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こりすま日記  作者: らいどん


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鏡花読書~小品 その十六(真夏の梅)

『真夏の梅』(大正十五年九月)


青空文庫

https://www.aozora.gr.jp/cards/000050/files/50783_77974.html


 梅干しにまつわる逸話、食品としての好ましさや、それにまつわる美意識を語った随筆。

 初夏になるとやって来る、梅売りの風物、逗子岩殿寺(いわとのでら)の梅で作る梅干しのすばらしさ、京都南地で食べた梅干しの思い出などを振り返る。

本朝食鑑(ほんちょうしょっかん)』から引かれた簡潔な記述が、鏡花にかかると、


 ▶含めば霧を桃色に(ひら)いて、月にも(くれない)照添(てりそ)おう。さながら、食中の紅玉(ルビイ)珊瑚(さんご)である。◀


 などと、龍宮の宝物を賛するようなものに化けてしまう。


 後半は、自家製の梅干し作り。梅干しを干した「二階の物干」というのは、家の裏手にあったのか。すず夫人すだれに並べる梅を裏窓から覗いた鏡花が言う。

 

 ▶「いゝ色いろだなあ。」

 芳紅(ほうこう)にして、鮮潤(せんじゅん)(なり)。思わず唇に蜜を含んで、

「すてき/\。」◀


 好きなものに対しては徹底的に美語で飾り立てるのが鏡花だから、けっして、よだれが出ちゃった、などと下卑たことは言わない(逆に嫌いなものは、呪詛のことばで埋めつくす)。食のエッセイとしても楽しいのだが、鏡花が好きなものを、文飾を尽くしてどう褒めるのかを賞味するための作品でもある。


 さて、すず夫人が蠅よけのために、物干しに張った糸に団扇(うちわ)を下げる。風にひらひらと舞うその団扇に、番町の家の雀のお宿(雀の姿を愛でるために、一階の縁先に作った雀の餌場)に集まった雀たちが驚く。終盤はそのまま、二年前に発表された『二三羽――十二三羽』(大正13.4)で雀の愛らしさを讃えた内容の拾遺となる。



 番町の家の様子がわかる、泉鏡花記念館の『泉鏡花生誕一五〇年記念 鏡花の家』が再版本(自由価格本)になって、41%offでamazon等で売られている。


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