第14話 くっつかない修復
キラキラした”もんじゃ”の片付けが終わると、俺達は宮殿を出た。
俺はぷかぷか浮いているが、タマキンは念動力の節約か、普通に歩いている。
聖心体になる前と姿は殆ど変わらない。
青いジャケットの背中を見ながら、そもそも、こいつ、休日の山登りになんでゼミ発表みたいな格好で来たんや? と何故か関西弁で思った。
「おい、タマキン」
「なーに?」
「『天竜アンニュイ亭』の壊したところ、直しとけよ? みんな困ってるじゃないか?」
「わかってるよー。パテとプラ板、ない?」
「ガンプラじゃないです!」
ケモ耳エルフにファンタジー感ないツッコミをさせつつ、アンニュイ亭まで来ると、黒山猫のマスターやワルキューレ達がえっほえっほと土砂や瓦礫を運び出していた。
「ほれほれ」
「いたたたっ!」
「ごめんなさいだ、ごめんなさい」
「もう、ゆーくんってば、変なところで律儀なんだから」
いやいや、律儀も何も、人様の店を大破させたら、土下座程度ではすまんだろう。
俺は彼女の後頭部を押し、無理矢理、謝らせた。
マスターやエインさんらは突然の異世界女子の闖入に、ただポカンとしている。
「ご、ごめんなさい……お店を大破させてしまって……」
「いやいや、聖心体様に頭を下げていただくなんて、滅相もないニャン!」
山猫というか、黒豹めいた艶やかな毛並みの獣人黒山猫のマスター。
見かけによらず、快く許してくれそうだ。
「賠償金として、三千七百万マネマネでいいニャン!」
「「まさかの金で解決!?」」
俺とタマキンの声がハモった。
獣人らしからぬキャッシュな解決法である。
ちなみに一マネマネは一円五銭らしい。
「あ、あの、物理的に壁を補修しますから、お金は勘弁していただけますか?」
「え~~。どうしよっかニャンー」
「あ、あの……じぶんからもお願いしたいです」
珍しく、殊勝な顔でルルウが割って入ってきた。
マスターは猫ヒゲを指で弾き、しばらく思案してからいった。
「じゃあ、迷惑料と割れた酒ビンの代金は王宮につけとくニャン!」
「国家財政があっぱくされました!」
マスターは王宮につけとくといっておきながらも、結局、三七〇〇万マネマネという、妙に生々しい数字の店舗立替費がルルウに請求された。
あいつの人生って、ホント、とばっちりばかりだな。
一応の話がつくと、タマキンは衆目に見守られるなか、両手を大空にかざした。
「念動力3%バァーーーーーーーストッ!!」
黄金色に輝く不思議オーラと共に、タマキンがふわっと浮いた。
次の瞬間、ワルキューレ連中が運んでいた瓦礫や木片、酒瓶の破片が浮遊する。
シュババババババッーーーーーーーー!!
「「「「「おおおおおおおおおお!?」」」」」
俺以外、その場に居た全員が驚嘆の声をあげる。
宙を舞った瓦礫は、柱や屋根など骨格だけが抜き出されて組みあがり、次に粉微塵になったはずの石壁や硝子窓、食器棚、照明器具や机や椅子が修復されてゆく。
魔法を見慣れているはずの、異世界の住人達も驚きを隠せなかった。
タマキン得意の|《破壊物修復》である。
能力自体が破壊と紙一重のタマキン。
現世でも念動力もバンバン使うので、当然、様々なものを破壊してしまう。
そこで編み出されたのが、このスキルである。
割った窓硝子とか、大破させたダンプカーとか、カチ込みをキメて更地にした関西系指定暴力団の事務所とか、様々なものをこれで修復してきた。
「すすすすす、すごいです! ゆーやさま! クレイジーダ○ヤモンドみたいですっ!」
またエルフっぽくない驚き方をするルルウ。
「……凄いと思うだろ?」
「はいです! ふつーにすごいとおもいますですッ!」
「あの能力には、たまらん欠点がある」
「たまらん欠点?」
はてな、と首を傾げルルウ。
もふもふ耳も、くぴっと動く。
「元の形に戻るけど、くっつかない」
「みなさん! セ○ダインとパテとプラ板をはやく!」
ルルウの指示の元、ワルキューレ達が総出で無事、『天竜アンニュイ亭』は修復された。
こんな異世界に大量のプラモ用具があることに驚きを隠せないが、とりあえず、良くやったんじゃないかな。
絶対、風が吹いたら倒れると思うけど。
「ゆーくん、どうどう? ちゃんと直したよー」
「お、おぅ」
ドヤ顔のタマキン。
そもそも壊したの、お前だけどな?
「なあ、ルルウ」
「はぁはぁ……な、なんですかぁ」
俺は地面に突っ伏し、ぜえぜえ息を吐いている、ルルウに声をかける。
おそらく、あの大量のセ○ダインとパテとプラ板はこいつが現世でガ○プラにでもハマってアキバのラ〇オ会館あたりで買い漁った結果であろう。
俺はそのなかで気になるものを見つけていた。
「なんかプラモ用具に混じって大量のケーブルがあったけど、これは?」
「あっ、わすれてましたっ!」
がばっ、と身を起こしてルルウはいった。
「ゆーやさまとタマキンさまに、魔王さんの倒し方をレクチャーしようと思ったです」
「「魔王の倒し方?」」
またしても、俺とタマキンの声がハモった。
何をするつもりなのかは知らないけれど、このぽんこつエルフが魔王の倒し方を俺達にレクチャーできるとは到底、思えないわけだが……?
はてさて、どうなることか?




