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錬金術?いいえ、材料工学です。授かったスキルで海洋国家の覇者になります!  作者: 秋澄しえる


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第87話「建設開始」

 伐採が終わったウルカニア島は、まるで別の場所みたいだった。東側と南側のハンノキは残されてるけど、それ以外はすっかり更地になって、湿地や地面が露わになってる。


「すごい…数日でここまでできるもんなんだ」


 隣でアディも驚いてる。


「ルカ、三番衆の人たち、本当にすごいね」


「すごすぎだよ。こんなに早く進むなんて思ってもいなかった」


 島の北よりの中央、少し高くなった場所が工場予定地だ。そこにマルコさんが立って、大勢の三番衆を前にしている。


「いいか!今日から本格的に始めるぞ!まずは地盤だ!地盤がしっかりしてなけりゃ、何を建てても無駄になる!」


 マルコさんの声が響くと、三番衆の人たちが頷いた。


「杭打ちが終わったあとのコンクリートによる地盤作りは、ランに任せる!」


 え?ランさんが前に出た。


「ランは、コンクリートの扱いを練習してきた。おれたちの誰よりも詳しい。だから、コンクリートに関してはランの指示に従え!」


「了解!」


 三番衆の人たちが声を揃える。ランさんが、こっちを見て小さく頷いた。僕も頷き返す。ランさん、頑張ってたもんね。



◆◇◆◇◆



「さあ、始めるぞ!まずは杭打ちだ!」


 マルコさんが合図すると、停泊地から六隻の船がやってきた。でも、普通の船じゃない。船体が平らで、甲板の両側に、巨大な櫓のようなものがいくつか立ってる。


 見るからにバランスが悪そうな、歪な船だけど…


「あれは…」


「杭打ち船だ」


 ランさんが説明してくれた。


「あの船の上に、地魔法使いが乗ってる。あそこから杭を打ち込むんだ」


「船の上から!?」


 杭打ち船が、工場予定地の近くに停泊した。甲板には、十人以上の人が並んでて、船の傍らには、大量のハンノキの丸太が積まれてる。これが杭になるのか。


「準備はいいか!」


 マルコさんが叫んだ。


「いつでも!」


 船の上から、返事が返ってきた。


「よし!始めろ!」


 その瞬間、ズドン!と地面が揺れた。杭が、地面に打ち込まれた!


「うわ!」


 アディが驚いて僕にしがみつく。でも、それだけじゃなかった。ズドン、ズドン、ズドン、ズドン!次々と、杭打ち船が移動するごとに杭が打ち込まれていく!地魔法使いたちが、一斉に魔法を使ってる!


 ズドドドドドッ!


 連続で地面が揺れる迫力に、僕は目を見開いた。杭が、まるで雨のように打ち込まれていく!一本、二本、十本、二十本…あっという間に、工場予定地が杭だらけになっていく!


「こんなの…人力じゃ絶対無理だ」


 これが魔法の力なんだ。


 これが、海の民の力なんだ。


 杭打ち船は、少しずつ移動しながら、次々と杭を打ち込んでいく。


 密集してる。本当に密集してる。数十センチ間隔で、杭が並んでる。


「あれだけ密集させれば、強固な地盤になるな」


 ランさんが言った。


「元が軟弱な地盤でも、これなら大丈夫だ」


「すごい…」


 僕は感動してた。そして、遠くを見ると、セレニアの方からも人が集まってきてる。市民たちが、遠くから見物してる。


「何が起きてるんだ!」「地面が揺れてる!」「あれは…海の民か?」


 騒ぎになってる。まあ、そりゃそうだよね。こんな派手な工事、見たことないもん。



◆◇◆◇◆



 杭打ちは、丸一日かかった。そして、翌日。今度は型枠の設置だ。


「潮を見ろ!」


 マルコさんが叫んだ。


「干潮になったら始める!」


 海の水位が、少しずつ下がっていく。工場予定地の一部は、海に近い。満潮時には、すっかり地面が海水に覆われる場所。だから、海水が入り込まないようにしないといけない。


「よし!今だ!」


 マルコさんの合図で、三番衆が動き出した。木製の型枠を運んできて、杭の周囲に設置していく。函みたいな形で、これでコンクリートを流し込む場所を作るんだ。


「水魔法使い、準備!」


 ランさんが叫ぶと、青い服を着た人たちが前に出た。五人、六人…十人くらいいる。


「型枠内の水を押し出せ!そして、海水の侵入を防げ!」


「了解!」


 水魔法使いたちが、手を前に突き出した。その瞬間、型枠内の水が、ザアッと外に押し出された!


「え!?」


 僕は驚いた。水が、まるで生き物みたいに動いてる!そして、型枠の周囲に、透明な壁のようなものが現れた。


「水の壁…!」


 海水が、型枠に近づけない。水魔法で、水を押しのけてるんだ!


 よく見ると、さっき杭打ちをしていた地魔法使いの人たちが型枠を固定している。そっか、そういうこともできるのか。


「すごい…」


 僕は感動してた。これがなかったら、海に近い場所でのコンクリート工事なんて無理だよ。


 これまで魔法と言うと、アリアさんの水魔法とマッテオ兄さんの火魔法とアレッサンドロ兄さんの風魔法しか見たことなかった。どちらかと言えば、攻撃的な魔法の使い方。だから、こんな魔法の使い方があるなんて考えもしなかったよ。


「よし!完璧だ!」


 ランさんが満足そうに頷いた。水魔法使いたちは、まだ魔法を維持してる。汗をかきながら、必死に水を押しのけてる。


「ご苦労!もう少しだけ頑張ってくれ!」


 マルコさんが励ました。



◆◇◆◇◆



 型枠の設置が終わったら、次はコンクリートだ。ランさんが、コンクリートの材料を確認してる。


「火山灰、石灰、砕石…全部揃ってる」


「うん」


 僕もチェックした。


「配合は?」


「火山灰三、石灰一、砕石六」


 ランさん、練習しまくってたもんね。


「じゃあ、混ぜるぞ!」


 ランさんの指示で、三番衆が材料を混ぜ始めた。大きな桶の中で、火山灰、石灰、砕石、そして水を混ぜる。ドロドロの灰色の液体ができた。


 これが重労働!でも、これだけの人数がいれば大丈夫なのかな。


 あれ?さっきの地魔法使いの人たちが魔法で混ぜてる。元は土だから地魔法が効くのか!これはすごい発見!


「これがコンクリート…」


 三番衆の人たちが、不思議そうに見てる。


「本当にこれで固まるのか?」


「固まる。信じてくれ」


 ランさんが断言した。


「よし!流し込め!」


 マルコさんが合図すると、三番衆が、コンクリートを型枠の中に流し込み始めた。ドロドロのコンクリートが、型枠の中に広がっていく。


「水魔法使い、まだ頑張ってくれ!」


「了解!」


 水魔法使いたちが、まだ水の壁を維持してる。すごい集中力だ。コンクリートが、型枠いっぱいに広がった。


「よし!完了だ!水魔法使い、解除していいぞ!」


 ランさんが叫ぶと、水魔法使いたちが、手を下ろした。水の壁が消えて、海水が戻ってくる。でも、型枠がしっかり守ってるから、コンクリートには影響ない。


「お疲れ様!」


 マルコさんが水魔法使いたちに声をかけた。みんな、疲れた顔で笑ってる。


「固まるまで一日…いや、念のため二日かな」


「そうだな、その方がいいだろう」


 あとは、待つだけだ。



◆◇◆◇◆



 二日後。ランさんが、型枠を外し始めた。三番衆も集まってて、みんな、期待と不安が入り混じった顔をしてる。


「本当に固まってるのか?」


「さあな…」


 ランさんが、型枠の一部を外した。その瞬間。


「…なんだこりゃあ」


 マルコさんが呟いた。そこには、灰色の、巨大な岩盤があった。まるで一枚岩みたいに、滑らかで、硬そうだ。


「すげぇ…」


 三番衆の一人が、コンクリートを叩いてみた。コンコン。硬い音がする。


「石だ!石になってる!」


「うそだろ!?あのドロドロが!?」


「すげぇ!こりゃすげぇぞ!」


 三番衆が、次々と驚きの声を上げてる。マルコさんが、コンクリートの表面を手で撫でた。


「これがコンクリートか…」


 マルコさんが、ランさんを見た。


「ラン、こいつはものすげぇぞ」


「ええ」


 マルコさんが、拳でコンクリートを叩いた。ドン。びくともしない。


「これなら、百年経っても大丈夫だな」


 僕も、コンクリートに手を触れた。冷たくて、硬い。そして、滑らか。完璧だ。


「やった…」


 僕は思わず呟いた。コンクリート地盤、成功だ!


 マルコさんが三番衆を見回した。


「この上に、工場を建てるぞ!」


「おう!!」


 三番衆の声が、島中に響いた。



(第87話「建設開始」終わり)



◆◇◆次回予告◆◇◆


「やっぱり実務経験がたくさんある人たちは違うなあ。そして、魔法の使い方もすごく勉強になった!『海の民』ってやっぱりすごい!ウルカニア島のことは、マルコさんとランさんにお任せして大丈夫!…だから、僕は気になっていたことを調べることにした」


「次回、『古代の叡智』。天才というのは、たくさんいるのかもしれない」

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