3:蘇生ランゾウ その4
2016/12/18 6:59 書きかけみたいな暫定ですが、取りあえず投稿しておきます。よろしくお願いします。
落ちる一対の赤いリボン。
ズゴン。
脇腹を巨大なツノで刺し貫かれる、短髪のコウベ。
ブォゴゴゴォーーーーー!
ドンッ!
SFピタピタ少女は上空へ突き上げられ、ソレを追って大ジャンプする、狛▼丑。
蒼い巨漢が肩胛骨を波だたせ、膂力を溜めていく。背負ったダイヤルがガチンガチンガチンガチンガチンと勢いを増して、攻撃力へ変換されていく。巨大なツノが、青白く燃え上がり、その先端を鋭利に尖らせた。
周囲を大きく旋回していた小鳥が、健気にも突撃を試みるが、ゴガウウウゥッ!
恫喝のような獣声、ふるえる大気。無数にばらまかれた乱気流を華麗に躱し転身する。
ポポポポポポポポポポコン♪
まだ、スタン状態のままのコウベの、胸元に咲いていく、赤いロックオンマーカー。
それは、少なくとも、あの巨大なツノで、10回分の攻撃は食らうと言うことだ。当たれば痛い。コウベのゲージ残量は7割、下手すれば即死級のコンボになりかねない。
「コウベちゃんー、逃ーげーてーーーっ!」
間近な大声に驚き、気絶状態状態から目覚める、猫耳メイド《ミミコフ》。
ギュウウウウウウウウウウウウッ!
体を表す、暖かい空気ごと、首を絞められ、猫耳メイドさんは再び、ガクリ。
うなだれる頭の上に星が現れ、クルクルと旋回する。
「避けろってんだぜ!」「起きなさいよ!」
「ビビッヂュイー♪」
落下に転じたSFピタピタコスチューム。
その僅か上空数メートル、標的に遅れて、今まさに落下体制に入る煉獄の蒼い暴力。
その引き絞られた背筋が、解き放たれようとした時。
蒼鬼の右ツノ、左ツノ、胸元に大輪の花が咲きほこった。
その色は半透明の赤―――言わずと知れた『ロックオンマーカー』だ。
『なんだ? どこから!?』
この広い試験会場中の全員が、天井や床へ眼を走らせる。
VR-STATI◎Nの地下2階や、外の街頭モニタ前の人だかりでも、おそらくは、スターバラッドの戦闘システムを理解している全員が、やや遠景の画面内を躍起になって探していることだろう。
戦闘フィールド内の、すべてを見渡しても、戦闘可能なプレイヤーもNPCも居ない。画面隅のランキング表示にも変化はない。
蒼鬼を追って行った赤蜥蜴とその尻尾狩猟中の猫は、未だに戦闘の意志はないように見える。ただ、蒼鬼を攻撃せんとしている、『何者か』の姿を捉えようと、周囲を索敵する事に一生懸命だ。
ボゴン! ドッゴゴン!
ガラララン。
天井や、天井の内部構造や、真っ白い代替物体も飛び散る。
コウベの額に小さな破片が当たる。
ガシャン! ゴッッッ!
「まーた、NPC反応!? ―――違う? 未登録プレイヤー!?」
ゴン!
自身の倍の長さにまで膨れ上がった長大なツノ。それを今まさに突き刺そうとした蒼鬼を、戦闘フィールドの地面に叩き落としたのは、―――寸胴で白い人型の頭突き。
ドガガガガガガガン!
地面へ埋まるほどに叩きつけられた青鬼。
禍々しいツノが地面に突き刺さる、その姿勢、両手両足は投げ出されていたが、まさに、エクステンデッドアーツ炸裂時と同じだった。
でっかい星が、ツノの付け根を旋回する。
シュゴーーーーーッ!
その背中へ、バーニアを噴かして、華麗な着地を決める。
真っ白な手足で上下に丸を描くようなポージング、―――宇宙軍正式敬礼が炸裂した。
「ワールさぁん!」
「あっちゃー! 出てきちゃった!」
「あれ? そしたら、このミミコフは何なんだぜ!?」
「そちら、どなたかしら? VR.I.Dが無いーーーーー!? 未登録プレイヤー!?」
作戦テーブルを操作し、何かを確認する白焚女史。
『@CLATTER_STRATEGY』
ヴゥゥン!
宇宙服の頭上に一瞬文字がチラつくが、スグに消えてしまう。
部員一同が確認する、その腰に箱は無い。
ひゅろろろれー。
打ち上げられたまま頂点をすぎ、そのまま自然落下していたコウベ。
このままでは地面に叩きつけられてしまう。
気づいた刀風達が、ダッシュするも、小鳥が急降下し、相方の頭の下へ潜り込む。そのショートカットになってしまった燃料切れを、鷲掴み。羽が抜けるのも厭わずに、凄まじい羽ばたきを見せる。激突寸前に小鳥が滞空。上下が入れ替わり、コウベの全身から踵へ流れ込むオレンジ色の環状放電。
どっごん!!
着地と同時に地面に入る亀裂。
周囲のガレキが宙に浮かんですぐ落ちる。
”重力制御”のスキルも同時に使ったらしい。
両足での”電磁加速”攻撃に耐えきれなかった床が円形に陥没し、項邊が、階下へ落ちていくが、気絶していなければ平気だろう。
駆け寄っていた刀風が、すんでの所で、横っ飛びにかわす。
小鳥は少し焦げながらも、コウベを追って大穴へ降りていった。
ぬ゛っはうぅあぁっ!!
コウベの着地の衝撃で、スタンからさめた青鬼、狛▼丑。
だが抜けない。エクステンデッドアーツの功罪、最大攻撃力を誇る代わりに、倒しきれなければ、デッドエンドだ!
宇宙服は敬礼をヤメ、攻撃するでもなく、棒立ちになった。
その直上、真っ白くテカテカしてる天井に入った大きな亀裂。その中央、危険な色の小さな箱が突き破っていて、その箱の底が、開きっぱなしになっている。
内部構造にレールのようなものが見て取れた。
カシンカシン。
箱の外まで展開していた、何かを射出した機構が元に戻っていく。
射出されたモノってのは、もちろん、寸胴な白い悪魔、ワルコフだ。
「あ、あの、その、……そうだっ―――な、何かしらぁー? あれー? う、宇宙服ぅー? か、かぁっこいいわねぇー!」
VR専門家にして、いろんな意味で凄腕の特別講師、笹木環恩さんは、全身全霊で、宣った。
彼女の実妹にして、講座受講者、笹木禍璃さんは、戦闘フィールドの隅に躍り出た環恩と合流、凄まじく美しく張りのある低音を轟かせた。
「そーうーねーぇー♪ 今まで一度も見た事なんて無いわねー♪」
「そーうーだーぜー、ましてや、VRE研に所属してなんていないぜー!」
小柄な声楽家のそばに駆け戻った、イケメンが腕を捲り、鍛え上げた肉体を華麗に見せつけながら、余計なことを付け加えた。
ヴァカ! と半回転ローキックを、お見舞いされる刀風少年。
「どうしました先生? そちらの生徒さんは、正式認証登録済みの、正式なVR.I.Dをお持ちですが、何か問題でも?」
「えぇ? ―――うちの生徒!? NPCじゃなぁい―――!?」
笹木特別講師は、飛び出す声をぐっとかみ殺して、音量を下げた。ヒソヒソヒソ。
どう言うことなの? 知るわけ無えぜ。ヒソヒソヒソ。
部内会議は、某地下2Fでも、執り行われていることであろう。ヒソヒソヒソ。
「確認にちょっと時間が掛かってしまいましたが、問題ありませんよ。ただちょっとカラーリングは、紛らわしいので、変更していただけると」
確かに、丸いバイザー部分が、明るい赤色で塗りつぶされたようになっていて、”圧”というか”験の悪さ”を醸し出していた。
すると、ワルコフの全身の表面を青白い電流が迸った。
「んっぎゃぽる!」
ビョンと飛び跳ねた後で、赤いバイザーの色が、蛍光灯が切れるときみたいに、点滅してから消えた。漆黒はVRE研の面々を魚眼に映し込んでいる。
奇声を発した宇宙服は、ブツブツと独り言を言った後で、辺りを見渡した。
背後から駆け寄ってくる、米沢首を見つけるなり、そちらへ向かって猛ダッシュ。元から自由度の無い関節で、そんな無理をすれば、転けるに決まっている。
「あれ? ワルコフじゃん。今日は落ち着き無いネ、ワルコフ神! ギャーーーッハハッ」
コウベは椎茸神ワルコフへ向かって、満面の笑みで気さくに会話する。
頭から斜めに突っ込んだ宇宙服の首のあたりに、日本語で字幕が出現した。
地面に入ったヒビに引っかかり、シタバタジタ。
宇宙服は、一呼吸開けて、邪魔な床に両拳を突き出した。
ゴッキャッッ!
反動で、上空へ飛び上がる宇宙服、どうにも挙動が安定しない。
スラスターもまるで手動操作のようで、要領を得ない。
シュゴゴゴゴッ! ジタバタジタ。
シュゴゴゴゴッ! ジタバタジタ。
シュゴゴゴゴッ! ジタバタジタ。
シュゴゴゴゴッ! ジタバタジタ。
シュゴゴゴゴッ! ジタバタジタ。
見ている面々が業を煮やし始めた頃、ガキン!
天井の不吉な箱から、アンカー状のアームが射出された。
アームは、宇宙服のバックパックをガシリと掴み、凄まじい勢いで巻き上げていく。
呆然と見上げる中、宇宙服は天井に激突し、―――
ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッッッ!
上階を崩壊させた。
わーっ! 部員全員が、白焚女史の居る高台の下にあるコンビニへ逃げ込んだ。
映像では無く、ドアの向こうに小振りな店内が、ちゃんと設えられていた。
「オウガ▲▲ニャーーーーーン!?」
刀風に肩を掴まれ、止まる環恩。
宇宙服は無事に決まってるとしても、『トグル<鬼>オーガ』勢の他の2体の身は、案じてやってはどうか。彼の眼差しは、そう言っているようにも見えた。そして、伝家の宝刀を喰らって、拗ねを押さえてしゃがみ込む。
涙目のイケメンが、大ジョブ? と大して、心配でもなさそうに聞いてきたコウベへ返答する。
「ワルのやろう、字幕出てたけど何だぜ?」
「『コウベさん、ご無事でしたか? 麗しの姫よ』だってサ。カタナカゼみたいで、超ウザかった。そんなの良いから、要らないから!」
ビピッチュチュイ♪
頭の上の小鳥も、おそらくは”要らない”という内容の囀りを投げかける。
「俺に苦情を言うな、ワルコフに言えってんだぜ」
「そうよね、ウザいわよねー」
腕組みの禍璃が、指のリングを操作して、小さな画面を見た。
「あれ? 姉さん、これ、3体のゲームキャラ、『退室によりリタイア』ってなってるわよ」
あいつ等は、いつでも出ようと思えば出られたんかな?
刀風は、ま、無事で良かったぜ、鋤灼は、トグルオーガのキャラ全部に、妙に肩入れしてっかんなー。
「―――オウガ▲▲ニャン無事なのねぇ。ほかの2体もぉ無事ならぁ、言う事無いわぁー」
安心したようで、環恩は、”猫耳メイド可愛がり”を再開した。
フギャゥ―――猫は、ひと撫でで、ガクリ。
よくもまあ、ここまで嫌われたものだ。イケメンと小柄な少女は首を小さく振った。
◇
「はぁ!? また、何か、変なキャラ模索してやがんのか? まっすぐ飛べて無かったじゃねーか」
「まあ、取りあえず、……これで、試験は……終わりでっしゃろ?」
歌色は、広げた道具を仕舞い始めた。
なんだったの、最後の白いの?
おう、あれ、悪魔みたいなヤツより、凄げかったな。
えー、なんか、不気味じゃなかった?
ガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤッ!
ガヤリだすB2F。
◇
ピプルル♪ ピプルル♪ ピプルル♪ プピピピッ♪
ちょうどそこは支柱の上辺り。直下の階層構造へ通じる、アクセスハッチが開く。
ゆっくりと迫り上がってきた〝なんか頭の良い先輩〟。
ゆっくりと迫り上がってきた〝自動機械〟。
ゴンゴンゴンゴンッ。
折りたたまれた脚が1本ずつ、歩道橋を踏みしめていく。
「ファッ―――!? あっぶね、気絶っしてた!」
ガバリと起き上がった、彼の手首に浮かんでいた、白黒の小さな球が、アイコンに変化する。宇宙服の証明写真みたいなアイコンは、独りでにリストバンドへ飛び込んだ。
「あれー? 先輩ー、おかーーー!」「まってました、……自販機ちゃん!」
目覚めた落ち着きの無い少年は、後輩らしき女子達へ問う。
「……君達、つかぬ事をっ伺うが、こっの勝負、どうなった!?」
指さすは、眼前の巨大な街頭モニタ。
瓦礫に埋もれた映像では、事態は掴めない。
「えーっと、なんか、白い土管みたいなのが、ミノタウロスっぽいの倒して、勝ったみたいですよう」
「土管ー? 宇宙服っぽくなかったあー?」
「それで、あの、可憐な女子は、どうなったんどわぁい!?」
「可憐? 女子? あの格好良い子なら……途中で突き刺されそうになってたけど、宇宙服が割って入ったから、たぶん無事だったと思いますよ」
「さっぱり、解っらんが、彼女が無事ならっよし! むしろ、僥っ倖!」
彼は立ち上がり、手にしていたレジ袋の中身を、後輩だけで無く、周囲の観客達に振る舞った。
うおおおお! にーちゃん! 気前良いな! アタシにもちょうだーい!
ゾンビのごとく群がる総勢は20人弱。
全弾は49発、お釣りっが来るってもんじゃないかぁい。
彼は、一躍局所的なスターとなったが、営業妨害であると見なされ、〝自動機械〟に追いかけられた。




