検査入院
「……ねぇ、お兄ちゃん。瑞菜さんは本当にここにいるの?」
「瑞菜の親父さんの話ならな」
大きな白い建物を前にして瑞菜は信じられないようにそう言う。実際オレもこの目で見るまでは信じたくない。
「……とにかく入るぞ」
一度きりの許可証を見せ、オレたちは瑞菜がいるという白畑病院へと入っていった。
「あ、いらっしゃい。とーくん。瑞菜ちゃん」
「「…………」」
暗い雰囲気の中、瑞菜のいる個室へ入ったオレたちを待っていたのは、いつも通りの笑顔をした瑞菜だった。むしろいつもより明るい。
「? 二人ともどうしたの?」
「いや、どうしたもこうしたも……」
「うん……」
「あはは……もしかして心配した?」
「それは当然だろ……」
「私なんか倒れるところ直に見てるし……」
「あはは……ごめんね。心配かけちゃって」
「それで? どうしてここにいるんだ?」
ひとまずの安心はしたが、それでもここにいるということを楽観することはできない。
「ただの検査入院だよ。治療はもう終わってるの」
「お願い瑞菜さん。ごまかさないで」
「あはは……嘘は言ってないんだけどなぁ。明日にはここから退院するよ?」
「瑞菜」
明日退院するという事実自体は喜ばしいことだし、安堵もする。でもそうであるならますますここにいるわけが分からない。
「あはは……こんな形で話すのは気まずいんだけどね」
そう前置きして瑞菜は自分の体のことや、母親のことを語った。
「…………」
「えーと、分かったかな?」
「大体の事情は分かったが……」
「だとしたら、どうして明日に退院できるの? 今の話だと発病したらもう出られないみたいな話だったけど」
「うん。ただの過労だったみたいだから」
「過労? それなのにわざわざ白畑病院に?」
「あはは……ただの過労でも発病した場合でも初期であれば症状は一緒だからね。急激な衰弱。もともと遺伝子的には最初から異常をきたしているし、本当にただの過労かどうかはここでしか検査できないから」
「なるほど」
そういう事なら確かにありえるだろう。
「でも、ここってそんな簡単に入れるものなの? 噂だともっと大変なところのイメージなんだけど」
「簡単じゃないよ。私はもともと入院予定でここに登録されてるから。定期的にここで検診受けたりもしてるし」
「……ま、そんなに大事なことを今まで黙ってたことはあんまり褒められたものじゃないが、無事ならとりあえず良かった」
オレたちを無駄に心配させたこと以外は問題無いだろう。
「…………全然良くないんだよ」
「雪奈……?」
「ねぇ、お兄ちゃん。私瑞菜さんに話があるの。だからその間、部屋から出ていってくれない?」
「はぁ? いきなりどうしたんだよお前」
「あはは……雪奈ちゃんの言うとおりとーくんは出ていったほうがいいかも」
「瑞菜まで……」
いったいどうしたんだ?
「とにかく! お兄ちゃんは1時間くらいここから離れてて」
「…………分かったけど」
訳が分からん。
「あはは……雪奈ちゃんのことは私に任せてとーくんはここを探検でもしとけばいいんじゃないかな。変な所に入ろうとしなければ問題ないはずだよ」
「ん、了解。雪奈、あんまり瑞菜に無理させるなよ?」
「分かってるよ」
雪奈の返事を聞いてオレは部屋から出ていった。




