目標=世界平和
アリスがデュランに命を救われてスピード婚をしてから大体一週間くらいの月日が過ぎ、人族であるデュランの存在が里へ受け入れられるようになり。アリスの体が完全に治った。
……本当はもうとっくに治っていたのだが、デュランが頑なで譲らなかったので出発が一週間も遅れました。
それはそれとしてアリスは親友であるエルフ族の少女と出発前夜に二人で色々語り合ってました。
「結婚おめでとう、アリス。どうなの? 例のあなたを救ってくれた英雄様は??」
「デュランのことだよね!! ベッドも闘いもすごいんだよ!!! お〇ん〇ん、すごく大っきかったの!!!! なのに床上手でね!!!!! 本当に寝かしてくれなかったんだ!!!!!! ボクね、初めてだったのに――」
「――あぁ、はいはい。取り敢えずその旦那さんにゾッコンなのは分かったから。
……それで? アリスは本気でこの里を出て行くの?? あなたが一番よく知ってるでしょ、この世界での私達がどういう扱いを受けるのか。もしかしたらアリスのお母さんみたいに捕まって奴隷にされるかもしれない。
そう分かっていて、いくんだよね――アリス」
「……うん、だってボクはデュランのお嫁さんだからね。デュランと一緒にいたいんだ」
そう言いながら自身を見つめてくるアリスのまっすぐな眼差しを見返しながら、アリスの親友はかつて己がしてしまった。
罪深く、最低な行いを思い返し、強く――とても強く後悔していた。
『ごめん、なさ、いッ! 本当はわかってる、あなたに罪がないことも。こんなことをしたってしょうがないってこともッ!!
だけど許せなかった! 母様はあの人族に殺されたのに!! なんでその娘が生きてるのよッ!l 返して、私の家族を返してよっ』
八つ当たりだと分かっていてそう言ってしまった。私なんかを、アリスはただ優しく抱きしめて――
『ごめんね、ボクはお母様のために生きるって決めたから死ぬことはできない。
それでもあなたの悲しみを受け止めることくらいはできると思うんだ、こんなボクでも』
――と言ってくれた。
そしてその日から今まで以上に親や子供を失った私達に寄り添い、大切なものを失ってから止まっていた時計の針を動かしてくれた。
そしてアリスのことイジメていた私なんかを親友と言ってくれて、こうして仲良くしてくれている。
アリス自身も悲惨で悲しい境遇なのに、それを感じさせないほど強く生きている――そんなアリスのことを誇りに思うし、この子の親友であることが何にも代えがたい私の財産だ。
だからこそ何度謝っても謝り足りないのに、アリスはいつも「そんなに気にしなくていいよ? ボクの父親が全部悪いんだから」と言って苦笑するだけ。
そんなはずはないと言いたいけれど、本気でいってそうなアリスに私は何も言えなくなってしまった。
「――本当におめでとう、アリス。幸せになってね。
それから何かあったらすぐに頼ってね、私はあなたの親友なんだから」
「うん、ありがとう! ボク、幸せになるね!! それからないとは思うけれど、何かあったらすぐに頼るね!!! その時はよろしくお願いします!!!!」
だからこそ、アリスがやっと掴んだ幸せを何に変えても守る。
私はアリスの英雄であるデュランさんみたいに強くないし、無力かもしれない。
それでもアリスのために命をかける――例え、死ぬことになるとしても。
これは私だけでなく、アリス・リーフグリーンという女の子に救われた私達エルフ族の総意だ。
……だから、必ず幸せになりなさいよ。アリス。
「「「「「「アリス先生!! 行っちゃやだァ!!! もっと一緒にいてよ~!!!!」」」」」」
「あわわ、みんな落ち着いて? 別に今生の別れってわけじゃないんだからさ。ね??」
「「「「「「それでも嫌なの~!!! 先生行かないで!!!!」」」」」」
「……あははっ、困ったなぁ。これは」
アリスは里中の子供達にもみくちゃにされ、助けを求めてデュランへ視線を向けたが、デュランは無言でサムズアップをするだけで助けてくれそうになかった。
そんなデュランの様子を目にして色々と諦めたのか、アリスは子供達の相手をすることにしたようだ。
そんな光景を目にしてデュランは鼻高々だったが、アリスの母親であるフール・リーフグリーンが近づいてきていることに気が付くと「フールさん、おはようございます」と言ってから深々と頭を下げた。
「頭なんて下げないでください、デュラン様。あなたは娘の恩人なんですから」
「……いえ、最愛の妻――アリスの母親であるフールさんに敬意を払うのは当然のことです。
あなたの娘さんと俺の結婚を認めてくれて、感謝しています――本当にありがとうございました」
「……感謝したいのは私の方です。私が愚かなことをしてしまったせいでアリスにはたくさんの苦労をさせてしました。
だからこそ、アリスがあなたのことを笑顔で紹介してくれた時は――本当に嬉しかった。
デュランさん、アリスのことをよろしくお願いします」
「えぇ、アリスを必ず幸せにしてみせます――このどうしようもない世界をぶち壊してでも」
デュランが狂気的な顔で言うとフールは苦笑しながら「頼もしいわね、本当に。どうか――よろしくお願いします」と笑顔を返し、もみくちゃになっているアリスを助けに向かった。
それを視界に入れながらアリスが苦しんだ原因であるアリスの父親は絶対にぶっ飛ばすと心に決め、もみくちゃにされて服がしわしわになったアリスを出迎えに行った。
そして「もう!! なんで助けてくれなかったの!!!」とプリプリと怒っているアリスをなだめ、お詫びにダンスへ誘い。里の中央へ二人で歩き出した。
「……フォローするつもりだったけど、予想以上にダンスが上手いな。誰に習ったんだ? アリス??」
「えっへん、忌み子でも一応お姫様だからね。お母様や長老に教わったんだ!! びっくりした?」
「あぁ、蝶のように美しいアリスにびっくりしたさ――本当に綺麗だ」
「えへへ、デュラン大好き!! これからよろしくね♡♡♡」
「こちらこそよろしく頼む、俺のアリス」
そうして記憶に残る思い出を作ったデュラン達はエルフ族のみんなから盛大に見送られながら旅立ち、大森林の入り口に(ヴィンデが)隠しておいた荷車を回収した後。
今の世界をアリスへ見せたいのと物資の補充を目的に中立国であり、商人の国でもあるドライ王国を目指して進み、夜になるとその場で荷車からテントなどを取り出して野営の準備を始めた。
「なあ、アリス。改め聞くけどアリスの目標は戦争を終わらせることでいいんだよな?
……正直言って戦争をなくすのは簡単だが――とても難しい。
矛盾しているように感じるかもしれないが本当のことだ。今の侵略戦争は止められるかもしれないが、アリスも知ってると思うが多種族も含めた人類は感情の生き物だからな。
戦争を終らせたところで第2第3の戦争が待っているかも知れない――それでも戦争を止めたいか??」
「――それでもボクは戦争を終わらせたいです。
もう、親を亡くして泣く子供や子供を亡くして泣く親がこれ以上増えないように」
「……分かった。それじゃあ俺が考えた戦争を一時的にでも終らせるための作戦を教える。
今の世界は知っての通り起源統一教団がその強大な科学力と剣神と共に旅をした起源神ワールドが世界を治める役割を人族へ与えたという、宗教的な権威を背景に人族が世界を支配している。
これを突き崩すにはただ力で起源統一教団を打ち倒すだけじゃ、世界中で今度は人族がゲリラ戦を仕掛けてくる可能性がある。
そうなったら泥沼の戦争は終らなくなる。下手しなくても起源統一教団を打ち倒す前よりも最悪なことになるかもな?」
「……では、どうすればいいのですか? デュラン」
デュランはそう聞いてきたアリスへ腹黒そうな笑顔を向けながら「だから、俺達は!! 新たな剣神一行になる!!!」と伝えた後――こちら目がけて突っ込んできていたドラゴンを斬撃を飛ばして一刀両断した。
「剣神? それはあくまでも伝説のそん――」
「――その通り、伝説の存在だ。本当に実在したかも定かじゃねぇし、なによりも神を打ち倒したという剣士なんておとぎ話としか言い様がない。
だけど、別に本当にいたかどうかはどうでもいいんだよ?
あくまでも俺達は剣神一行を名乗って堂々と真っ正面から起源統一教団を叩き潰し、その姿を見せ続ければいいんだよ」
「なっ、そんなことができるんですか? デュラン??」
「あぁ、できる。正直今まで面倒にしか思っていなかったが、俺はどうも剣神の生まれ変わりだと思われてるみたいでな。
黒神のせいで色々と面倒な目にあったことがある。最悪だと思ってたが、アリスの役に立ったのならよかったかな?」
「うん? 黒神さんって、ボク達へご祝儀を渡してくれたし、もしかしていい神様??」
「………………かもな」
デュランはそう言いつつも自身の行く先々でデュランが英雄視されるよう立ち回る黒神のことは嫌ってたし、今でも出来ることなら黒神のことを|斬り殺してやりたくてしょうがないが。
アリスがキラキラした笑顔で喜んでいるのを目にし、仕方ないので半殺しで済ませてやることにしました。
それはそれとして圧倒的に黒神の方が強いので闘う時には全力で殺しに行くが、なので殺してしまってもしょうがないな、うん。
――お前を殺す(デデン!)
話し終わった後。デュランは時間が経って落ちてきたドラゴンを受け止めてから下拵えをし、晩飯してドラゴンステーキと白米を食卓へ並べた。
初めて食べるドラゴンステーキとご飯を目をキラキラと輝かせながら食べたアリスは、たくさんおかわりをするのだった。




