僕と君(最終回)
何処の教師がそうなのかと言えば、違うんだと思う。この前、仲直りした二人は普段通り見る人から見れば恋人同士と間違えられそうなくらいの仲の良さに戻った。僕はと言うと、その次の日……。
同情するような目で見られた。
原因は、教師だった。
「大変だったわね、市架くん。お母さんやお父さんに甘えたいお年頃なのに、甘えられないなんて。子育ての知識もない独身の男性だから悩みごとがあったら何でも言って? 私にできることなら何だって手伝うからね」
わざわざ、クラスメイトの前で言う話なんだろうか? わざわざ、涼しい保健室から教室まで来て、同情するようなことを言って、僕を傷つけないなんて思っているのかな。
無言のまま、何も言わない僕の行動に勘違いしたのか、辛かったのね……とそう言って抱きしめてくる。そんな教師を突き放し、僕は人前だと言うのに泣くことを止められなくて、叫ぶようにこう言った。
「あんたに壱さんの何がわかる! 壱さんがどれだけ努力して、今の状態までに持ってきたのか、あんたは知らないだろう‼︎ 確かに壱さんは、家事が苦手で掃除するたび転んでるよ⁉︎ でもね、たくさん努力してるのを知っているし、僕を思ってたくさん優しい言葉をくれるもん。僕はそれだけで充分だったのに‼︎
あんたのせいで、あんたの安易な行動のせいで僕は小学校を卒業するまで同情するような目で見られるようになったんだぞ、何が相談しろだって? 俺には壱さんもいるし、壱さんの友人の優さんだっている! 僕は今の自分が可哀想だなんて思ってないから、あんたがしたことは空回りしたお節介なんだよ!
普通、人前で他人のプライベートな話をするか? あんた、わかるだろ。普通なら別室でその話をするならまだわかる、だけどわざわざクラスメイトの前でその話をするなんて、ただ“苦労する生徒を気遣う優しい自分”を周りに見て欲しかっただけなんじゃないの? 別に僕は辛いなんて思ったことないし、相談だって乗ってくれる人だっているから、先生に気遣ってもらう必要なんてないから大丈夫なんだよ!」
あんまり怒ったことなんてないし、人前で泣いたことなんてない僕はどうしたらこの場の雰囲気を変えられるかわからなくて、教室から飛び出そうとした僕は腕を掴まれた。そして気が付いた時には引き寄せられて、後ろから抱きしめられる体勢になっていた。
誰がこんなこと……! と、思った瞬間、
「センセー。こんなデリケートな話、アンタが勝手に話すとか、どうかと思うが? 市架の言う通りだよ、教師なんだからもう少し生徒の気持ち考えて行動したら? 俺知ってるよ、市架は少なくてもセンセーといる時よりも壱くんや優くんといる方が幸せそうだったけど? 俺は市架が他の家族より大変だなんて思ってないし、市架はちゃんと壱くんに思われてるよ。アンタが知らないだけ。
それに、センセーが相談に乗る前に俺が気づくから大丈夫だしー。市架はアンタにはもう、何かを相談することなんてないと思うけどねー。翔夜くんは頼りになるのでー、センセーが出しゃばる必要は全くありませんので〜、ご安心を!」
そう言って、未だに涙の止まらない僕を教室から翔夜くんは連れ出してくれた。
連れ出してくれた先は、図書室。クーラーがついていて、涼しさが高めた感情を冷ましてくれた。
「ごめんね、翔夜くん……」
「良いってことよ、市架」
「でもさ、なんでまた僕は君の膝の上に座らせられているのか、説明してくれるかな?」
なんか、翔夜くんは普段は年よりも子供っぽいのに、こう言う時だけは大人びた表情を浮かべるんだ。
そんなことを考えていれば、
「ん? 優くんみたいに気が利いた言葉は言えないから、とりあえず甘やかそうかと思って!」
そう言って、ニカリと翔夜くんは笑った。その笑顔でわかった、彼だけは同情していないって……。
「……そっか。なら、壱さんや優さん以外では、翔夜くんに一番に頼って、甘やかしてもらうことにする」
「責任重大ってヤツだな!」
この時から僕は、翔夜くんとの友情関係に依存し始めたのだった。




