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「やだな~父さん、僕だよ、僕」
「覚えていないの?ひっどいなぁ~、ちょっと傷付いた」
20歳くらいの若い男は、さっきからずっと男のことを父さんと呼ぶ。男も27歳だから、彼とはそんなに歳は変わらない。彼と男の関係性を尋ねられれば、親子というよりかは兄弟だ。
「父さん?何の嫌みだ?」
「俺はな、生まれてこの方彼女が出来たことがないどころか、経験もまだない!」
男が怒るのも無理はない。家に不法侵入してきた不審者は頭もおかしいようで、自分のことを父さんと呼んで、親しみ深く絡んでくるのだから。これなら素直に現金を要求された方がまだマシか。
「僕、光一です!」
「表向きは一番光る存在になってほしいって意味らしいけど本当は、父さんが好きな漫画の敵のキャラクターから付けられたって。人間とカリフォルニアコンドルのハーフで、あんまカッコよくないキャラクター。あのキャラクターが好きとか父さんセンスないわ~」
「人間とカリフォルニアコンドルのハーフ?」
「ああ、コウイチのことか。コウイチはな、敵キャラクターながらストイックでカッコいいんだよ。完全な悪じゃないし、彼なりの正義を持っている。コウイチの魅力は分かるやつだけ分かればいい」
確かに男の好きな漫画に人間とカリフォルニアコンドルのハーフの敵キャラクターは出てくる。名前はカタカナでコウイチ。男はそのキャラクターが一番大好きで、男の子が生まれたら光一と付けるつもりでいたが、このことは誰にも話したことはない。いや、夢の中で良くんにだけは光一とつけたいと言ったか。自分にとって結婚は夢のまた夢だと思っていたから、あくまでそれは、理想いやただの妄想だと思っていた。
「お前、いくつだ?」
「ぼ、僕?今は、20歳」
「ははっ。俺は27歳だから、お前と7つしか違わない……お前の父さんなわけがないな。7歳でお前を生まないと計算が合わないぞ、7歳、あの時は男の子も女の子もみんな平等に友だちで、女の子をそういう感情で見たことはない。俺の初恋は、11歳の夏だから、亜実ちゃんっていう女の子、告白できずに終わった恋だけどな」
「ははっ。いや~面白いな~父さん」
「僕は未来から来たんだ。僕の住む未来では、タイムマシーンが開発され、あ、これは、そう遠くはない未来で起こるから、楽しみにしててね、詳しいことは言えないんだけど」
「それで、未来では20歳の誕生日を迎えると、誰でも1年間だけ、自分好きな所にタイムスリップすることが出来るんだ。過去限定なんだけど……」
「なんか~技術的に、過去に行くタイムマシーンは作れたけど、未来に行くタイムマシーンは作れなかったらしくて、それは作った人の力不足?あ、こんなこというと作った人がすぐに怒るんだけどね。タイムマシーンというものを作っただけで俺は偉いんだって」
若い男は未来人だと言うが信用ならない。未来人というわりには格好に未来感がない。白黒ボーダーにダメージ加工のデニムパンツと今時の若者とそんなに変わらない。いや、今時の若者の方がもう少しおしゃれだ。
「やっぱりおかしい。警察呼ぶぞ」
男は、にわかには信じがたい。彼が未来から来たということよりも自らが結婚して子どもがいる将来が全く想像できないでいた。男は警察に助けを求めようとしている。
自分ではこの状況をどうすることも出来ないからだ。男は勇気はない。家族や友だちのような親しき関係の人の前だけではカッコばっかつけてるが、本当は臆病者のビビリだ。ラーメンの替玉を頼む勇気すらないから基本的にラーメンは大盛りを頼む。モデルガンを猫に向けて不平不満をぶつけている時点で、察しはつくだろうが。
「警察?僕を捕まえるんなら時空間警察でも呼ばないと……まあ、時空間警察の番号が何番かは父さんは分からないと思うけど。警察に電話したところで、イタズラと思われる可能性もあるけどそれは大丈夫なの?」
時空間警察とは、名前にもあるように主に、時空間を利用して罪を犯したものを取り締まる警察官のこと。タイムマシーンが一般的に広く使われるようになってから新たに作られた警察組織。タイムマシーンを使ってのギャンブルで一定額以上儲けたり、タイムマシーンの悪質に使用するものなどが捕まる。時空間警察に逮捕されると、最低で懲役23年、450万円以下の罰金。タイムマシーンを使用する1ヶ月前に受ける研修で学んだことを守ってさえいればまず捕まることはない。
「…………」
イタズラと思われる。そんなことを言われると急に不安になる。警察に電話するだけで緊張する。自分は、悪いことしていないのに今までの悪事がすべて暴かれるのではないか?ポイ捨てとか、借りパクとか逆に自分が逮捕されたらどうしよう。もし、彼が本当に未来からやって来た未来人だとしたら、警察を呼ばれたときの対策もしてそうだし。突然 こいつが目の前から消えたらいたずらだと思われる。
本当に、未来から来たのなら色々と聞きたいことがある。危害を加えてきそうな感じもないし、少しだけ様子を見るとするか。結局、男はビビって警察に電話をするのをやめた。




