100万DL記念-2
100万ダウンロード記念とは、このゲームにおいて青龍の実装が多く予想され、プレイヤーが大いに期待したイベントである。
その告知がエリシオン本部に流れていることを察知した玄武は、頭痛らしきものを覚えた。
その頭の痛みの正体は青龍に関するものではなく、度々起こる現実世界の膨大な情報量の洪水だ。あまりにも多すぎる量にさばききることも……そして耐え切れず、意識を奪われるのであった。
玄武は洪水の波が通り過ぎ去った後、「キーボードを打鍵する指」、「キズナ」、「スマホ」、「署名」と云った映像乃至文章を咀嚼しながら呑み込む。得られた情報は極わずかなものであるが、あっと云う間に飛来する情報の波に対してこれぐらいしか得られるものしかなかったのだ。それは努力不足から来る怠慢などではなく、最大限の努力をしてもなお……深い真相に辿り着くことが不可能だと云う現実。果たして……この情報の波は玄武に対して何を伝えたいのか……そして、何が理由で発生しているのか影すら掴むことが出来ない。
この情報量の洪水と頭痛は何度発生しても慣れることはないと玄武は思いながら、深呼吸を繰り返すのであった。
やがて、体調が平常時に戻った頃……「青龍」と小さく呟き、やや遅れてDL記念イベントそのものに対して、正常な反応を出すことが出来た。淋しさと口惜しさを内包したこの呟きには、アルマローズに指摘された通り、執着……いや、それすらも超えた妄執のような感情が入り混じっている。DL記念における期待と胸の高まりと落胆……そして個人的な恨みは、『対象』を目の前にすれば耐えきれるかどうか分からない。我慢できるかどうか不明だ。アルマローズに忠告らしき言葉を受けたからではないが、なるべく大人の対応を心掛けるように努めるのであった。
しかし、イベントがはじまっていない告知の段階でも気分が悪い。玄武は苛立ちと憂鬱、落胆の態度を隠すことなく、自分にあてがわれた部屋に閉じこもった。あの場面を見たくないと思いながらイベント終了まで部屋に引きこもり続ける予定であったが、予定調和と云う名の脚本の強制力が働く。
「――――!」
玄武がハッと気づいた頃には、自室に引きこもっていたはずなのにイベントの冒頭部分に立ち、DL記念の祝い――配布対象であるSSRキャラクター、朱雀と白虎が眼前にいたのであった。




