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うたへうたえ  作者: うらひと
1章

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3/9

1-C 『その部屋はさぞ寒いだろうマフラーを持ってきたよとドア越し伝える』

禁 複製転載・AI学習

 ()()の家の()()り駅が近づく中、心の中で(うず)()いていた気持ちが大きくなっていた。『余計なお世話かもしれないけれど、一声だけでもかけたい』と。


「あの、(あん)()ちゃん」

「どした?」

()()ちゃんの家、(かえで)(ちょう)の方、だよね」

「うん? ……ああ、そっか。止めはしないけど、すぐはお(すす)めしないよ」

「分かってるんです。でも、どうしても行きたくて」


 一つ手前で降りていく()()を見送って、(あん)()が『似た者同士で世話焼きだねえ』と(つぶや)いていたのもつゆ知らず、早足で近くまで向かう。


「会わなくちゃいけない気がするけど、なんでだろう」


 (はだ)(さむ)くなってきた(にち)(ぼつ)後の街道を歩く。落ち葉も増えてきて、ぐんと寒くなりそうな時期。


「――『()かしては (みちび)くような追い風で ()()()たち 道行く私』……」


 ふと思いついた一首を、メモアプリに書き記してから見回すと、見覚えのある背格好の少女がいた。


()()ちゃんっ」

「えっ、あれっ、()()ちゃん?」


 マフラーもせず(ふる)えていた()()が鼻をすする。


「――風邪(かぜ)ひいちゃうよ」


 (かばん)からポケットティッシュを引っ張り出して、『これ使って』と()()ける。あとこれも、これも、とあれこれ取り出す()()に、されるがままになる()()

 伝えようとしていた言葉も忘れてしまい、なんとかひねり出した言葉が。


「ええと、あの。追いつけるように、ベースの練習、(がん)()るね」


 手を(にぎ)って、冷たい()()の手に(おどろ)いて、温めるように()った。さらに、もう一つと使い捨てカイロを(にぎ)らせて、(きびす)を返して駅へと向かう。訳もわからず(ほう)けたまま、完全防備にされた()()を放置して。


「何であそこまで持たせたんだろ……」


 やりすぎだったことに気が付いたのは、()()り駅に着いてからだった。マフラーも()()けてしまったので、寒いのは寒いけれども、逆に()ずかしさで体が()()ってしまっていた。

 従姉(いとこ)とは、もちろん今も(れん)(らく)を取り合っているけれど、このことをいう気にはなれなかった。今どき、そういう感情があるのは分かっているし、その気持ち自体はほとんどの人が持ちうるものであることも。

 一方の()()が温かい気持ちになっていたことは、()()はまだ知らない。関わり始めてさほど()っていない仲間なのに、(さそ)った(かの)(じょ)自身を大切にしてくれる子だった。

 まだ少し引っかかる。それでも、その『導き』は確実に、()()の背中を()していた。

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