間話 明里編:欲
私は六人兄妹の末っ子。
子どもの頃、他の家庭と比べても貧しかったと思う。
一人前のうどんをふやかして、家族で分け合って食べていた。
お陰でダイエットの必要はなかったけどね。
服は全部兄妹のお下がり、母は病気がちで満足に働けない。
顔も知らない父は女を作って出ていったらしい。
だからって、周りを恨んでも私の人生が好転するわけじゃない。
なんとしても貧しさから這い上がる。
その一心で高校からバイトして必死にお金を貯めて、勉強した。
紗奈とは高校からの付き合いだ。
紗奈は私にないものを持っていた。
私にない強さを。
二十歳になって煙草に出会った。
不思議なもので、これを一本吸っていたら空腹が紛れた。
紗奈は私の弱い部分も受け止めてくれる。
そんな彼女にだけは、何でも話した。
飲みサーに入ったのはご飯が理由。
男たちは、可愛くあればあるほど、私の分のご飯代を出してくれた。
本当は良くないって分かっている。
それでも、背に腹は代えられない。
お母さんへの仕送りも必要だし。
でも、飲みサーには、
ろくでもない男ばかりだった。
すぐに体の関係を迫ってきたり、露骨に度数の高いお酒を勧めてきたり。
でも、そんなろくでもない男のお陰で、私は日々を食いつないでいる。
……こんな生活、もう嫌だ。
弱音を吐いたところで誰も助けてはくれない。
自分でなんとかしなくちゃ。
そんな時、飲みサーに変な奴がいた。
土井晴人。
二年間、私に一度も声をかけないで、
座敷の隅でオレンジジュースをちびちび飲んでいる。
誰と話すわけでもなく、何が楽しいの?
……この人、なんなんだろう。
私はそう思い、何度か声をかけた。
でも、彼の反応はイマイチだった。
それどころか、何度か話しても初対面のような反応を見せ、名前すら覚えてもらえない。
今までの男なら、すぐに鼻の下を伸ばしたのに。
彼だけは違った。
そんなある日、彼がようやく私に反応してくれた。
……やった、私の勝ち!
なぜか、勝手に勝負を仕掛けていた。
次第に私は、土井くんをどうやったら落とせるか、
そのことばかり考えていた。
その後、花輪から10億当選の話を聞いた。
彼も、お金も、未来も。
私は全部欲しくなってしまった。




