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ワルコフに気をつけない  作者: スサノワ
16:底と、トグルオーガたち

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113/153

1:追跡開始 その2

2017/01/01 10:06 更に少し整えました。

2017/01/01 6:19 文体など整えました。

2017/01/01 4:14 寒い。指が動きません。痛い。やや、暫定気味ですが、よろしくお願いします。

「ごれは、あでえ……の設計ながら、……図に乗っでる(・・・・・・)……のとちゃい゛ますか?」

 少年は身体を起こし、画面の隅に映ってる顔面骸骨の巨漢(コウベカイロ)を見つめる。泡立つような途切れ声。悪夢の処刑人のオリジナル音声(キャラクターボイス)は、オドロオドロシくて、姿形(VR外装)に合っている。


「うーん。仮にも、伝説級(モノケロス)に挑んで、勝って見せたのは本当だからねー。わからんでもないけど」

 三角帽が時代がかる軍服の上から、作り物のような筋肉を、見せつける海賊っぽいの。声は勇ましく男らしい声質。語り口調も颯爽(さっそう)とした海の男を連想させる。口調の隅(すみ)に、16歳の禍璃(なかみ)が、チューブ入りのワサビでいったら2センチくらい、にじみ出ている。元から男勝りの低音(コントラルト)なので、それほど違和感は無かったが。


「まあ、コウベの基本戦闘アルゴリズムは、禍璃(マガリ)のランキング戦が元になってるって話だし、尊大(そんだい)な態度がにじみ出てても、オカシくはねえぜ?」

 背中から大剣を引き抜く、禍璃(マガリ)の外装”海賊マッチョ”。

 それを長大な魔法杖(レクティファイア)で弾(はじ)く、小柄な美少女魔法使い。中身は刀風(カタナカゼ)だし、特にキャラを演じていないので、やたらと擦(す)れた、ハスッパな女の子にしか見えない。


「じゃあ、まあ、俺は俺で、地表に戻る方法を探ってるウチに、ナンカに出くわせば、即リタイアって事だな」


 途中に入った、白焚(シラタキ)女史の解説によれば、中ボスクラスは、一般のNPCと違って、有る程度の裁量特権が与えられるという事だった。

 その中の一つに、限定的ながらも、”エリア間電送(ファスト・トラベル)が可能になる”というのがあった。これは各種イベント演出上の必要が生じるため、すべての”中ボス(資格所持者)”が出来るようになるって話。

 それと、”従属・操作系の魔法スキル”への抵抗力(・・・)が付き、敵に操られることは殆ど無くなる。LVが高くなれば、上位種のボスに刃向かうことも出来るそうだ。


「俺は低レベル(落ち目)のボスモンスターか」

 外見だけは美少女な”コウベ”に、逃げられたサイボーグ少年が、項垂(うなだれ)れる。

「扱い゛は、……同じどす゛な゛。……元気出しでえな゛」

 映像越しに、厳つい細身の体軀から、優しい言葉が投げかけられた。



   ◇◇◇



「どのルートを通って、あいつ等、ジャンプゲートに向かってるか解るんか?」

 生意気な女の子の声が、問う。


「ザッ―――それに付いては、考えがあります」

 シラタキのシラタキ声。


 全員のデバイスから同時に、着信音がなった。

 ピ♪

「運営ぇー、からでぇすねぇー」

 ピ♪

「運営からね」

 ピ♪

「運営から゛……どすなあ゛」

 ピ♪

「運営からだ」

 ピ♪

「お? 何か、プロダクトコードが、送られてきたぜ!?」


「なんだよ、アタシと小鳥には無いのか」

「ワタシにも、無いコフにゃ」

 ファッ―――!?

 意識外(くびすじ)からの声に、飛び上がるコウベ。

 猫耳メイド(ミミコフ)は、猫耳ヒューマノイド(ササキワオン)と、殆ど同じ音声ライブラリ(こえ)だった。それでも、何とか区別が付いたのは、ヒューマノイド(ワオン)の方が、わずかに合成音声《マシンボイス》だった為だ。


 コウベの背後、人サイズになったミミコフが、ひっそりと控えている。

 なんだよ、おとなしいぜ。

 そうね、また何かワルいものでも食べたのかしら?

 ワルさぁん。おっきくてもかわいいー!

 大きめな画面の中で、抱きつこうとする、環恩(ワオン)から一瞬で飛び退く、戦闘態勢の猫耳メイドさん。

「同じサイズなら、引けを取ることは、無いコフに゛ゃーっ!」

 やや、口角(こうかく)があがっている。

 こちらも、さっきまでとは打って変わって、図に乗っているようだった。

 右手には”◯✕銃(シューター)”。

 左手には30センチ程度の真っ赤なエビ。ゆでエビ(・・・・)は調理済みにもかかわらず、生意気にハサミをガチガチと鳴らしている(・・・・・・)。

 別に、心配するほど大人しくも無えぜ。そうね、メイドさんを気取ってただけみたいね。


「……そっち、楽しそうだなー」

「おう、鋤灼(スキヤキ)イジケんなよ」

「そうよ、この際だから、アンタ、その、謎のマイナス2000メートル階層、探検でもしてみたら?」

「それは……よ゛ござんすな゛」

「いいわねぇー。その情報はぁ結構なぁ資産価値がぁ見込めますよぉうー」


 ポコポコポコポコポコン。

 一斉に解凍され、出現した物体が、床に落ちた。

 チャリチャチャリリボソソッリーーン♪ 。

「なんだぜ? 曲がった針金?」

 それは棒レンチの様な形状の針金だった。それが各2本ずつ。

 ボソソッてのは、”サイボーグ”、いや、”サイヴォーグ(CYBORG):スキヤキシルシ(SIGN†OGRE)”が居る広場の地面が、ボソボソしてるから。

 鉄板張りの未来公園と違って、とても金属音なんて出ない。

 質感としては、”段ボール?”とか、”硬いパン?”とかみたいな。

 何か、重石(おもし)でも載せられたんだろうか?

 カサつく地面を、拾った金属棒で、ガサリガサリと、引っ掻(か)いてみてるサイヴォォーグ!


「音声入力ぅ」「H゛ELP゛」

 社会人勢が取説を開く。


『探査用(たんさよう)ダウジングロッドの使い方』

 1:両手に持って探したい対象を選択、又は入力してください。

 2:ロッドが動いて停止するまでお待ちください。

 3:対象の居る方向が数値化・記録されます。

 ※量子サーバー上の物理的な位置アドレスから、VR空間上のエリアを、逆探知する機能があります。


「ふーん。どういうこと?」

 探査棒(ダウジングロッド)を拾った手を、腰に当てる厳(いか)つい海賊。

「ザザッ―――これを使用すると、対象NPCが居る方向が記録されます」

 ノイズ演出混じりで、返答する管理運営、白焚畄外《シラタキルウイ》女史。


「ひょっとして、大人数で、これやると、三角測量の要領で追跡できるんじゃねえかだぜ?」

「ザッ―――はい。刀風(カタナカゼ)君、正解!」


「お? まだ、そんなに引き離されてないぜ!?」

 早速、映像空間の中で、魔法少女が、ハリガネを両手に持ってはしゃいでる。

「俺も俺も」

 マネをしたがるお年頃。驗(シルシ)少年も、ハリガネを手に持って、表示された10個弱のプリセットの中から、蒼い牛のような鬼を指先で選んだ。


 ぐぐぐっぐっ!?

 探るように、ユラユラした後で、急激に上空を指し示す。

 ある程度、手先に自動的にフィットしてくれるため、取り落とさずに済んだ。


 ヴュパパパパッ!

 グラフィカルな探査結果が、大量に開かれると同時に閉じていく。

 2秒ほどすると、表示は球状のグラフ1個と、2つの座標軸と、方角を表すベクトル表示(やじるし)だけになった。


「それにしても、……妙に詳細まで……探知できて……ますなあ」

 球状グラフ上に、大きく拡大される、区画(エリア)、だけでなく、1メートルごとの移動まで視覚化されている。


「この精度って、なんか、GPSみてえじゃね?」

 ピッピチュイ♪

 サイボーグ少年が小鳥と会話している。

 映像の中で、ふんっだ! シルシの事なんて、知らないんだかんねっ!

 とそっぽを向く、中ボス所持NPC(ヨネザワコウベ)。

 ソレを横目で見る、細身の巨漢。ソレを背後から見つめる猫耳メイドさん。

 ソレをその又、背後から見つめつづける、猫耳ヒューマノイド。

 ソレを熱い眼差しで、見つめる魔法少女。

 ソレを睨み付ける、三角帽の海賊。


「あ、鋤灼(スキヤキ)君がぁ、通信(GPS)衛星の役割をぉー果たしてくれてるっ!?」

 我に返った、猫耳ヒューマノイドが、舌っ足らずな声を出した。

 2000メートル(2キロ)の距離を持つ、垂直に近い角度差は、超高解像度で追跡できる武器となる。


「そりゃ、鋤灼(スキヤキ)ー! 責任重大だぜ! コッチがあいつ等に追いつくまで、なんとか、生き延びてくれ!」

 再接続(リダイブ)すれば、済む話ではあるが、”クエスト扱いで得られる便宜(べんぎ)”ってのが、まだ何だか解っていない。だから、余計に。そう言われてしまうと、驗(シルシ)としても、長持ちしなければと、身構える。


 そして、身構えた途端にギャーーーーッ! ゲッゲッゲッゲ! ドスンドスンドズズズズズムン!


 バギャバギャメキメキメキッ!

 驗(シルシ)少年の背後、開けた空間の向こう。

 ジャングルの、大木が次々となぎ倒されていく。逃げ惑う動物NPCたちの声は木々の倒れる音で、聞こえなくなった。少年は慌てて、歯車(ギア)と針金(ロッド)を個人用アイテム金庫(インベントリ)へ仕舞った。

 バギバギリドズズズンドズズズズンッ!

 そして、少年タイプサイボーグ(SIGN†ORGE)は、迫り来る振動と反対方向へ走った。


 驗(シルシ)の頭の上から、飛び上がる小鳥。

 一直線に上昇してい(のぼって)く抹茶色。

 ビビジュジュイ?

 なんか、疑問系。ハッキリしない鳴き声。少年は走りながら、肩越しにおそるおそる振り向いた。


 バギバギバギギギッ!

 ドズズズムン!

 広場の縁の巨木を、なぎ倒して登場したのは、

 ―――巨大な、それはそれは巨大な、―――”自動機械”だった。


 形状としては、三叉歩道橋で見かけた奴に似ているが、その角という角に、鋭利な突起が突きだしていて、”おう、やったるでっ!”感が凄かった。

 驗(シルシ)の前を飛ぶ”映像空間”から、一同が覗き込んだ。


「きゃあーーーーーっ、鋤灼君ーーー!」

「「鋤灼ー!」」「鋤灼……はんっ!」

「シ、シルシの事なんてて、知らないんだか、かんね」

「にゃっ? コフ?」


 ビカビカビカッ! ゴゴゴゴッゴゴッ!

 自動屋台(ディナーベンダー)騒動の時に、”緩衝エリア”で見た、巨大化した”自動屋台(ディープコピー)”。

 アレと同じくらいの高さが有って、左右に2つ(・・・・・)付いた、怪光を発する目玉(カメラアイ)部分は、”赤点號(レッド・ノード)”みたいな感じにも見える。その哮(たけ)る光の奔流(ほんりゅう)と共に、巨大なパーツが稼働する作動音が放たれる。

 ゴウンゴウンゴウンゴウングオォォォォォォンッ!

 キャタピラや、もっとSF的な移動方法では無かった。

 何本脚か解らないが、接地する脚が起こす振動が断続的に発生している。

 ドズズズズムン!

 ドドドドズズズムムムン!


 鋤灼驗(スキヤキシルシ)の側には、実戦力となるコウベもワルコフも(みかたは)居ない。

 この”自動機械”そっくりな機械(の)が、そのままの姿(・・・・・・)で、押し迫ってきてくれたならば、このポンコツスキル持ち(・・・・・・・・・)の驗(シルシ)ボーグに限って言えば、まだ戦いようがあった(・・・・・・・・)かもしれない。


 眼(カメラアイ)と眼(カメラアイ)の間に閃光が走り、左右に歩いて行く(・・・・・・・・)自動機械、いや、敵性機械(マシンエネミー)。


 それぞれ、1つの眼(カメラアイ)を持つ敵(・)になった。分離して脚の生えた、インゴットのような姿になったのだ。

 それまでの、巨大さに見合った、それなりの巡航速度を、慣らし運転だったかのように、追い抜いていく左眼側の巨大な敵性機械(マシンエネミー)。

 ”脚の生えた巨大なオフィスビル”に追いかけられるサラリーマン。

 そんな風刺が効いていたのも一瞬で、驗(シルシ)ボーグは、スグに土煙に呑み込まれた。未だに直接撃破数ゼロの、”LV7”には荷が重すぎる。


 右眼側の敵性機械(マシンエネミー)は、更に高く高く上昇していく、小さな小さな抹茶色に、光の補助線(レーザーサイト)を引いた。



   ◇◇◇



 作戦テーブル上で、慌てふためく女史の、操作の手を逃れている一番端っこ。出しっ放しの赤い縦長表示(パネル)。最上段には白文字で、こう書かれている。

 『本日発行可能な”キャリア中型免許(ライセンス)”:残り(・・)___00ライセンス(・・・・・・・)』

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