↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
19/39

寵愛メアリー・スー-4

「今から向かう並行世界は我々の手助けを拒んでいる? どういうことだシスターズ」

「命令受諾、分析開始…………分析結果、開示。どうやら星の育て子が我々の介入を拒絶している模様。星そのものは無反応な為、どうしようもありません」

 新章突入のはじまりにて、突如のイレギュラー発生。

 いきなりはじまったストーリーの進行において、本編にない障害が生じていることに皆は驚きが隠せないでいた。シボラはレベル1の状態を維持されているがため、並行世界の出撃メンバーに選ばれていないが、自我のある玄武、シリウスは顔を見合わせるのである。こんなことはなかったはずだぞ……と。

 これはガチャでSSRであるシボラを引いた影響……未来にほぼ変わりない中盤辺りの章ボスが暴れ回った影響だろうかと、未知の状態についてシリウスが悩んでいると、指令室にいるユースティアはシスターズに、どうにか問題のある並行世界に介入できるように命じるのであった。玄武は人格判別機を見て、社長とその秘書に人格がないことを知る。思案中のシリウスに伝えるべきだろうかと迷ったところで、指揮者とキズナの二人が現れた。

「キズナ……私たちよりも前に指令室に行っていたのに、報告が遅い」

 玄武の苦情、小声。

 指揮者・社長らにいくら人格がないとは云えども、秘密にしておくべきだろうと慎重さを忘れない玄武は密かに苦言を言い渡す。その中でショッピングモールに行っていた証拠、スキンの入った紙袋を目にして眉間に皺を寄せた。

「ごめんなさい。そう急ぐことじゃないかと思って……」

「買い物に行く暇があるのなら、先に報告してくれ。分かるだろう、そう云うことぐらい。それともお前はキャラクターが自我を得た事態や調査よりも、ショッピングの方が大事だったりするわけか?」

「そ――そんなこと……!」

 キズナはショックを受けたような表情を浮かべた。唇を噛んだ後に俯く。玄武自身強く責め立てているつもりはなかったのだが、強いショックを受けた『ような』姿に口を噤んだ。いや、それは噤んだと云うよりも……。

「あの玄武さん……事情は分かりませんが、悪いことはしていませんし……」

「指揮者……しかし、キズナは重要な報告を……」

「大丈夫よ、指揮者さん」

 キズナは顔を上げ人差し指で片目の裾を拭った。一見、涙を拭った『ように』見える。

「玄武さんの云うことは正しいわ……今回は、わたしが至らなかったの。でも大丈夫、次からちゃんとやりますとも。元気だけが取り柄なんですよ、わたし」

「キズナさん……」

 まるで無理をしているような姿だ。キズナのその様子に、指揮者は同情じみた表情を浮かべる。だがしかし、玄武は女性を責めた事実にバツが悪そうな表情は微塵もない。そして静観していたシリウスは傍観者の立ち位置を崩さないでいた。

「星は存亡の危機なのに介入を許さないとは一体どういうことだ……!」

 一方、シスターズの機能を通じて並行世界へ渡航を行うとしていたユースティアは不可解さを隠しきれない表情を浮かべる。自分らの住む地球が滅亡しても良いのかと呟いた直後、オートマタであるシスターズに変化が起きた。人間そっくりの見た目から……その口から発せられるのは機械特有のノイズ音。シリウスは「ジャミングじゃ!」と状況を一早く察知した後、その人形は文字通り傀儡と化す。

「そこは……そこにいるのはエリシオンの人たちか?」

「この声は……」

 キズナは一部機能をジャミングのあと乗っ取られたシスターズから発せられる男性の声を聞いて、目を輝かせる。その場違いな反応にさすがに玄武は舌打ちをした。

「あなたは――ティトノス様ですよね?!」

「ええい、邪魔をするなキズナ!」

 無理矢理会話の場に入ったキズナに対して普段は冷静さを努めているシリウスも我慢が出来なくなったのか、彼女をシスターズから物理的に遠のき距離を隔てさせる。

「なぜかあちらが我々のことを知っておるのか疑問な上に、介入を阻んでおる。そのことを解明せぬばならぬと云うのに!」

「でも……」

 彼は指揮者の心強い味方なんですよと尚食い下がる様子を見せるキズナだが、それは主人公をダシにした言葉でしかない。彼女は個人的な理由により、ティトノスと呼ばれた存在に交流したいのであった。

「ティトノスよ、もしやおぬし……自我があるのではあるまいな?」

「……なぜそのことを?」

「いや、明らかじゃろう。本編では指揮者と出会ってから、我々の組織であるエリシオンのことを知る。本編の内容は、そう云う流れであった。それなのに事前に認知しておるということは、わしらと同じ存在。自我を持つ、物語のエンドを迎えた存在に他ならんわ」

「その声、口調は……シリウスか。話が分かる人が来た。そうだ。ハッキリ述べておくが、俺には人格がある」

「……して質問じゃが、なぜおぬしは我らの介入を阻むのじゃ? エリシオンはおぬしらに対して敵対したことも裏切ったこともない。滅亡に瀕した星を救おうと共に奮闘した仲。犠牲はあったものの、味方であったと思うのじゃが何か不都合があると云うのか?」

「俺は――犠牲が出るぐらいなら、物語の停滞を望んでいる。ただそれだけだよ」

「……おぬし……とは云ってもなぁ、非常な現実を云うようで申し訳ないが、すでにエリシオンの介入が始まった。新章突入と云う事象は否が応でも物語が進む。我々の助けがなくては、星そのものが滅亡しようて。エオスも確実に死ぬぞ。そしておぬしもどうなるか分からん」

「…………」

「新章序盤から、放置しておれば星が死ぬとが断言されていた並行世界じゃ……『そうあれかし』……読者たるプレイヤーがもしもたるIFを望んでいるものが、この世界に反映されている可能性があるとするならば、彼女諸共助かる道はあるかもしれんのだぞ。それでもおぬしは共に滅びることを選ぶと云うのか?」

「……信じていいのかい?」

「実際、わしらがどれぐらい物語に二次的な影響を及ぼすことが可能なのか分からん。ハッキリ云って未知数じゃ。だが、こうしてメタ的な話が出来ている以上、ある程度の自由は許されておる。頼りない連中かもしれんが、信じて欲しい。この気持ちは本物じゃ」

「分かった……君たちの介入を許すよ」

 再びシスターズの口から発せられるノイズ音。

 自由が許されたそのオートマタは、『次元渡航。オールグリーン。並行世界への移動を開始しますか?』と台詞を述べる。自我がない以上、脚本以外の言葉が許されないシスターズであったが、別の世界たる星の滅亡を救うことが出来ると……手助けを許してくれたティトノスに感謝をしながら、渡航機である臥所に玄武、シリウス、指揮者、キズナは横たわる。この渡航機は別の世界に行くだけではなく、時間遡行も可能な……星の命が渡してくれた叡知の結晶であった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。