第3話 股間と乳首で操縦
『ルルウ~~~♪ ルルウ~~♪』
なんだ?
なんか自分の名を呼びながら、歌い出したぞ? こいつ……。
『せかいせっていのうたぁ~~~~~♪』
「は?」
突然、マントの裏からウクレレを取り出して、ポロンポロンと爪弾きだすルルウ。
意外と美声なのがイラッとくる。
『じぶんはぁぁぁ~~~♪ エルフぅぅぅ~~~♪』
「……」
『オーディンをたべて支配者の座についた~~天空フェンリルエルフぅぅのまつえいぃぃ♪ ドッグラン大好きぃ~~♪』
『フッフゥーーー♪ エルフエルフ弓矢つおいーー♪(コーラス)』
ボヨヨン♪ ボヨヨン♪
ギンティアという銀髪メイドさんまで、爆乳を揺らしながらスタンドマイクの前で唄いだした。
俺が度肝を抜かれたのはいうまでもない。
「って、コーラス、あんたなのかよ!?」
『女子大の消毒槽のひと……じゃなかった、斉藤友也さまはぁ~~♪ この世界では肉体をうしない~~♪ 魔力と生命のしゅうごうぉ~~♪ 聖心体になりましたぁ~~♪』
『フッフゥーーー♪ 聖心体~~♪ トイレに行かんくてもええ便利なカラダーーー♪(コーラス)』
「くっ……! こいつら……」
こいつら、人を毒殺しておいて――大事な世界設定説明の部分を全部、歌と踊りで誤魔化すつもりだ……ッ!!
『聖心体はぁぁ~~♪ この世界にちらばる超古代魔法兵器都市~~♪』
『フッフゥーーー♪(コーラス)』
『浮遊要塞都市アースガルズや地龍山脈村ニダヴェリール、海底大陸ネヴルヘイム等と融合しぃ~~♪ 操作ができますぅ~~♪』
『フッフゥーーー♪(コーラス)』
なんというか……。
控え目にいって、クソだった。
……×ボタンとかでショートカットできないのかな? コレ。
『ところでギンティアさん~~♪ アースガルズを操作するって~~♪ どうやるの~~ん♪』
『そやそや♪ ちょうどポコ○ンと乳首を動かすような感覚やでーー♪(コーラス)』
!?
メイドさんが、なんか凄いことをいった。
ポコチン?
乳首?
『じっさいにやってみましょう~~♪』
『フッフゥーーー♪ 乳首を動かすんやでーー♪(コーラス)』
『こわがらずぅ♪ うごかしてみて~~♪』
『フッフゥーーー♪ ポコ○ンもーー♪(コーラス)』
無駄に唄と踊りが上手いのが、いかにも腹立たしい。
フッフゥーうるさいので、俺は反射的にポコ○ンを動かしてしまった。
そこで気付いたのだが、今の俺は三頭身マスコットのような身体。
あるべき場所に何も付いていない。
「ッ!?」
キユー○ー人形のようにツルツルだった。
ギンティアさんがトイレに行かなくてもいい便利な身体といっていたのはこういうことか!? 慌てて、尻の裏に手を回すと、そこも人形みたいにツルツルだった。
っおおおいっ!? ここにあった穴はどこいった?
これから飯を食ったら、どこから出すんだよ!?
「――って、おおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
俺は驚いた。
さっきまで宮殿の中に居たのかと思ったら、真っ青な海の上、遙かな高空に生身のまま浮かんでいたからだ。
風がビュービュー吹いている。
不思議と寒くはなかった。
「な!? 竜?」
瞼の横を翼竜が横切った。
プテラノドンではなく、小型のドラゴンやワイバーンみたいな形状のやつ。
ちっさ!
思わず眼をしばたたかせた。
翼竜は鳥ほどの大きさもない、せいぜい、大きめの蛾やアゲハチョウぐらいのサイズだった。
……この世界にはあんな小さな竜がいるんだな?
『竜はちいさくなんかないですぅ~~♪』
『フッフゥーーー♪ 自分がデッカくなったんやでーー♪(コーラス)』
どこからともなくアホな歌声が聞こえてきた。
「おーい、どこにいるんだ? 毒殺エルフ?」
キョロキョロとあたりを見回してみても、青々とした海が地平線の果てまで広がっているばかり。
そのとき、俺は気付いた。
さっきまでデフォルメが過ぎたマスコットキャラながら、しっかりとあった、自分の手足がなくなっていた。
生身のまま空に浮かんでいるわけではない。
俺の身体はレンガ造りの球体になっていた。
いや、これは球体ではない。
浮き島?
違う。
空飛ぶ城だ。
煉瓦造りで、ところどころ苔や樹々が生え、城塞や宮殿を持ち、家々や市場のようなものまであった。
『眼をこらしてごらーーん♪ じぶんが見えるでしょうかーーー♪』
アホエルフの歌声がする。
癪だが、俺はルルウが歌う通りに眼を凝らしてみた。
すると……なんということでしょう。
自分で自分を見るというのだろうか? 鳥瞰するみたいに、ズームイン。
たちまち景色は地図アプリのように拡大されてゆき、大理石のような宮殿が見えた。
壁を突き抜けて、さらにズームイン。
ミュージカルに興じる、ルルウとギンティアさんの姿があった。
ぼむ!
「あ、もどったです」
『それが、浮遊要塞都市アースガルズの聖心体の力ですぅ~~♪ フッフーー♪(コーラス)』
「あの……ミュージカルはもういいから」
視界が宮殿内に戻ると、一瞬で俺は元の聖心体に戻っていた。
ミュージカルはクソでイラッときたが、正直、俺はちょっと興奮していた。
「でも、これは凄いな」
「ゆーやさま! やっとわかってくれたのですね!」
「神になったかのような全能感がある」
「ですよね? すごいのです! 聖心体は!」
ルルウがぱたぱたと黄金色の尻尾を振った。
今、気付いたが、こいつ、尻尾がある。
普段はスカートかパンツの中に入っていて、興奮すると出てくるみたいだった。
「オンオフの切り替えもできるんやでーー(棒)」
「へえ?」
ギンティアさんにいわれ、俺はルルウをどつくのも忘れ、眼のあたりに手を置いた。
瞬時に意識が海上へと切り替わる。
また、内部へと視線を向けると、室内へと戻っている。
カメラが切り替わるというか、VRのヘッドセットを付けたり外したりする感覚に近い。
「慣れてくれば、聖心体のままアースガルズを動かすこともできるです」
「ほぅ、ポコ○ンを動かす感覚でやるんだな?」
「い、いえ、ホントはしっぽで動かすものなんです」
ルルウが顔を真っ赤にして、首を振る。
なるほど。
ルルウには狼のような先が白いモフモフの尻尾、ギンティアさんにはヘビやトカゲを思わせる爬虫類っぽい尻尾が付いているわけで、本来は彼女達が尻尾を動かす動作と連動させて、この浮き島をコントロールさせていたのだろう。
人間の俺にはそんなものは当然、付いていない。
だから別の場所を動かす。
つまり、
舵→×尻尾→〇股間や乳首→いじる→気持ちいい→浮島が動く。
という構図が成り立つ。
なんだこれ?
「でもホントだ。俺、こうしながらも股間と乳首で、浮遊要塞を動かしている!」
喋りながらも、神経をちょっと股間と乳首に集中させただけで浮遊要塞モードとなる。
これまた、アプリゲームを操作するぐらいの気楽さと簡単さだ。
青い海の上で、左右に舵をきったり、上下に上昇下降を繰り返したり。
どうやら、ジョイスティックでいうと、左右前後が俺のポコ○ンと連動しており、上下は乳首に繋がっているようだった。
ポコチンはよく使うけど、乳首はあまりいじらない。
まるで俺の性癖みたいだ。
「……俺、乳首はあんまり、感じないんだよなぁ」
「きもち良くなってどうするんですか!?」
「お前らって、異世界転生にかこつけて、俺の乳首を開発する秘密結社か何かだろ?」
「すさまじく、名誉棄損で訴えたくなる誤解ですッ!」
「しかし、可能性が未知数の乳首を開発されるのは悪くない試みだ。毒殺されたことは水に流してやるとしよう」
「それしきのことで水に流されちゃったです!?」
ルルウが「マジか? こいつ……」って、狂人を見る眼つきになった。
「しかし、乳首を弄りまくっているわりには、宮殿が揺れないな?」
「重力魔法と防風魔法がかかっているからやで~~。宙返りとか無茶な運動をしない限りは、アースガルズの中は地震や突風は起こらないんや(棒)」
「ほうほう」
俺は納得しつつ、根本的な疑問を口にした。
「んで、俺は股間と乳首を気持ち良くされながら、何をやればいいんだ?」
「はい、よくぞ、きいてくれましたです!」
ルルウがようやく、メインヒロインっぽく顔を輝かせた。
ケモ耳を感じたての乳首みたいにビクンと立てて、手にしたウクレレをうっちゃる。
それから、宝玉入りの魔法杖らしきものを手に取った。
色々、雑だな、こいつも。
「友也さまはこの浮遊要塞都市アースガルズの『心』になって、魔王さん達の軍勢とたたかうのです!」




