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ワルコフに気をつけない  作者: スサノワ
6・5:ワルコフ対自動屋台

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22/153

6・5・6:ワルコフ対自動屋台6

2016/11/17 0:30 緩衝エリアのサイズを変更しました。

2016/05/17 2:04 文体整頓。

2016/05/14 8:35 迷走。ワルコフ爆誕以降に登場予定のキャラが出てきてしまいました。

 キュルッ!

 ……キュルルルルルルッ!

 刀風(カタナカゼ)はテーブル操作の、切り返しの時に、暫く止まって様子を見てる。

 ”自動(ディナー)屋台(ベンダー)”は、オレンジ色を俺たちの方に、先行させたり、脈動するタイミングを変化させたりしてる。生物的な威嚇行動っぽい感じで、スゲェ不気味だ。実際、一定の距離を取って、それ以上、近寄ってこない。


 つうか、輪が飛んで来ねーぞ? 止んだか? 周囲に表示されてた、小さな輪がすっかり無くなってた。撃ち尽くしたのかもしれねえ。モギュゴクリ。


「鋤灼(スキヤキ)君ー、先生にもー、一口ちょうだぁーい!」

 よし、先生に余裕有るうちは何とか成る気がする。平皿を片手で笠(かさ)のように被り、空いた手で、しっかりと俺の丸焼きの皿を掴んでる。


「手、汚れますよ?」

 俺のギトギトになった手を見せる。

「平気平気ぃー」

 俺が齧(かじ)り付いてない方のモモを、手で千切ろうとしたけど、中々千切れない。


「はい」とウェットティッシュで、拭いてから、ステーキナイフを差し出す禍璃(マガリ)。


「お、気が利く」と有り難く、受け取ろうとしたが、禍璃(マガリ)は、ナイフを放さない。

 グ、グググ。

「私の分は?」禍璃(マガリ)は、笑顔で自分の取り分を要求してくる。

「……判った。みんなで分けよう」俺一人で食うつもりだったんだけど、コレが最後の一品になっちまったからな。

 ステーキナイフは小振りだけど、鳥の丸焼きを切るには十分。


 先生は自分の被っていた皿を、ウェットティッシュで拭いてる。

 俺は丸焼きをザクザク切り分け、平皿に一人前×2つ、取り分けた。

 禍璃(マガリ)は「それ、ちょっと多くなーい?」と俺の分にケチを付けてくる。

「でも、もう俺のドンブリに盛っちゃったもんね」と、俺は取り分を主張した。確かにチョット多く取った。配膳が手慣れてたり、妙に食事の配膳にコダワリを見せるな禍璃(こいつ)。 

「刀風《カタナカゼ》の分は、大皿に残しとくからな」

 これ以外の器は、最初の旋回で落ちてもう無ぇ。


 刀風(カタナカゼ)は緩衝エリア内だってのに、携帯ゲーム機に向かって話しかけてた。緩衝エリア内では、エリア外との通信に課金(金)かかるから、普段の刀風(カタナカゼ)なら絶対に、外に出てから通話する。つうか、都市(ここ)に居る全学生がそうする。広くて色々使えそうなのに、人通りの無い原因の一つが課金だ。近距離のオープンチャンネルや、クライアントを介したクラウド使用はできるけど。

「やっぱりダメだ。緊急通話も落ちてやがる」

 刀風(カタナカゼ)は携帯ゲーム機の、1センチくらいの長さの緊急通信アンテナを、押し込んで本体に仕舞う。

 通話が出来ない時点で、やはり異常事態だって事が判る。こんな状況じゃ無かったら、『通話で(・・・)きない(・・・)』なんて言ったら、金一封モノ(・・・・・)だったのに。

 テーブルの縁(へり)を弾(はじ)いて、果物用っぽい平たい楊枝を、取り出しながら言ってくる。ほんと、そつが無ぇ筋骨隆々(イケメン)だ。


「あ、さっき(はっひ)、モグモグモグ、システム(ヒフ)管理者(ハホ)にぃー、開発者コンソール(ホンホーウ)からメッセージ(ヘッヘーヒ)送っはんはへほぉー、モグゴクリ、ふはぁー。応答(レス)無しぃ(ゼロ)~」

 手づかみで食べてた先生が、ゴツい腕時計をかざす。

「だから、姉さん。何言ってるか分かんな―――」

 受け取った楊枝の一本を、俺に差し出す、禍璃(マガリ)の手が止まる。またなんか要求があんのかと思ったけど、禍璃(マガリ)眼(アイ)は緩衝エリアの出口を凝視してる。


 俺も見た。

 緩衝エリア出口の外周側出口が無くなってた。


 正確には、”鋳型(モールド)がブロック(・・・・・)玩具のよう(・・・・・)に盛り上が(・・・・)り、立ちふ(・ ・・・)さがってて(・・・・・)向こうが見(・・・・・)えない(・・・)”だ。


 とにかく、緩衝エリアを這ってでも出ちまえば、どうにでもなると思ってたけど、建物を囲む塀やフェンスに囲まれて、通路以外からは出られそうに無い。

 全員慌てて、鶏肉を口に詰め込む。そうだ事態を飲み込む前に、口の中の食事を飲み込もうぜ。

 しかし、みんな食い意地張ってんなー。俺みたいな、苦学生じゃ有るまいし

なー。ま、でも、食事の趣味が合うってのは、悪く無ぇと思った。

 あと、やっぱ、この丸焼き、冷めてても超旨ぇ!

 禍璃(マガリ)も目を丸くして「結構いけ(へっほーひへ)るわね(ふはへ)」と絶賛してる。


 ヒュィーーーン。キュキキッ!


 来た。一斉に振り返る。刀風(カタナカゼ)と禍璃(マガリ)はまだ地鶏が残ってるから、手に持つ皿ごと振り返った。

 スグ後ろに”自動(ディナー)屋台(ベンダー)”が停止する。


 ◎ びゅわ

 ◎◎◎ びゅわわっ

 ◎◎◎◎◎◎◎ びゅわわわわわわわっ


 緩衝エリア内を、実験・催事等で広範囲に使用する際に、2重線で囲われる”エリア内占有”表示。俺達の周りの地面を次々と、無数の2重丸が覆い尽くしていく。正確な円で描かれ、直径1メートル程度のソレは、前回の比じゃなく―――


 ◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎ びゅわわわわわわわわわわわわーっ

 ◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎ びゅわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわーーっ


「うわわわっ」声が漏れた。

 たぶん300メートル幅の緩衝エリアを全部埋め尽くしてる。

 同じくらいかそれ以上に長い範囲で、横にも広がってるだろう。


「わ、姉さん、どうしよう」

「とりあえずぅ、こうしましょぉう!」

「そうだな、ソレがいいな!」


 まだ、どうすんのか聞いてねえけど、刀風(カタナカゼ)に習って俺も先生の意見に賛成だ。もう、どうすりゃいいのかわからねえ。


 前 刀風(カタナカゼ) 後

 後 俺 前

 前 先生 後

 後 禍璃(マガリ) 前


 刀風(カタナカゼ)を先頭に、テーブル下に、体育座りで横並び。交互に向きを変えてるのは、省スペースを図(はか)ってのことだ。

 妙案が、浮かぶまでぇ、コレで凌(しの)ぐわよぅ! とは先生の談。


 パップルペップルピルルルレリッ♪


「あらぁ、通話ぁ? 誰かしらぁ?」

「いいから姉さん出て出て」


「もしぃもしぃ?」


 俺は先生の声に集中しながら、”自動(ディナー)屋台(ベンダー)”の様子をうかがう。


”自動(ディナー)屋台(ベンダー)”は四股を踏むように、のしっガシン! のしっガシン! と、その場で足踏みを開始する。

 そのたびに、俺たちの周りだけ空いてた余白部分に小さい輪が滑り寄ってくる。

 まるで、”自動(ディナー)屋台(ベンダー)”に吸い寄せられてるみたいだ。

 ブラックホールとか、蟻地獄とかそんな単語が脳裏に張り付く。


『最適化完了シマシタ―――バトルレンダ再起動(リスタート)』


 ”表示板”の中央から赤色の●が膨張―――


「どうも、どうも、コチラ、システム(シス)管理者(アド)の白焚(シラタキ)と申しますぅーーっ!」

 漏れてくる声に、聞き覚えがある気がしたが、―――ソレどころじゃねぇ!


「はぁい、それはぁどうもぉ、ご丁寧にぃー」

「姉さん、いいから、早く用件を―――」


「来るぞっ!」刀風(カタナカゼ)が叫ぶ。

 同時に、”自動(ディナー)屋台(ベンダー)”の足下から毒々しさを感じさせる、血の色のような”赤”が血だまりのように広がってきた。


 それに近寄ってくる白い◎。接触と同時に、瞬時に赤く染まり、ヒネるように立ち上がる。赤い車輪は軸に沿って、その場で回転し出した。地面を跳ねあちこち移動しながら回転のスピードを増していく。やがて、地面から火花が、発せられると、俺たちの方へ猛烈なスピードで転がってきた! その軌跡から火花が立ち上り、閃光を発してる!


 ギャギャギャギャギャギャッ!

 2重丸は空中を飛んできたときと同じように、二つの輪になって、バラバラの軌道を描いて的確にテーブルを狙ってきた。


 目と鼻の先から、こんなのが突っ込んできたら避けよう無ぇー。

 死んだと思った瞬間!


 カカカカカカカッ! ガンドカン!

 駆け込む人影、猛烈な勢いでサッカーキックッ! すっ飛んでく、赤い狂輪2つ。

 蹴った勢いのまま膝(ひざ)を振り上げる。俺と刀風(カタナカゼ)が一瞬反応するくらい大きな足の動き。

 血だまりのように広がる、赤い円を、ショートブーツのヒールで―――

 バリーンと踏み抜いた!


 ハイ・プラスチック製の地面には1メートルもの亀裂が放射状に入り、赤い●は、踏まれた穴からインクが流れ落ちたかのように急激に色を失う。


 更に、「音声入力」「こら! ”自動(ディナー)屋台(ベンダー)『飯櫃(めしびつ)2型』”」「コマンド入力」「いい加減にしなさい」と立て続けにまくし立てた。


 ばかん! ぼむん!

 さっき蹴られた火花の車輪が、かなり遠くの方で、爆発してる。


 ピュピポポポプスン。6肢のトルクを抜かれた様に、クッタリとする”自動(ディナー)屋台(ベンダー)。迫ってた、白い◎も、滲(にじ)むように消えた。


「……マシンOSをシャットダウンさせるなんて」

 先生はあわわわと、右手の人差し指から小指までを、全部、口につっこみながら、テーブルの下から、這いだしてく。器用だ。

 這いつくばって、今まさに立ち上がらんとしている俺たちの前に、タイトスカートから伸びた生足が、そびえ立つ。


 くるりと、踵《きびす》を返す、タンジェリンオレンジのカーディガン。黒のリクルートスーツに、リーフ・グリーンのショートブーツ。なんとなく先生に似た出で立ち。肩くらいまでのフワフワモコモコの巻き毛(カール)。この一見優しそうな女性には見覚えがあった。


「私、システム(シス)管理者(アド)の白焚(シラタキ)です」と名刺を出した。

謎キャラと、コミューター。

挿絵(By みてみん)

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