一つの出会い
「しかし……出て行けと言われてもどこにいけばいいのか」
実際に来てみて分かったがここは想像以上に広かった。白畑の医療系施設の頂点に位置するところだから当然なのかもしれない。
「適当に歩きまわるか……」
溜息とともにそうつぶやきオレは歩き始める。
「……階段か」
歩き始めてそう経たないうちに上へと登る階段を見つける。
(……屋上でも行ってみるか)
そう思ったオレは階段を登っていった。
「到着……っと」
屋上へと続く扉を開けオレは踏み入る。
「ここまで白一色だと壮観だな」
そこに待っていたのは干された白いシーツ。綺麗に並んでいる様子からは白い花を植えられた花壇のような印象を受ける。
(? 女の子か?)
風が吹きシーツが舞った先に遠くを見ている少女を見つける。
(……………………)
その子を見てオレが感じたものはなんだろうか。
「……君、ここに入院してる子?」
ただ、その感じたものに従ったオレはその子に話しかけていた。
「え……? あなたは……」
「ああ、えと……ごめんオレは……」
「海原さん……?」
「って……え?」
なんでオレのこと知って……。
「君、オレとどこかで会って……?」
「あ! す、すみません! 私、永野信二の妹です!」
「あー……永野の妹かー。話には聞いてるよ」
いるということしか聞いてなかったけど。そうかーこの子がー。
「…………って、は!?」
この子が永野の妹?
「こんなに可愛い子があいつの……?」
瑞菜並に長い髪を髪の先端の方で結び、服も病院服のため、いかにも入院患者という様相で印象的には地味ではあるが、それでいて可愛いという感想を持つ。非凡といって差し障りない容姿だろう。
「か、かわ……っ!?」
赤くなり慌てる様子も可愛く、オレは思わず笑みをこぼす。この場面を雪奈に見られたら浮気してると取られても仕方ないかもしれない。
「それで君の名前は? 流石に永野妹って呼ぶわけにはいかないよね」
「あ、はい。加奈です」
「…………また名前に『な』がつく子か」
「はい?」
「いや、なんでもない」
「あの……それで、どうして海原さんがここに? もしかして海原さんが……」
「オレは普通に健康体。幼馴染がちょっとね。まぁその子も検査入院だけで明日には退院できるらしい」
「そうですか。よかったですね」
「むしろ、どうしてここにいるかはオレのほうが聞きたいけど……聞いていいのかな?」
「流石にこの状況じゃ言っても言わなくても一緒だと思いますよ」
「……そうだね」
着慣れた感じの病院服を身に着けているんだ。そうなる理由なんて一つしかないのだから。
「あんまり詳しいことは聞かないほうが?」
「はい。そうしていただけるとありがたいです」
「ん、そっか。分かった。でもそうなると何話せばいいかわからないな」
「海原さん、この間結婚したんですよね? その話を聞きたいです」
「披露宴をしただけだけどね。さて、何から話せばいいのか……」
そんな感じでオレは永野加奈と出会い、時間を潰していくのだった。




