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異世界、遺します ~天涯孤独となった俺に亡き祖父母が『異世界』を遺してくれた~  作者: 鏑右いなだ


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第六十三話 お腹遊び

「…………昨日の晩、その事に気付いて…………、必死にあの時の記憶を思い出したのだ…………。ミツナリ殿がいつも一番を取っていて…………、亡くなった者からテッケツ殿が三番から九番目を占めていた…………、私はいつも…………十番目であまりいい成績ではなかったがな……」


「……その成績に記載されている人物が、今回の貴族殺しの主犯だとゆうことですか……?」


「……そうだ間違いない。……ミツナリ様が既に亡くなられたのを除けば、……被害者はそこに記載されていた者達だ……」


「それは今どこかに保管してたりしますか?」


「……ない。ミツナリ様が表彰するだけで紙にも記録にも残ってはいない筈だ……」


「主犯の人物は、その番付から漏れた者だと思ってもいいのでしょうか? 番付に載っている人達への深い恨みがあったりとか」


「……そこまでは分からない……、当時番付に対してそこまで執着を見せる者はいなかった……。勿論選ばれれば名誉な事だったが、何か褒美を貰ったりしたことはなかった。それに剣呑な雰囲気も感じられなかった……」


「……そうなのですか」


 番付に対して強い執着や恨みを持っていた人物ではない……?

 なら何故番付に載っている人を襲うんだ……?


「その事に気付いて……、タマヨ君に連絡を……取ろうとしたところ……、奴らが襲ってきた。……一人は部下の姿に変装していて、もう一人は恐らくワドウだろう……。突然目の前に転移して私を襲ってきたのだ。部下の一人が身を呈して守っていくれたが、私が肩に小刀を食らったところ、部下が窓から私を投げ出してくれたのだ…………」


 ランセイさんは窓から飛び出てくる直前出来事を、唇を震わせながら話してくれる。


「あいつらを……私は……許さん。私の大切な部下が私のために…………命を賭して守ってくれたのだ。絶対にあいつらは私の手で牢獄に送ってやるっ」


「ランセイ様……、興奮すると体に障ります」


 上級兵長がランセイの体を気遣うように、ランセイの事を窘める。


「潤平君…………、最後に大事な情報を託す」


「はい……。何でしょう」


「奴らが次に襲うのは…………、ナオイエ様だ……」


「……御三家の? 何故ですか?」


「……ナオイエ様が、ミツナリ様に次いで二番目の成績だったからだ。そして残る一人はもうナオイエ様しかおらぬ…………。奴等の次の標的はナオイエ様だ……」


「なるほど。じゃあ俺はこの情報をタマヨさんに伝えて、ナオイエ様の所に向かいます」


「…………ああっそうしてくれ、私も遅れるが必ず向かう……、私の分を残して置いてくれよ……。それとタマヨ君にも伝言を頼む……」


「分かりましたっ」


「今は寝よう……、少し眠い…………」


 ランセイさんは、その言葉を告げた後眠ってしまった。

 

 潤平は上級兵長と色々話し合いを済ませ、確認を終えた後第三師団を後にした。

 頭にピー男爵を乗せて、第二師団のタマヨの元に情報を持って向かう。


  

 時刻は夕暮れ。前に中央通りを通ったときはもっと家族連れや買い物帰りの人が歩いていた。

 しかし今はどこか皆ピリピリした顔付きに見える。

 テッケツさんの所が襲われ、第三師団が爆破されたのを皆何処かで耳にしたのだろう。

 何かを警戒している顔付きをしている。


 それにいつもよりも、巡回してる兵士が明らかに多い。

 第二師団、第三師団の兵士がそこらじゅうにいる。

 それを見て、一般人の人達も余計ピリピリしてるんだなと感じる。


 ようやく第二師団の門が見えてきた。

 潤平と頭に乗っかっているピー男爵は、馴染み深い第二師団の兵舎に帰ってこれて安堵すると同時に、どっと疲れが襲ってくる。

 タマヨの部屋に向かう道中、顔馴染みの衛兵さんや上級兵長達とすれ違い適当に挨拶を交わし合う。


 その中で潤平は新たに鑑定魔法を習慣づけて発動させることにした。

 ランセイさんの所に、くノ一が部下に変化して侵入してきたと聞いて、怪しい奴がいないか常に確認することを、習慣づけることにしたのだ。

 幸いにも、今鑑定した人達は皆本人で潤平は一安心する。

  

 それと皆が、潤平とピー男爵が疲れた雰囲気を出していた事で、それとなく労ってくれたのがとても心に染みた。


「ただいま戻りました~~っ…………!」


「帰ってきたのにゃ~~っ…………」


「二人とも、お帰りなさい」


「潤平さん、ピー様無事に帰ってきて良かったです……」


 タマヨとルリの二人から帰還の挨拶と労いを貰う。


「あ~、どうもっす~……」


「どうもにゃ~……」


 二人は部屋の中に入ると、どうしても横になりたくて先に潤平が、バムンッとソファに倒れ込みその上に、ピー男爵がポムンッと倒れ込んだ。


「俺は体力的には大丈夫何ですけど、ちょっと精神的に疲れました…………」


「僕は魔力の使いすぎと体力的には疲れたのにゃ…………」


「潤平様、ピー様こちらのお茶と甘いお菓子を召し上がって下さい」


 二人が帰ってきたと同時に、フミが用意してくれていたお茶とお菓子を出してくれる。


「フミさん、ありがとうございます……」


「ありがとうだにゃフミちー……」


 潤平は後でゆっくりと食べようと思い取り敢えず横になることを優先したが、ピー男爵はお菓子に手を伸ばして、潤平の腹の上で食べ始めた。


「ちょっと! お腹の上でお菓子食べるのは駄目でしょっ、食べカスがこぼれちゃうじゃんっ」


「疲れて動きたくないんだにゃ……」


「何だとっ? そんなピー男爵にはこうしてやる! 食らえっ。ふんふんふんふんふんっ!」


「にゃッにゃッにゃッにゃッにゃ! やめるのにゃっ、お腹を揺らさないのにゃっ お菓子が食べにくいのにゃっ!」


「二人ともちゃんと座りなさい」


「……はい」

「……ハイにゃ」


 タマヨにやんわりと怒られたので、二人はふざけ合うのをやめた。


 


「…………まさか御祖父様の会が発端だとは……、それも御祖父様による成績順の者が被害者なんて…………」 


「……取り敢えずテッケツさんは無事です。ランセイさんも体調はまだ回復してませんが、命に別状はありません。今後奴等がまた襲ってこないとは限りませんが、襲撃者は殲滅しましたし、ワドウとくノ一も馬鹿じゃないので、警戒されている所を二回も襲わないでしょう」


「…………潤平君とピー君、二人ともよく頑張ってくれたわね」


「あざす!」

「あざすにゃ」


「………………それで、その通りに行くのならば次に襲われるのはナオイエ様で間違いないのね?」


「はい、ランセイさんによると残った成績の一人が、ナオイエ様だと言っていました」


「……分かりました。すぐにでもナオイエ様に連絡をして教えないと。今ナオイエ様を失ったらこの国は大変なことになるわ」


「俺もその警護に加わります。今度こそワドウの奴とくノ一を捕まえたいので」


「……いえ潤平君はここで待機をしといて欲しいわ」


「えっ? どうししてですか!?」


「これ以上貴方に負担を掛けることは出来ません。元々貴方はルリの護衛なのですからルリの傍にいて下さい」


「……っでも、ワドウの奴を止めれる人が他にいるんですか!?」


「大丈夫。その辺はちゃんと考えていますから」


「……何か策があるんだにゃー」


「私達の屋敷に配備していた、感知能力に長けたスキルを持った人物を呼び戻します」


「……そんな人がいたんですか?」


「ええ。本来ならこの都の安全を任せていた人物なのですが、私の私用な目的で屋敷に配備させていました。その者のスキルがあれば、反応は少々遅れますがワドウを感知する事は可能です。そこに第二師団の精鋭を連れて行きます。それがあれば一先ずは安心だと思います。それと……」


「他にもあるかにゃ?」


「ええ。都の防衛を厚くするために完全に屋敷を捨てることにします」


「ええっ!?」


「思い切った決断だにゃ!?」


 驚いているのは潤平とピー男爵だけで、他の人達は知っていた事なのか特に驚いた様子はなかった。

 ただ皆一様に堅い表情をしていたが。


「既に屋敷に連絡はして、使用人共々別の場所に避難させてあります。例の少女もミオリに頼んで運んで貰っています」


 ミオリさんの姿が見えなかったのはそうゆう事か。


「これは私の憶測なのですが、この連続した貴族殺しの間に何かもっと大きな事が起きるのではないかと思っていたのです。そしてそれは先程の潤平君の話を聞いて確信に変わりました。ワドウ達が都を襲う気ならば、第三区画に護衛対象を分散させるのは危険です」


「それはそうにゃ」


「今までは後手に回ってましたが、戦力を一箇所に集めて敵を引き付ける、それが私達に出来る逆転の手だと思います」


「……そのために僕らが戦いやすいように、屋敷の使用人を避難させたのかにゃ」


「俺らは引き続きここでルリさんを守っていればいいんですよね」


「そうよ。もしかしたらこの騒動の合間に例の、お父様を嵌めた貴族連合が動き出さないとも限らないから。潤平君とピー君はルリから目を離さないでちょうだい」


「わかったにゃ!」

「領解しました!」


 潤平とピー男爵は、向かい側に座っているルリのことを、目が充血するほど目を見開いて見続ける。

 二人に穴が空くほど見られ続けているルリは恥ずかしくなってきたのかモジモジし出す。

 

「…………遊んでないで。それでナオイエ様の所にはそのスキルを持った人と第二師団の精鋭が向かいます。ワドウ達が何かしようとしても、いつもより兵士を多めに巡回させているので不審な者は一人も見逃しません。私達はここでワドウが捕まるまで待機です」


「待機かー、まあ俺とピー男爵は今日結構頑張ったからしばらく休んでいるかっ!」


「そうだにゃー、魔力もかなり消費したからにゃー、僕は潤平みたいに回復が早いわけじゃないから、ゆっくり魔力を回復しないといけないからにゃ。しばらくゆっくりするにゃ」


 潤平はお茶を手に取りお菓子を食べている、ピー男爵はソファに横になり少し眠るようだった。

 十数分もすればミオリが帰ってきて、使用人の避難と例の少女の搬送が終わったと報告してきた。


 そして少し遅れて、精鋭班がナオイエの屋敷に着いて警備を固めだしたと報告が上がった。


「潤平様、こちら予め取って置いた軽食です。良かったら食べて下さい」


 潤平がお菓子を食べ終わったのを見計らって、フミが予め作って取って置いた軽食を渡してくる。

 潤平の腹ではとてもお菓子だけでは足りない事が、フミには分かっていたのでこうして軽食を用意していたのだ。


「わー! フミさんありがとうございます!」


 潤平は喜んでそれを受け取ると包みを開けて食べる。

 冷えても美味しい軽食が空腹だったお腹を満たしてくれる。

 思えば朝食から、夕暮れ時の今まで何も食べていなかったのでご飯が美味しい。

 この騒動が終わったら、フミさんの手料理と屋敷に料理長の料理が食べたいなーと、潤平は頭の中で考えるのだった。


 束の間の休息を味わい、腹も満たされた潤平はとても眠くなってきた。

 しかしタマヨから、ルリから目を離さないでと言われたので、無理矢理目を開けて眠気を我慢する。


「あ、あの~……、潤平さん眠いのでしたら寝てもいいんですよ……?」


「目を離すなと言われたので、目を離しません」


「この部屋には敵はいませんので、大丈夫ですから寝て下さい……」


 少し困ったようにルリが言ってきたので、潤平は主を困らせる訳にはいかないなと思って、横になり眠る体勢に入った。


「……ではお言葉に甘えて、寝ます!」


「…………はい、どうぞ」


 その瞬間、タマヨの部屋に伝令役の兵士が入ってきた。


「失礼します! 団長! 急報です!」


「聞きます」


「んあ~?」


 潤平は横になりながら、部屋に入ってきた兵士に向かって鑑定魔法をかけた。

 さっきの兵士にも鑑定魔法を掛けていたから、同じ様に今尋ねてきた兵士にも鑑定魔法を掛けたのだ。

 

 その瞬間、潤平は眠気とゆうものは吹っ飛び、体をフルスロットルにして兵士に向かって突っ込む。

 兵士の胸ぐらと首を掴むと、後ろにぐいいっと押し続けて窓から兵士もろとも飛び降りた。


 (確か通路側の窓は、中庭の方を向いていたよなっ!?)


 頭の中で記憶を辿って、部屋の中にいる人達に危害が加わらないようにする。

 窓が割れて訓練用の中庭に投げ出された二人は、タマヨ達が確認する間もなく、ゴシャッと地面に落ちた。

 そして残された札がひらひらと空中に舞い爆発を起こす。


 潤平が今しがた鑑定魔法で確認したこの兵士の名前はイチヨウと表示されていた。 

 潤平達が血眼になって探している憎きくノ一の本名である。





 

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