デート=新たな出会い
「アリス、これが今向かっているドライ王国だ。ドライ王国は一応立場としては中立の国だがな。
人身売買や違法薬物取引などが当たり前のように行われてる国だから俺の側を離れるなよ、危ないからな」
「……う~ん、この絵って、初めて見るはずなのに前にも見たことがあるような気がします。なんでだろう?
ボク、こんなの初めて見たはずなんですけれど不思議ですね??」
「……そうか、俺は初めてアリスへこの写真を見せたし、もしかしたら予知夢かなんかで知ったのかもな。そういえばアリスは写真のことを知っているか?」
「いえ、知らない。知らないはずなんです――なのに、なんで?」
晩飯を食べ終わった後。デュランはアリスへドライ王国がどんなところなのか教えるため、前滞在したときに撮った写真を見せながら説明したのだが。
なんでかアリスはこの写真に見覚えがあったようで、ものすごく混乱している。
デュランはそんなアリスの様子を目にして一つの仮説が脳裏へ浮かんだが、アリスの心を落ち着けるのが最優先だと判断し。アリスを抱き抱えて空へと飛び出した。
「キャッ――なにっ!??」
「分かんねぇことを考えても仕方ねぇ!! 夜景でも見て忘れちまえ!!! ハハハッ!!!!」
「――急に抱き抱えられてビックリしました!! デュランのバカ!!! ……でも、ありがとうございます。
あなたのそういう強引で、それでもボクのことを考えてくれるところが大好きです♡ さっきの写真について、教えてください」
「良いぞ!! ちょうど良いから今見えてる景色を撮るか!!! アリス、これ持って」
「なんですか、コレ?」
デュランは嬉しそうに微笑んでいるアリスへインスタントカメラを渡し、空の上からの写真を撮らせてみるとアリスは目をキラキラと光らせながら周囲の撮影を始めた。
さっきまでの謎の既視感のことなど忘れてしまったように、色々なものを撮っていった。
デュランはそれが空元気だと分かっていたが、口へ出すことなくアリスの思うがままに行動させていた。
「……随分とたくさん写真を撮ったな、フィルムは大量にあるから別に良いけど無駄遣いは禁物だぞ??」
「は~い、分かりました!! 気をつけます!!!」
「よしよし、それじゃあさっきの続きを話すぞ?」
「はい!! 分かりました!!!」
デュランはアリスが落ち着いたのを確認すると、ドライ王国で何をするのか詳しく話すことにした。
「取り敢えず明るいうちはドライ王国を見物しながらアリスに今の世界を知ってもらう。そのついでに買い物もする。
その上で夜になったら、アリスがしたいことをさせる」
「ボクがやりたいこと、ですか?」
「あぁ、アリスがやりたいことを全部やったら良い。
……正直、この国は良くも悪くも商人の国だ。だから金でなんでも買える――だからこそ、この国を変えるのはとても難しい」
「そんなに難しいのですか??」
アリスが可愛らしく首を傾げながらそう聞いてきたので、デュランは真剣な顔で頷いた。
「あぁ、かなり難しい。この国の連中は金のことしか頭にないからな。
思想によって変えられる可能性のある分、起源統一教団の方がやりやすいくらいだ」
「……あ、ある意味でラスボスですね」
「www――確かにな!! だけど、ラスボスってよりかは裏ボスが表現としては正しいかもな? この国とは闘う必要がないしな??」
「そうなんですか???」
「あぁ、良くも悪くも金でしか動かないのなら金を払って変えればいい――ある意味で純粋な奴らだよなぁ」
デュランはそうして苦笑しながら天幕へ帰ってくると「明日にはドライ王国へ着くから今日はもう眠ろう。それとも一緒に寝るか」と聞かれたアリスは「……はい♡♡♡」とだけ返事をし。二人で天幕の中へ入っていった。
その後なにか叩くような音とアリスの気持ちよさそうな声が辺りに響き、ヴィンデはその声を聞きながら今日も血涙を流すのでした。
翌朝。ドライ王国へつくとデュランは髪を赤く染めて瞳には赤いコンタクトレンズを入れて変装し、アリスへ白いローブを着せてから門まで歩いた。
荷車はヴィンデに留守番を頼んだ上で置いてきたため、持ち物は道中で倒したモンスターの毛皮や牙などの換金用のものと刀しかないが、旅人など珍しくも無いためモンスターの素材を見せながら売りにきたと伝えれば問題なく門を通過できた。
ここが起源統一教団の支部がある場所ならアリスを通さなかったかもしれないが商人の国であるドライ王国では特徴さえ隠せば、暗黙の了解として多種族の出入りを黙認している。親切心からではないが。
「アリス、おどおどせずに堂々としてろ。その方が目立たない」
「わ、分かりました」
そう伝えても周囲の人族が恐いのか目を閉じて俺の右手に抱きついてきた。
……これはこれで悪くないのでこのままにしておこう。
買い取り所で状態のよかった魔物の毛皮やドラゴンの爪や牙などを売り払い、ある程度の金が手に入ったため表通りから裏通りに入った。
そこら中に浮浪者がいて環境は最悪だが、あいつらは殺気を飛ばせば散るので気にせず進み、デュランの財布をすろうとした子供の財布を逆にすり返し。嫌がらせで中身をばらまいたりしていると目的地に着いた。
「ここが目的地だ、この店の中じゃフードをとってもいいぞ」
「分かりました」
アリスは怯えながらフードをとると目を開けて店内を見渡し、着物などが丁寧に畳んである光景からここが服屋だと判断したのか。デュランに触ってもいいか訊いてから服を見始めた。
そのまましばらくすると柳色の着物を手に取ってからカウンターへ向かおうとしていたが、デュランが咳払いしたことで自身が金を持ってないことを思い出したようで。赤面しながらデュランの側にやってきた。
「これがドラゴーネ金貨だ、これ一枚で一月くらいは暮らせる。買ってきな」
「でゅ、デュラン、ボク。実際にお金を使ったことがないんだけど、大丈夫かな?」
「いいよ、口止め料も兼ねてるからそのまま渡してくれ」
デュランがそう言うとアリスは安心したのか三着の着物を持ってカウンターへと向かい、金貨を手渡して着物を買った。本当は大銀貨でよかったのだが、いい物を見られた礼なので構わないだろう。
そのまま店を出てから奴隷や他の国では非合法な物品などが売られているエリアに入ると、道端へ薬物中毒の子供や春を売る女性がいる。
そんな光景を目にしたアリスは目を白黒とさせていて、とても可愛かった。
「……なんか、よく分からないですけど。すごいですね」
「まさに欲望の街って感じだろ? 多種族をかばったことで起源統一教団に滅ぼされた国は数知れないが、ドライ王国はかばってるんじゃなくて金を搾り取っているだけだからな。
多種族への幇助をやめるように言われても『我が国には多種族などいませんよ、いるのは金蔓だけです。金がなくなったら奴隷として出荷します。なので金が払えるうちは彼らは人族です』と返したそうだ。
ある意味で無敵だよ、商人という生き物は」
「うわぁ、すごいですね。仮にボク達が世界を変えることができても、彼らは変わらなそうです」
「だろうね(笑)」
デュランがアリスとそんな話をしながら笑っていると正面からボロボロのフードの二人組がやってきて「デュラン様、アリス様、お話よろしいでしょうか?」と話しかけてきた。
デュランは謎の二人組を警戒しながら鯉口を切り「何者だ、あんたら」と返事をした。
「黒神様の使いのものです……斬られるかと思いましたが、街中だからか斬らずにいていただいてありがとうございます。
私達はデュラン様へ贈り物を渡しにきただけですので、そこまで警戒しないでください」
「……毎回毎回、お前ら暗夜の剣が騒ぎを起こして、それを俺が解決するっていうマッチポンプの片棒を担がされてんだ。
警戒するなと言われたところで無理だと思わないか?」
「まあ、それもそうですね。でしたらいくらでも警戒してもらって大丈夫ですが、今回は騒ぎを起こしませんので安心してください――今回は」
「……あっそ、で贈り物ってのはなんなんだ? くだらないもんだったらぶっ飛ばすぞ?? さっさと出せ」
「そうかい? ――それでは遠慮なく」
デュランがそう言うとさっきまで丁寧な物言いでこちらと応対していたフードの人物の雰囲気が変わった。
……なんだろう、なんかヤバそう
「送りたいものは二つ、片方はあなたの力を劇的に上げることが出来る腕時計だ。
少しだけつけてみてくれないかな? 危険な物じゃないから安心してくれたまえ!!」
「――説明なしでつける訳ないだろ!? 全然安心できないからな!!! 取り敢えず、それが何か説明しろ!!!!」
「……う~む、そうだな。では少し面倒だが簡潔に説明すると、これの名前は『アクセルブースター』という。
デュラン――君の魔法である天下無双を使っていられる限界時間を五分から十分に伸ばすことができる腕時計型デバイスだ。
黒神からの依頼で私が作った――さあ、説明したからつけろ!!」
「簡潔すぎるだろ!! 一から十まで全部説明しろ!!!」
デュランはアクセルブースターという腕時計型のデバイスを強引に取り付けようとするフードの手を叩き落とそうとしたが、なんでかすり抜けてしまい――そのまま左腕にアクセルブースターをつけられてしまった。
デュランはせめて動けなくなる前に目の前のフードを斬り捨てようとして、むしろ光属性の魔力を取り込むのが楽になったため驚いた。
「な、なんだこれ!? 魔力の流れがなめらかすぎて気持ち悪!!? なんなんだこの機械は!!!!」
「ハハハッ、どうかな私の最高傑作は!! そのデバイスの中にはデュランのありとあらゆるデータが入っている!!! つまり!!!! デュランを徹底的にサポートするための装置というわけだ!!!!!」
「……よく分からねぇけど、なんか腹立つから一発殴らせろ」
「殴られるのは別に構わないが、もう一つの贈り物を先に渡したい。だから殴るのは後にしてくれ。
というわけで着いてきてくれたまえ?」
デュランはそう言いながら歩き出したフードをこの場で叩きのめしたかったが、先程からずっともう一人のフードがこちらを殺気で牽制している。
訳が分からん、このアクセルブースターを渡してきたヤツよりも圧倒的に強そうだ。
あの時、攻撃がすり抜けることに気がついた後、アリスと共に飛び退こうとした俺を殺気だけでその場に縫い止められた。
……非常にめんどうだが、逃げるのは得策じゃなさそうだ。
「着いた。ここだよ」
「……ここは奴隷商人の店か、なんだってこんなとこに??」
「それは残りのデュランへの贈り物が奴隷だからだよ、着いてきてくれたまえ?」
「奴隷が贈り物? よく分からないが入ってみるか」
「デュラン……」
そう言いながら店へ入ろうとしたデュランの手を握りしめ、怖くて涙を流しながらも声を出すのを必死で我慢しているアリスの顔が目に入り、その場で立ち止まってからアリスを優しく抱きしめた。
流れる涙をデュランは自分の服で受け止めながらポンポンと優しくアリスの背中を叩いた。
そうしてアリスが落ち着いてから、店の中へ入った。
「初めましてデュラン様、アリス様、よろしくお願いします。
拙者はこの店で奴隷商をしている某と言う者です、以後お見知りおきください」
「私の名前はリーベだ、よろしく!」
デュランは目の前で丁寧にあいさつをする某のことをかなり気に入ったがフードを取った後、偉そうにふんぞり返るリーベのことは取り敢えずぶっ飛ばしたかったが。
アリスがまだ怯えているので彼女から離れるわけには行かない、なので怒りを抑え込んだ。
そうしていると殺気を向けてきたヤツもフードを投げ捨て――
「私の名前は閃光のフラッシュ――リーベ様の手で作られた正義のアンドロイドだ!! よろしくな!!!」
「……よろしく」
「うわぁ~!! すごいカッコイイ!!! すごいすごい!!!!」
――変なポーズをしながらそうあいさつした。
デュランはそんなフラッシュを変なヤツだと思いながらあいさつをした。
しかし、そんなフラッシュのことをなんでかアリスがカッコイイといい殺意が沸いたが、元気のなかったアリスが楽しそうにしているのは良いことなので我慢した。
……それはそれとして腹が立ったので、八つ当たりでリーベを取り敢えず一発殴った。
「おや、一発で良いのかい? これでも十発は覚悟してたのだが」
「……お前、体が機械で出来ている機人族だろ? そんなもん殴ってもこっちの拳が痛むだけだからな。
敵対行動をするのなら遠慮なくぶった切るが、今のところ残念ながら敵対行動はされてないからな。腹は立つが」
デュランがそう言って矛を収めようとすると、リーベはなんでか不敵に笑った。
「ふむふむ、やはり結婚後のデュランは少し丸くなるのだな。
前のデュランなら問答無用だったのではないか? 大変興味深い」
「……腕の一本くらいなら、持って行ってもいいか?」
「構わないが? 腕なんていくらでも作り直せば良いからな。お近づきの印に一本どうだい??」
「イカレ女が」
「褒め言葉をありがとう」
デュランは話が通じない判断すると踵を返してアリスの方へ嫌みを言ってから向かったが、そう返されて「褒めてねぇ……」げんなりとしながら言ってからその場を去った。
そして興奮しながらピョンピョンとフラッシュの周囲を跳ね回っているアリスを回収し、二人でリーベ達から話を聞くことにした。
……アリスはウサギちゃんかな、可愛いね♡




