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ワルコフに気をつけない  作者: スサノワ
15:『中ボス求む。索敵な職場です。』

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107/153

3:蘇生ランゾウ その2

2016/12/17 8:52 ちょっと修正。

2016/12/17 6:55 文体など修正。

2016/12/17 6:26 少し暫定ですが、よろしくお願いします。

「ファッ―――!? どこだここはっ!?」


 一本だけ敷かれているレールを掴んで降りていく、”自動機械(じはんき)”。

 周囲を、表面処理されたコンクリートブロックで囲まれたチューブ状の通路は、地下モノレール線路のようにも見えるが、レールも通路も、その規模(サイズ)はとても小さい。

 そして、レールは水平になる事はなく、垂直のままだった。


 辰田乱雑(トキタランゾウ)少年は、ゲーマー特区の中枢に迫りつつあった、―――物理的(・・・)に。

 量子データセンターを常態稼働(・・・・)させる為の、地下都市空間(ジオフロント)。その全ての建築作業は、作業BOTによる自動化の元、執り行われた。

 竣工(しゅんこう)後、国家レベルでの潜入が試(こころ)みられ、未だに只(ただ)一人の侵入も許していない非公開空間(・・・・・)―――へ、無許可で進入した最初の人間(・・)となった。

 彼は産業スパイでもなければ、ゲーマー特区、ひいては量子データーセンターにまつわる特ダネを追う記者でも無い。ごくごく普通の、成績優秀なだけの一般生徒である。ソレがどれほど希有(けう)な事だろうが、彼には興味が無かった。


 ごぅごぅごぅわっ―――!

 吹き抜けていく風、煽(あお)られる少年。

 手すりの一つもない箱(カーゴ)の上では、アームの先の看板に、へばりつくしかできない。

「―――こ、こらおっまえ! ボクをどこへ連れて行くつもりっだっ!」

 只でさえ早口な彼の言葉が、更に早まっていく。

 いろんな角度の急勾配を乗り継ぎ、レール付きの通路は開けた空間へ合流した。


 螺旋を描き降りていく、”自動機械《じはんき》”。

 レール一本で連結されている、非常に心許(こころもと)ない足場。

 (◎_◎)(じはんき)が少年の乗る天板部分を、水平に保ってくれているおかげで、彼は振り落とされずに済んでいる。

 ゆっくりと回転する光景。恐る恐る顔を出して、進行方向を盗み見る。

 何キロ続いているか分からない広さの、天井と下層構造。おそらくは特区地表面と、下層のジオフロントを隔絶(かくぜつ)している、何もない空間。


「駅ビルの屋上から、と同じくっらいか!? 怖っ!」

 6階建ての駅ビル最上階からの光景と同じ程度ということは、この空間の直線距離は、25~30メートル程度と思われる。


 その何もない空間には、地表の表面都市(上部)を支える構造と、|大深度地下のジオフロント地下都市《下部》を繋ぐ経路がひしめいている。

 メカメカしい巨大な柱構造や、上下を繋ぐ各種構造物や、縦横斜めの昇降機らしき移動体。それらは一定の距離が保たれているため、角度によっては遠くまで見渡すことが出来、それほど圧迫感はない。


 ごんごんごんごん。

 その中の、作りかけのブロック細工のような、水平で平たい構造物の一つへ向かって、一定速度で落ちてゆく。


「そういや、なんっで、ここはこんなに明るいっんだ?」

 見上げれば、底面や側面部分が、煌々(こうこう)と光を発している。

 遠くにそびえているであろう、地下空洞の壁面へも目を凝らしてみるが、光に霞んで見ることはできない。


 シュゴッ―――!

 ぬぅおわっ!

 構造物の中へ入る。


 ゴンゴンゴ……ガッゴン!

 レールが急激に斜めになり減速、すぐに停止した。


「おい。止まっちまったぞ!? 僕はどうっすりゃいいんっだいっ!?」

 上部にあいた穴からの光で、わずかに周囲の様子は見える。


『この表示面を足場としてお使いください。ご搭乗誠に有り難うございました。』

 パッ。

 しがみついていた看板を手放すと、そう表示され、アームが動いて、盤面を水平に保った。

 その高さは、彼が床面へ降りるのに、ちょうど良かった。


「ふんっ! 君はー”乗り物(・・・)”では無いっだろう?」

 自販機の側面に描かれているのと同じロゴ入りの、オレンジ色のレジ袋を抱きかかえ、彼は前人未踏の非公開空間へ降り立った、初めての人類となった。


 プルリリリリリリ♪

 あわてて、手首を押さえて、姿勢を低くする。


「だっれだ!? こんな時に!?」

 押さえた手をすり抜けて、さっきの見慣れない、◐(白黒球)が浮かんでいる。

 まるで、手の甲に埋め込まれた金属物体にみえる。「気持っち悪っ」と少年は両手をぶんぶんと振り回したが、白黒球は手首のリストバンドを軸にして、クルクルと回転しただけだ。


 白黒球は定位置で静止すると、ビッ―――♪

 と、大きな発振音と、床から広がっていく光輪を放った。

 やがて、薄暗い通路の数メートル先に到達し、何か壁についている、四角いものを光らせた。

 ガピュピーーーボフン!

 四角いものは、赤く発光したのち、怪音を発して煙を吐いた。


「おい、やめろ! 静かにしろっ! ここは、入ったらっ駄目な所じゃっないのか!?」

 ◐は答えない。


「……ひょっとして、僕をこっんな所へ連れてきたのはオッマエか!?」

 手首に浮かぶ、◐(白黒球)が、震え、◍(赤い球)へと変色した。

 ここ、通称ゲーマー特区では、禁忌(・・)とされる、明るい赤色。

 WEBカラーで言えば”#FF263E”。


 ひぃぃ!

 固まる少年。どうやら、彼は臆病な気質のようだ。


 ゴゴゴン!

 プルピピピ、プピピピッ♪

 ゴォッ―――ヴァリッヴァリッ!

 ”自動機械(じはんき)”は、レールに電磁推進(リニア)の放電を煌(きら)めかせながら、瞬間的に発車し、居なくなった。

 ジジジッ!


「おい!? 僕をっ置いてくなっ!」

 彼が伸ばした手の先には、一本のレールが―――を降りてきた、箱型(カーゴタイプ)の”自動機械”。


 その筐体(カウル)の色(カラーリング)は手首の球と同じ色(・・・)。

 足を一本ずつ床に接地させ、レールを掴んでいたアタッチメントを格納していく。


 少年は半狂乱になりながら、手首のリストバンドを投げ捨てる。


 ガッガッガッキュゥン!

 3メートルは有る、通路状の天井に頭をぶつけ立ち上がった”自動機械”。

 そのハッチが開き、せり出した平面。

 パッと、白い人影が表示されたが、目鼻口はなく、そのツルリとした顔に、へたり込んだ少年を魚眼に映し込んでいる(・・・・・・・・・・)。

 ”自動機械”は少年の鼻先3センチまで接近し、そのノッペラボウ(かお)を見せつける。

 違う、これは、単なる映像じゃ無い、双方向の主観を伴った、リアルタイム通信だ。それに気づいた少年は、肩をふるわせた。

 その宇宙服を着込んだ通信主の、バイザー(かお)が、魔術的なまでの奇跡の称号、凶悪で明るい赤色(・・・・・・・・)に塗りつぶされる。宇宙服(ノッペラボゥ)のバイザーに、内側から鮮血が差したようにも見える。


 彼(ランゾウ)は卒倒し、パタリと倒れた。


   ◇


「このバトルロイヤル戦に決着が付くまでは、設定を何一つ変えることが出来ませーん!」

 ヘッドセットの、作動状況を表す表示(インジケーター)が発声にあわせて点滅する。

 戦闘フィールドの有る、この広い部屋中に拡声される、白焚(シラタキ)女史の現状報告(こえ)。

 それは、遅延(ラグ)なく街頭モニタ前の、三叉歩道橋へも、届く。


   ◇


 ガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤヤ。

「どうなってんのこれ!? 見えなーい」

「金返せ-! 真っ暗だぞー!」

 表示上の不具合を、訴える声がピークに達している。

 なお、街頭モニタは年中無料である。


「先輩戻ってこないね? ……居たら居たで、忙(せわ)しなくて、落ち着かないから、別に良いんだけど」

「そうね。むしろ、……あの自販機(じはんき)だけでも、早く戻ってこないかな。なんかおいしそうな匂いしてたしー」

 キャッキャッキャ!


   ◇


 ゴゴゴゴゴッ!

 バンッ、ゴカン! ドドドドッ!


「先生ーーーっ! その戦闘フィールドの、物理的な、”仮想現実感(AR)”対応レベルは最上限(・・・)に設定してありますーーー!」


「姉さん、どういうこと!?」

 刀風(カタナカゼ)の背中に、ぶら下がる禍璃(マガリ)が、野生の勘を遺憾なく発揮して、横から飛んできた小さな瓦礫(がれき)を蹴飛(けと)ばしながら、聞いた。


「特区のー技術力が許す限りってぇ事だからぁー、事実上ぉー無限大(∞)って事ねぇー、何がぁ起こってもぉ不思議じゃないわぁー! ウッフフフフゥー❤」

 筋骨隆々の教え子にお姫様だっこされるがままの、やや、上機嫌な環恩(ワオン)が返答する。

 さすがに、”特選おやつ”は開けられ……ないみたいねと言葉を続け、レトルト食品っぽいのを開けようとしているが、確かに出来ない(・・・・)ようだ。開封口の切り込みが見当たらない。

 そして、小脇に猫耳(ミミコフ)を抱え、腹の上で、特選おやつ”開封を試みる様は、―――。


 王子様の肩に、よじ登るようにしがみついた、”しがみつき魔神(マガリ)”は、「ラッコ……みたい」と、的確な感想を述べた。


「……魔法みて……えな事も、っはぁっ……起こり放題ってことかあ!?」

 俺にとっちゃ、今のこの状況自体が、魔法(ゆめ)みてえだけどなっ! キャッホーイ♪

 満面の笑みで、担当特別講師を抱きかかえる、筋骨隆々の王子様は、……急激に減速していく。”しがみつき魔神(マガリ)”の、しがみつき攻撃で、体力を消耗したっぽい。

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