第二話 真面目な話1
――大事なことは言えた、短い感謝の言葉だったけど気持ちは伝わったと思う。
まあ、じいちゃんとばあちゃんはちゃんと生まれ変わるらしいし、幸せな人生を送るでしょう、後は俺がこの異世界で上手く生きていけるかどうか。
いきなり死にました、数日で試合終了なんてことにはならないようにしないと。
……あれ? そう思うと何か急に不安になってきたぞ。
うおおおおおおお! やばい! 焦燥感と不安が一気に押し寄せてきた! さっきまで、異世界に行けると思って浮かれて妄想していた俺恥ずかしい~!
ぐあああっ、誰か俺を殴ってくれ!
「うむうむ、だじょうぶかいの」
「アッ、ダイジョウブデス、ハイ」
「うむうむ、なら少し落ち着ける様に場を作るとしようかのう。ここからは真面目な話も大いに含まれてくるからのう。」
そう言うと、神様は手を前に翳し指で空中をなぞる様に、クルリと丸を書く。
すると地面が光りだして、何もない空間から丸いテーブルと、二つ椅子が生み出されてくる。
テーブルの上には湯気が登っている飲み物と、茶色いお菓子が並んでいる。
潤平がその光景に驚愕していると、神様が座る様に促してくれたので、素直にテーブルの前に座った。
……今さらっと魔法みたいなの使ってましたけど、もしかしてだったりします?
「うむ? さすが分かっておるのう、そうじゃこれらは魔法で出したんじゃよ」
「うおおおお! やっぱり! 魔法が存在する世界なんだ!」
「そうじゃのう、わしがこの世界を作るにあたって最初に目を付けたのが、この世界を漂っていたマナと呼ばれる物だったんじゃよ、わしはそれを使いこの世界の基礎を作り上げた、そしてそこから生まれた物たちが今に繋がって世界が回っておる、お前さんの世界で人類と呼ばれている者達も、皆魔力を持って生まれてくるそして、生活や自衛の為に魔法を使う、じゃから魔法という存在はこの世界ではとても身近にあるものなんじゃよ」
おほほほ! 凄い凄い! さすが異世界なんだわ! 魔法が使えるってのは誰しもが夢見るものでしょ! 激熱展開来たよこれ!
いやこれからは夢じゃないんだ、実際に使える世界に来たんだ!
「うむうむ少し落ち着かんかのう、温かいお茶でも飲みなさい」
「ア、イタダキマス」
「どうじゃ、少しは落ち着いてきたかのう」
「はい、ほっとします」
――美味しい。
温かい飲み物を飲んだら大分落ち着いてきたぞ、しかしこの飲み物ほうじ茶に少し味が似てる気がする、日本人だった俺からしたら口に合っていてとても美味しいぞ。
それにこのお菓子、食べた時はさっくりしてるのに口に入れるとしおしおと溶けて、甘じょっぱい味がとても美味しい、お茶と合っているから手が止まらないぞ。
ひょいぱくっひょいぱくっ、うめぇー!
「うむうむ、そのお茶とお菓子はこの世界のとある国の名産品でのう、わしのお気に入りで出したんじゃがのう、気に入ってくれたならよかった、よかった」
そういう神様の顔を見ると嬉しそうな顔をしていた。
自分の世界の特産品を褒められると誇らしくなるよね、日本の物が海外で絶賛されてると、関係のない自分でも嬉しくなるもんな。
やばいお菓子を食べる手が止まらん、パクパク。
いつか、その国寄った時の為に忘れないように頭の片隅に入れておこう。
「うむうむそれでは話を進めるとしようかのう、まずお主はわしが呼び出した祖父母に代わり異世界に呼び出された、そして契約上では祖父母に異世界をプレゼントされた事になっている、ここまではよいな」
「はい、分かっています」
「うむそれでは、この世界で生きていく為のスキルの贈呈についてと、この世界にお主達を呼び出した理由と、果たして欲しい使命について話すとしようかのう」
そういうと神様は、 真面目な顔になり俺に向き直った。
「それではまず、この世界で生きていく為のスキルを与えることにしよう、何か希望はあるかのう?」
――神様にそう言われ、テーブルの上で腕を組んで考え始める。
急にスキルを一つだけあげます、と言われても直前まで普通の暮らしをしていたので何も思いつかない。
いくら異世界に行く妄想をしたことがあるとはいえ、心の準備が出来ていないのだそんな中二病要素はとうに卒業している。
そういえばクラスメイトの男子で、本を読みながらブツブツ言ってる奴が居たんだが、あいつだったらこんな時直ぐに、必要なスキルが出てきたりするもんなんだろうか。
でも、あいつクラスの女子に気味悪がられてたからな、一長一短てゆうことなんだろう。
……まずい思考がずれ始めた、もっと真面目に考えないと。
頭をゆっくりと、左右に揺らしながら悩み続ける。
神様はこの世界で生きていく為のスキルを一つだけくれると言った、ならどうするか?
…………あれ? 神様はスキルを一つだけなんて言ったっけ? 言ってないよね?
「ほ? そうじゃのう一つとは言っていなかったのう、よう気付いたのう、それでは特別に祖父母の分も合わせて、スキルを三つまで持てるようにしようかのう」
おお! 言ってみるもんだ!
「本来なら、この世界の人間はスキルを持って生まれる事は稀な事なんじゃがのう、例え持って生まれても一つ持っているだけで、天賦の才を持つ者だけなんじゃが、祖父母の事もあるし特例で許すとしようかのう」
「あざすっ!!」
やった! そういうことなら迷う事はない、二つはもう確定で決めれるぞ!
「ほ? 決まったかのう、それではその二つのスキルを聞こうかのう」
「はい、まず一つ目は俺の体をとにかく丈夫で強力な体にしてください」
「ほ? 体を強化とな?」
「はい、どんなウイルスにも負けず、もの凄い回復力で、疲れをしらない、あらゆる環境に適応出来る強くて無敵の体にして下さい」
「ほうほう」
まずはこれ、未知のウイルスとか毒で死んだなんて事になったら、じいちゃんとばあちゃんに顔向け出来ないからな。
怪我しても、すぐ治って尚且つ攻防一体の無敵の体になれたら心配いらないと思うんです。
何事も健康が一番だって言うしね。
「ほう、もう一つは何かのう?」
「はい、魔力があると言っていたので、出来る限りの範囲で無尽蔵の魔力を貰えたりしますか? あればあるだけいいと思うので」
「うむう」
そう潤平が提案すると、神様は難しい顔をして考え始めてしまった。
あれ? これはダメなパターンかしら、流石に無尽蔵の魔力は高望みしすぎかな? 無敵の体に出来るんだったらこれもいけると思ったんだけど。
「いやあ違うんじゃよ、無尽蔵の魔力は出来ないがそれに近い事は出来るんじゃよ、それに元々魔力は渡すつもりでおったからのう、この世界での役割の為に儂の魔力を分け与えるつもりでおったんじゃが……」
「出来ないんですか……」
「むうう、そうじゃのう順序が変わるが先に、お主と祖父場を連れて来た理由と、この世界でのお主の役割を話してからにするかのう」
神様は立ち上がると、またもや何もない空間から黒板を出して説明し始めた。
おお凄いな魔法って。
「まずこの世界の成り立ちから話すとしよう、この世界は魔力が全ての根幹を担っておる、生まれたばかりの物は極わずかな魔力を持って生まれてきており、生きていく過程で生き物や、空気中、地面や水の中の魔力を摂取することで、大小の差はあれど皆魔法が使えるようになる、そして日常生活や、魔物の討伐、人の助けになることに使われてこの世界は成り立っていった」
「しかし、使いすぎていく内に使われた魔力とは別に、排出された魔力があちこちで溜まり始めた、溜まりに溜まった魔力は淀みになり、この世界に悪影響を及ぼす様になってしまった、人も魔物も国もそう遠くない内に淀みが届いてしまうことになる、もし空や水や地面に淀みが届いてしまうとこの星は終わりを迎えてしまうことになる」
「そうならない為にも、淀みを浄化して元の正常な流れに戻す機能を、儂が開発する必要性に駆られてしもうたんじゃ、しかしその間、淀みの進行が止まってくれる訳もなく、どうしようかと悩んでいた所、応急処置として浄化のわしの魔力と親和性が高く浄化の魔法を高度な次元で扱えて、それでいてこの世界の人間ではないお主の祖父母に白羽の矢が立ったとゆうことなんじゃよ」
「じゃが、二人には断られて困っていた所、お主の話が出て祖父母がお主にプレゼントする流れになったんじゃ、結果的にお主は祖父母より適任じゃと判断したことにより、この世界に転移させたとゆう事になる、これがお主をこの世界に呼び出した理由じゃよ」
「そして、魔力の無尽蔵化が難しい理由じゃが、儂の浄化の魔力を使うのなら大丈夫なのじゃが、ただの魔力をいきなり大量に使われると浄化が追いつかず、そこらで悪影響を及ぼすと思ったからのう、かといって浄化の魔力は無尽蔵に出来ないからのう困ったもんじゃのう」
「………………」
「む? どうしたんじゃ? フリーズしおって」
「……は、話の内容は理解出来ました、魔力の事は考え直します、けれど俺にそんな大役が務まるんでしょうか、さっきまでただの高校生で、碌に武道もやっておらず、やってた運動といえば部活動の体操だけだし、頭だってそんなに良い方ではないし、そんな異世界を救うなんてこと出来ないと思うんですけど……」
「何じゃ今更びびってきたんかのう、大丈夫じゃわしのお墨付きじゃし、祖父母の二人もお主なら間違いない、と言っていたしのう」
じいちゃんばあちゃん孫への期待が高すぎるよ。
そんな大した孫じゃないよ俺は、どこにでもいる高校生ですよ俺は。
「疑り深いのう、儂のお眼鏡にかなってこの世界に連れて来たんじゃがのう、そこまでゆうならお主に任せようと思った、決定的な理由とやらを話すかのう、お主最初に儂を見た時どう見えた?」
「……それは、 頭が禿げて立派な顎鬚を持った、お腹に神様と書かれた白装束を着た太ったおじさん……」
「それじゃよ」
「は?」
「本来、儂のことは光輝いた塊としか認識出来ない筈なんじゃよ、お主の祖父母ですら、儂の姿が人の形を模したものとしか認識出来なかったからのう、じゃから分かりやすい様にこの服を着ておったんじゃが、お主にははっきりと儂が見える」
「それは、儂の魔力を十分に扱える素質があるという証拠になるんじゃよ、それにお主はあの祖父母に似た澄んだ心を持ち合わせておる、じゃからお主に任せてみようと思ったんじゃよ、大概の事は渡したスキルで何とかなるしのう、授けた浄化の魔力で世界の淀みを浄化してくれればいいからのう」
そうなんかな~ 出来るんかな俺に
そりゃ一応、頑張ってはみるけどそんなねぇ、大した奴じゃないですよ。
「大丈夫じゃ儂が保証する、お主はきっと大役を果たせると信じておる」
「はぁ」
緊張で口が乾いてしまったので、お茶のお代わりをいただく。
壮大な話を聞いてしまった、浄化の魔法を使ってこの世界に溜まった淀みを浄化していく、無料で異世界生活を満喫出来る、なんてそんな甘い話はないと思っていたけど、これは凄いことになったなぁ。
…………やばい、お茶の飲みすぎでトイレ行きたい。
「うむしかしお主のスキルをどうするかじゃのう、ぬ? トイレに行きたいのか? 少し待て、……ほれ」
神様が手を翳すと何もない空間から個室トイレが現れた。
つくづく魔法って便利だね、何でも出来るじゃん。
「それが魔法じゃからのう、いいから早く行って出して…………、ほ?」
神様は、喋っている途中何か思いついたらしく、黒板にもの凄い勢いで文字と数字を書き始めた。
あの、もう漏れそうなんでトイレ行っていいですかね自分。
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