第十八話 銀色だってさ
町に入る前にマナカードの確認を求められたが、盗賊の襲撃に遭いその時に、潤平はマナカードを紛失したとゆう事を理由に、マナカードの確認を免除され一人だけ町に入れないなんて事にはならなかった。
その横でルリ達は、一人一人きちんとマナカードを提示して滞りなく手続きを済ましていた。
手続きを済ますとルリは盗賊の襲撃に遭った事を、何処かに報告をしにいくため潤平とは別行動になる。
潤平はマナカードを作るため、魔法ギルドと呼ばれている建物に行って、再発行の手続きをしなきゃいけないが、如何せん土地勘と建物の形状が分からなくて困っていた。
そんな山から降りてきたとゆう潤平の設定の為に、ルリは特別にフミを案内役として連れて行く事を提案する。
「フミならば、建物の形も分かりますしこの町の土地鑑もあるでしょう。手続きも速やかに出来ますし、どうでしょうか?」
どうでしょうかと言われても、潤平はチラリと横目でフミさんの顔を見ると、フミさん気にした様子もなく変わらず涼しげな顔をしている。
まぁ、何も知らないで行くより誰か知ってる人がいた方が良いか。
それにさっきからチラチラと、関所の奥から町の喧噪が聞こえてきて、町に入りたくてウズウズしてたんだ。
ここはその提案に甘えるとしましょう。
「そうします、案内よろしくお願いしますフミさん」
「承知しました。精一杯勤めさせて頂きます」
そうして潤平一行は関所を抜けると町の中に入っていく。
潤平にとっては、初めての異世界の町並みなので、目に入ってくる景色がどれも新鮮に映る。
内心めちゃくちゃ興奮して、今すぐにでも駆け出したい気持ちを抑えられずにいると、その前にルリが待ち合わせ場所の決め事をする。
「では私達は衛兵に報告と実家に安否の連絡をしてきます。そうですね大体小一時間程度を目安として、集合は桟橋前のお茶家さんにしましょう」
「分かりました」
そうして潤平は初めての異世界の町並みを知るために、ずんずんと足並みを進めて町の中を歩いて行く。
行き交う人々、そこから飛び交う喧噪、鼻をくすぐる様々な料理の匂い、そのどれもが潤平の興味を引き付けてやまない。
そんな興奮してる潤平の後ろを、案内役のフミさんが静かに付いてきていた。
「フミさん! これは何でしょうか!」
「それは着物の一つですね。寒くなると中に一枚着込むための物です」
「フミさん! これは何でしょうか!」
「それは、戸を滑りやすくするための細工ですね、戸の下にそれを嵌めると扉の開け閉めが軽くなります」
「フミさん! これは何でしょうか!」
「ふむこれは……、失礼します。恐らくこれは魚醤の一種だと思います。地方には様々な魚醤があると言われていますので、これもその一つかと」
その言葉を聞いた瞬間、潤平の体に雷に打たれたかの様な衝撃が走る。
「ま、まさか、この世界には魚醤が存在するのですか……?」
「ええ、醤も酒も塩も砂糖もあります。私達が普段使っていた物は、その中でも高価な物でしたが庶民の人達でも使っていますよ、かなり品質は落ちますが」
マジかっ!
そんなに調味料が存在するのか、どこまで日本風なんだこの国は。
あれ? でもそういえばさっき……。
「前の昼食の時には、今言った調味料の類いはありませんでしたよね?」
「そうですね、非常に高価な物ですので持ち歩いたとしても、少量しか持ち歩きません。それに盗賊共に襲われた時に全て盗まれてしまいました」
なんという事だ、許すまじワドウと覆面の男め、そいつらが盗んだりしなければ、今頃俺は照り焼き位は食えていたとゆう事かっ、ますます許さんぞっ。
……でもそんな事がなければ俺は、フミさん達とも出会ってないんだものな。くそぅ人生は複雑だぜ。
「潤平様先を急ぎませんか。品々を眺めるのは用事を済ましてからでもよくありませんか?」
「あっはい。そうですね急ぎましょう」
いつまでもじろじろと見ているなと、チクリとフミさんに小言を言われる。
そりゃね、フミさんからしたら一々止まって眺める程の物ではないからね後でもいいもんね。
まあ合流してからじっくり一人で眺めればいいか。
潤平は後ろ髪を引かれつつも、その場を後にした。
歩く、止まる、歩く、止まる。
目的の建物まで歩いていた潤平だがその前に有ることが気になって仕方がなかった。
「あの~、フミさん?」
「はい? 何でしょう」
「出来れば、前に歩くか無理なら横に並んでくれませんか?」
「いえ、私は従者ですのでその様なことは出来ません」
「そんな事言っても、今ここにはあなたの主はいませんよ?」
「そうですが、そんな行為は出来ません」
「ええ~っ……」
そうなのだ。先程から何度言っても潤平と一緒に並んで歩いてくれないのだ。
潤平の後ろをぴったりと着いてきていて、これだと案内役も何も、丸で俺がフミさんを引き連れているみたいで気分が悪いのだ。
「後ろにいると案内しづらくありませんか?」
「確かにそうですね」
「それに後ろにいると、フミさんが襲われた時分かり辛いじゃないですか、なので横にいてくれた方がいいかなと思うんですが……」
「そうですね、では」
そう言うと、フミさんは潤平の横にスススッと並んでくれる。
良かった、これで歩きづらいということは無くなる筈だ。
横に並んだフミさんは、背筋が伸びていてとても綺麗な姿勢で静かに歩く。
流石洗練された従者と言うべきか、ただ歩いてるだけなのに絵になる。
潤平はしばらくフミさんの気品がある佇まいに感動して、フミさんのことを横目で何度も眺めていた。
「潤平様」
「はいっ!」
急に、自分の名前を呼ばれた事で潤平は声を張り上げてしまい、フミさんと近くを歩いていた通行人をびっくりさせてしまう。
周りからの注目を少し浴びてしまった事で、恥ずかしくなり、潤平の耳が熱を帯びて赤くなる。
だが潤平は見逃さなかった。
一瞬だったが潤平が声を張り上げた事で、フミさんが驚いた顔をしたことを。
これがギャップ萌えと言うやつか。
フミさんはすぐにいつもの凜とした顔付きに戻ったが、その時の表情はとても可愛く見えた気がする。
「到着しました、ここが魔法ギルドです」
「あっ、そうですか!」
潤平は、フミさんが教えてくれた建物に目線を向ける。
「えっ、これが……?」
フミに案内されお目当ての建物に辿り着く。
そこで潤平が目にしたモノとは……。
◇
「お嬢様、フミさんを行かせてもよろしかったのですか?」
報告のため、潤平と別れたルリ達ご一行は、この町の衛兵の駐屯地を目指していた。
その途中フミの事が心配になったヨリは、本当にフミだけ同行させて良かったのかと、自らの主に問い質す。
「大丈夫でしょう、潤平様なら例え何かあったとしても、対処出来るだけの力は持ってますし、フミもああ見えてかなり場数を踏んでいます、何かあっても切り抜けられると思いますよ」
「いや……、あの……そうじゃなくてその等の本人が大丈夫かって話なんですけど……」
「潤平様が何か危害を加えると? それはないと思いますが、もしそんな事をするのならばこの町に着くまでに、私達を襲っていると思います、それに護衛の件も引き受けてくれる筈がありません」
「でも相手は……」
「ヨリ貴方の言いたい事は分かります、潤平様が男性だがらと言いたいんだでしょう? 私達が散々苦渋を飲まされてきた男性と同じだと言いたいんでしょう?」
「そうです……」
「分かります、私も男性は今でも嫌いです、汚い言葉ですが反吐が出る程嫌いです。この世の全ての男性が消滅すれば良いのにとさえ思います」
「なら!」
「ですが、潤平様は今までの男性とは違う感じがするのです。これは何の根拠もないただの私の感ですが」
「……」
「それに潤平様はいつもどこか上の空じゃありませんか? そんなお方が策略を巡らす性格には見えないのです」
「そうは……」
「見えないと言いたいのでしょう? 確かに盗賊相手にはかなりの暴力性が見えましたが、何か理由があったんだと思いますよ」
「……」
「ヨリ、貴方が潤平様と口を聞かないのも分かります、辛い過去がそうさせているのも分かります、ですが少し見方を変えてみるのもいいのでは?」
「私には出来ません……」
「大丈夫きっと出来ます、何せあなたは過去を乗り越えた強い人ですから」
ルリは、ヨリの手を包み込むように両手で優しく握ってくれる。
ヨリはこの暖かさを、最初に出会った頃の様に感じる、あの時もこうやって両手で握ってくれたのだ。
「さあ先を急ぎましょう、待ち合わせに遅れてしまいます」
ルリは気持ちを切り替えると、もう一人の従者に目を向ける。
だが、もう一人の従者のスミレは二人が話している最中も下を向いたまま、テンションが低いままだった。
「スミレ? どうしましたか?」
「おっ……」
「お?」
「お腹が空きました……」
「ああ」
スミレのテンションが低かったのは、空腹で今にも倒れそうだったから。
それを聞いてルリは、いつものパターンかと納得する。
「でしたら、何か買いながら向かいましょうか」
そう言う主の提案に、スミレは子供みたいに目を輝かせる。
しかし手持ちの金を持っていなかったので、討伐した魔獣の素材を換金して資金を作った。
それを使って食べ物を買い込んでいく。
しばらく甘い物を食べていないので、三人は満場一致で甘味を選ぶ。
そして甘い物を食べたら、次はしょっぱい物が食べたくなる。
そんな事をしながらあちこち食べ歩いていたら、いつの間にか時間が押していた。これにはルリも慌てて急いで駐屯地に向かった。
そうしてルリ達が駐屯地に着いた頃には、待ち合わせの時間を過ぎてしまっていたので、心の中で潤平とフミの二人に謝るのだった。
◆
ルリ達が、魔獣の素材を換金をしようとしている頃、潤平は魔法ギルドの建物の前で立ち止まっていた。
それは何故かとゆうと、建物の形に凄く見覚えがあったからだ。
潤平が日本にいた頃、学校に登下校する時に通り掛かっていた建物の形にそっくりだったからだ。
その建物の名前は銀行。
ガラスやスロープと言った物がなく石と木造だけで作られてはいるが、潤平が見たことのある銀行と同じ景観をしている気がする。
衝撃を受けている潤平を横目に、フミはさっさと進んでいくと一人入り口の方に向かって歩いて行く。それを見て潤平も遅れてフミの後を追うように歩いて行く。
木製の扉を開けると、中はそれ程広くなく向かって右手がお客様スペースで、左手が待合室、その奥が職員のスペースになっていた。
受付は、木製の柵で遮られており下に物を出し入れ出来るだけの穴が空いていた。
(似ている、マジでまんまな気がする、雰囲気といい職員の感じといいそれっぽい建物に見えてくる)
尚、受付の職員は全員が女性で、白い着物と紺色の袴を着て対応にお客の対応にあたっていた。
そしてフミさんは空いている受付に行くと、潤平がマナカードを紛失したため、再発行の手続きをしてくれる旨を職員に伝える。
「再発行の手続きですね、それでは此方に記入の方と魔力の登録と、親指の指紋をお願いします」
潤平は一通り言われた通りに行うと、最後に魔力の登録をする機械に両手を触れるよう言われた。そこに自分の魔力を流し込んでくれと言われたので、魔力を流し込んでみる。
すると魔力を流し込んだ瞬間、機械が淡く銀色に光り輝く。
その光景に潤平が驚いていると、職員にもう大丈夫だと告げられ機械からゆっくりと手を離した。
「はいありがとうございます、色は銀色、強度も上で申し分なし。素晴らしいですねこのこの位の測定値は久しぶりにお目に掛かりました」
「はぁ、ありがとうございます?」
いきなり職員の人に褒められたので、潤平は取り敢えずお礼を言っといた。
「ではそちらにお掛けになってお待ち下さい」
職員の人に後ろの椅子に座ってる様促されたので、潤平は椅子に腰掛ける。そしてその隣にフミがスッと流れるように座る。
待っている間暇だったので、フミさんにさっきの魔力のギンイロトカ何とかの事を聞いてみた。
「フミさん、さっきの魔力の色が銀色とか、強度とかって何のことです?」
潤平の質問に、フミは少し考える素振りを見せると質問に答えてくれた。
「銀色は、その人が持っている魔力量の等級を表す言葉でございます、上から金色、銀色、銅色、青銅色、黒色、白色となっており、潤平様は上から二番目に区分されたという事になっております」
「はえー、じゃあ強度とはどういう事ですか?」
「強度は、魔法の詠唱の時にどの強さまで出せられるかを図る言葉になっております、下なら初級と中級まで、中なら中級と上級まで、上なら上級からのその上まで魔力を込められる強さを表す指標になります」
「へぇーそうなんですかっ。て事は俺って結構凄いんですか?」
「はい。その通りで凄いと思いますよ、これだけの魔力量を持っている人はそうそういませんので、何百万人に一人のレベルだと思います」
「はぁー、だから職員の人も褒めてくれたのか……」
潤平は自分の手のひらに視線を落とすと、開いたり閉じたりを繰り返す。
(あれ? 待てよそう言えば俺って収納の魔法を作ったままだったよな、その場合計測ってどうなるんだ?)
潤平は以前作った収納の魔法が、まだ完成したとゆう通知が来てない事から、本来の自分の魔力量を測れていないのではないかと考える。
収納の魔法は使えるには使えるが、完成したとは言えないのだ。
現に今でもその魔法を作るために魔力が吸われてるし、どれだけ食べて寝ても魔力が完全に回復した気がしない。
日本が丸々一個入る位の総量で作ってしまったので、未だ魔法が完成していないのだ。
潤平は少し冷や汗をかいて、フミに違う質問をする。
「……因みに、これより上って存在するのですか?」
「……? まあ居るにはいます、この国でも数えるくらいしか存在しませんが、殆どが英雄か怪物か天才と呼ばれる類いの者達です。それらは皆国に仕えており総じてサムライと呼ばれていますが……」
繋がったーー!!
何でワドウとか盗賊の奴らが俺をサムライって呼ぶかやっと分かったわっ!!
勘違いしてたんだっ、俺をそのサムライって呼ばれている集団と!
なる程。て事は俺を見た誰かが俺の魔力を見てサムライと勘違いしたんだな。
ようやく謎が解けた。あんなにサムライサムライしつこかったのはそれが理由か、てゆーかそれだけサムライに執着してるって何があったんだよ。
「潤平様ーっ」
一人でうんうん唸っていると、受付の女性に呼ばれたので立ち上がって受付の前に行く。
すると柵の下の穴から、受付の人がカードを渡してくれたのでそれを丁寧に受け取る。
「二回目からの再発行には手数料が取られますので気を付けて下さい。それと大事な物なので紛失しないように。ではお気を付けて」
「ありがとうございます」
潤平はマナカードを受け取ると、まじまじとそれを眺める。
薄い鉄の板で出来ており、表面に名前と指紋それと魔力量の色が塗られている。
潤平は銀色なので銀色になっている。
裏返すと数字が並んでいるが全て零と記入されていて、それ以外は何も書かれていない。
魔法ギルドから用事を済ませて出てくると、緊張していたのか肩の力が抜けて全身が弛緩する潤平。
「本当ありがとうございます、フミさんがいなかったらもっと時間掛かっていたと思います」
「いえ、私に出来るだけの事をしたまでなので」
「そんな事ないっす。本当ありがとうございます」
実際助けがなかったら、潤平は一人じゃ出来なかっただろうなと思っている。魔法ギルドに辿り着くのも一苦労だったと思うし、そこから手続きをしたらかなりの時間が掛かっていたと思う。
「そう言えばなんですけど、このマナカードの後ろに書かれている数字って何ですか?」
「ああ、それはマナカードに貯蓄してあるお金の金額ですね。魔法ギルドで出し入れが出来て、大抵のお店ではマナカードを翳す魔法具があって、そこに翳して会計をしたり他で使ったりします」
物凄いデジタルっ
日本でさえキャッシュレス決済が、普及し始めたのはここ数年なのに。この世界ではそんな技術があったのか。
「凄いっすね、誰がそんな技術作ったんですか?」
「私はあまりそういうのに詳しくなくて……。人の名前とか歴史とか覚えるのは苦手で、そういうのはお嬢様かスミレに聞くと良いでしょう、あの二人はそういう知識に詳しいので」
「なる程、了解です」
こんな技術発明出来る人はそうそういないよな。もしかして神様は俺の他に過去にも、現代人をこの世界に呼んだことがあるのかな。もしそうだったら過去の偉人とか調べればその人について何か分かるかもしれないな。
潤平はマナカードを大事そうに未完成の収納魔法に仕舞うと、フミと並んで歩いてルリと待ち合わせした場所に向かって歩いて行く。
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