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100万DL記念-3

 朱雀(バード)と白虎(タイガー)。

 このゲームにおいてはじめての配布キャラとなる、SSRキャラ二名である。

朱雀の属性は炎。対して白虎の属性は、土。

 そして奥義は二人をパーティに組むことを運営が暗に指示しているのか、バードの場合、『奥義効果:パーティに白虎がいる場合のみ、発動可能。相手の強化状態を剥奪し、味方全体に付与する。デメリットとして、あらゆる回復行為は受け付けない』。

 タイガーの場合、『奥義効果:パーティに朱雀がいる場合のみ、発動可能。味方全体の状態異常を癒すことが可能。デメリットとして、あらゆる回復行為は受け付けない』。

 バードの強さを非常に分かり易く説明するならば、エネミーが自己バフを行った場合それら能力変化を強制的に取り上げて、仲間に配布することが可能だと云う相手依存のバッファーである。注意点があるとするならば、デバフも取り込んでしまうため、奥義の見極め、使い方は少し注意だった。

 タイガーの場合、こちらも相手依存だが毒や凍結をはじめとしたデバフを全て解除することが可能だが、味方全員の体力回復が不可能と云うデメリットが存在する。

 ……ちなみに玄武の奥義は一度述べたが、『青龍がパーティにいる場合のみ、敵・味方全体の攻撃が必中になりパリィ及びカウンター攻撃をパーティに付与。デメリットとして、あらゆる回復行為は受け付けない』と云うものになっている。

 100万DL……新イベントで朱雀(バード)、白虎(タイガー)、そして既存の玄武がイベントの主役として組み込まれたことから、当然のことながら青龍の実装も予想された。プレイヤーの中では青龍のみがピックアップガチャに実装されるものだと確信を抱かせたものの、結果は云わずもがな。

 そして更に期待を高める結果となったのが、運営の方からキャラクターの強化が入ると放送が入った点だ。バード、タイガーが配布SSRキャラ……そうしてようやくお披露目になると期待された青龍が当然同じくSSRであると期待されてしまったことから、運営の強化告知も合わさって、玄武のSSR昇格が予想されていたのである。

 しかし現状……玄武は物語のはじめから終わりまでSRの状態で、ついぞ青龍が実装されることはなかった。このような惨状……結果から云わせてもらうならば、このゲーム史上最大の炎上が発生したのである。

 この炎上の背景には玄武がようやく不遇を超えた不具合から脱却することと……そして、想定外と云うより、イベント内容とは無関係なキャラクターが強化された事実にプレイヤーたちが激怒したのであった。炎上の鎮火を目的として運営は詫び石を配布したものの、その火種はこのゲームが終了してもなおくすぶり続けている。

『やあ、玄武。三か月と四日ぶりだ。お前さんも四方祭に参加するのか? 子供の時、以来だな』

 あぁ……古傷をえぐるがゆえ、このイベントに……ストーリーに参加したくないのに、脚本の強制力が働く。完全に参加者と成り果てた玄武は素知らぬ内に真横にいた指揮者の眼前に現れた二人は誰なのかを、傀儡と化した口が答えるのであった。青龍が来なかった現実をヒシヒシと受け止めながら……。

『玄武さん、この二人は……?』

『朱雀と白虎だ。大きい方が朱雀、バードと呼ばれたいらしい。小さい方が白虎、タイガーと呼んでほしいらしい』

『朱雀と白虎さん……バードとタイガーさんですね。わかりました』

『さんはいらないヨ。ところできみは玄武の話で度々聞く、指揮者かナ』

 この場にいる三人……玄武、朱雀、白虎は設定上、幼馴染である。親しい間柄であるが、玄武は物好きなプレイヤー以外に中々編成に組み込まれることがなかったがゆえ、それほど強い親しみの感情はなかった。でも不思議と設定の役割が働いているのか、邪険な感じはない。ちなみに青龍も幼馴染の一人である。四人で一組と云う括りであった。

 玄武は憂鬱な気分を抱えながらも、自我があると判断された者にのみ渡されたシリウスの開発品である人格判別機を見る。新キャラの実装において反応を確認したのであるが、その反応は無反応。バードとタイガーには自我が芽生えていないらしかった。玄武としては少しショックである。ショックを受ける理由は幼馴染という設定が影響しているからだろうか……。

『それにしても四方祭……とは一体何でしょうか? 自分は復刻間近を迎えた玄武さんの故郷を見に来たのですが……』

 説明が遅れたが、このイベントのステージは皆の故郷……もう詳しく述べるならば、冒頭ムービーで壊滅状態に陥った都市部である。指揮者が次元の獣に呑み込まれることにより壊滅的な被害を受けたが、未だに災害の爪痕を色濃く残す瓦礫の山など存在しているものの、復興のため忙しなく動くモブらのお陰か街全体はほぼ元の状態を取り戻しつつあった。

『四方祭とはこの土地で代々催されている祭りだ』

 玄武はこの場から今すぐにでも逃げ出したいのに、悠長に腕組をして指揮者の謎に答える。

『祭り、ですか……』

『この街は有用な資源、麒麟石って云う鉱物が豊富に取れる土地でネ……世界中がその鉱石を必要としていル。大都市になるまで成長を遂げたのだが、その感謝の念を忘れないために祭をやっているわけダ』

『有能な資源……だから、復興も早いのですね』

『そうそう。実際のところ次元の獣による災害は一度や二度だけじゃなくてね。規模の差こそあれども、季節的な台風みたいなもんなんだよ。だから建造物の立て直しは慣れたもので……あらかじめ壊れても良いように作られているんだ』

 バードは『いつものことだ』と笑いながら、云う。

 指揮者は興味深そうな顔を浮かべていた。

『四方祭ってどんな祭をするんですか?』

『普通の祭みたいに屋台が並んだり花火が打ちあがりするが、目玉はアレだナ。豪華な衣装に身を包んだ麒麟児に選ばれた人が、祭前夜に渡されたコインを隠すんダ。で、参加者が探すワケ。麒麟銭って呼ばれている、今は使われていない大昔の硬貨を街中から探ス。コインは麒麟の姿が刻まれている縁起物だヨ』

『宝探し、ですか』

『宝探しと云うより……どうなんだろうな。麒麟銭は全て三〇枚あるんだが、見付けたそれは賽銭箱に入れられる。毎年配布したら、硬貨がなくなるからな。もう使われていない年代物だし……まあ、再利用ってわけだよお前さん』

『タイガーさんの云う通り、縁起物がなくなっては大変ですからねバードさん』

『……そして全ての麒麟銭が賽銭箱に奉納された後、麒麟児たちによる演舞が始まる。四方祭、一番の見物だよ』

 玄武は耐え難い屈辱を覚えながら、操られている。

 どうせこんな苦しい破目になるぐらいなら、自我などバートとタイガーと同じくなかった方が良かったのに……と、どこか思いながら。

『俺にタイガー、玄武は今回の主役とも云える麒麟児に選ばれた。その衣装がひとつ余っているのだが指揮者、お前も麒麟児になってみないか?』

『楽しそうですね……やってみたいかも。でも、自分は麒麟銭を探す参加者でいたいです。バードさん、お気持ちは有難いですが、ごめんなさい……!』

『まあ、はじめての祭の参加で主演側より参加者の方が楽しめるもんナ』


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