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第21話「外側の数え方」

静かだ


 何も重なっていない


 音が一つずつ分かれて聞こえる


 足音


 風


 呼吸


 全部が別々に存在している


 重ならない


 混ざらない


 それが少しだけ不自然に感じる


 歩く


 地面がある


 ちゃんと踏める


 沈まない


 遅れない


 その一つ一つが、


 はっきりしている


 はっきりしすぎている


 周りを見る


 広い


 何もない


 さっきまでいた場所が、


 どこにも見当たらない


 白い布も


 広場も


 八十七も


 存在しない


 最初からなかったみたいに


 でも、


 覚えている


 全部


 消えずに残っている


 振り返る


 何もない空間が続いている


 境界はない


 入口もない


 戻る場所が消えている


 閉じられたんじゃない


 “最初から繋がっていなかった”みたいに


 そういう形に変わっている


 その理解が、


 そのまま残る


 消えない


 前を見る


 遠くに何かある


 小さい


 動いている


 近づく


 歩く


 距離がちゃんと縮む


 今度は繰り返さない


 一歩ごとに進む


 その感覚が、


 少しだけ安心に近い


 でも、


 完全じゃない


 近づく


 人がいる


 一人


 立っている


 止まっている


 こちらを見ている


 距離が詰まる


 輪郭がはっきりする


 顔が見える


 知らない顔


 なのに、


 どこかで見た気がする


 近づく


 相手が口を開く


「出たのか」


 普通の声


 重なっていない


 遅れない


 その自然さに、


 一瞬だけ戸惑う


「……ああ」


 答える


 自分の声も、


 ちゃんと外に出る


 遅れない


 消えない


 続く


「中は?」


 聞かれる


 言葉を探す


 探せる


 消えない


「……同じだった」


 言える


 途中で消えない


 最後まで続く


 相手が少しだけ頷く


「そうか」


 それだけ


 余分がない


 でも、


 切れない


 会話が続いている感じがある


 違和感が少ない


 少ないはずなのに、


 何かが引っかかる


 相手を見る


 一人


 確かに一人


 重なっていない


 数えられる


 数えなくてもわかる


 “一人”


 そのはっきりした数が、


 逆に不安になる


 少なすぎる


 そう感じる


「ここは……外か」


 口に出す


 確認するように


 相手が少しだけ考える


 間がある


 自然な間


「外、って呼んでるだけだ」


 曖昧な答え


 でも、


 曖昧なまま残る


 消えない


 視線をずらす


 遠くを見る


 同じように、


 小さな影が点々とある


 人


 複数


 でも、


 距離がある


 重ならない


 それぞれが離れている


 広い


 広すぎる


 その広さが、


 少しだけ怖い


「何人いる」


 聞く


 自然に


 相手がこちらを見る


 一瞬だけ沈黙する


 その沈黙が、


 少し長い


「数えてない」


 答える


 曖昧


 でも、


 誤魔化している感じはない


「数えられるだろ」


 言う


 今なら


 数えられる


 はっきり見えるから


 そう思う


 相手が首を横に振る


「やめた方がいい」


 短い


 断定


 その言葉に、


 妙な重さがある


 残る


 消えない


「……なんで」


 聞く


 理由を


 相手が少しだけ視線を落とす


 足元を見る


 それから、


 ゆっくり口を開く


「合わなくなる」


 短い


 でも、


 意味が広がる


 理解する前に


 感覚が反応する


 “数が合わない”


 中と同じ


 いや、


 少し違う


 今度は、


 固定されていないのに


 合わなくなる


 その矛盾が、


 静かに残る


 消えない


 遠くの人影を見る


 数えようとする


 一、二――


 途中で止める


 やめる


 理由ははっきりしない


 でも、


 やめた方がいいとわかる


 体が理解している


 相手がこちらを見る


 少しだけ表情が緩む


「それでいい」


 小さく言う


 その言葉が、


 妙に納得できる


 納得してしまう


 視線を外す


 空を見る


 色が変わっている


 ゆっくりと


 時間が進んでいる


 止まっていない


 繰り返していない


 でも、


 どこかで感じる


 完全じゃない


 何かが足りていない


 その感覚が、


 中にいたときと繋がる


 “たりない”


 同じ言葉が浮かぶ


 消えない


 隣に立つ相手が、


 同じ方向を見る


 少しだけ間を置いて、


 口を開く


「最初は、みんなそう言う」


 小さく


 でもはっきりと


 その言葉が、


 静かに残る


 消えずに


 広がっていく


 この場所でも


 まだ終わっていないと


 はっきりわかる


 違和感は、


 形を変えて続いている


 そのまま、


 時間が進んでいく

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