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異世界、遺します ~天涯孤独となった俺に亡き祖父母が『異世界』を遺してくれた~  作者: 鏑右いなだ


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第二十二話 都の門

 「連結っ!!」


 一人変なポーズを取って馬鹿騒ぎをしている潤平。

 潤平は自分の手で、新たにスミレが作ってくれた新荷車をルリ達が乗っていた荷車に連結させる。

 これで潤平が引っ張っていた人力車は二両編成になった。


「うんうん、いい感じ♪」


 二両編成になった人力車を見て満足そうに頷く潤平。

 その後ろでは、ルリ達とカントウ達が離れた所から潤平の奇行を眺めている。


 

 これから、この二両編成になった人力車を潤平が引っ張って、ルリ達とカントウ達を都まで乗せていく事となる。


「凄いにゃー! 座ると沈み込むにゃー!」


 我先にと、二両めの荷車に乗り込んだピー男爵が、衝撃を吸収するために作った低反発の椅子に座ってクッション製の高さを調べている。


 他の人達も荷物を運び終えたり収納に仕舞ったりすると、ピー男爵の反応が気になったのかぞくぞくと荷車の中に入って行く。

 すると、ピー男爵の時と同じ様に荷車の中から楽しそうな反応が聞こえてくる。

 その反応を聞いてカントウさんと彼の護衛の纏め役をしているカンベエと名乗った人は、二両目の中が気になった様子でソワソワと落ち着かない感じだった。


「それでは、荷物を運び終えた事だしそろそろ出発しますか」


「ぬ。本当に一人で大丈夫なのか? とてもではないがまだ信じられないのだが……」


「そうですね……、それに潤平さん一人に全て背負わせるのも何だか気が引けますし……」


「まあ信じて下さい。ここまでルリさん達を乗せてきた自身もありますし。流石に前みたいに速度を出せるとは思わないですけど、でも馬車より早く走れますよ」


 潤平の言葉にも、何処か浮かない顔を見せる二人。



 ※

 

 話は遡ると、カントウ達を乗せていた馬車が魔物の襲撃により破損して動かなくなった。

 そこで、カントウさんは換えの部品がないか潤平達に頼ってきたのだが、潤平は敢えてそこで違う選択肢を提示した。


 今率いている人力車の後ろに新たにもう一両作り、繋げればいいのではないかと考えたのだ。

 そうすれば多少速度が落ちるかもしれないが、纏めて移動できるし馬事よりも速く都に着くのではないかと潤平は思った。


 突拍子もない潤平の提案にカントウ達は、話の意味が理解出来ずルリは難しい顔をして頭を抱えていた。

 しかし他に妙案が有るわけでもないし、壊れた箇所の部品も持っている訳がなかったので渋々と言った形で、カントウ達は潤平の提案を受け入れる事にした。

 

 話が纏まったらすぐにスミレと潤平は作業に取り掛かった。

 まずは、同じ様にもう一両荷車をスミレに作って貰い、そして一両目と二両目を繋ぐ連結部分を作った、決して離れずそれでいて衝撃に強く逃がす構造をスミレさんに作って貰った。

 潤平がどの様な構造と設計にするか、スミレに話していると満更でもない様子のスミレが、後ろで二人の背中を眺めていたルリの頭を悩ませる。


「あの~、本当に大丈夫何でしょうか……?」


 カントウはまだ不安が拭えないようで、ルリに大丈夫かと確認してくる。

 だが雇い主であるルリも、潤平の不思議な行動を全て説明出来るわけではないので、取り敢えず自分達の人力車の方に連れて行った。


「見た方が早いと思いますので、良ければどうぞ」


 人力車の方に行くとそこでは、スミレと潤平がもう一つルリ達が乗っているのと同じ個室型の荷車を作っていた。

 そして新たにそれらを繋ぐ連結部分もスミレは潤平の指示で作り上げていた。


 驚いたのはカントウ達で、あっという間に荷車が一台分が出来てしかもそれが繋がっている事に驚愕した。


「こ、これは、なんという早業……。ですがこれを作ってどうしようと言うのですか……? 私達が使役していた馬は二頭です、それではとても馬力が足りないと思うのですが……」


「ですから、俺が引くんですよだから人力車と言うんです」


「は?」


「ああ~、そういや馬の事も忘れてたな。どうしようかそこら辺に逃がすとかは無責任だし可哀想だしな、ああ! そういや、後……六、七、八人と一匹か、うーんこれだと荷車に全員乗れない可能性があるのか? いや無理矢理詰めれば何とかいけるか? でもそれだと危ないしな、うーん」


「あの~どなたが何を引くんですか?」


「ん? 俺が都まで荷車を引きます」


「は?」


「大丈夫ですよ、実際ルリさん達も前の町から半日でここまで引いてきたんですから実績はあります、それに安全運転で行きますから」


「…………」


 潤平のどこから湧くか分からない自身と言葉を聞いて、カントウ達は身震いをする。

 人が荷車を引くなんて聞いたことない。それを二台分? それも人と荷物を乗せて? この青年は何を言っているのだろうかと自分の耳を疑い、そして疑惑の目を雇い主であるルリに向けてくる。


 ルリは二人分の視線を受けると困ったようにはにかんだ。


「大丈夫だと思います。実際私達を乗せて半日で前の町からここまで走ったのは事実ですし、それにとても安全運転でしたから、魔物が出てもそのまま討伐してくれますし」


 駄目だ、この雇い主も何処か可笑しい。

 そう思ったカントウは潤平の申し出を断ろうとしたが…………。


「あー! 何にゃこれはー! ニャン達の荷車かにゃー! 凄いにゃー! もう出来てるにゃー!」


「凄ーい! いつの間に作ったのこれ!」


「ねえこれもう乗っていい!? 乗っていい!?」


「ニャンが最初にゃ!」


「ウチが最初よっ!」


「ちょちょちょ痛いっ! 引っ張らないでっ!?」


 壊れた馬車の周りで待機していた仲間達が、カントウの様子が遅い事で見に来てしまい、今し方スミレが作った荷車を発見してしまい大騒ぎになってしまったのだ。

 こうなってくると、もうカントウは後には引けず最終的に潤平の提案を受け入れる事となってしまう。


 結局、人力車には一両目にルリ達と、二両目にカントウ本人、そして護衛の纏め役を務めているカンベエ、怪我をしてる従業員一人と、もう一人の従業員、そして馬に乗れない護衛二人、そこに足してピー男爵一匹が乗り込む事になった。

 

 結局最初に荷車を見つけて騒いでいた護衛の人達は、馬に乗れるとゆう事から人力車に乗る事が出来ず、二人がハズレの馬に乗って都まで走るとゆう事になった。

 勿論不平不満は出たが、最終的にちゃんとした理由が出たので、渋々馬に乗る方の二人は了解してくれた。


「よ~しゃっ! それでは行きますよっ!」


 新たに潤平が掴んでいる所も強化して、ニューマシンとなった人力車に心を弾ませる。

 その後では、落ち着いて談笑しているルリ達と、方や楽しみに期待を膨らませてる組と何処か心配そうに顔を覗かせているカントウ達がいた。


「ふんっ!」


 走り出そうと勢い良く力を入れた潤平だったがやはり重量が増えた分、勝手が違うようで人力車を動かすのに四苦八苦した。

 だが直ぐコツを掴んで来ると、徐々に人力車の速度が上がっていき、どんどんと速度が出てくる。

 そして、やはり楽しくなってきた潤平は自然と口角が上がってくる。

 だが、重心が以前より後ろに行っているせいで、多少の緩急やカーブでの曲がり方など、前よりももっと気を付ける事が多くなり、より安全運転で走行するよう心掛けている。


 それでも楽しくなった事で、やっぱり高笑いは出てしまった。


 「あ~~はっはっはっはっはっ~!!!」



 ※

 

「あーあ。私もあっちに乗りたかったなー、何が楽しくて馬に乗ってるんだろう」


「仕方ないじゃんかっ、馬に乗れるのが俺とお前しかいないんだからっ、しょうがないだろっ」


「それに何が楽しくて、あんたと一緒に都まで走らなきゃいけないのよ」


「言うに事欠いてこのアマっ、俺だってお前となんかと並んで行きたくないわっ」


「は~あ、つまんないつまんない。あっ、ごめんね君の事言ってるわけじゃないのよ」


 女の方の護衛が跨がっている馬が、ブルルと怒った様に嘶いたので謝って優しく撫でて上げる。

 すると気分が良くなった様で馬の足に少し力がこもり、歩く速度も自然と上がる。


「………………ぃ……………………ぇー」


「ん? 何か言った?」


「いや? 何も?」


 何処かから聞こえてきた微かな音に女は反応を示すが、小さい音だったので空耳かと思ってすぐに忘れてしまう。


「……何か地面揺れてない?」


「本当だ」


 今度はどんどんと地面から震動が伝わって来た事で、何か異常事態が起きているのではないかと考え二人は身構える。

 

「ぁーーーーぶなーい!! 避けてええええーーー!!」


「「!?」」


 後ろから聞こえてきた声に、二人共素早く反応すると道の端に馬を避けるよう動く。

 その間をかなりの速度で潤平が引いている人力車が走り抜けていく。


「お先っっ!!」


 後に残ったのは人力車が通った事で発生した煙だけで、残された二人と馬二頭は、呆然とそれを見送る事しか出来なかった。


「何よあれ……」




 ※


「景色が凄い速度で流れていく……」


 二両目の荷車に乗っているカントウは、窓から眺めている光景を見てポツリと呟いた。

 二両目に乗ってる他の人達も、衝撃を受けている様で流れていく窓からからの光景に、目が釘付けになっていた。

 ただ一匹ピー男爵だけが、うにゃー! あにゃー! と声に出して喜んでいる様子だった。


 まさか人が率いた荷車がここまでの速度を出せるとは、カントウは今正に自分が信じ堅い体験をしていると実感している。

 これでも人力車を率いてる潤平や、もっと早い速度を体験した事のあるルリ達からしてみれば、普通に感じる位の速度だと言わざるを得ない。

 だがそんな事は、後ろに乗っている彼等は知らないので、荷車に乗っている人は(一匹)は都まで、流れていく景色を見ようと窓に釘付けになるのだった。


「前方に緩いカーブ発見! 速度を落として脱輪させない様にゆっくりと正確に~はいオッケー! あ! どうもこんにちは!」


 そして人力車を率いてる潤平は、人力車の動かし方のコツや走っていてすれ違った人達に挨拶をしたり等、馬車を率いてる上で自分の中で楽しみ方を見つけていた。




 そうして馬車を走らせること一時間とちょっと、すれ違う人も多くなり、色んな店や建物が増えてきたと感じた頃。

 この国の中心地とも言える都に着いたとルリに言われて人力車を止める。


 空が夕日によって赤く染まり、夜がやってくるまでの時間。

 潤平は本当に一日で、しかも日が沈む前に都に着いてしまった。


 これには正直ルリ達は驚いた。

 まさか、本当に宣言通りに都に半日で着いてしまうとは呆れて言葉が出て来ない。


 そんな事を思われてるとは思ってもいない潤平は、汗が額から流れてくるので手の甲でそれを拭っている。

 そして行き交う人々と喧騒に心を踊らせていた。

 

 まだ都の中に入っていないとゆうのに、行き交う人々の溢れんばかりの熱気に潤平は心が踊るのを感じた。

 馬車を徐行させて進むと、高さ十メートルはあろうかと思う門が見えて来て、そこで人が列を作ってこの国入るための身分の確認を行っていた。


 潤平はそんな事より、目の前にそびえ立つ門とそこから左右にどこまでも続いている壁に視線を奪われていた。

 元いた地球ではどこの時代、どこの国でも町や都市を守るために立派な外壁が立っていたとゆうが、実際に見たらこんな感じなのかと潤平は目の前にそびえ立つ壁を見てそう思う。


「では、私達もすぐに都に入るとしましょう」


 人力車から降りてくると、都の門構えに見取れている潤平を余所に、ルリは颯爽と門の方に歩いて行く。

 そして人が並んでいる方の詰め所ではなく、もう一つの人が並んでいない詰め所の方に行く。

 カントウさん達もどうやら、人が並んでいる方の詰め所ではなくこちらの詰め所を使うらしく、荷物を下ろすと仲間と一緒にそっちの方向に歩き出す。


「凄いでしょ、これがこの国の都を守る外壁でここまでの物はそうそうにゃいんだぜー」


 皆が荷物を纏めてスミレが人力車を解除したとゆうのに、潤平はまだ外壁を見上げていた。

 そこに足下から快活な声が届く。そこで潤平はやっと意識が現実に戻ってくる。


「初めて来た人は、まずここで驚くけどにゃかに入ってからもっと驚くんだぜー」


「へえー!」


「お前は行かにゃいのにゃ?」


「行きます行きます。今行きます」


 ピー男爵に急かされたので、潤平も慌ててルリ達が言った方の詰め所に向かう。

 他の人達は既に中に入ったみたいで、後は潤平とピー男爵が残されていた。

 詰め所でマナカードを確認して、ピー男爵がちょっと届かなかったので潤平が抱いて上げて確認を済ませて上げて、潤平のマナカードを確認した衛兵が潤平の事を軽く賞賛したり等、ちょっと時間は掛かったが何とか門を潜ることに成功した。


 そして門を潜った先に広がっていた景色は、潤平が見たことはあるが、過ごした事のない日本の城下町に似た風景が広がっていた。

 道を歩く人々、お茶屋、お食事処、飲み屋さん、色んなお店、床屋さん、銭湯っぽい店など、まだ入り口だと言うのに色んな人とお店が並んでいて、潤平のテンションは最高潮に上がっていった。


「にゃっにゃっにゃっ、まだまだこんなもんじゃにゃいにゃ、もっと凄い風景があるんだにゃ」


 そんな潤平の足下では何故かピー男爵が誇らしげしている様子が通行人の目に止まった。


「潤平様、此方です」


 ルリに呼ばれたのでテンション高めに振り返るとそこには、スミレが出したいつも通りの馬車が出されていた。


「ここからは、私達の馬車で移動することにします。ではお乗り下さい」


 ルリに言われ潤平の中に葛藤が生まれる。

 このまま、町に溶け込んで思う存分都を堪能したい気持ちと、今は護衛の仕事をしている最中なので、その責任を果たさなければいけないとゆう気持ち。

 その二つがせめぎ合い、結局護衛をしっかりと勤め上げる気持ちが勝った。

 まあ終わってからでも堪能出来るしね。

 それからでもいいじゃんと自分に言い聞かせ納得させた。


「ではカントウ様私達はここで。カントウ様達のご安全をお祈りします」


 荷物を運んで馬車をレンタルしようとしていたカントウに、ルリは別れの挨拶を告げる。

 それを聞いてカントウは笑顔でその言葉に応じる。


「ご丁寧にありがとう御座います。ルリさんもどうかご無事で」


 するとカントウは潤平の方に向き直り、深々と感謝の言葉を述べてくる。


「潤平様一度ならず二度までも我々を助けていただいて何と申し上げて良いやら。それに忘れられない体験も出来ました。潤平様と出会ってからの恩はこのカントウ生涯忘れないと誓いましょう」


「そんな、俺も楽しかったですし忘れない経験になりました、ありがとうございます」


 潤平の言葉にカントウは嬉しそうに破顔すると、力強く潤平に握手してきた。


「もし何か困った事がありましたら、『エノキヤ』の番頭にご連絡下さい、少しですが力になれるかもしれません」


「分かりました、その時は連絡します」


 そうして潤平はカントウ御一行と別れたのであった。

 最後までカントウの背中に潤平は手を振って見送った。


「んじゃー行きますか、ルリさーん出発しましょう!」


 この世界で出会った人と別れ、一時の悲しさと寂しさを抱え潤平は本来の自分の仕事に戻ろうとする。

 一期一会、また何処かで出会えるだろうと信じて。


「行くにゃー! 出発進行っ!」


 あ?

 足下から聞こえてきた快活な声に、潤平は足下を見る


「なっ! 何でいるの!?」


 そこにはちんまりと和服を着たピー男爵が、空に向かって指差しポーズを決めていた。


 



 



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