↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/14

第8話 乳首波動掌

 しかし、実際のルルウの人望は想像以上に悪く、国民を説得に行ったら秒で裸に剥かれ、変態露出狂夫婦がしているような卑猥な落書きをされ、まんぐり返しの体勢で丸太にくくりつけられたのだった。


「うわああああああん! SNSだけでは飽き足らず、『コスプレ』とか『縄』とかタグ付けされてアダルトサイトに動画をアップロードされちゃいますッ! ゆーやさま、はやく! はやくたすけてくださいです――ッ!」


 王族の尊厳は消し飛び、キャンキャン泣きわめくルルウ。


 しかし俺は城門の前で、エルフ女子達に取り囲まれていた。


 いかにもお姉さまって感じのエルフ、騎士長のエインさんがランスを構え、突きを繰り返してくる。


 たかだか水浴びや、あられもない姿を覗かれただけで、人を串刺しにする気満々である。


「うぉっと!」


「避けたのだね! 破廉恥な奴なのだよ!」


 一撃目はなんとか、かわすことはできた。


「戦火の血飛沫姫(ちしぶき)」の異名を持つ、うちの妹の殺人剣に比べたら、エインさんの突貫は踏み込みが甘く、避けられるレベルだ(うちの妹はトイレットペーパーを換え忘れたぐらいのミスで真剣で斬りかかってくる)。


 しかし、エインさんは妹より腕前が下でも、ランスなのでリーチが長い。


 俺は、ふわりと空に逃げた。


「な!? 飛ぶのかね!?」


「や、飛ぶでしょ? そりゃあ……」


 今の俺は自由に空が飛べる。


 なにせ日常から無駄なまでにプカプカ浮いているからな。


「アーチャー隊、魔銃隊、魔法隊! 前へ!」


「ハッ!!」


「ハッ!! って、おい、危ないからやめ!?」


 エインさんの命令で、アーチャー、魔銃、魔法使いのエルフ達が前に進み出た。


 皆、「覗き魔を照準に入れてファイアー!!」と叫びながら、矢を放ち、トリガーを引き、呪文を詠唱する。


 たちまち、無数の矢や魔弾、|《火球魔法》が俺を襲った。


「よけてくださいです! ゆーやさま!」


「いわれなくても避け……!?」


 パスッ! パスッ!


「あいたっ!?」


「ガンガンささってますよッ!? ゆーやさまッ!」


 魔弾や|《火球魔法》は避けられたのだが、矢は避けきれない。


 魔法はもちろん、大き目の弾丸である魔弾よりも速く正確な矢を射ってくるのは流石、エルフといったところか? 俺の背中にゲシゲシと突き刺さる。


 しかし、聖心体は肉体を強化し、回復力を高めてくれるオプションも付いているらしい。


 何本、刺さっても、痛みも少なく、致命傷にもならなかった。


 だが、これ以上のダメージを受けたら、いくらなんでもマズイ。


「男なんていう劣悪人種は滅してしまうのだよッ!」


 声高に射手達に命令するエインさん。


 流石にイラッときた。


 ◇ ◇ ◇


 一時間後。


 城門へと集まった一万人のエルフ達全員が半目で、死屍累々と広間に身を寄せ合い、肉団子のようになって暖をとっていた。


「はぅうううう……さ、寒いのだよ!」


 エインさんは肉団子の一団に加わることはなかったが、奥歯をカチカチと鳴らしながらいった。


「……き、貴様……や、やめるのだよ!」


 そこには凛々しく勇ましかったエルフ千人騎士長の面影はない。


 ガクブルで、石畳の上に膝をついた。


 他のエルフ達も「ハックション! ハックション!」「く、空気……薄い……」「たき火……たき火出して……!」と魔法で炎を出したりして、散々な有様。


 そして、一番、ひどい眼にあっていたのは、まんぐり磔という新ジャンルのプレイに晒されているルルウで、その次は俺である。


「さ……さむ……ゆ……ゆーやさま……いくら……なんでも……そろそろ……いい……んじゃ……?」


「ままままま、まだダメだ! 俺がここでの市民権を……か、獲得……ハクッション! 獲得するまでは!!」


「あ……あの……でも、じぶん……ほぼ、はだかなので……服が欲しいっていうか、縄……とやらしいボディペイント……だけ……っていうか……」


 一体、どうしたことか?


 そもそも、俺、聖心体は魔法障壁を張って、外気からアースガルズを守っている存在である。


 ワルキューレの奴らがしていることは、高空を飛ぶ飛行機の窓や精密機械に向かって、容赦なく銃弾をぶっぱなすようなもの。


「おぅおぅ! そんなに俺がイヤなら、やめてやろうじゃねーかッ!」


 と、逆ギレして魔法障壁を切り、不可視のバリアフィールドをフルオープンにしたからさあ大変。


 よく考えたら、俺、全裸じゃん?


 いくら丈夫な聖心体でも、高空の冷気に晒されればガクブルである。


 なにせ雪山より高い場所なのだ。


 なんとか皆がダウンするまで、空中でやり過ごす計画でいたが――。


「しょしょしょしょ、勝負なのだよ! 斉藤友也!」


 なんと……どこから連れてきたのか、馬程の大きさはある翼竜に乗って、エインさんが俺を追いかけてきた。


 くまさん柄のブランケットをかぶってガタガタ震えながら。


「ちょ、なんすか!? その竜は!?」


「自分だけが空を飛べると思わないことだよ! ワルキューレとは本来、翼竜(ワイバーン)に乗ってなんぼなのだよッ! はくちゅん!」


「えー。なんかもう我慢大会みたいになってるから、やめましょうよ?」


「問答無用なのだよ! 覚悟なのだよ!」


 翼竜が滑空を始め、くまさんのブランケットにくるまった女騎士は追撃の手を緩めようとはしない。


「ひゃっ! ゆーやさまをころしちゃだめです!」


 真下から、ルルウの悲鳴が響いた。


 エインさんは美形のエルフ顔に鼻水をたらしつつ、ガチで命(タマ)を殺(と)る気で俺にランスを突きつける。


「殺(と)ったのだよ!」


 碧眼は勝利を確信しきっている。


 ……だが、俺はこの瞬間を待っていた。


 掌に全力を込めてかざす。


「今だ! |《乳首波動掌(ミルキー・ハンズ・バイブレーション)》!!」


「!?」


 俺が狙ったのは、彼女が突き出してきたランスの先端だった。


「あああん! はひゅぅぅうぅぅうぅぅぅうぅうぅうぅんッ!」


 次の瞬間、あられもない声を出して、エインさんは翼竜ごと、落下していった。


 幸い、たいした高さではないので、翼竜はわからんが、ちゃんと鍛えているのなら、エインさんは無事だろう。


 騒然となったのは、下でまんぐり返しポーズのルルウとエルフ達だ。


「ええええええええええええ?」


 ふら~~~と俺が下りて行くと、ルルウはケモ耳をピョコピョコさせながら仰天中だった。


 ランスに何かしただけで、凛々しいエインさんがドスケベ声をあげながら墜落したもんだから、皆が驚くのも無理がない。


「いま、なにしたんですか!? ゆーやさま!」


「あれは|《乳首波動掌》といってな」


「みるきー? なんすか?」


「直接、乳を揉まなくても乳首を開発できてしまう必殺技だ」


「……」


「……なんだ?」


「え~~と……なんか、まじめに聞いたじぶんがバカみたいな気がしまして……」


 尋ねられたから答えただけなのに、一蹴されてしまった。


「一応、聞いておきますけど、どんな原理なんですか?」


「うむ、エインさんのランスの柄が鎧ごしに乳首に触れた一瞬の隙を狙って、激しい振動を送り込んだんだ」


「それってセクハラなんじゃないですか?」


「俺はあくまで、高周波を送って振動させただけだよ?」


「高周波!?」


 そう、実はランスにすら触れていない。


 ま、女性からしたらこれもセクハラってことになるんだろうが、ここは異世界だし、正当防衛ってことで勘弁してもらおう。


「どうしたらそんなもん、だせるんですか!?」


「女の人のおっぱいを揉みたい一心で、エアモミモミしてたら出せるようになった」


「……へー」


「腱鞘炎で三回ぐらい入院したけど」


「……へー。もういいから、この縄といてクソして寝てくださいね」


 レイプ眼のルルウに、冷たくあしらわれる。


 悔しいので、本当にクソして(肛門ないけど)寝ることにした。


「ちょっ! ちょっ! どこいくんですか!? 縄ッ! 縄といてくださいッ! 人を卑猥な格好のまま見捨てないでくださーい! ちょっとォ――――!」


 城壁を越えて、二階のバルコニーからそそくさと宮殿に入る。


 後ろから縋りつくようなルルウの悲鳴が聞こえたが、俺は豪快に無視した。

 これにて第二章「セクハラ大抗議デモ攻防戦」はおしまいです。


 だいぶ前につけた章タイトルながら、なんやねん、それって感じですね。


 次章はラブコメの基本に則って、空からヒロインがおりてきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。