ……スヨ」と言葉を続けている。


 刀風(カタナカゼ)はスタイルも抜群である。筋肉多めのモデル体型と言って良い。足なんて半分よりも上から生えてる。

 対する禍璃(マガリ)は、立ち振る舞いこそ、舞台役者だが、如何(いかん)せん身長(タッパ)が無い。こちらも足は半分よりも上(スタイル)から生えているが(抜群だが)。


 キィィィィィィィィィィィィィィィィン!

 哀れ、刀風(カタナカゼ)は、足の付け根を、押さえて、崩れ落ちた。


 禍璃(マガリ)は、スカートを、まくり上げながら、若干ガニマタで、ストン。フローリングの床に靴下なので、蹴(反)った回転(動)とは逆へ(で)、30度ほど回転した(戻った)。着地姿勢のまま、顔を上げる禍璃(マガリ)の真正面には、座る驗(シルシ)。


 回転ジャンプの瞬間に「それ……見せてんのか?」と溜め気味・・・・に言った驗(シルシ)も、スタスタと歩いてきた禍璃(マガリ)のつま先で、オデコを蹴られ、悶絶した。


 その惨劇を目の当たりにした、笹木<姉>特別講師は、

「禍璃(マガリ)ちゃぁん。モテモテねーっ! 大丈夫、お姉ちゃん、あっち向いてるからねぇー!」

 と、何か勘違いをしながら、3人へ背を向け、「いただきまぁす」と本日2度目の会食を始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。