第6話 ため息を抱いて
キャンパス内で明里ちゃんと奏ちゃんが歩いていた。
奏ちゃんと目が合ったが、ぷいっと視線を逸らされた。
奏ちゃんに手を引っ張られる、明里ちゃんだけが名残惜しそうに僕を見ていた。
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「はぁ……」
バ先でも僕の気分は晴れなかった。
未だにどうすればいいのかすら分からない。
奏ちゃんの反応を見るに誤解は解けていないみたいだ。
明里ちゃんから何かしらの説明があってもいいんじゃないか?
やっぱり、彼女には《《裏》》あるんじゃないかと感じてしまう。
「はぁ……」
「お前、さっきからうるせえよ。
こっちまで辛気臭くなるだろうが」
隣で品出しをしている佐々木さんが、僕の足を軽く蹴る。
「ごめん……」
「はぁ……ったく、仕方ねえな。
どしたん? 話聞こか?」
「その構文はもういいって」
「はっ、せっかく人が慰めてあげようと思ったのに……ただ酒さえ飲めれば」
「やっぱり、お前も金目当てかよ」
「はっ?
心外だな。私は酒さえ飲めれば金なんかいらねぇよ」
「ま、財布扱いにはかわりないけど……まだいいのか?」
「どうせ、暇だろ。バイト終わりに飲みに行くぞ」
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結局、強引に居酒屋に連れてこられた。
「「かんぱーい!」」
こうなったらヤケだ。
下戸なんて知るか!
佐々木さんとジョッキを重ね、ビールを乾いた心に流し込む。
「くぅー」
アルコールの刺激が脳に響く。
「おお、いい飲みっぷりじゃん。
今までで一番男らしかったぞ」
「そうれすよ……僕らって男なんれすから……」
駄目だ、既に呂律が回らなくなってきた。
そのままお酒に飲まれた僕は、
明里ちゃんと奏ちゃんのことを打ち明けていた。
「にゃはははは、なんか楽しそうなことになってんね」
なぜか佐々木さんは腹を抱えて大爆笑している。
「笑い事じゃないれすよ。
佐々木さんは明里ちゃんと、友達なんですよね。 彼女はどういうつもりなんですか?」
「うーん。そうだなあ……あんまりダチのことをチクリたくはないけど……このままってのもなぁ」
佐々木さんは珍しく真剣な表情で考え込む。
派手なマツエクが揺れ、ヘーゼル系のカラコンが僕を見る。
「明里の家は貧乏で、あいつ学費は奨学金で、バイトして実家に仕送りまでしてんだよね。
だから、実際はお金にがめついし打算的な面もある……でも、そんなの誰にでもある一面だろ」
「それはそうですけど……」
だからと言って、僕の気持ちはどこに向ければいいんだよ。
それでも、10億円が瞳に映る人を、今の僕は愛せなかった。
「私の親は飲んだくれで、ろくに定職にも就いていない。だから、明里の気持ちは少しはわかる。
恵まれてる奴には分かんねぇかもしれないけど」
僕が恵まれているのか……今まで考えもしなかった。確かに人生でお金に困ったことはなかった。
それでも、10億当選するまでは、
バイトで生活費は稼がないといけない普通の家庭だ。
佐々木さんの言いたいこともなんとなく分かるが、
明里ちゃんのことをどうしても許せなかった。
「ま、それを聞いてどう判断するかは土井の自由だ。だけど、このことは他言無用で頼む」
「誰にも言えないですし……そもそも言う相手がいない」
「やめろ、私まで悲しくなるだろ。
ま、これからは私が飲み相手になってやるから、な?」
結局、彼女にそそのかされるまま、浴びるように酒を飲み尽くした。
✾
あー頭いてぇ……
翌日、頭を金槌で叩かれているような頭痛に苛まれる。
完全に二日酔いだ。
あれ……ここはどこだ?
部屋一面のピンク……ふかふかのベッド……小麦色の素肌……えっ!?
「ん……土井……もう少し寝てようぜ……」
佐々木さんの体温が僕の裸体に覆いかぶさる。
ええっー!
「服が……ない!」
駄目だ、完全に記憶にない……佐々木さんと乾杯をしたところまでは覚えているんだけど。
「土井……どうしたんだ?」
「さ、佐々木さん……その……あ、当たってます」
「今更なんだよ……昨晩はあんなに男らしかったのに……」
男らしかった……?
……俺はとうとうやらかしてしまったのか。




