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ワルコフに気をつけない  作者: スサノワ
15:『中ボス求む。索敵な職場です。』

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3:蘇生ランゾウ その3

2016/12/18 3:39 長くなってしまいました。この、ややこしさは、筆舌を尽くすしかないのですが、もどかしい。よろしくお願いします。

「戦闘フィールドは、上下5階層まで有るので、床が抜けたら本当に(・・・)穴あいてるし、天井が落ちてきたら、本当に(・・・)瓦礫代わりの代替物(・・・)が降って来ますよーー!」


 亀裂が到達し、マッチョ王子様の、お足下が崩落なされた。

 ―――つっっおおうりゃあぁぁぁぁぁぁっ!

 跳ぶ王子(カタナカゼ)! ポケットから短い棒(ARコントローラー)が落ち、マグマの煮立つ穴へ吸い込まれていった。


「あまりの臨場感に、つい逃げといて、助かったわっねっ!」

 宙に投げ出されながらも、飛び散る小さな瓦礫(ガレキ)を、横泳ぎのフォームで的確に蹴っていく禍璃(マガリ)は―――

 はぁぁ!

 ―――落ちていく刀風(カタナカゼ)の頭を踏み、華麗に前方へ降り立った。


 踏まれた勢いで、完全に失速したイケメンは、抱えていた最愛の特別講師を、思い切り投げた。

「重っもっ!」


「なぁんですっ―――」

 重くないですと怒る特別講師は、空中で振り向こうとして、姿勢を崩す。どったんばたり。

 受け取ろうとして、一緒に倒れ込む小柄な少女達を、見届けたあと、彼は、マグマの照り返す亀裂へ飲み込まれていった。

 当然、親指を立てたままだ―――刀風曜次(カタナカゼヨウジ)よ永遠なれ。

 (キャーッ、カッケー!)

 ここには居ない、気の抜けた少年声が、聞こえてきたのかもしれない。

 放たれたばかりのボウガンの矢のように、すっ飛んでいたNPC米沢首(ヨネザワコウベ)が後方を振り返る。


 環恩(ワオン)は、倒れた姿勢のまま、匍匐(ほふく)Uターン。刀風(カタナカゼ)少年が親指の先まで飲み込まれるのを、きっちりと待ってから、もう良いかしらと、亀裂の中へ手を差し出した。

 その背後、ふわっふわに広がるスカートを押さえる禍璃(マガリ)。自分のワンピースの裾が盛大に捲(まく)れたままだが、気にならないようだ。


 灼熱地獄へ堕ちた、少年は、足下を見て、それから燃えさかる炎を、ガシャガシャと蹴散らしていた。

「熱くは無えぜ、面白れー」

 炎を踏んで、登ってきた刀風(カタナカゼ)少年は、パーカーで手を綺麗に拭いてから、手を恐る恐る差し出した。その端正で整った顔が、マグマの照り返しで赤く染まっている。

「なんてスベスベした、―――子供みたいな小さな手なんだ」


「握りながら、指先で撫で回すんじゃないわよ! 気色悪い!」

 環恩(ワオン)を押しのけ、手を出していた禍璃(マガリ)。

「てめえの手かよっ! 要(い)らねーぜ!」

 フンッと手を振り払う筋肉質(カタナカゼ)は、後ろへ倒れそうになるが背筋だけで耐えた。

 彼の背後には灼熱地獄(マグマ)が広がっている。炎は作り物でも、あの、映像のどこまでが本当に落磐・陥没(らくばんかんぼつ)しているのかは判らない。


 たし、たし、たしっ。忌々(いまいま)しげに、踏みしめるような足音。

「まったく、死ぬかと思ったコフにゃ」

 環恩(ワオン)に放り投げられ、壁まですっ飛んでいった”ミミコフ”が、短い手で頭に張り付いた十字の絆創膏(ばんそうこう)を払い落としながら、亀裂近くまで戻ってくる。


 穴から這い上がってきた刀風(カタナカゼ)と、ちょうど眼の高さが合った。

「あ、ミミコフ! あとで、ちゃんと俺のゲーム返せってんだぜっ!」


「何のことかにゃコフ」

 フンと鼻であしらわれ、「てめえ」と眉間にしわを寄せた彼の、顎(あご)の辺りに、半透明の赤い三角錐(ロックオンマーカー)が現れる(ポコン♪)。


 即座に頭を引っ込めた刀風(カタナカゼ)。

 紙一重で、通過していく”狛▼丑(こま うし)”。スターバラッド準拠(じゅんきょ)の戦闘システム上、必殺技の軌道は地形変化の影響を受けない。

 青い残像を残し、幾重にも軌跡を描く超高速突進(タックル)。

 遠間で見ていたよりも、かなりの高速で、接近し遠ざかっていく、水平の双角。

 その背後、あまり熱心ではない足取りで、すたたたたと、蒼い軌跡をショートカットして追っていく、赤色のトカゲ(サラマンダー)。

 しっぽには再び、”オウガ▲▲ニャン”が囓(かじ)り付いている。


 環恩(ワオン)は、トカゲのしっぽと、足下の間を、何度も何度も視線を泳がせた後で、足下に居た”猫耳メイド《ミミコフ》”を捕まえた。


「ニャォッ―――!?」

 ぬふふふふぅー、油断ちまちたねぇー?


 環恩(ワオン)に抱えられたミミコフは、再び意気消沈。

 耳をペタリと倒し、「ご主人ーご主人ー」と力なく、歌色(カイロ)を呼び続ける。


 ゴガガガガッ!

 第一標的(カタナカゼ)に避けられた、蒼い特急は、第二標的(コウベ)へ路線を切り替えた。散乱する瓦礫(ガレキ)を粉砕しながら、ドリフト気味に突き進んでいく。


 ポポポッ♪

 第二標的の胸に追加で咲いた、赤い4つひらの大輪。

 第五標的までを、予告(ロックオン)し、全てコウベに叩き込むつもりらしい。


「もう、スタバの戦闘(バトル)システムに対応してるな! コウベの野郎は大ジョブなんか? ―――っても、まあ試験ったってゲームだし、撃破されてもロストする(死ぬ)訳じゃ無ぇーんだったぜ……」


「やーだー、もー! そんな訳無いじゃないですかー! ケラケラケラッ!」

 自棄(やけ)気味の白焚(シラタキ)女史が、宣言。


「今ここに居る、実像化しているNPC(・・・・・・・・・・)達は、撃破されたら、お終い(・・・)に決まってるじゃないですか」

 なにバカ言ってるんですか? と刀風(イケメン)の軽口を一蹴する。


「AR完全対応の”実像定位(ホロマトリクス・ローカライゼーション)”ってこれ、非公開情報だった。 ……なんて言えば……えーっと、フルスペックのリアルタイム完全ホログラフィー(実像化)の為に、NPC人格を構成する全要素(・・・)を、直接(・・)、”画素(・・)”上で走らせているのですから、当然ですよ。扱いとしては、そうですね、実行中の”別名で保存(ディーピコピー)”と同じですよ?」


「え? なんなのさー!? ”見えねー?”って何がー? ―――はぁ? ”止まれー”?、”逃げろー”?、もう、シルシうっさいよー!?」

 遠間から、おそらくは驗(シルシ)と会話している、米沢首(ヨネザワコウベ)の声が届く。


「鋤灼(スキヤキ)にも、今の話は、聞こえたみたいね」

「なんとか、鋤灼(スキヤキ)達もこっちに来れねーのかってんだぜ」

 禍璃(マガリ)と刀風(カタナカゼ)は思案する。

「えっと、ココに来るだけ(・・)なら、姉さんと歌色(カイロ)さんの道具とか全部置いてくれば良いだけの話じゃなかったっけ?」

 禍璃(マガリ)は、環恩(ワオン)の抱える、うなだれ大明神(ミミコフ)に聞いてみた。


 環恩(ワオン)は、はらはらはらはら。

 まだ崩れていない遠くの方の戦闘フィールドへ、かっ飛んでいった、コウベを心配している。心配するあまり、うなだれ大明神(ミミコフ)の頭を、しきりに良い子良い子している。

 AR物体を表現する手法として、”気圧操作による、局所的な気温コントロール”がある。謎の技術を総動員し、ミミコフの実体映像(じつぞう)に、+5℃の暖かみを与えている。笹木特別講師は、暖かい空気を境にして、抱き抱え、撫で撫でしているのだ。


 かわいいかわいいぐりぐりぐりぐり。

「ご主じ……ガクリ」抱えられた猫耳メイドは、うなだれたまま、気絶した。


「姉さん、落ち着いて。それ(・・)泡吹いてるわよ!?」

 ぐりぐりぐりぐりぐり―――うなだれ大明神改め、”気絶猫”が粛々(しゅくしゅく)と爆誕する。到底、歌色(カイロ)の言葉を、伝言できるような状態では無いのは、言うまでもない。


 ここで、白焚(シラタキ)女史の、ヘッドセットが、点滅する。

「え? 公開用の映像が、来てない?」

 作戦テーブル上の駒を、投げ捨てて、「音声入力」「赤点號(レッド・ノード):再接続(リスタート)」「バトル&キルカメラ追従(オン)」

 やはり、その口調はどこか、というか全体的に、投げやりだった。


   ◇


「あ、来た」「ほんとやな、……助かりま……したわ」

 剥き出しの、電子基盤を幾重にも接続した末端、カードスロットへ、カード型バッテリーを、今まさに差し込もうとしていた、項邊(コウベ)歌色(カイロ)は手を止めた。フーーーーッ、フーーーーッ。前髪ぱっつんの美少女は、肩で息をしている。

 見れば、環恩(ワオン)のボストンバッグの中から引っ張り出したであろう、面妖な電子パーツの数々が所狭しと並んでいる。

 映像途絶(ブラックアウト)したままの、試験会場ライブ中継を、再会させるために、何か強引な策(・・・・)を講じていた証(あかし)だ。

 隣へしゃがみ込んでいた少年(シルシ)には、具体的な”策(さく)”が、どんな物だったかは、解らないだろう。けれども、策を講じずに済んで(・・・・・・・・・)良かったと言う事だけは、専門家で無い彼(門外漢)にも、解かったようだった。彼らは、ほーーーーーーーーーーーーっっと、長い息を吐いた。


「なにか、映ったわ?」

「え、なにこれ? なんか始まんの?」

 ガヤガヤガヤヤ。

 普段は、人通りの全くないはずの、地下2階。驗(シルシ)達の背後に、人が集まり始めている。

 基本的に管理者サイドの、催し物は、おおむね大盛況で、特区と都市運営上に重要なファクターとして認知されているのだ。


   ◇


「接触したぜ!」

 刀風(カタナカゼ)が、顎(あご)で指し示した戦闘フィールドの中央。


 ゴッ―――!

 ギュルルルルラ!

 ドドドン!


 ”狛▼丑(コマ ウシ)”のタックルからのストレート!

 コウベは肩胛骨(けんこうこつ)くらいにまで、短くなってしまった、お下げを振り回し、水平に回転する。小鳥は飛び立ち、上空を旋回しだす。


 ゴッ、ゴゴッ、ドッゴン!

 水平に繰り出される3連撃、右・左・右の巨大なアームガード!

 左右にかわした直後、タイミングを計られ、最後のストレートが激突する。


 ビッチュイーッ♪

 ウルサく鳴く小鳥の、戦闘管制(バトコン)が響いて―――。

 ガチン! チッ、ピピッ♪ シュドドドドドドドドドドッ!


 ナックルガードを装填(ロード)したコウベが、受け流すと同時に、オレンジ色の爆炎を炸裂させた。


 回転するまま、右太股(ふともも)に、流れ込む環状電流(リップルスパーク)。”電磁推進(リニア)”の反発力で繰り出される膝から下(足払い)。

 巨漢が接地しているただ一点。逆算角形の下向きの頂点を、ピンポイントで蹴撃(しゅうげき)する。

 ”バトルレンダ”による、加速を加味した、下段足払いが、炸裂する。

 回転していた、火花(髪の先端)がどんどん短くなり、軸点(コウベ)に追いつく。

 ボボッボッ―――プスン!

 それは、最終コーナーを曲がった所で力尽きたワークスマシンのごとき。

 美少女を包み込んでいたキラキラした加速(エフェクト)、が消失した。

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