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ワルコフに気をつけない  作者: スサノワ
16:底と、トグルオーガたち

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114/153

1:追跡開始 その3

2017/01/07 9:19 もう少し整えました。室温10・4℃。

2017/01/07 7:56 さらに整えました。15分くらい流し読みして、気になった所を補足。室温は9・5℃。

2017/01/07 5:06 一先ず整えました。1時間ちょっと掛かりました。室温は8・5℃。

2017/01/06 23:25 暫定です。書き上がったままです。適宜修正を入れていきます。目安一回3000文字。書き上がるまで4、5時間。室温10℃、寒くて指が動かなくなってきました。よろしくお願いします。

 彼女は、すでに、”キャリア中型(中ボス)免許(ライセンス)”所持者だ。

 新たな機能(クラス)の実行権限を手にした以上、VR空間内部ではもはや、別の存在と言って良い。

 鋤灼(スキヤキ)驗(シルシ)少年を、窮地(きゅうち)から救い出すことなど、造作(ぞうさ)もない。


 ―――抹茶色を、狙った光の軌跡が消える。

 彼女(・・)は”SIGN†ORGE(スキヤキシルシ)”の頭(どたま)を引っ掴(つか)み、空中へ出現した。


 ―――造作(ぞうさ)もない……というほどでは無かったようで、


 バタタダダッバタタダダダッ!

 ―――超必死だった。


「あっ! あそこ! 小鳥、居たっ!」

「撃破された(やられ)たかと思ったぜ!?」

「……何で、鋤灼(スキヤキ)……はん゛がくっつ……い゛てま゛すのっ?」

「あら、やだぁ! 本当ぉー!」


 突然空中に出現した、サイボーグ少年を追っかけて、映像空間(パーティーチャット)が上昇していく。

 これは白焚(シラタキ)女史が使っていた、配信用の映像チャンネルではない。

 キャラボイスによるチャットのため、音声ノイズの演出こそ混じらないが、性能的には格段に落ちる。設定されている”自動追尾(カメラワーク)”は、おまけ程度の物で、レスポンスはそれほどよろしくない。


 少年が見下ろす四角い映像の中。

 這いつくばるような姿勢で、少年を見あげているVRE研の面々。

 惑星ラスク地表と、地下2千メートル(弱)をつなぐ映像空間(パーティーチャット)。定格サイズの倍、厚みでいったら8倍程度、約60センチ四方の、前よりは大きく見やすい”立体的なライブ映像”。その箱型のウインドウ(・・・・・)は文字通りに、お互いの空間を見通す、全方位カメラ(・・・・・・)の役割を果たしている。


 小鳥+鋤灼少年(メジロマン)、いや、”SIGN†ORGE(サイン†オーガ)”の横腹の辺りに、引かれる補助線(レーザーサイト)。

 ロックオンマーカーが出てない以上、避けようと思えば避けられる攻撃であると予測できる。


「シ、シルシの事なんててて、知らなななないんだか、又、ズビビビッ来るよ、ズビビビビン、避(よ)け―――!」

 小鳥型NPC(試作コード65)と、同じく”新たな機能(クラス)”の実行権限を手にした、美少女型NPC(試作コード68)は、映像空間の向こうから、腕を伸ばすが、届くわけはない。

 ズビビビッというのは、レーザーサイトに沿って放たれる、光エネルギー弾の事だ。

 ズビシシシシシシシシシシュンンン!

 放たれた紫色の強い(コヒーレント)光。宙を舞う抜けた羽根を一瞬で焼却し、遠くのドーム状の膜のような天井の一部を爆発させた!

 ドドドドドドォォォォォォォォォォンッ!

 爆発の上の方には、最初に小鳥を狙った一発目(・・・)が開けた巨大な穴が開いている。


「なんだ!? コウベじゃなくて、小鳥っ!? 俺、どうやって助かった!?」

 頭(どたま)を掴まれ、ジタバタしながら、落ちていくサイボーグ。

 頭上(てっぺん)に羽ばたく鳥を従えた姿は、神々しくも、マヌケにも見える。

 蒼いトグルオーガ(NPCコマウシ)に吹っ飛ばされて気絶した、コウベを空中で支えた、小鳥の超頑張り(・・・・・・・)。しかも、今度は”中ボス(・・・)資格”付きだ。

 猛烈な羽ばたきをみせ、一瞬、空中に静止してみせる小鳥。

 だが、いくら資格を持ったところで、所詮、小鳥は小鳥でしかなかった。

 再び、抹茶色の小さな小さな羽根を、大量に舞い散らせ、―――落ちていく。


 ズビシシシシュン!

 不意に落下する動きで、奇跡的に光弾を避けた。

 ズビシシシシュン!

 もう一度、避け、―――加速するままに落下していく、小鳥+鋤灼少年(メジロマン)。


 走り回る、先行した方の敵性機械(マシンエネミー)が巻き起こす土煙で、直下は視界ゼロ。

 抜け散り痛んでしまった羽根。少年の灰色髪も、鳥脚でクシャクシャ。

 そして、落下する軌道を予測算出するための(・・・・・・・・・)情報は、必要十分に揃っている。

 少年と一緒に補助線(レーザーサイト)は落ちていく(・・・・・)。


「小鳥ちゃぁん! がぁんばってぇー!」

 コウベの隣、映像空間からはみ出すほどに、顔をつきだしている特別講師(猫耳ヒューマノイド)。

「ピピュイ♪ ピピュイ♪ ピピュイ♪」

 米沢首《ヨネザワコウベ》は、流暢(りゅうちょう)な口笛で鳥の鳴き真似を披露する。

 これも、”中ボス”獲得により開花した、新たな技能(クラス)、なのかもしれない。

 小鳥の眼が真っ赤に光り、羽根をハチ鳥のごとき高速で、羽ばたかせた。


 ブププゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!

 数瞬、時間にして、4秒。

 ホバリングし、僅(わず)かに上昇すらしてみせるが、―――すぐに力つき、拡散する土煙の中へ落ちていく。


 どたん!

 うおわっ!?

「「「「「!?」」」」」


 上ってきた映像空間と、サイボーグの眼が合う。


「鋤灼(スキヤキ)! 大丈夫か!?」

 ドズズズムン!

 ドドドドズズズムムムン!

 それは直下に走り込んで来ていた敵性機械(マシンエネミー)に偶然(・・)着地したサイボーグが、口の端を歪めているだけの、余裕のない姿だった。

 しかも頭の上に鳥。プークスクスクスッ!

 成人女性コンビが折れ曲が(ツボに入)る。


「俺、コイツに踏みつぶされたはずじゃ!?」

 我に返る、”SIGN†ORGE(サイン†オーガ)”。

「プーッ! た、たぶんー、小鳥ちゃんの中ボスとしての新しい力(クラス)で、鋤灼(スキヤキ)君のー座標に一回飛んだんじゃないかしらー!? ……クスクス」

「プークス、……鋤灼(スキヤキ)はん゛、……鳥さん、頭に乗っけて……えっらい……カワ゛イイどすなあ……プーッ」


 ピッピッピチュイッ♪

 小鳥は少年の肩に飛び降りた。

「ふ、ふんっだっ! 小鳥の”イベント演出用(エリア内)ファストトラベル(極短距離電送)”はもう残数ゼロだかんね。し、しぃーらないんだかんね!」

 ふてくされつつも、チラチラ横目で心配顔をみせる美少女NPC(ヨネザワコウベ)。

 チィーーーーーーーーーッ。

 言うが早いか、少年の心臓付近(みぞおち)を通過し、眉間へ停止する、細い線(レーザーサイト)。


「鋤灼(スキヤキ)はん゛! ……お゛でこ、狙゛われてま゛っっせ!?」


 少年は、肩からポロリと落ちた、ボロボロの小鳥を、後ろ手で受け取る。そして、もう片方の手で、個人用金庫(インベントリ)を開いた。


 ズビシシシシシシシシシシュンンン!

 紫色の光弾が、避けた少年を掠(かす)めた。

 背後で、爆発する巨木の天辺(てっぺん)。映像空間の中から、それを振り返ってる魔女っ娘(カタナカゼ)。

 横方向(歩き)への予測演算も、完了したらしい。驗(シルシ)少年の、避ける歩幅にあわせて、補助線(レーダーサイト)が追従する。逃げ場は無い。


 ズビシシシシュン!

 手にしていた円盤を、顔の前にかざした。

 光エネルギー弾とは言っても、光の速度で飛んでくるわけではない。前もって予備動作に入っていれば、ある程度までは躱(かわ)せる、ゲーム用の速度。

 少年は、仰け反った。

 ギュガッッッッッンン!


 その、大きな反動を伴う爆発。あまりにも巨大な火花。

 少年に逸(そ)らされた、6割程度の残光が、斜め後ろの膜(ドーム)に散らされる。

 ドボボボボボボボボボボゥンッ!

 連続的な小爆発は広範囲にわたり、膜(ドーム)の一角を崩落させ(パージし)た。


「痛っってー! けど、円盤(コイツ)の使い道、有った」

 少年は小鳥を庇(かば)いながら、背後に倒れた。


「おい、大丈夫か! ソレ方式で逸(そ)らせ!」

「そうね、まともに全部(・・)喰らうと消し炭になるわよ!」

「ギュギギギギギュ!」

 映像からオデコを突き出し、言葉にならない声(怪音)を発する美少女NPC。


「ザザザッ―――あー、ソレ(・・)、なんだかわかりましたよ。敵性機械(マシンエネミー)の類(たぐ)いでは無いでーす。惑星システム由来の、”空間リサイクルマシン:阿吽(あうん)號(ごう)”ですね。とりあえず、要らなそうな物を片っ端から真っ平らにしますよ」

 白焚(シラタキ)女史の、冷たくも動じていない、ある意味、のんきな声が、全員に届く。

 俺達ゃ、要らん子か、ビビジュイ♪

 抗議の意を示すものの、小鳥も驗(シルシ)も撃破寸前。空中に浮かぶHPゲージは真っ赤だ。

 しばらく、照準(レーザーサイト)が、自動機械(自分)の片割れの自動機械(吽號)へ向けられていたが、角度的に小鳥+鋤灼少年(メジロマン)に到達しないと判断したようだ。

 光線兵器による攻撃を打ち切り、自動機械(阿號)へ接近を始めた。


「惑星システムってぇー、あのぉー、取説だけでぇー100T(テラ)B《バイト》の……」

「あ、あ゛ー、……あれどすか……ぬぐぐぐむぐ……」

 成人女性コンビが遠い眼をし出す。


「惑星システムの生物進化構造の一部(・・・・・・・・・)。主に、”負の選択”を担(にな)っていますね」

 女史の変わらない、どこか冷めたような声を、聞いていたシルシ少年は、円盤を腹の上に置いて、その上に小鳥を放してやった。


「負の選択ってなんだぜ?」「アタシ知ってるっ! ”進化圧”とかいうやつでしょ!?」


「それ゛を言うなら、……”淘汰圧”どが……”選択圧”どずな゛」


「”初期フロア”にも、”正の選択(・・・・)”を……担(にな)う空間リサイクルマシン居ますよー? 非公開な情報ですので、一応オフレコでー」

 軽薄さも感じる冷めた声。”実働部隊(・・・・)”を指揮しているのか、作業しながらの声。余計に気もそぞろっぽいが、情報的には”非公開”な事まで公開してくれている。笹木特別講師(猫耳ヒューマノイド)は、手元でメモのような物を取っている。流石に、”音声(ボイス)メモ”は控えている。


「そんなの居たかな?」

 ピピピチュ?

 少年は、小鳥の言葉が解るわけではない。

 それでも、ニュアンス的に、意志の疎通(そつう)が図(はか)られているようだ。

 その様子を映像空間の中から見下ろして、コウベはドコからか取り出したハンカチを、激しく噛みだした。ギリギリギリギリッ。どこから覚えてくるのかは、解らないが、確実に行動パターンが豊かになっている。

 時折、頭上にまたたく、HUDによると、

『たこ焼き大介作成:米沢首(ヨネザワコウベ)Ver:3・1.13ー㊥』

『たこ焼き大介作成:小鳥(コトリ)Ver:2・8.7ー㊥』

 いつの間にか大幅に、メジャーバージョンアップがされている。

 ㊥(中マーク)ってのは、”キャリア中型(中ボス)免許(ライセンス)所持”を表す記号であると思われ。


「鋤灼(スキヤキ)君には朗報ですね。V.R.IDの再発行しなくても、良くなりましたよ?」

「えぇー? どう言うぅことですかぁ?」

 何か、ゴソゴソと装備の換装をしながら、猫耳ヒューマノイドが、映像空間の中で聞いている。


「機能(クラス)検索したんですが、”空間リサイクルマシン”は、基本的に惑星表面上での運用を目的として設計開発された為、飛行機能(クラス)がありません。地表の”惑星管理センター”から出発した以上、どこかから惑星内部に入り込んだ(・・・・・)と思われます」


「そ、それわ゛……よござん゛……したな゛ぁ」

「何かもう、聞いてばっかりだけど、どういうこと?」「どういうことだぜ?」


「ソコ(・・)までぇー、ずーっと地ならし(・・・・)してぇー、歩いて行ったぁ訳だからぁー、歩いてぇー地表まで(・・・・・・・・・)戻ってこれる証拠(・・・・・・・・)ですよぉー」


「あーそういう事ね」「なるほどだぜ」

 納得する、威勢の良い海賊声。そして、生意気な魔女っ娘声。


「へー、どのみち、何とかして地表まで戻るつもりだったから、朗報朗報。じゃー俺はどうすっかな」

 ヘラヘラっとした合成音声。

「しばらくそうして隠れてれば、”空間リサイクルマシン”は、通常タスクの周囲巡回へ戻ると思われますが」

 冷たい感じもする事務的なシラタキ声。

 

「とりあえず、このまま通信衛星役に徹しまーす、あと、よろしく」

 立ち上がれば、また撃たれ無いとも限らない。

 少年は、個人用金庫(インベントリ)から、針金を取り出した。

 ピッピッピューイ♪

 小鳥は、上空を向いた針金頂点に飛び乗り、周囲の索敵(さくてき)を開始する。既に連携が出来ている。なかなかの名コンビかもしれない。


 映像の中のコウベは、ハンカチを噛み、引き裂いた。

 その背後から忍び寄る、越後屋兼、悪代官(たこ焼き大介)。

「コウ゛ベ、あん゛たはん゛、……ここらで良゛いとこ……見せて置きま゛へん゛と、……シルシはん゛、小鳥に……取られ゛てしま゛……いま゛すな゛ぁ?」

 に゛ひひひ。巨漢のB級映画のクリーチャーは下卑《げび》た笑みを浮かべる。


「ほらいくよ! さっさと、アイツ等とっ捕まえて、シルシにプレゼントしてやるんだかんね―――」

 ジジッ! ドゴゴォォォン!

 ぬおうわぁぁぁぁっ―――!

 魔女っ娘(カタナカゼ)の手を掴んで、急加速。2歩目から電磁加速(リニア)全開、一気に映像空間(視界)から消えた。


「歌色(カイロ)さん、……何、焚(た)きつけてんのよ?」

「取りあ゛えず、……鬼のNPCさん゛達と、……大立ち回り゛して……もら゛うのに、発破(はっぱ)゛……かけてみ゛たの゛やけど……」

 映像の中、巨漢の背後に控える猫耳メイドさんが、ジト眼で猫耳ヒューマノイドの動向を探るように凝視している。

 その視線の先、猫耳ヒューマノイドは、換装した装備の動作チェックを始めた。

「発っ破ぁ……効きすぎまぁしたぁねぇー。うふふふふぅー」

 朗らかで舌っ足らず、やや合成音声(マシンボイス)。


 その声を聞きながら、少年はあくびをして、眼を閉じた。

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