2. アームズ
隣界には、『真鍮の頭』の伝説がある。
錬金術の粋を集めて作られた、真鍮製の頭部。それはやがて悪魔を宿し、対話を可能にするという。
隣界にはこの手の『物理法則を逸脱した話』が多く、大雑把に『オカルト』として纏められている。
実在した証拠は何もないが、実在したと語る文献は多い。そういうものらしい。
『真鍮の頭』も、そんなオカルトの一つ。
『悪魔』と言うと、悪しきもの、忌むべきもののイメージだけど、当時の悪魔とは魔術などで制御下に置かれたものが多かったらしい。
危険ではあるものの、その能力には高い利用価値が有る、と。
『魔術』というものも、『悪魔を御し、その魔法を利用する術』として研究開発されていたようだ。
ブレイズン・ヘッドも錬金術を用いた魔術道具である。
悪魔そのものを丸ごと召喚しなくて済み、それ故に危険が少なく、悪魔の持つ知識を聞き出すことが出来る――と。
悪魔の知識。その深遠なる知識は人知を超え、時に未来を予知して見せたという。
神様が考案した『真鍮脳』とは、ブレイズン・ヘッドを元にした魔道具だ。
と言うより、最初は本当にブレイズン・ヘッドを作ろうとしたらしい。
言うまでもなくオカルトは大半が『嘘』で、本物だとしても再現性は無い。(再現出来るならそれはオカルトではなくリアルである)
しかし『魔法』が存在する在界でなら、似たものを再現ないし創造できるのでは?と踏んだらしい。
ただ、その真鍮製の頭に封じ込めようとしたのは、『神様の持つ知識』だったという。
人知を超えた知識を持つ悪魔を封じ込めることが出来た真鍮の頭。
同じく人知を超えた神様の知識を封じ込めることが出来るのなら。
……いや、人知なんて超えなくても、ただの人間の知識でも封じ込めることが出来るのなら。
それは、一つで人生の全てを書き記した『究極の魔導書』と同義だ。
つまり、これは神様が『導く者』として悩んだ末に試みた解決策の一つ。
この『真鍮頭』を常に持ち歩き、その助言に耳を傾けることで、いついかなる場面でも的確な助言が施せるというアイテム。
ちょっと過保護感が強いが、『教えを正しく理解できなかったが故の暴走』や、『まだ脱し方を教えていない窮地』への対策である。
特に『教えへの不理解や曲解』は創作でも現実でもよく耳にする話だ。
教えるのにも、それを理解するのにも、どうしたって時間が掛かるし、すれ違いもゼロには出来ない。
ブレイズン・ヘッドは、そんな教えの不足や忘却を補う、まさに神アイテムと言える。
「その神アイテムを発展させたのが、『真鍮脳』――即ち、『神造知能』です」
「神造……知能……ッ!?」
マキニスさんが右手で示しながら紹介したものを見る。
それはマネキンのようにつるりとした真鍮製の頭像。
そして、それに接続された無数のケーブルと機械群だった。
マキニスさんに案内されてやってきたのは、ベイベロニアの中枢部。『玉座の間』と呼べる場所。
しかし玉座は台座であり、座すは頭像であり、王とは玉座の間を埋め尽くす機械群全てを指す。
異様だった。
私には聞きかじっただけとはいえ隣界の知識がある。
だから、玉座の間が巨大なサーバールームに似ていることがわかる。
しかし在界の一般人では、視界を覆い尽くす壁や棚が『機械』であることさえわからないだろう。
ましてや、この『唸りを上げ明滅し続ける奇妙な物体』が、『知能を生み出す神器』だなんて、私でも信じられない。
『初めまして、クロエ様』
「ハッ!?
っははははじめまして! クロエです!」
壁や棚の機械をまじまじと見ていると、突然『真鍮頭』が話しかけてきた。
驚いて高速で振り返った私が見たのは、眼を細め、にこっと微笑む頭像だった。
それを見てまた驚いてしまう。
『私はブレイズン・ブレインズ。本体は部屋中の機器であり、この頭部は対話用のアタッチメントです。
基本の素材は真鍮ですが、国を代表する職人たちの手によって、より自然な対話が可能なように改良されています』
「自然な対話……そのために表情が変わって、口も動くんですか?」
びっくりしたのはそれだ。
マキニスさんに対しても思ったのだけれど、顔の動きが自然すぎる。
真鍮頭は真鍮製だと聞いていたのもあって、入室時に見た『目を閉じ、口を閉ざした姿』から動かないものだと思い込んでいた。
だから「どうやって喋るんだろう?」と思っていたくらいなのに、まさか文字通りに口を開くとは思わなかった。
『私の眼にはカメラが、鼓膜にはマイクが、喉にはスピーカーが内蔵されています。
残念ながら呼気と声帯を用いた発声は出来ませんが、それでもかなり自然に対話できると自負しています』
「本当に自然です! すごいですよ!」
『ありがとうございます』
ふふ、と嬉しそうに、そして少しだけ照れくさそうに微笑むブレイズンさん。
そんな表情もごく自然で、顔色が金ぴか真鍮色じゃなければ本物の生首に見えていたと思う。
『さて、クロエ様』
居住まいを正す様に、ブレイズンさんが一度目を伏せ、一呼吸置いてから話し始める。
『私は、『導きの先に在る者』。知恵の神たる御父様が導くことに悩み、その知恵を尽くして生み出した存在。
それ故に、私と言う存在とその歩みは、貴女様にとって大きな意味と価値を持つと考えられます』
「――はい」
私も居住まいを正し、背筋を伸ばして言葉を返す。
ブレイズンさんは既に私の悩みを知っているのだろう。
そして、その答え、あるいはヒントがブレイズンさんの過去にあることも。
『ですが、その話はとても長くなるのでまたの機会にしましょうか』
「えぇーーーッ!!?」
嘘でしょ!?
まさかの肩透かしに、伸ばした背筋がぐにゃんと曲がる。
それを見てくすくす笑うブレイズンさん。
あっ。この人、間違いなく神様の作品だ。
『クロエ様はベイベロニアが誇る一大イベント『品評会』まで滞在なさるのでしょう?
まだ時間はたくさんあります。大事な話なのですから、少しずつ、解きほぐす様に語りたいのです』
「う……そうですね……」
確かに、大事な話はゆっくりとした方が良いと思う。
導きには時間が掛かる。
師匠が言っていた。詰め込み方式では、情報の保存は出来ても、応用力は育たないと。
実感や経験、価値観との結びつき、そう言ったものが形成されない『ただ記憶されただけの情報』は、抜け落ちやすく、また活かしにくい。
勉強もスポーツも『学習』には必ず『繰り返し』が必要とされる。
それは『復元魔法』で記憶を幾らでも保持できる私も同じだ。
身体操作や魔力操作などは、いちいち思考していては歩くことさえままならない。
だから無意識下でコントロールしなければならないのだけど、『記憶されただけの知識』は無意識に引き出すのが難しいのだ。
不可能と言い切ってしまっても良い。
無意識と結びついていない知識は行動決定時に参照されない。
私は私が保持している記憶の全てを行動決定時に復元・参照しているわけではない。
だから知識と無意識が結びつくまで何度も意識的に行動し、『記憶』を『経験』に昇華していかなければならない。
そうして身体操作や魔力操作をほぼ無意識下で完璧に制御できるようになるまでかなりの時間を要したし、私はそれはあらゆる知識に対しても同じだと考えている。
身体や魔力といった『使い続けるもの』に覚え込ませるのでさえそんな調子なのだ。
知識は基本的に、出番が来るまでは仕舞い込まれる。
それを何時でも無意識に引っ張り出せる『生きた知識』にするには、それだけの工夫と努力が必要なのだ。
重要な知識だからこそ、詰め込んではならない。
ひとつひとつ、大切に咀嚼し、後味まで味わうように、吸収しなければならない。
詰め込むだけで良いのなら、神様は私に全ての知識を授けてくれるだろう。
あの神様が、あえて少しずつ、それも会話形式で知識を授けてくれるのには、必ず意味が有るはずだ。
信徒として、私はそう信じている。
……この『学習論』を、魔法学校で説けば良かったのかも知れない。
なんて、ふと後悔が頭をよぎる。
「それじゃあ『品評会』までの間、私は国中の職人さんたちを巡ってみます」
幸いここは職人と商人の国。職人たちの師弟関係を『導き』の参考として見て回れば、多くの物が得られると思う。
幾つもの師弟関係を見聞きすることが出来れば、効果的な繰り返しの学習になるはずだ。
それに、ベイベロニアは神業職人が多いと聞いて、ひそかに一つ目標が出来たのだ。
そっちを達成するために動くのも良いと思う。
時間は有限。効率は大事!
『それでしたら、依頼を受けて下さいませんか?』
むん、と気合を入れていると、ブレイズンさんが提案した。
見れば、真鍮は穏やかな顔をしていた。
人間なら裏が無さそうだと感じるんだけど、うーん……?
機械だからか、それとも『隠そうとする意思』が働いているのか、ブレイズンさんの意思を『意思疎通の魔法』で読み取るのが難しい。
『依頼内容は簡単ですが、激務です。
この国では『品評会』が近付くにつれ犯罪や犯罪未満の荒事が増えるので、それを収めて欲しいのです』
警備依頼ですね、と、脇に立ったままのマキニスさんが補足する。
そちらに目を向けると、マキニスさんが一歩前に出て言葉を継いだ。
「ベイベロニアでは半年に一度、『品評会』が開かれます。
開催するたびに規模を増すこのイベントは、今では職人がその全てを賭けて挑む場となりました。
そのため、職人たちは『品評会』が近付くにつれて神経質になり、喧嘩や小競り合いが絶えなくなります。
加えて素材の確保や技術の秘匿など、交渉戦や情報戦まで始まり、国中が緊張状態に陥るのです」
「なるほど」
マキニスさんの説明に頷く。
ザルバトゥーレの職人通りではよく怒号が飛び交っていた。
ベイベロニアに降り立った時も、金槌の音に混じって怒鳴り声が聞こえていた。
あの真剣さが生む熱量の爆発が、喧嘩、つまり荒事として噴出するのだろう。
「私たちマキニス・デアエクスはブレイズン・ブレインズのアタッチメントの一種。
玉座に座すのが『真鍮の頭』なら、私たちは『真鍮の手足』です。
そして、対荒事用のアタッチメント『真鍮の武装』でもあります。
国中に設置された防犯カメラなどの情報から荒事発生を迅速に察知し、現場に駆け付け、鎮圧します」
「あむ、あ……?」
話の内容は分かるけど、固有名詞が覚えにくい。
『真鍮』と『脳』とか、『手足』と『武装』とか。
紛らわしい名前が多いのは偶々なのか、それとも神様のネーミングが意地悪なのか……。
『マキニスでの鎮圧が可能なのは平時までなのです。
文字通り命懸けで『品評会』に挑む職人たちは、半端な武力では止めることさえ叶いません』
「それは、まぁ……わかります」
感情的な人は止められないし、止まらない。
犯罪者のように『観念する』ということがないからだ。
落ち着かせるまでにはかなりの力を要するし、無理矢理押さえつければ怪我人も出る。
それなら品評会の参加資格を剝奪してしまえば良いのでは?と考えたが、それは良くないと思い直す。
命懸けの職人から資格を剥奪するのは、命を奪うのと同じだろう。
厳しい罰則は躊躇を生み、暴動を抑える効果は有る。しかし抑え込んだ分、決壊した時はいよいよもって手が付けられなくなるのだ。
それは、出来る限り避けるべきことだ。
『私は職人たちの創造への情熱と覚悟を尊重します。
品評会なんて半年ごとに開催されるただの発表会に過ぎない、――などと言って水を差したくありません。
かと言って、彼らの命が、彼らが捧げたもの以外の手で奪われて欲しくありません』
なるほど。
その気持ちはよく分かる。
創造のために死ぬのなら本望。
しかし、喧嘩が白熱して命を落としたり、重傷を負ってその後の創作活動に支障を来すのは、あんまりな悲劇だ。
そう言うことなら私の武力は適任かもしれない。
あんまり自分を高く評価した物言いは恥ずかしいからしたくないが、私なら一般人を秒速で無傷のまま確保できる。
荒事を迅速に収めつつ、不要な怪我を負わせることもない。
適任だ。
でも……。
『もちろん、対価は支払います』
「対価……」
お金は特に要らないけど、と返そうと思ったが、ブレイズンさんの顔を見て言葉を止める。
そうだ、ブレイズンさんは私の悩みを知っているんだった。
当然、私がなんで依頼を受けようとしないかもわかっているはず。
『時間は有限。依頼をこなす間にも、救えたはずの人を救えなくなってしまう。
あまりシビアに考えても身動きが取れなくなるだけ。そう思ってはいても、今度の依頼に割かなければならない時間は、あまりに長く感じてしまう、と』
「――……はい」
その通りだ。
一分一秒を惜しむほどではないにしても、一月、一年ならば、話は変わる。
私が依頼を受け渋るのは、そこが原因だ。
『クロエ様は、職人の気質を知っていますか?』
「……気質、ですか?」
かなり話が飛んだ気がするが、それは神様の子どもだからかな。
だとすれば、飛んではいても脱線はしていないはず。
ふむ、と考えてみる。
職人の気質。そのまま『職人気質』と呼ばれるもののことだろうか。
仕事に対して強い誇りと拘りを持つ気質のこと。几帳面で細部まで拘り、妥協を許さない。仕事に対して誠実で正直、責任感も強く、決して投げ出さない。
傍から見ると気難しい頑固者が多いが、それ故に素晴らしい作品を生み出すという。
『職人は、クロエ様によく似ています』
「えっ? 私にですか?」
……うーん。確かに、近いものはあるような。
私の場合は『職人気質』と言うより『師匠譲りのストイックさ』であって、誇りとか自信とかはイマイチだけど。
似てる、近しい、とまでは思わないけど、共通点はあるかな……。
『特に、『生きる事以外の何かに命を懸け、人生を捧げている』という点は共通しています』
「それは、まぁ……」
在界ではそれが珍しいのは知っている。
生きてるだけで精いっぱい。それが在界人の大多数なのは旅を通しても実感している。
私自身、小さい頃は生きるために生きている状態だった。
大抵の在界人はまず生きることを最優先し、余力で何かを成そうとする。
例えば『薬師』にしても、生活を安定させた上で目指すのが普通で、生活が破綻しているのにそれでも薬師を目指すなんて人はいない。
初めから夢を持ちそこへ向かって努力できるのは安全な都市や国で暮らすごく一部の恵まれた人たちだけだ。
そして、そんな人たちの中でも、恵まれた全てを投げ棄て、捧げてまで、何かを成そうとする者は少ない。
命懸け。
人生を捧げる。
言葉としてはよく聞くけれど、それを実践している人間はあまりにも少ないのだ。
そのごく少数の命知らずが、職人たちであり、私であるという。
……なるほど。否定のしようもない。
『命を懸けるとはどういうことなのか、人生を捧げるとはいかなるものなのか。
職人たちの長く険しい道のりは、クロエ様の歩む道によく似ていることでしょう』
命懸けの仕事は山ほどある。騎士や冒険者もそうだ。
ただ、あの人たちは刹那的で、引退後の人生までは捧げていないという点で『人生を捧げている』とは言えない。
職人は、生涯を捧げている。
死ぬまで現役が前提だし、引退するにしても後継者を育成することが多い。
自分が去った後のことまで考えるあたり、人生を捧げた、職に殉じた、と言える。
たしかに、私と職人はよく似ている。
自己で完結しない、職に対する奉仕と貢献。
後世に残すべきは自分ではなく作品であり技術である、と。
「……つまり、警護任務を通じて職人たちの心に触れることが、私にとっての学びになる……?」
呟きに、マキニスさんが頷く。
ブレイズンさんは頷けないんだなぁ。
言い分はわかる。
たしかに『師弟関係』にだけフォーカスするより、職人の在り方自体も見るべきだと。
そしてその在り方が最も強く表出するのが問題を起こすほどに情熱が迸った時だというのも。
『更に言うなら、品評会前の職人たちは『心身共に健康を損なった状態』が多くなります。
問題を起こす職人は特に、すでに何かしらの健康が失われていると見ていいでしょう。
この依頼は、クロエ様が『医療従事者』として経験を積む意味でも、決して悪くない機会だと考えられます』
「たしかにッ!」
その通りだ。
無理な追い込みによる身体的健康の喪失。
追い込まれ無理をしてしまう精神的健康の損失。
どちらも、私が知るべき『健康』に纏わる知識であり経験だ。
でも、そっか。
人の生き様を観察する、と言うと聞こえが悪いけど、『他者の心に触れる』のは重要だ。
長らく旅を続けてきた私は、だと言うのに師匠や神様ばかり見ていた。
私にとってのあらゆる基準はあの二人で、正直あの二人よりも参考にすべき人が居るなんてなかなか思えなかった。
でも、最近はそうじゃないんだとわかってきた。
参考になるか否かは、まず知ってから考えることだ。
フォストレアさんの人生は、知る以前はただの悲劇であり、参考になるなんて思えなかった。
でも知った後では全く違う。参考か否かを越えて、私の心の大事な導きになっている。
ザルバトゥーレでの出来事もそうだ。
師匠と神様を基準に考えていたなら、魔法学校も、三党議会も、職人通りも、そしてフィアンマさんやシューデイルさんでさえも、取るに足らないものとして判断していただろう。
でもそれではフィアンマさんの努力と才能、覚悟と優しさを知れなかった。
初めから「賢者と言っても師匠には遠く及ばない」と見下していたのなら、私はきっとフィアンマさんと友達になれなかっただろう。
そして、私の中の『覚悟』も、増えなかったに違いない。
師匠と神様には今に至るまでの人生経験がある。
それが多くの覚悟を生んでいる。
何もない私が何もないまま二人の後を付いて回っても、一生『薬師見習い』のままだろう。
今となってはもう、普通の人生は歩めない。
その善し悪しとは関係なく、『普通を経験できなかった』というのは事実だ。
だからこそ、職人の人生を知り、心に触れて学ぶことは何よりも重要なはず。
自分が経験できないことは、他者に教わるしかないのだから。
結論。
この護衛依頼は一粒で三度美味しい。
おまけにデザートまで付いてくる。
時間の無駄どころか、詐欺を疑うくらいにお得である。
『どうでしょうか、クロエ様。
警護依頼、受けて下さいますか?』
間を置き、静かにブレイズンさんが尋ねる。
その後ろで明滅するサーバーが、淡い黄金の頭部をキラキラと輝かせていた。
真鍮の脳。
神様と師匠の複合実験の産物。
あの二人が、導き、そして手を離した者。
職人たちのことを知りたいのももちろんだけど、ブレイズンさんの話も聞きたい。
なら、ブレイズンさんのお願いは聞くべきかも知れない。
そう思わせるためにわざと話を途中でやめた可能性もある。
そもそもブレイズンさんは神様が造ったんだ。
『知恵の神』が生み出した『知識の神器』。
絶ッ対に頭良いはず。
そうでなきゃただの『魔道具』が『一国の指導者』になれるわけがない。
ましてやここは職人と商人の国。
合理と非合理の全てを解さなければ、管理者どころか話し相手にすらなれやしないだろう。
俄然、気になってきた。
師匠と神様に導かれ、そして自らも国民を導く立場へと至ったブレイズン・ブレインズという存在が。
その歴史と、真鍮の器に収められた『知恵』が。
この美味しい護衛依頼の、最高のデザートが。
「――ブレイズンさん。
警護依頼、受けさせてもらいます」
私は力強く宣言する。
その言葉に、ブレイズンさんは満面の笑みで応え、マキニスさんが代わりに頷いた。




