第9話 騎士長の憂鬱
ルルウ・ストレジア・フェンリル
どもども。
みなさんの血税でやしなわれております、公式下僕。
略して、こうぼく。
天空フェンリルエルフ帝国第四皇女、ルルウ・ストレジア・フェンリルっす。
異世界で一番、立場と腰の低い王族キャラとして、たっぷり視線でよごしてくださいませです。
国民のみなさんの血税が、じぶんの預金残高っす。
それはともかくですね。
きのうは裸んぼうで丸太にくくりつけられたまま、ゆーやさまに一晩、捨ておかれました。
まったく、あのひとは鬼畜でクズもいいところですよね? でもでも、じぶんはバカなんで風邪とかひかなかったですッ! へくちゅんっ!
大丈夫、四十度までは平熱です。
なお、魔法障壁は無事、ゆーやさまの「寒いの苦手」のひとことにより、はりなおされましたですね。
しかし、アースガルズはじまって以来のハタめいわくな冷害に、稲の被害をうけた農家エルフさんたちからめっちゃ怒られまして、あのひと、農協のまえで正座させられてましたよ? ざまあw です。
じぶんはせせら笑いながら、コンビニのおでんをかっ食らってました。
ゆーやさまにまんぐり返しの恨みを晴らせたのは良かったんですが、同時に「新しい聖心体の人、キレさせっとガチでヤバいってホント?」ってウワサがアースガルズ中に広まってしまいましてね。
わずか一日でだれもケンカを売ってこなくなりましたよ? ヤンキー漫画かよ?
しかし、ゆーやさまもこれで、じぶんとおなじ、ぼっちの仲間いりっすね!
そんなこんなでじぶんは|《異空間扉》の魔法で昨日の大学の裏山に出まして、皆様の血税でソシャゲの十一連ガチャを二十四回ばかり引きまして、クズしか出ないのでコンビニでカフェイン飲料的なのと、鶏つくね串的なのを購入してモグモグしながら戻ってきまして、アースガルズの目印、天空高くそびえるオリンポス塔から、徒歩二分のところにある「天竜アンニュイ亭」の二階にやってまいりました。
ここはエインさんの下宿なのです。
クンクン。
「うむ……」
「ゆーやさまはクズでドスケベで、人格的にも最悪な変態野郎ではありますが、何故か協力的ではありますので……」
「……そうだな。ギンティア殿が里に帰られた今、後任のゆーや殿と上手くやらねばならんのはわかる。でも、今にも彼が婦女暴行とかしてないか、不安なのだよ?」
優れない顔色でエインさんはいいました。
「足にGPSか電撃の流れる装置を埋め込むなどして、犯罪の抑止策を講じておけば……」
じぶんは、ゆーやさまと仲良くするよう、彼女を説得に来たであります。
窓ぎわにベッドと書き物机、そしてイスとちょっとした収納があるぐらいの、エインさんらしい、びんぼーくさい部屋でした。
エインさんはめずらしくヨロイを脱いでいて、ねまきのままベッドに入っていました。
ヨロイを脱ぐとホント、ただのきれいなひとです。
「ところで、エインさん。お身体はだいじょうぶなんですか?」
「ああ、大事ではなかったのだよ……」
日頃のきびしさはどこへやら、ベッドでじぶんに応対をするエインさんはきれいでしたが、やつれてもいました。
「だが、すっかり両方の乳首を開発されてしまったのだよ」
「なんて?」
「……乳首を開発されてしまったのだよ」
「なんて?」
二度、ききかえしました。
エインさんも気まずそうにコホンと咳をします。
「オッパイが気持ち良過ぎて、完全に痴女なのだよ」
「あちゃー」
「こんな体たらくでは、とても部下の前には立てん。仕事を休むしかないのだよ」
「……お察ししますです」
「今、擦れても大丈夫なスポーツブラを鍛冶屋に注文しているところなのだよ。それが完成するまでは、ちょっと擦れるだけでメス顔を晒して、生まれたての仔鹿のようにビクンビクンしてしまうのだよ」
ちょっと顔を赤らめ、エインさんはビクンビクンしながら語ってくれました。
正直、ガチッぽくてドン引きです。
「そ、そりゃなんといいますか……完全に、ゆーやさまのせいですね」
「いや、むしろあやつには、感謝しているのだよ。今のわたしは風が吹いても気持ちいい……お釈迦様もびっくりなチチ感度なのだよ」
「は、はぁ……」
「ルルウ、キミもいざというときのために、乳首は開発しておきたまえ。乳首の可能性は無限大ッ……うっ!」
とつぜん、エインさんがおむねを押さえて苦しみだしたので、軽くパニくりました。
「え、エインさん!? だっ、だいじょうぶですか!?」
「うぅ、すまん。『ちくび』と口走るだけで、乳頭がギン勃ちしてしまうのだよ」
「あ、そっすか……」
驚いて損しました。
正直、死んでほしかったです。
じぶんは死んだ眼をしながらこの痴女……じゃなかった、エインさんから離れました。
「んで、その高性能スポーツブラが完成するのは、いつごろなんですか?」
「二週間はかかってしまうらしい。なにせ鍛冶屋も作ったことはないそうだからね」
「それはそうでしょうね……あ、コレ。ゆーやさまからです」
「わたしに?」
落ちこんでいるんだか、もだえているのだかわからないエインさんに、ゆーやさまから預かった紙袋をわたしました。
なにが入っているんだかわかりません。
……どうせろくでもないものに決まっています。
「あの男のことだから、セクシー下着とか入っているのだろうかね?」
「さぁ、わかりません。あの人もクズなりにちょっと反省したんですかねぇ」
「むぅ……下着にしては小さいようだね」
大人のおもちゃとかでてきたら、眼もあてられないです。
じぶんは袋の中身を見ないようにしながら、乳首開発済み女の部屋をあとにしました。




