6・5・6:ワルコフ対自動屋台6
2016/11/17 0:30 緩衝エリアのサイズを変更しました。
2016/05/17 2:04 文体整頓。
2016/05/14 8:35 迷走。ワルコフ爆誕以降に登場予定のキャラが出てきてしまいました。
キュルッ!
……キュルルルルルルッ!
刀風はテーブル操作の、切り返しの時に、暫く止まって様子を見てる。
”自動屋台”は、オレンジ色を俺たちの方に、先行させたり、脈動するタイミングを変化させたりしてる。生物的な威嚇行動っぽい感じで、スゲェ不気味だ。実際、一定の距離を取って、それ以上、近寄ってこない。
つうか、輪が飛んで来ねーぞ? 止んだか? 周囲に表示されてた、小さな輪がすっかり無くなってた。撃ち尽くしたのかもしれねえ。モギュゴクリ。
「鋤灼君ー、先生にもー、一口ちょうだぁーい!」
よし、先生に余裕有るうちは何とか成る気がする。平皿を片手で笠のように被り、空いた手で、しっかりと俺の丸焼きの皿を掴んでる。
「手、汚れますよ?」
俺のギトギトになった手を見せる。
「平気平気ぃー」
俺が齧り付いてない方のモモを、手で千切ろうとしたけど、中々千切れない。
「はい」とウェットティッシュで、拭いてから、ステーキナイフを差し出す禍璃。
「お、気が利く」と有り難く、受け取ろうとしたが、禍璃は、ナイフを放さない。
グ、グググ。
「私の分は?」禍璃は、笑顔で自分の取り分を要求してくる。
「……判った。みんなで分けよう」俺一人で食うつもりだったんだけど、コレが最後の一品になっちまったからな。
ステーキナイフは小振りだけど、鳥の丸焼きを切るには十分。
先生は自分の被っていた皿を、ウェットティッシュで拭いてる。
俺は丸焼きをザクザク切り分け、平皿に一人前×2つ、取り分けた。
禍璃は「それ、ちょっと多くなーい?」と俺の分にケチを付けてくる。
「でも、もう俺のドンブリに盛っちゃったもんね」と、俺は取り分を主張した。確かにチョット多く取った。配膳が手慣れてたり、妙に食事の配膳にコダワリを見せるな禍璃。
「刀風の分は、大皿に残しとくからな」
これ以外の器は、最初の旋回で落ちてもう無ぇ。
刀風は緩衝エリア内だってのに、携帯ゲーム機に向かって話しかけてた。緩衝エリア内では、エリア外との通信に課金かかるから、普段の刀風なら絶対に、外に出てから通話する。つうか、都市に居る全学生がそうする。広くて色々使えそうなのに、人通りの無い原因の一つが課金だ。近距離のオープンチャンネルや、クライアントを介したクラウド使用はできるけど。
「やっぱりダメだ。緊急通話も落ちてやがる」
刀風は携帯ゲーム機の、1センチくらいの長さの緊急通信アンテナを、押し込んで本体に仕舞う。
通話が出来ない時点で、やはり異常事態だって事が判る。こんな状況じゃ無かったら、『通話できない』なんて言ったら、金一封モノだったのに。
テーブルの縁を弾いて、果物用っぽい平たい楊枝を、取り出しながら言ってくる。ほんと、そつが無ぇ筋骨隆々だ。
「あ、さっき、モグモグモグ、システム管理者にぃー、開発者コンソールからメッセージ送っはんはへほぉー、モグゴクリ、ふはぁー。応答無しぃ~」
手づかみで食べてた先生が、ゴツい腕時計をかざす。
「だから、姉さん。何言ってるか分かんな―――」
受け取った楊枝の一本を、俺に差し出す、禍璃の手が止まる。またなんか要求があんのかと思ったけど、禍璃眼は緩衝エリアの出口を凝視してる。
俺も見た。
緩衝エリア出口の外周側出口が無くなってた。
正確には、”鋳型がブロック玩具のように盛り上がり、立ちふさがってて向こうが見えない”だ。
とにかく、緩衝エリアを這ってでも出ちまえば、どうにでもなると思ってたけど、建物を囲む塀やフェンスに囲まれて、通路以外からは出られそうに無い。
全員慌てて、鶏肉を口に詰め込む。そうだ事態を飲み込む前に、口の中の食事を飲み込もうぜ。
しかし、みんな食い意地張ってんなー。俺みたいな、苦学生じゃ有るまいし
なー。ま、でも、食事の趣味が合うってのは、悪く無ぇと思った。
あと、やっぱ、この丸焼き、冷めてても超旨ぇ!
禍璃も目を丸くして「結構いけるわね」と絶賛してる。
ヒュィーーーン。キュキキッ!
来た。一斉に振り返る。刀風と禍璃はまだ地鶏が残ってるから、手に持つ皿ごと振り返った。
スグ後ろに”自動屋台”が停止する。
◎ びゅわ
◎◎◎ びゅわわっ
◎◎◎◎◎◎◎ びゅわわわわわわわっ
緩衝エリア内を、実験・催事等で広範囲に使用する際に、2重線で囲われる”エリア内占有”表示。俺達の周りの地面を次々と、無数の2重丸が覆い尽くしていく。正確な円で描かれ、直径1メートル程度のソレは、前回の比じゃなく―――
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎ びゅわわわわわわわわわわわわーっ
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎ びゅわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわーーっ
「うわわわっ」声が漏れた。
たぶん300メートル幅の緩衝エリアを全部埋め尽くしてる。
同じくらいかそれ以上に長い範囲で、横にも広がってるだろう。
「わ、姉さん、どうしよう」
「とりあえずぅ、こうしましょぉう!」
「そうだな、ソレがいいな!」
まだ、どうすんのか聞いてねえけど、刀風に習って俺も先生の意見に賛成だ。もう、どうすりゃいいのかわからねえ。
前 刀風 後
後 俺 前
前 先生 後
後 禍璃 前
刀風を先頭に、テーブル下に、体育座りで横並び。交互に向きを変えてるのは、省スペースを図ってのことだ。
妙案が、浮かぶまでぇ、コレで凌ぐわよぅ! とは先生の談。
パップルペップルピルルルレリッ♪
「あらぁ、通話ぁ? 誰かしらぁ?」
「いいから姉さん出て出て」
「もしぃもしぃ?」
俺は先生の声に集中しながら、”自動屋台”の様子をうかがう。
”自動屋台”は四股を踏むように、のしっガシン! のしっガシン! と、その場で足踏みを開始する。
そのたびに、俺たちの周りだけ空いてた余白部分に小さい輪が滑り寄ってくる。
まるで、”自動屋台”に吸い寄せられてるみたいだ。
ブラックホールとか、蟻地獄とかそんな単語が脳裏に張り付く。
『最適化完了シマシタ―――バトルレンダ再起動』
”表示板”の中央から赤色の●が膨張―――
「どうも、どうも、コチラ、システム管理者の白焚と申しますぅーーっ!」
漏れてくる声に、聞き覚えがある気がしたが、―――ソレどころじゃねぇ!
「はぁい、それはぁどうもぉ、ご丁寧にぃー」
「姉さん、いいから、早く用件を―――」
「来るぞっ!」刀風が叫ぶ。
同時に、”自動屋台”の足下から毒々しさを感じさせる、血の色のような”赤”が血だまりのように広がってきた。
それに近寄ってくる白い◎。接触と同時に、瞬時に赤く染まり、ヒネるように立ち上がる。赤い車輪は軸に沿って、その場で回転し出した。地面を跳ねあちこち移動しながら回転のスピードを増していく。やがて、地面から火花が、発せられると、俺たちの方へ猛烈なスピードで転がってきた! その軌跡から火花が立ち上り、閃光を発してる!
ギャギャギャギャギャギャッ!
2重丸は空中を飛んできたときと同じように、二つの輪になって、バラバラの軌道を描いて的確にテーブルを狙ってきた。
目と鼻の先から、こんなのが突っ込んできたら避けよう無ぇー。
死んだと思った瞬間!
カカカカカカカッ! ガンドカン!
駆け込む人影、猛烈な勢いでサッカーキックッ! すっ飛んでく、赤い狂輪2つ。
蹴った勢いのまま膝を振り上げる。俺と刀風が一瞬反応するくらい大きな足の動き。
血だまりのように広がる、赤い円を、ショートブーツのヒールで―――
バリーンと踏み抜いた!
ハイ・プラスチック製の地面には1メートルもの亀裂が放射状に入り、赤い●は、踏まれた穴からインクが流れ落ちたかのように急激に色を失う。
更に、「音声入力」「こら! ”自動屋台『飯櫃2型』”」「コマンド入力」「いい加減にしなさい」と立て続けにまくし立てた。
ばかん! ぼむん!
さっき蹴られた火花の車輪が、かなり遠くの方で、爆発してる。
ピュピポポポプスン。6肢のトルクを抜かれた様に、クッタリとする”自動屋台。迫ってた、白い◎も、滲むように消えた。
「……マシンOSをシャットダウンさせるなんて」
先生はあわわわと、右手の人差し指から小指までを、全部、口につっこみながら、テーブルの下から、這いだしてく。器用だ。
這いつくばって、今まさに立ち上がらんとしている俺たちの前に、タイトスカートから伸びた生足が、そびえ立つ。
くるりと、踵を返す、タンジェリンオレンジのカーディガン。黒のリクルートスーツに、リーフ・グリーンのショートブーツ。なんとなく先生に似た出で立ち。肩くらいまでのフワフワモコモコの巻き毛。この一見優しそうな女性には見覚えがあった。
「私、システム管理者の白焚です」と名刺を出した。




