第10話 アンニュイ亭爆発
ログハウス風の「天竜アンニュイ亭」の一階にはテーブルとイスが並び、ワルキューレなる天空エルフたちの憩いの場になっています。
ごはんも食べられますし、ワインやカクテルも飲めます。
獣人パティシエ、黒山猫さんのこしらえる極上スウィーツも人気です。
そんなお店の奥、畳が敷かれたお座敷になっている一角があります。
テーブルを囲んでいるのは、じぶんとゆーやさま。
それから、ワルキューレ騎団のひとたちが集まっていました。
「んじゃ、みんな、おつかれー」
「ちょちょちょ! かんぱいの音頭は皇女であるじぶんがっ!」
――ああ、なんということでしょう。
きのうはあんなに激しくやりあったのに(エロい意味でなく)、ゆーやさまはワルキューレ達ともう、仲良く街コン的なアレに興じているじゃないですか?
「おぅ、それそれ! なんてユーステノプテロン?」
「ちょっとちょっと」
じぶんはたまりかねて、彼のぷに腕をひっぱりました。
「ん? なんだよ? ルルっぺ」
「なんでまた、ほぼ初対面の相手と古生代デボン期中期の古代生物について語り合ってるんですか? あと、思いつきで定着しそうなアダ名で呼ばないでください」
ゆーやさまは、斜め前に座った青髪のワルキューレ……ブルーハワイと、オタトークに花をさかせていました。
飲み会開始一分でもう、デボン期中期になる会話の流れにも端倪すべからざるコミュ力を感じます。
「ゆーやさまはクソ雑魚のぶんざいで、なんでそんなにコミュ力だけ高いんですか?」
「なんだよ、お前。絡み酒かよ?」
ゆーやさまはジョッキ生をあおります。
アルコールでなく、醸造魔法がかかったほろよい飲料なんですが、二十歳になりたての若造が堂々と飲酒しているのにはイラッときますよね。
「そんなとこで青いのとイチャコラしてるなら、エインさんのお乳でももんでくればいいじゃないですか? あの痴女騎士、お二階でアンアンもだえてますよ?」
「う……。あれは正直、やり過ぎて悪いことをした」
そういって、彼は眼をそらしました。
エインさんがあそこまでの即オチアヘ顔ハレンチ騎士になってしまったことは、ゆーやさまにも想定外だったみたいで、なんだか気まずそうでした。
まったく、クソ雑魚もいいところですね。
「だいたい、ゆーやさまは女性と見ると全方位にデレデレし過ぎですよ? コミュ力モンスターだというのはわかりましたけど、今回、丸くおさまったのは結果オーライだからですからね?」
「わかったよー。お前、今日はやけにツンツンしてるな? 十一連ガチャでも爆死した?」
「……ッ!?」
この男はッ……なんでどうでもいいところで鋭いんでしょう?
そんなわけでイラッとしておりますと、さらにイラつくことに、ブルーハワイ達が、ゆーやさまのうしろからギュッと、ぬいぐるみ抱きをしてきました。
「姫様ばっかり、ゆーやさまを独り占めにして、ずるーーい!」
「ゆーやさま! わたしの乳頭も開発してっ!」
「あたしもあたしも! エイン団長ばっかりにメス顔させて、ずっこ~~い!」
……。
なんですか? この発情期のメスブタどもは?
コレはアレですね。
ゆーやさまがどうこうというより、メスブタどもに、男性にたいする免疫がなさ過ぎたのでしょう。
欲求不満持て余しガールズとでも申しますか、そろいもそろって、チョロインのズベ公どもですね。
「ゆーやさまぁ」
「わたしのお乳にも高周波マッサージをしてくださいまし~~」
どいつもこいつも、オッパイをおしつけ過ぎです。
特にブルーハワイという魔銃隊の青髪巨乳がひときわ、パイオツカイデーをおしつけてきていました。
うわ、二郎系ラーメンにのってるような脂肪ですね。
「あ、いや、その、当たってるからね……」
「ウッフン」
「いや、ウッフンでなく……む、むねが当たってるから……ね」
「え~~。ゆーやさまぁ。昨日はゆーやさまのせいで、ブルーハワイ、とっても寒かったんですからぁ」
なんだこりゃ。
もうこのさい、おつむがブルーハワイのひとは、どうでもいいでしょう。
街コンでパイオツカイデーを揉んでるひとも、揉まれてるブルーハワイのクソも、もうみんな爆死したらいいと思いますよ?
と、そのとき――。
ちゅど~~~~~~~~ん!!
ばくはつしました。
パイオツカイデーを揉みしだいたり、しだかれているリア充DQN共へのストレスがMAXになりそうになった直前、「天竜アンニュイ亭」が大破しました。
たいは。
そりゃもう、こっぱみじんに。
じぶんやワルキューレの人達、および獣人パティシエの黒山猫さん、それから二階のエインさんも、とっさに魔法障壁をはり、物理衝撃を相殺させて無事だったもようです。
唯一、魔法の心得がない聖心体が一名だけいました。
「姫様! これはなんなのだね!」
ガレキの下から、エインさんがお乳を押さえながら、這いだしてまいりました。
「え、えーと、じぶんにもよくわかりませんっ!」
「う、乳首が……硬く」
「あ、ハイハイ。エインさんはゆっくり休んでいてください」
アヘる痴女はほっといて、じぶんは状況を確認するため、クンクンし、耳をすませました。
天空フェンリルエルフは警察犬並みの聴力と嗅覚を持っています。
さいわい、ケガ人はいなさそうです。
しかし、粉塵が晴れますと、まわりは瓦礫の山で……ゆーやさまが、股間を押さえながら、もだえていました。
「う……うぉ……うおおおおおおおおおおおおお!」
「ゆ、ゆーやさま?」
あぶらあせがひどいです。
「ゆーやさま!?」
「ゆーやさまが……股間を……!」
「股間のものがもげたとおっしゃってますッ!!」
ワルキューレたちも駆けつけてきました。
股間を押さえて固まった姿には、ハッキリいってドン引きです。
「うおおおお……な、なんだ……この……生まれてから一度も感じたことのない痛みは……!? はふぅ!」
はふぅって……。
「あ、そういえばギンティアさんから聞いたことがあります」
じぶんはギンティアさんとのありし日のことを、ポワンポワンと思い出しました。
……あれは確か、二人で徹マンした晩。
なにかの話のついでに、彼女がいったのでした。
『アースガルズがダメージ食らうと、ポコ○ンがもげるぐらい痛いんやでー(爆)』
「へー」
と。
そんときは「そもそも、ポコ〇ンなんかついてないがなー」といって、タ〇リの四ヶ国語麻雀のマネに興じていたわけですが……そうでした!
「アースガルズがダメージを受けると、アレがちぎれるぐらい痛いそうですっ!」
「……ちょ……お……おま……そういうことは……早く……いえよッ!!」
白目をむきながら、ゆーやさまは怒鳴りました。
ふふん♪ いいきみです。
じぶんとおなじクソ雑魚ニートのぶんざいで、パイオツカイデーなんか揉みしだいているから、そういうことになるのです。
そんなひとは、もげてしまえばいいのです。
もげてしまえばいいのです。
しかし、変ですね?
ここはかなりの高空のはずです。
アースガルズがぶつかって、ダメージを食らう障害物なんて、あるはずが……ふえええええええええ!?




