第6話 神アプリ
ギンティアさんの後任として、アースガルズの《心》になる。
当然、あんなクソミュージカルでは、自分がこの世界に召喚された理由がわかるはずがなく、ルルウにナビゲートをお願いすることにした。
「アースガルズの《心》、聖心体は誰でもなれるわけではないんです」
半日後、いかがわしいボディペイントを施されて、ドスケベ姫呼ばわりされるとは夢にも思っていないルルウは、楚々とした第四皇女の佇まいでいった。
「ギンティアさんクラスの魔力か生命力をもっていないと、適応できません」
「へえ? あのねーちゃんって、そんなに強いの?」
「この世界でもベスト3に入る、使い手だと思うです」
「なるほど。ま、メイドや執事の戦闘力が高いのは、漫画やアニメのお約束だよな?」
「ですです。ギンティアさんは一騎当千の強さです」
ここはアースガルズの中心部である玉座の間――。
俺は巨大な魔法石と溶け合うように融合しながら、ルルウの《声》を聞いている。
半覚醒状態とでもいえばいいんだろうか。
浮遊要塞として大空に浮かびつつ、眼の前にいるルルウの姿は見えるし、《声》も聞こえるという奇妙な状態であった。
「しかし、ふしぎですね?」
魔法石の中の俺をチラチラ覗き見ながら、ルルウがいった。
「何が不思議なんだ?」
「じぶんの検索魔法に、ゆーやさまがひっかかったことですよ」
「ほう?」
「強いひとにしか反応しないはずなんです。ギンティアさんレベルともなりますと、大悪魔みたいな人じゃないと反応しないはずなんですが……」
なーるほど。
裏山に入ってから、ルルウが出てきたのが偶然にしては出来過ぎだと思っていた。
しかし、すでに三つの異世界を渡り歩いてきた俺と仲間達の力に検索魔法が反応したと考えれば納得がいく。
しかし、こいつ、俺が強者である可能性を端から除外してやがる。
アークデーモンなるものと戦ったことはないが、今こそ、ルルウに隠された我が実力をカミングアウトするときではないか?
俺はさりげなさを装い、ドヤ顔でいってのけた。
「実は俺、異世界転生四度目なんだよね」
「……えっ?」
「異世界は初めてじゃないのよ。勇者として、かれこれ魔王級の超越者を三回も倒してるんだよね」
「へー」
気のない返事をされただけだった。
「だから、実は俺、異世界転生四度目で、勇者として、かれこれ魔王級の超越者を三回も……」
「ゆーやさま、ひとがまじめな話をしているときに、クソみたいなラノベタイトルを連呼するのはどうかとおもいますですよ?」
「ハ、ハイ?」
怒られてしまった。
確かに「実は俺、異世界転生四度目で、かれこれ魔王級の超越者を三回も倒してるんだよね」という台詞は異世界転生もののラノベタイトル以外の何物でもない。
「もぅ、どこまで喋ったかわからなくなったじゃないですか?」
「俺のせいか?」
「そうですよー」
「メイドオッパイを朝から晩までチュパり倒したいって話じゃなかったっけ?」
「ちがいます」
いちいち冗談の通じない奴である。
「聖心体になるには、それなりの素養がいるっておはなしです。ちなみに、ギンティアさんが調べたら、アースガルズでは、じぶん以外のエルフは魔力不足で全員、不合格でした」
「へー」
俺はともかく、ルルウはそれなりの魔力を秘めているわけか?
彼女は魔法石の前で、えへんと胸を張っている。
「じぶんはいちおー、皇女なので、聖心体は別の人にやってもらった方がいいとギンティアさんにいわれまして。でも、この世界で検索魔法をかけたら、魔王軍の幹部さんや魔王さんを召喚してしまうおそれもありましたから」
確かに、魔王を倒す者を召喚しようとして、魔王を召喚してしまうほど、バカな話はない。
うーむ、そこでルルウは別の世界に来て、その魔法を使ったということか?
「ところで、俺は今から、何すればいいんだ?」
「はい、まず、アースガルズは空中都市でもありますから、もっともだいじな機能はインフラと空調の管理です」
「ああ、エアコン入れたり、お風呂のお湯出したりみたいな?」
「そうです。しばらくは全自動で動くようプログラムされてますから、問題は……」
「ふむ……ふへぇ……」
「んんん!?」
俺の表情の異変に素早く気付き、ルルウは眼を見開く。
「急にうわの空になったと思ったら、なにやらエッチな笑みを……?」
魔法石と融合しているので、ルルウが外から顔をくっつければ、俺の表情ぐらいはわかる。
彼女はほっぺをぺたんと、魔法石の表面に密着させた。
「なにを見てるんですか? ゆーやさま?」
「これ……しゅごぉおおい」
「ちょ……! ぜったい、今、軽犯罪をおかしてますよね!?」
ルルウの問いに、マトモに答える気にはなれなかった。
というのも俺の眼前には、四万数千人ものエルフ達のキャッキャウフフな光景が大パノラマで広がっていたからだ。
水浴びシーン。
お着替えシーン。
おパンツをおろすところ。
半裸で食パンをかじるところ。
弓矢の練習をしながら、半乳が見え隠れするところ。
俺は即座にカメラの視界をカッティングして、成人女性以外とエロくない部分は削ぎ落とし、究極のマルチパノラマ4Dビジョンを作り上げていった。
言語化するとこうなる。
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うれションしたいぐらいの桃源郷が広がっていた。
「うおおおおおおおおおおお!! これは凄いぞ! 神じゃ! 神アプリの到来じゃ! ヤバい! エルフのお姉さん達のプライベートが丸見えじゃないか!?」
「なななな、なにやってやがるんですか!? それよか早く、お風呂のお湯とか出るようにライフラインを……」
魔法石の向こうから、ぽかぽか殴ってくるルルウ。
だが、ちょっとやそっとの打撃では、こちらは痛くもかゆくもない。
「ふはははははは! 生憎だったなルルウ! 俺は魔法石に引きこもる!」
「なんと!?」
「このエロマルチパノラマ4Dがあれば、アダルトサイトも薄い本もリアルメスもいらぬ!」
「ばかじゃないんですか!?」
「ほざけ! 聖心体にチ〇コが付いてないのは残念だが、存分に視線で愛でさせてもらおう!」
俺はルルウに向かって、勝ち誇り罵声を浴びせた。
まさにその時……。
本日の投稿はここまでです。
お付き合いいただき、ありがとうございます。
いやマジで、ガチで。こんなアホな小説、よく読んでくれましたね?
そんな聖人なあなたは、ファイナル・デッドなんとかに巻き込まれたときに、一回ぐらいは死神の罠を回避できて、クライマックス手前で食らうぐらいの権利をあげましょう。
明日からは毎朝7時ごろ、1話ずつ更新していきます。




