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テトラレンマ

ユーヤは再び目を覚ますと、今度は森の中で横たわっていることに気付いた。

翼竜のような巨大な鳥が天空を馳せ、ユーヤの上に巨大な影を落とす。


両手両足があることを確認。

腕が四本とか六本ありそうな感じはしない。

脚も見たところ、馬の下半身になってたりなんてことはなかった。

翼や尻尾も生えてなさそうだ。


目前の泉まで這って行って自分の姿を確認する。


そこにあったのは、見慣れた冴えない顔。

不細工という訳ではない(はずだ)が、特徴もなく印象に残らない。

どこがどうとは言えないが、なんだか残念。


まごう事なき、佐伯ユーヤの顔である。


神っていうからには翼が生えてたり、マッチョだったり、顔が良かったりするのをちょっとだけ期待したのだが前世の姿と全く変わらない。


ガクリ、と肩を落とすユーヤ。


しかも、着ているのは中学時代の黒いジャージだ。

卒業後も部屋着にして活用していたやつ。

完全に休みの日にインドアを満喫するスタイルである。


――――変わらないのは変わらないので嫌だな。

ガッカリしたような、安心したような、微妙な気分になるユーヤ。


そのとき、背中にちょっと違和感を覚える。

なにか背負っているようだ。

紐を解いて確認すると、竹刀だった。

しかも小学生用の短くて細いもの。

柄の部分にマジックで〝てとられんま〟と書いてある。


――――これが大盤振る舞いの破邪の剣………………。


極控え目にいって、めちゃくちゃ頼もしい。


黒いジャージに竹刀。

完全に田舎のヤンキー、しかも、ひょろひょろだから下っ端な感じがすごい。


――――これで、かんにょんは俺に何をしろって…………。たしか、やさしさをふりまけって言っていたような気はするけど…………。

何をどうしていいのか、ユーヤにはさっぱり分からなかった。

前世でも特にやさしさを振りまいた覚えはない。


§


どれくらい時間が経ったのか。

現実逃避して、お空きれい、と雲一つない晴天を眺めていると、

「何者だっ!!」

怒鳴りつけられる。


振り向くと、そこにはTRPGの中世風の格好をしたおっさん三人組。

それぞれ剣とボーガン、杖を持っている。


――――なんだか、夢がないなあ…………。

一人くらい女の子がいても良いのに。


「その奇妙な格好は何だっ!!」

剣を持ったおっさんが怒鳴り続けて近づいてくる。抜き身の剣がキラリと光る。

「………………へ、部屋着です」

ギリっと睨み付けて、全然信じてない様子の剣のおっさん。

その背後ではボーガンと杖のおっさんがそれぞれ構えて照準をユーヤに合わせている。


仮に剣戟を躱せたとしても、矢で打ち抜かれているだろう。

杖は何が出てくるか全く分からない。

どうみたって勝てる要素はなかった。


「帝国のスパイかっ!!」

「な、何ですか!? 帝国って!?!?」

「しらばっくれるなよ」

ギロっと睨み付けてくる剣のおっさん。

「スパイが目立つ格好をしますかっ!!」

「ぬっ…………」

剣のおっさんは、ちょっと固まった。

――――これは話し合いで解決出来るかも知れない。

しかし、

「面倒だっ!! 何でもいいから、殺してしまえっ!」

ボーガンのおっさんが叫ぶ。

「えええっ」

慌てて、テトラレンマを構えるユーヤ。

「…………木の棒で対抗するつもりなのか」

ふっと笑うと、肩まで剣を振りかぶって思いっきり斬りかかってくる。

「ちょっ………」

ユーヤは咄嗟にテトラレンマを額の上に掲げ、目をつむる。

鉄の剣を竹刀で防げるはずもなく、竹刀もろとも一刀両断されているはずだった――――、しかし、何の衝撃もない。

恐る恐る目を開けると、粒子状になって空気に溶けていく剣の姿。

「なっ―――」

前のめりになって転げてくる、おっさん。

「ちっ――――」

すかさず、ボーガンが放たれる。

目視できないスピードで矢が飛翔。

ユーヤは当てずっぽうでテトラレンマを振るう。

テトラレンマに擦った矢もシュウと粒子状になって消えていく。


「バーニングっ!!」

今度は杖から火炎が放射される。

火炎にテトラレンマを翳す。火炎は消え失せ、杖の先についた大きな宝石がガシャンと音を立てて割れた。


ガタガタガタ、小刻みに震える僧侶のおっさん。

「ははあああ。これは失礼しました」

そのままひれ伏し、土下座をする。

「ど、どうしたっ!?!?」

「お前たちも頭を下げろっ!! 魔導石を砕けるなんて、人間に出来ることではないっ。この方は人間を超越しておわす。神だ。神に違いがない」

僧侶のおっさんの一言に、他のおっさんも続いて脚を曲げる。

「ぶっ、ぶ、無礼を働き、申し訳ございませんでしたっ」

「…………ええぇ」

自分の親父と同い年くらいの男たちに土下座されても、どうして良いか分からない。


――――こ、こんな時なんて言えばいいんだっけ…………?


「…………俺、なんかやっちゃいました?」

かつて読んだ、なろう系主人公のように頭を掻いた。


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