表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
12/15

そもそもガチャは引いたのか-5

 それから数日の日時が経過した。

 玄武は相変わらずエリシオンの拠点内で己と同じく自我に目覚めたものがいないか観察眼を発揮していたのだが、その成果はあがらない。無の状態だった。ただ、特筆すべき問題として、他キャラクターたちは自由気ままに行動しており、完全な木偶ではないことが判明した。

 ブーケはいつものように拠点から離れショッピングに出かけたり、シリウスは研究ラボにこもって異物の調査を行っている。玄武はもしや自我があるのではないか……途中で目覚めたのではないかと思い話しかけようと思ったが、脚本外の台詞ではなく言葉を喋る彼ら彼女らに軽率に接するのはどこか危険なように思われた。

 結局、自我に目覚めた云々に関しては黙ったままでいた方が良いのか判別が付けられないまま、思い思いの行動を為しているキャラクターたちは習慣と述べるべきか……まるでプレイヤーたちが二次創作で想像していた内容の影響を受けたかのような行動を行っているように見受けられた。

 その様子を見て玄武が思ったのが、ここは本当はゲームの世界ではなくとあるプレイヤーの脳内……もしくは人間たちの集合知で創造された空間ではないかと現実離れしたことを思うのだが……そもそもキャラクターが自我を得ていること自体、それこそがあり得ない空想じみた話だ。

 それにしても、二次創作の影響を受けているように思われる、か……。それならば玄武やシボラは凄まじい執念じみた虚妄の世界で自我を獲得したことになる。

 玄武はいつものように個室で一人過ごしていた。そしていつも思い悩むのは自我があることを隠してキャラクターの一人として振る舞い役割に徹するべきなのだろうかと懊悩するのだが、その答えは出ない。

 イベントも何も発生しない停滞した日常の中、緊急アナウンスがエリシオン拠点内に響き渡るのである。

「異常事態発生、異常事態発生」

 その声はシリウスのものであった。

 本来ならば合成音声であるアナウンスが流れるのが本編の設定であるのだが、そうではない。まるで二次創作でよくあるご都合展開の導入のソレだと思いながら、皆が集う会議室に赴くと、そこにはシリウスを中心にして指揮者、ブーケ、キズナ、シボラたちがいた。

「いやあ、いきなり呼び出して悪いのう。ちと問題が起こってのう」

 シボラはそう云いながら、とあるモノを取り出す。それはラボ内にこもって研究しているうちに発明されたものなのか、これまで本編では一度も見たことのない代物であった。

「これは異物索敵用に発明した機器なんじゃが、まだ未完成品でのう。皆にはちと悪いのじゃが、街で使えそうな部品を集めてもらいたいのじゃ」

 これは親睦イベントの導入でもミニシナリオの導入でもない、独自の……オリジナルの展開だ。

 まさか本当に二次創作の影響を受けているのではないか……それならば、『出られない部屋』などに仲間が巻き込まれなくて良かったと玄武は思うのである。二次創作と云えば、シリウスのような便利キャラが「異常や異変が起きた」などの導入から、キャラクターが幼児化したり、性別が異なる、強制女装イベントなどが発生する。本編の内容を変更させない軌道修正の力が働いたかもしれないが、部品の調達……お使い程度のイベントならば平和的な内容に終わりそうだと胸をなでおろす。

「異物索敵用の道具、ですか」

「そうじゃ指揮者。異物は本来、日常の中にヒッソリと紛れておるものでのぉ。我々特殊部隊は大きな事件が起きてからしか機動部隊を向かわせられないのじゃ。常に後手の状態であるがゆえ、先んじて対処の手段が欲しい。そう思い、索敵道具の発明をしておったのじゃが、この施設にある部品では完成に至らん。そこで、皆に街で道具の調達をしてもらいたいのじゃ」

 小間使いのようで悪いのう。

 シリウスは本当に申し訳なさそうにそう云った。

「それは良いのですが、何を集めたら良いのですか」

「異物を倒した時に出る、義骸じゃ。義骸と云うのは端的に述べると、異物の死体のようなものじゃ。それはエネルギー源になる有用なものなんじゃが、異物を倒した時、稀に手に入るものじゃ」

「えっと……索敵用器具完成の為に異物を索敵する、ですか。見付けられるかなぁ」

「そこら辺は大丈夫じゃよ。指揮者。この道具はな、未完成品じゃがテスト……試作品もかねておる。異物調査に向けて模擬も大事なものじゃからな」

「なるほど、試作品のテストもかねているんですね」

 報告を受けて出動するのではなく、異物から先手を取る。

 とても大事なことですよねと指揮者が云うとシリウスは聡明な孫の頭を撫でるかのように、かわいがるのであった。

「そうじゃよそうじゃよ。指揮者はエリシオンの要をよぉく分かっておる。後手ではなく先手を取るため……もしくは事件を未然に防ぐためにも、この索敵器具の完成は重要なのじゃよ」

 シリウスはそう云いながら、全員に手頃な大きさをしたキューブ状の物体を手渡した。玄武がその未完成品である索敵器具に触れた時、俄かに青く光った。少し驚いているとシリウスは無言のまま何も云わず、皆に配布する。ブーケ、指揮者の両名に手渡された時には何の反応もなかった。

「異物が付近にいる時は、赤く光る設定じゃ。赤は危険のシグナルだからのう。分かり易い反応じゃろう?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ