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洋行記編10 日本現地時間8月10日木曜日AM07:10

 楽しかった1時間弱の「羽田空港第3ターミナル探索ツアー」は時間の足りなさ加減を痛感しながらあっという間に終了し、午前7時に開店する3階出発ロビーにあるWiFiショップで予約してあった機材一式を使い方の説明を聞き無事受け取る事が出来た。

 実際に使用する際は機材が入ったポーチごとビニール袋にポンしてグルグルにした後、肩掛けカバンに入れる事になる。

 ニューヨークに到着後、何時雨に降られるか判ったもんじゃないし、電子機器だから濡らしたくない。

 それと機材が入っているポーチだってビニール製だから表面が雨で濡れても問題無いのだが、一応借りモンなんで念の為にコンビニビニール袋で保険を掛けて置く事にした。


 そしてようやく保安検査場に並ぶ事になるのだが、午前7時も過ぎると検査場の列は老若男女の集まりで結構長くなっていて、朝6時過ぎに並ぶよりも時間が必要になる事は明白だった。

 列の様子を両手を上に伸ばしスマホで撮影する。

 撮った写真を息子のラインに送り

 『今から保安検査場』とコメントを添える。

 ただ、直ぐに既読にはならなかったので、正直アイツが気が付くか否かは微妙な所だ。

 彼が家族からのメールやライン等に対するレスポンスが悪いのは今に始まった事じゃない。

 普通にスルーする事が頻繁に起こるので、緊急性の高い内容に関しては送信後にわざわざ電話を鳴らす事が我が家ではデフォになっていたりする。

 まあ、確かに何時何処にいてもピンピロピンピロ先方の都合で勝手に呼び出し喰らうってのは、何とも犬の首輪みたいで私も好まないし『オレ様ちゃんが連絡を付けてるんだから秒で出ろや』的な言動がにじみ出る程度なら兎も角、前面に押し出しちゃう様な手合い相手にはぶっちゃけ心の中で中指おったてる事やぶさかでは無いからそこまで強くは言えないのだが、世の中携帯のレスポンスが遅い事に対しエライ厳しい方もいらっしゃるから、彼が社会に出たらそう言う面「でも」苦労するんじゃないかしら?って心配もしてしまう。


 検査場に入る前にペットボトル飲料等を破棄する為のゴミ箱が置いてあって何人か利用していたが、私は飲料物を持っていないから今回は関係無い。

 ただ、ニューヨークからボストンへの移動の際は多分ペットボトルの水とかその他飲料物を肩掛けカバンに複数本しまっているだろうから、その点は気を付けた方が良いな。

 

 検査場の列が複数にばらけ、何となくさばきが早そうな列に並ぶ。

 こう言う時ってのは単純に列の長さの長短よりも列のはけるスピードが早そうな方を重視した方が、より早く通過出来るイメージがあるんだよね。

 しかし実際問題、複数の列を長い時間かけて観察して判断出来る訳でも無いので、チャチャっと見て、ビビッっと感じて、スパッっと判断しなきゃならない。擬音だらけ?気にすんな。

 行った事無いから推測でしか無いのだが、地方競馬でメインレース以外のレースを張る場合なんて、大なり小なりそんな感覚も必要なんじゃないかしら?


 並んだ列のスピードは別に他の列よりも格段に遅いと言う訳でも無く、ノートラブルのまま私の順番になる。

 平たいカゴに財布、キーケース、腕時計、携帯、肩掛けカバンを順に入れ、アンタズボンが可哀そうなレベルでパッツンパッツンだからそもそも要らんやろ、って存在になっている一番外の穴がピンの張力に抗い続けた結果そこの所がエラく伸びまくっているベルトをGパンから引っこ抜きそれもカゴに入れる。

 金属関連を全部外したのを確認後係員から誘導の合図を見て金属探知機ゲートをゆっくりと通過する。

 最近の金属探知機ってのは優秀なのか私が想像出来得る範囲で全部の金属アイテムを取り外しカゴに入れたはずだったのだが、完全にスルーって訳にはいかなかった。

 出た先で係員に個別に棒の様なもので上から下まで撫でくり回される検査を受ける羽目になり、長蛇の列を捌くのに忙しい中、手間を掛けさせてしまい私自身は別段何にも悪い事していないのだが何だか申し訳無い気持ちになって来る。

 再検査が終わってとっくに出ていたカゴからベルトをモッタラモッタラとズボンに締めて、腕時計をパチンと嵌め、財布やキーケースや携帯をよっこいせとズボンのポケットに仕舞い、最後に肩掛けカバンを斜め掛けする。

 これアメリカの検査だともっと厳しかった記憶があるんだが、保安検査場の通過は想定以上に時間が必要になって来るのではないか?

 ボストン行きの際は気を付けた方が良いかも知れない。


 そんな事を想像しながらお次は税関検査。

 ただここでは別に外国製品を持出しがある訳でも無く、100万円以上の現金を持って行ける様なお大尽様でも無いからそのまま通過する事になる。

 それが終わればいよいよ出国審査となる。


 昔だったら長蛇の列を形成して係員にパスポートとボーディングチケットを手渡して、出国印をガッシャンと押して貰いようやく出発前のお楽しみ免税店&飲食店巡りが出来るって感じだったんだが、コロナ禍前から出国の際も自動化ゲートで通過出来たので海外出張の折に便利だから『日本国自動化ゲート利用希望者登録済』の登録してたんだっけ。

 真っ白い機械が何台も並んでいるレーンに並ぶ。

 鉄道の自動改札の様な台座にパスポートを乗せる為の斜めっている機材と、その更に上に鏡台の様なデッカイ画面があり、脇にはそれこそ自撮り棒おっ立てましたみたいにカメラが棒状のスタンドの上に設置されていた。

 パスポートをカバーから外して写真や情報が印字されているページを広げ、機械のガラス部分に強めに押し当てる。

 パスポートの中にあるICチップの情報を読み込ませ、その後指示に従い画面に自分の顔を映す。

 勿論相手は機械だから口パクなんかで『鏡よ鏡、国中で一番美酒と美味が大好きなオークはだぁれ?』とかボケかましちゃいけない。

 ものの数秒でゲートが開きこれで完了。

 余りの速さに初めて利用した時には、『東京物語』の周吉やとみが感じた驚きがちったぁ解った気がしたもんだ。

 でもこれ、別途係員に依頼しないと日付が入った出国スタンプ押して貰えないから、旅の旅情って面では味気無いモノになってしまうし、出入国スタンプはその空港でしか押せないから忘れてしまったらそれっきりだったりする。


 それにアメリカで何かトラブルが起こり保険を利用とする場合等で、スタンプの捺印が無かったりすると手続きで一手間増える可能性も無きにしも非ずだし、ホテルのチェックイン時に日本の出国スタンプ、アメリカの入国スタンプを提示される可能性も否定出来ない。

 他にも想定外のリスクを考えた場合、結局自動化ゲートで通過しても出入国スタンプは別途押して貰った方が良いって事になる。

 ・・・どうせなら一手間掛かるが押して貰おうか。


 そう言えば、息子のパスポートはコロナ禍で新規作成したから、自動化ゲート情報とかってリセットされているんだっけ?

 父の場合は普通に自動化ゲート利用だから私と同じ条件なんだが、息子の場合は自動化する場合は出国審査の所で申請する必要がある。

 父が息子に対し『日本国自動化ゲート利用希望者登録済』の登録とかさせたのだろうか?

 あるいは、今回の旅行では通常レーンに並ばせたか。

 後で聞いてみるか。


 スタンプ捺印が終わり、ようやく出国審査のゲートを抜けるとそこは日本出国前最後に堪能出来る食欲と物欲の街だった。

 半円形のデカい吹き抜け、天井から吊り下げられている幾つもの免税品の広告、目の前の免税品店には遠目でも判る位に様々な化粧品や酒やたばこ、菓子や食品や各種土産物等が鎮座されていて、オメェの財布の紐を絶対に緩ませてやるぜと言わんばかりの鋼の意志を感じさせるラインナップが並んでいた。


 インフォーメーションセンターのすぐ横には上層階のラウンジに移動出来るエスカレーターがあり、何人かの乗客が利用していた。

 ただ、今回のJALサクララウンジは正面エスカレーターを使わないんだっけ。


 往来の邪魔にならない様に柱に背もたれながら父に電話する。

 数回のコールの後父が電話に出る。


 「今、出国審査出た。これからラウンジに向かうから。確かファーストクラスラウンジとは別の場所だったよな?」


 と問うと、


 「おお、おっそかったねぇ。もうこっちはすっかりいいきもちだよぉ」

 

 耳に響くはラウンジの喧騒をかき消す位の音量で、孫可愛さにグダグダになってすっかりバカンスモード突入して一杯ひっかけいーきもちになって使いモンにならなくなったポンコツジイサンの声。

 おいクソジジイ、質問に答えろや。


 「はやくこいよぉ~。目の前のエスカレーターじゃなくって左っかわの方だからぁ。入口んとこの受付来たら電話ちょーだい」

 「ああそれと、息子のパスポートの『日本国自動化ゲート利用希望者登録済』の登録・・・」


 と聞こうとしたんだが、親父殿は自分の言いたい事言った瞬間一方的にブチッと電話切りやがったので、直接会ってからの確認になる。

 なんで昭和のジジイ共はこうもコミュニケーションが一方通行でせっかちなんだろうね?

 こっちが同じ様な事したら直ぐに電話を掛け直して来てブチギレるクセに。

 でもこれってひょっとして我が家の親父殿等の様なクセ強特殊キャラだけが使用可能なレアスキルなのか?


 「ふーっ・・・まぁ、何時ものこった」


 臭い息吐き独り言ち頭を数回バリバリ掻いた後、左手側に向かって歩き始める。

 どーせ相手は1ミリも気にもしていない天上天下唯我独尊、傍若無人、傲岸不遜が標準仕様なんだから、色々考えたりイライラしたり思い込んだりする事自体が人生のリソース無駄遣いになってしまう。


 今までの彼の人生自身が逆境からの反逆そのものだったし、なりあがりものである事は事実だし、なろうでいえばざまあな人生だったし、反骨心とハングリー精神と導火線の短さでここまで様々な人達巻き込んで突っ走って来た訳だから、これはある意味「副作用」の様なモンなんだろう。


 それに、その時自身が感じた憤怒とやらを、仮にその発露を現実に言動に移した場合、その行為によって確実に周りに起こり得るであろう様々なネガティブな結果の事を考えた時に、とてもそんな価値があるとは思えない。

 よってそんな無価値なモノなんてのは美酒と美食で共に流し込んで胃袋で溶かしちまった方が中長期的に見た結果、私個人の為にもなったケースの方が実は今までの人生の中で圧倒的に多かったもんだから、結局の所無かった事にする方がはるかに良いのだ。


 「・・・先ずは泡モンは欠かせねぇなぁ・・・ビールも良いんだが、今の気分はシャンパンフルートでスパークリングワインだな・・・アンティパストはこの時間帯だったら朝食メニューがあるだろうからアメリカンブレックファースト辺りが鉄板だろう。ケチャップたっぷり付けたポテトに熱々のソーセージ、スクランブルエッグはコショウたっぷり掛けたのが良い。そっからスタートして、プリモ(ピアット)とセコンド(ピアット)は・・・」


 誰も聞いていない、てか聞かれてたら周りがドン引く独り言をブツブツ呟きながら、頭の中身をいよいよ堪能出来る美酒と肴の妄想にシフトチェンジさせ胸と胃袋を期待で膨らませながら、ラウンジ向かって歩き始めた。


>コロナ禍前から出国の際も自動化ゲートで通過出来たので海外出張の折に便利だから『日本国自動化ゲート利用希望者登録済』の登録してたんだっけ。


 実はこの時の私は「自動化ゲート」と「顔認証ゲート」を混同していたんですね。

 「顔認証ゲート」自身は『日本国自動化ゲート利用希望者登録済』の登録は不要で、パスポート内のICチップ内蔵の顔写真データを基に事前登録無しで利用出来ます。


 出入国審査時にスタンプが押されないのは共通な様なので、必要なら忘れずに申請する必要があります。


>東京物語の周吉やとみ


 東京物語はマジで傑作だったりするんですけど、でも同時にあの昭和初期の価値観って昭和後期のオヂサンレベルで何とか理解出来るレベルだと思うんで、今日日のワケェモンに見せて同じ様な感動を分かち合おう、なんてのは思わない方が良いと思うんですよね。

 

 同じ様に初代ゴジラだって、砂の器だって、仮に後世の人達による評価が高いものであったとしてもそれは多分私達が想像、期待するような感想では無いモノだろうと思います。


>正面エスカレーター


 羽田空港第3ターミナルで正面エスカレーターを使い4階で入場する有料ラウンジとして『TIAT LOUNGE』『SKY LOUNGE』があります。

 昔は色々なクレジットカードのサービスの一環として利用出来ていました。昔の動画ではこんなサービスを受けることが出来ますって感じの紹介動画が多数出ていました。

 ただ、コロナ禍以降利用条件が毎年厳しくなってきて、世間様の厳しい経済状況を感じずにはいられません。


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