1:追跡開始 その2
2017/01/01 10:06 更に少し整えました。
2017/01/01 6:19 文体など整えました。
2017/01/01 4:14 寒い。指が動きません。痛い。やや、暫定気味ですが、よろしくお願いします。
「ごれは、あでえ……の設計ながら、……図に乗っでる……のとちゃい゛ますか?」
少年は身体を起こし、画面の隅に映ってる顔面骸骨の巨漢を見つめる。泡立つような途切れ声。悪夢の処刑人のオリジナル音声は、オドロオドロシくて、姿形に合っている。
「うーん。仮にも、伝説級に挑んで、勝って見せたのは本当だからねー。わからんでもないけど」
三角帽が時代がかる軍服の上から、作り物のような筋肉を、見せつける海賊っぽいの。声は勇ましく男らしい声質。語り口調も颯爽とした海の男を連想させる。口調の隅に、16歳の禍璃が、チューブ入りのワサビでいったら2センチくらい、にじみ出ている。元から男勝りの低音なので、それほど違和感は無かったが。
「まあ、コウベの基本戦闘アルゴリズムは、禍璃のランキング戦が元になってるって話だし、尊大な態度がにじみ出てても、オカシくはねえぜ?」
背中から大剣を引き抜く、禍璃の外装”海賊マッチョ”。
それを長大な魔法杖で弾く、小柄な美少女魔法使い。中身は刀風だし、特にキャラを演じていないので、やたらと擦れた、ハスッパな女の子にしか見えない。
「じゃあ、まあ、俺は俺で、地表に戻る方法を探ってるウチに、ナンカに出くわせば、即リタイアって事だな」
途中に入った、白焚女史の解説によれば、中ボスクラスは、一般のNPCと違って、有る程度の裁量特権が与えられるという事だった。
その中の一つに、限定的ながらも、”エリア間電送が可能になる”というのがあった。これは各種イベント演出上の必要が生じるため、すべての”中ボス(資格所持者)”が出来るようになるって話。
それと、”従属・操作系の魔法スキル”への抵抗力が付き、敵に操られることは殆ど無くなる。LVが高くなれば、上位種のボスに刃向かうことも出来るそうだ。
「俺は低レベルのボスモンスターか」
外見だけは美少女な”コウベ”に、逃げられたサイボーグ少年が、項垂れる。
「扱い゛は、……同じどす゛な゛。……元気出しでえな゛」
映像越しに、厳つい細身の体軀から、優しい言葉が投げかけられた。
◇◇◇
「どのルートを通って、あいつ等、ジャンプゲートに向かってるか解るんか?」
生意気な女の子の声が、問う。
「ザッ―――それに付いては、考えがあります」
シラタキのシラタキ声。
全員のデバイスから同時に、着信音がなった。
ピ♪
「運営ぇー、からでぇすねぇー」
ピ♪
「運営からね」
ピ♪
「運営から゛……どすなあ゛」
ピ♪
「運営からだ」
ピ♪
「お? 何か、プロダクトコードが、送られてきたぜ!?」
「なんだよ、アタシと小鳥には無いのか」
「ワタシにも、無いコフにゃ」
ファッ―――!?
意識外からの声に、飛び上がるコウベ。
猫耳メイドは、猫耳ヒューマノイドと、殆ど同じ音声ライブラリだった。それでも、何とか区別が付いたのは、ヒューマノイドの方が、わずかに合成音声だった為だ。
コウベの背後、人サイズになったミミコフが、ひっそりと控えている。
なんだよ、おとなしいぜ。
そうね、また何かワルいものでも食べたのかしら?
ワルさぁん。おっきくてもかわいいー!
大きめな画面の中で、抱きつこうとする、環恩から一瞬で飛び退く、戦闘態勢の猫耳メイドさん。
「同じサイズなら、引けを取ることは、無いコフに゛ゃーっ!」
やや、口角があがっている。
こちらも、さっきまでとは打って変わって、図に乗っているようだった。
右手には”◯✕銃”。
左手には30センチ程度の真っ赤なエビ。ゆでエビは調理済みにもかかわらず、生意気にハサミをガチガチと鳴らしている。
別に、心配するほど大人しくも無えぜ。そうね、メイドさんを気取ってただけみたいね。
「……そっち、楽しそうだなー」
「おう、鋤灼イジケんなよ」
「そうよ、この際だから、アンタ、その、謎のマイナス2000メートル階層、探検でもしてみたら?」
「それは……よ゛ござんすな゛」
「いいわねぇー。その情報はぁ結構なぁ資産価値がぁ見込めますよぉうー」
ポコポコポコポコポコン。
一斉に解凍され、出現した物体が、床に落ちた。
チャリチャチャリリボソソッリーーン♪ 。
「なんだぜ? 曲がった針金?」
それは棒レンチの様な形状の針金だった。それが各2本ずつ。
ボソソッてのは、”サイボーグ”、いや、”サイヴォーグ:スキヤキシルシ”が居る広場の地面が、ボソボソしてるから。
鉄板張りの未来公園と違って、とても金属音なんて出ない。
質感としては、”段ボール?”とか、”硬いパン?”とかみたいな。
何か、重石でも載せられたんだろうか?
カサつく地面を、拾った金属棒で、ガサリガサリと、引っ掻いてみてるサイヴォォーグ!
「音声入力ぅ」「H゛ELP゛」
社会人勢が取説を開く。
『探査用ダウジングロッドの使い方』
1:両手に持って探したい対象を選択、又は入力してください。
2:ロッドが動いて停止するまでお待ちください。
3:対象の居る方向が数値化・記録されます。
※量子サーバー上の物理的な位置アドレスから、VR空間上のエリアを、逆探知する機能があります。
「ふーん。どういうこと?」
探査棒を拾った手を、腰に当てる厳つい海賊。
「ザザッ―――これを使用すると、対象NPCが居る方向が記録されます」
ノイズ演出混じりで、返答する管理運営、白焚畄外女史。
「ひょっとして、大人数で、これやると、三角測量の要領で追跡できるんじゃねえかだぜ?」
「ザッ―――はい。刀風君、正解!」
「お? まだ、そんなに引き離されてないぜ!?」
早速、映像空間の中で、魔法少女が、ハリガネを両手に持ってはしゃいでる。
「俺も俺も」
マネをしたがるお年頃。驗少年も、ハリガネを手に持って、表示された10個弱のプリセットの中から、蒼い牛のような鬼を指先で選んだ。
ぐぐぐっぐっ!?
探るように、ユラユラした後で、急激に上空を指し示す。
ある程度、手先に自動的にフィットしてくれるため、取り落とさずに済んだ。
ヴュパパパパッ!
グラフィカルな探査結果が、大量に開かれると同時に閉じていく。
2秒ほどすると、表示は球状のグラフ1個と、2つの座標軸と、方角を表すベクトル表示だけになった。
「それにしても、……妙に詳細まで……探知できて……ますなあ」
球状グラフ上に、大きく拡大される、区画、だけでなく、1メートルごとの移動まで視覚化されている。
「この精度って、なんか、GPSみてえじゃね?」
ピッピチュイ♪
サイボーグ少年が小鳥と会話している。
映像の中で、ふんっだ! シルシの事なんて、知らないんだかんねっ!
とそっぽを向く、中ボス所持NPC。
ソレを横目で見る、細身の巨漢。ソレを背後から見つめる猫耳メイドさん。
ソレをその又、背後から見つめつづける、猫耳ヒューマノイド。
ソレを熱い眼差しで、見つめる魔法少女。
ソレを睨み付ける、三角帽の海賊。
「あ、鋤灼君がぁ、通信衛星の役割をぉー果たしてくれてるっ!?」
我に返った、猫耳ヒューマノイドが、舌っ足らずな声を出した。
2000メートルの距離を持つ、垂直に近い角度差は、超高解像度で追跡できる武器となる。
「そりゃ、鋤灼ー! 責任重大だぜ! コッチがあいつ等に追いつくまで、なんとか、生き延びてくれ!」
再接続すれば、済む話ではあるが、”クエスト扱いで得られる便宜”ってのが、まだ何だか解っていない。だから、余計に。そう言われてしまうと、驗としても、長持ちしなければと、身構える。
そして、身構えた途端にギャーーーーッ! ゲッゲッゲッゲ! ドスンドスンドズズズズズムン!
バギャバギャメキメキメキッ!
驗少年の背後、開けた空間の向こう。
ジャングルの、大木が次々となぎ倒されていく。逃げ惑う動物NPCたちの声は木々の倒れる音で、聞こえなくなった。少年は慌てて、歯車と針金を個人用アイテム金庫へ仕舞った。
バギバギリドズズズンドズズズズンッ!
そして、少年タイプサイボーグは、迫り来る振動と反対方向へ走った。
驗の頭の上から、飛び上がる小鳥。
一直線に上昇していく抹茶色。
ビビジュジュイ?
なんか、疑問系。ハッキリしない鳴き声。少年は走りながら、肩越しにおそるおそる振り向いた。
バギバギバギギギッ!
ドズズズムン!
広場の縁の巨木を、なぎ倒して登場したのは、
―――巨大な、それはそれは巨大な、―――”自動機械”だった。
形状としては、三叉歩道橋で見かけた奴に似ているが、その角という角に、鋭利な突起が突きだしていて、”おう、やったるでっ!”感が凄かった。
驗の前を飛ぶ”映像空間”から、一同が覗き込んだ。
「きゃあーーーーーっ、鋤灼君ーーー!」
「「鋤灼ー!」」「鋤灼……はんっ!」
「シ、シルシの事なんてて、知らないんだか、かんね」
「にゃっ? コフ?」
ビカビカビカッ! ゴゴゴゴッゴゴッ!
自動屋台騒動の時に、”緩衝エリア”で見た、巨大化した”自動屋台”。
アレと同じくらいの高さが有って、左右に2つ付いた、怪光を発する目玉部分は、”赤点號”みたいな感じにも見える。その哮る光の奔流と共に、巨大なパーツが稼働する作動音が放たれる。
ゴウンゴウンゴウンゴウングオォォォォォォンッ!
キャタピラや、もっとSF的な移動方法では無かった。
何本脚か解らないが、接地する脚が起こす振動が断続的に発生している。
ドズズズズムン!
ドドドドズズズムムムン!
鋤灼驗の側には、実戦力となるコウベもワルコフも居ない。
この”自動機械”そっくりな機械が、そのままの姿で、押し迫ってきてくれたならば、このポンコツスキル持ちの驗ボーグに限って言えば、まだ戦いようがあったかもしれない。
眼と眼の間に閃光が走り、左右に歩いて行く自動機械、いや、敵性機械。
それぞれ、1つの眼を持つ敵になった。分離して脚の生えた、インゴットのような姿になったのだ。
それまでの、巨大さに見合った、それなりの巡航速度を、慣らし運転だったかのように、追い抜いていく左眼側の巨大な敵性機械。
”脚の生えた巨大なオフィスビル”に追いかけられるサラリーマン。
そんな風刺が効いていたのも一瞬で、驗ボーグは、スグに土煙に呑み込まれた。未だに直接撃破数ゼロの、”LV7”には荷が重すぎる。
右眼側の敵性機械は、更に高く高く上昇していく、小さな小さな抹茶色に、光の補助線を引いた。
◇◇◇
作戦テーブル上で、慌てふためく女史の、操作の手を逃れている一番端っこ。出しっ放しの赤い縦長表示。最上段には白文字で、こう書かれている。
『本日発行可能な”キャリア中型免許”:残り___00ライセンス』




