62食目、二郎系ラーメンその2
「お待たせ致しました。こちら、二郎系ラーメンのヤサイマシマシニンニクカラメで御座います」
カイトの前に置かれたそれは、まるで山だ。小さな山を乗せたドンブリだ。
麺が見えず、モヤシの山の頂上に摩り下ろしニンニクが満遍なく掛かっている。
パキン
「いただきます」
カイトは割り箸を割り、周囲の客達が見守る中で挑戦する。
ムシャムシャとモヤシの山を食べていく。自分で育て、この店に提供している。
うん、美味い。自分で育てているから美味いの確実だが、調理がダメなら無駄になってしまう。これは、100%いや、120%素材の美味さを引き出している。
自分が育てた作物を美味く調理してくれる。これ程、嬉しい事はない。
でも、流石にこんなに多いと味に飽きて来る。そこで頂上にあるニンニクを少量取り食べると、またもや箸が進む。
それにテーブルにある調味料で味変させるのも良し。七味やラー油にお酢なんか味変に最適だ。
「やっと麺が見えて来た」
モヤシによって隠れていたスープと麺が顔を出す。残りのモヤシは、スープに浸しながら食べるのも良し。極太麺と一緒に食べるのも良し。
カイトは先ず念願の麺を啜る。濃厚なトンコツとニンニクが絡み合い、口から喉に駆け巡る際にガツンと来るインパクトに今までの疲れが吹き飛ぶような快感を噛み締めていた。
「これだよな。やっぱ二郎系っていうのは。俺の料理スキルでは中華は、てんでダメだからなぁ」
ズズズゥゥゥゥ
極太麺を啜り、残りのモヤシをたまに食べ、スープをレンゲでゴクンと飲む。
ぷはぁー、日本で流行った理由が分かるジャンクな美味さ。手が止まらない。
逆に本場の中国ではNOと断固拒否されそうだ。同じ地球人でも味覚の感知方が違うらしく、実際に日本の昔ながらの中華そばを、そのまま中国で売ってみた日本人がいたそうだ。結果は、惨敗。売れなかった。
同じ事が、この異世界でも言える。トンコツの独特な匂いが苦手らしい。
トンコツ以外のラーメンは大人気で飛ぶように注文が入るが、トンコツに関しては売れない日もある。
匂いの壁を超えて食べる事が出来れば、クセになる事間違いない。
でもまぁ、トンコツを食べる事が出来てもその頂点たる二郎系に挑戦するにはハードルが高い。あの山を見たら尻込みしてしまう。
でも、カイトはそんな山を難なくスープまで食す事が出来る。日本でいた頃よりも難なく食えてしまう。
ガブッ
「このチャーシューもうまぁ」
極厚のチャーシューは、口に入れた瞬間に溶ける。噛まなくても飲み込める。
カレーは飲み物と言う輩はいるけど、正にこれに限ってはチャーシューは飲み物だ。
煮込まれていたタレも十二分に染み込んでおり、これだけでもご飯は5杯は行けそうだ。
「煮玉子も好きだわぁ。黄身がトロトロしてて」
やはり、煮玉子といや黄身がトロトロ具合に限る。タレを十二分に吸ってるのに、このトロトロ感が堪らない。
錬金術を極めようとも技能に縛られる。料理スキルに関しては中華とデザート以外なら作れる。
そう中華とデザート以外はだ。煮玉子は何故か中華に入ってしまってるらしく、ここまで美味く作れない。
流石は中華に愛されし料理人である悠真である。ここまで繁盛するだけはある。
「良く見ると、麺に柚子の皮が練り込まれている」
この濃厚トンコツスープに合わせてサッパリするように工夫したのだろう。柚子とトンコツの香りが中和されて心地良い。
ゴクゴク
「ぷはぁー、全部飲んでしまった」
日本で全部飲んでしまったら脂や塩分過多とかで身体に毒だが、この異世界では魔法や技能がある影響からか?カロリー消費が日本の数倍はあるらしく、問題はない。
それでも、あの量は驚かれる。
「うーん、今ので腹4割ってとこか」
ボタンを押す。
「はーい、ただいまぁ」
「二郎系をニンニクカラメで、ご飯大」
「繰り返します。二郎系ニンニクカラメ、ご飯大ですね?」
「はいそうです」
「かしこまりました」
今度は野菜無しで注文する。そして、この濃厚トンコツスープで、ご飯が無いのはやっぱり辛い。
「お待たせ致しました。二郎系ニンニクカラメとご飯大でございます」
いざ、禁断の食い方をやるとするか。白いご飯の上に麺を乗せ、トンコツスープを回し掛ける。
行儀悪いが、トンコツラーメン丼の完成だ。米と麺を一緒に食べる。これが、また堪らない。




