仲間=新たな未来
「ルイスとノア――ドワーフ族の王族の二人だ。
私達が彼らと共に新たな旅のメンバーとして加えてもらうため、今回は多少回りくどいことをさせてもらった。
申し訳ないが頼めるかい? デュランにアリス」
「ハハハッ、バカかテメェ!! ――寝言ってのは、寝てるときに言うもんじゃないのか??」
「……まあ、当然そうなるよな。
私達、暗夜の剣は世界征服を目指す秘密結社――だからこそ信用ならない。そういうことだろ??」
「まあ、それもあるが俺はアリスとの二人旅が気に入ってるんだ。
大所帯になるなんて冗談じゃない――俺はッ!! アリスとイチャイチャしたいんだよッ!!? 邪魔すんな!!!!」
「ッ!!? ――デュラン♡♡♡」
デュランはそうして愛を叫んだ後、アリスを抱きしめてキスをした。
アリスのことを満足するまで堪能したことで彼女は息も絶え絶えとなり、恍惚とした表情で気絶した。
そんなアリスをお姫様抱っこしながら「――というわけで、お前らなんていらない。アクセルブースターだけありがくもらっておく」と冷たく言い放った。
そのままデュランは店を出ようとしたが「いいのかな~、私達の力を借りないと黒神様には勝てないのに」と言われて足を止めた。
「……俺が黒ずくめに勝てないとはどういうことだ? 俺とアイツにそこまでの差があると?? 俺はそうは思わないが」
「本当にそうかな? 少なくとも大森林では軽くあしらわれていたそうじゃないか???」
「…………それで、何が言いたい」
「簡単に言えば、黒神様はデュランへ塩を送ったんだ。
力の差が開きすぎていては闘いが楽しめないからな、トレーニングのサポートやノウハウを伝えてデュランを強化するのが私達の仕事というわけだ」
「ッ!!? ――分かった。ついてこい」
デュランは強い怒りから奥歯を軋ませながらリーベ達の同行を許し、店を出てしばらく歩いてから起きたアリスに何かやりたいことがあるか聞いたが。
特に何もないとのことだったので仕方なくリーベ達の分の天幕や食料などを買ってから、そのまま荷車が置いてある場所まで全員で向かった。
そうして荷物を全て積み終わり、出発しようとしたタイミングで『デュラン様、少しお話し出来ますでしょうか?』とアクセルブースターの画面に謎の少女の姿が映し出され、デュランは動きを止めた。
「……急になんだお前は、アクセルブースターの補助機能か何かか?」
『はい、私は汎用サポートAIのアイです。よろしくお願いします。
このアクセルブースターはデュラン様のサポートと天下無双の負担軽減のため、リーベ博士が開発したものです。
普段の魔力の流れを操りやすくしたり、天下無双の限界時間を短縮詠唱なら十秒から一分に。完全詠唱なら五分から十分まで伸ばすことができますし、その反動も十分の一ほどにできます。
後はスペースファルコン、スペースドラゴン、(仮称)空中戦艦の三つのメカを管制する機能もあります。
それから何らかの緊急事態で詠唱が使えない場合でもアクセルブースター側面のボタンを押せば三十秒間だけ詠唱なしで天下無双を使うことができます。エネルギー量の関係上、一日一回だけですが。
――何か質問はありますか?』
「それだけおしゃべりなお前が出発寸前まで話しかけてこなかった理由は?」
「リーベ博士にドライ王国を出るまで話すのを禁じられていました。
そして今がちょうどいいタイミングだと判断し、話しかけました」
デュランはうるさいAIだと思いながらも性能はかなり高そうだと考えながらアイへ「気になるからスペースファルコン、スペースドラゴン、空中戦艦ってヤツを呼んでくれ」と伝え、それらが来るのを待った。
するとさほど待たずに3つのマシンが到着した。
「キュァァァァッッッッ!!」
天を裂いて現れたスペースファルコンは空中で少しの間ホバリングしてから着地すると、デュラン達の前でうやうやしく頭を下げた。
少し遅れて到着したスペースドラゴンは特に挨拶などをすることなく、その場へ座り込んだ。
最後に到着した超巨大戦艦は空中で今の状態のまま待機を選択した。
『スペースファルコン! バイクモード!!』
デュラン達がポカンと口を開けて驚いているとアイがそう声を上げた。
するとスペースファルコンが巨大な体を圧縮しながら変形し、変形が終わると車体の側面をデュランに向けてきた。
「……乗れってことか、分かった」
「デュランデュラン! ボクもボクも!!」
「あぁ、一緒に乗ろう」
すぐにその意図を読み取ったデュランはハンドルを握った。
しかしデュランはバイクや車の運転は持ち前のセンスで出来るが免許は持っていないため、目の前の未知の乗り物を操れるか不安だったのでアイへ訊いてみると。
運転が原付よりも簡単に作ってあると言われ、実際に運転してみると拍子抜けするほど簡単に操ることができた。
「アハハハッ、すごいすごい!! 景色がすごい速さで流れてく!!!」
「アリス! 空も飛べるみたいだぜ!! いくか!!!」
「そうだね行こう! 夢幻の彼方に!! そしてそのさらに先へ!!!」
そのまま最高速度まで一気に加速した後、バイクはその勢いのまま空の上へ飛び出し。夜になるまで二人は大空の中、ドライブデートを楽しんだのでした。
……色々と濃くて草。
フォレスト王国。
雲よりも高く成長するジャイアントフォレストと呼ばれる巨大な木だけでできた森の上へ木人族と鳥人族が築いたこの国は、地上からでは発見できないほど高い場所にある。
そのため現在進行形で世界を支配している起源統一教団の被害を唯一逃れた多種族の国であり、その情報を知った他の種族はこの国のことを桃源郷と呼んで多くの種族がこの国を目指したが。
海からの湿った北東風が年中、ジャイアントフォレストにぶつかり雨を降らせるため。
ジャイアントフォレストの生えている場所は水が溜まって海とつながってしまってる上に木竜という凶暴なモンスターの群れの縄張りでもある。
その影響でフォレスト王国にたどり着けるのは全体の0.01%ほどでしかなく、そのためこの国は難民に悩まされることなく。
今日も木人族と鳥人族は平穏無事に日々を過ごしていた。
そんなフォレスト王国の城の中でこの世界で起こるありとあらゆる事件や戦争の裏で必ず暗躍している全ての黒幕――クラウンは黒神に足止めされ、デュラン達と共に旅立つことが出来なかったため。しょぼくれていた。
「――まったく、なんで我が輩がデュラン達と合流するのを邪魔したのでござるかww、黒神殿ww
我が輩はただ推しカップルを眺めてニヤニヤしたかっただけでござるのに、酷いですぞww」
「ハァツ、推しカップルね。それはある意味で私にとってもデュランとアリスは推しカップルだが。
だからこそ、クラウン――いや、カオス。お前のような愉快犯が二人に干渉しようなどと許すわけがなかろう。
大人しくこのフォレスト王国でデュラン達を待つんだな」
「平和なこの国に英雄であるデュラン達が来るのは目的を達成した後なのでござるよww、だから前もデュラン達のパーティーへ合流したのに酷いでござるよww」
「そんなもの、初期地点をフォレスト王国へした貴様のミスだろう。
私の知ったことではない――いい気味だ」
黒神がそういうとクラウンは「酷いでござるよぉ」と泣き始めたが、まだござるなんて口癖をわざとらしく使っているので全然余裕がありそうだ。
そんなことを思いながら黒神がクラウンを眺めていると、クラウンは「それで? 計画通り、デュラン達の育成は上手くいってるのかい?? 黒神」と質問してきた。
「……愚問ですね、そもそもそのために私はデュラン達ではなく貴様側に着いているのだから。これでデュラン達の育成がちゃんと出来ていなかったら骨折り損のくたびれ儲けだ。
デュラン達の勝利に私は全てを賭けているのだからそんなことになったらたまらない、最悪すぎる」
「なるほどなるほど~、それで? デュラン達の成長のための踏み台である黒神殿の強さはいかほどでござるかww
黒神殿のせいで暇でござるし、我が輩が見てあげるでござるよww」
「……それでは遠慮なく」
クラウンからそう言われると黒神は青筋を立てながら剣を振るったが、指と指の間で白羽取りをされてから「これで本気でござるかw、随分と弱々でござるなww」と煽られた。
本命の蹴りでその大嫌いな顔面を潰そうとしたが、あっさりと交わされ「危なかったでござるww」と余裕そうに笑っていたが。
一瞬遅れてクラウンの頬が裂け、不快な笑い声が止まった。
「……お見事でござるww、ちゃんと修行しているようでなによりww
黒神殿は才能的にはデュラン殿に劣りますからなww、これからも精進あるのみですぞww」
「ご心配どうも、そういう貴様こそ体が鈍っていないだろうな? 殺せそうなら殺しに行く。
貴様の方こそ、よく精進するんだな。フォレスト王国へデュラン達が来るまでどうせ何もすることがないんだから」
黒神はそう捨て台詞を吐いてから出て行こうとしたが、その背中へクラウンが「――本当に我が輩が鍛えていいと思っているのか、黒神。デュランはもう3回も我が輩に負けているが」といつものござる口調抜きで話しかけてきたので黒神も真面目に返答することにした。
「何があろうと必ず勝つ――デュラン・ライオットとはそういう男だ。
貴様の方こそ、よく首を洗って待ってることだ」
黒神はクラウンへそう言い残してから立ち去って行った。
クラウンはその言葉を存分に味わった後、体を震えさせながら呵々大笑した。
それから悪辣な笑顔を浮べながら――
「それはとても楽しみだな――あぁ、待ち遠しい」
――はるか彼方の未来を見つめるのでした。




