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第44話:おばあちゃん、秋の収穫祭で「巨大なかぼちゃ」を馬車に変えてしまう

1.黄金色の畑と「規格外」の悩み

 

「あらあら、まあ。……セシルさん、リタさん、スノウさん。見てくださいな、畑の向こう側が、まるでお月様が地面に落ちてきたみたいに真っ黄色ですよ。……今年も、かぼちゃさんたちが元気に育ってくれましたねぇ」

 

魔王城(隠居所)の裏手に広がる聖域農園。十月の爽やかな風に吹かれながら、私は腰に手を当てて微笑みました。

 

この世界において、十月末の『収穫祭』は、大地に眠る魔力マナが最も活性化する時期。

 

農作物には稀に「精霊の悪戯」が宿り、本来のサイズを無視して巨大化することがあります。


しかし、今年の魔王城の畑は、おばあちゃんの「徳」という肥料が効きすぎたのか、一玉で王都の城門を塞げるほどの、山のような「超巨大かぼちゃ」がゴロゴロと誕生していました。

 

「はい、キヨ様。おしとやかな女性として、実りの秋を皆で分かち合うのは、大地の恵みへの最高の感謝ですわ。……ですが、あちらの市場の商人さんたち、このかぼちゃをどうやって運べば良いのかと、頭を抱えて座り込んでおりますの。……あまりの重さに、伝説の地竜アース・ドラゴンでもギックリ腰になってしまうと噂されておりますわね」

 

セシルさんは、おしとやかに微笑みながら、異界の『重量の魔神』を呼び寄せ、かぼちゃの周囲の重力を部分的に遮断して崩落を防いでいました。


彼女の召喚術は、今や「完璧な物流支援システム」ですが、これほど巨大な作物を街まで届けるには、物理的な移動手段が欠けていました。

 

「……かぼちゃ、大きい。……まるで、お家みたい。……私、中に入って、かぼちゃのアイス、作りたい。……でも、動かないと、みんなに、食べてもらえない。……寂しい」

 

スノウさんは、無表情ながらも、巨大なかぼちゃの皮をぺたぺたと触っていました。


彼女の指先から漏れる冷気が、かぼちゃの鮮度を永久に保つ「氷のコーティング」となって、表面を宝石のようにキラキラと輝かせています。

 

「ちょっと! 王都から『収穫祭のパレードに間に合わない!』って伝令が来てるわよ! このかぼちゃ、今日のメインイベントの目玉なんだから! 転がしていくわけにもいかないし、どうするのよ!」

 

リタさんが、輸送用の鎖を引きずりながら、汗だくで走り込んできました。

 

2.「おばあちゃんの知恵袋(かぼちゃの馬車編)」

 

「あらあら、まあ。……せっかくのお祭りなのに、遅刻してはかわいそうですもの。……よし、それならね、皆さんが驚くような『素敵な乗り物』に仕立ててあげましょう。……セシルさん、倉庫にある『古いカーテンの端切れ』と『割れた車輪』を持ってきてちょうだい」

 

私は、割烹着のポケットから「裁縫道具(実は第15話で浄化した、時空を繋ぎ合わせる針)」と、第1話で龍に貰った「黄金の鱗」を取り出しました。

 

「はい、車輪をこうしてかぼちゃの下に差し込んで。……カーテンをリボンにして結んで。……セシルさん、このかぼちゃに『夢の形』を与えてくださる?」

 

「かしこまりました、キヨ様。……おしとやかに、古の『お伽噺の具現化フェアリー・テイル』の術式を、このかぼちゃの『外装』に上書きいたしますわ」

 

セシルさんが指を鳴らすと、巨大なかぼちゃがまばゆい光を放ち、表面が磨き上げられた漆のようになり、窓が開き、中からはふかふかのシルクの椅子が出現しました。


さらに、黄金の鱗が車輪の軸となり、宇宙のどこまでも走っていけそうな「究極の馬車」へと変貌したのです。

 

【ユニークスキル:おばあちゃんの知恵袋(秋の仕立て)が発動】

【巨大かぼちゃが『時空跳躍型・黄金南瓜馬車』へと昇華されました】

【効果:乗る者の『心躍る気持ち』を燃料とし、世界中の子供たちの元へ一瞬で移動する】

 

3.「シンデレラ」よりも幸せなパレード

 

「さあ、皆さん。馬車ができましたよ。……馬さんは……。ポチ、お願いできますか?」

 

「ハフッ!」

 

黄金の巨犬ポチが、胸を張って馬車の前に立ちました。 ポチが一本のリードで馬車を引くと、重さ数千トンの巨大かぼちゃが、まるで綿毛のように軽やかに浮かび上がり、空を駆けるように王都へと走り出しました。

 

王都に到着した瞬間、悲鳴を上げていた商人たちや子供たちは、空から降りてきた黄金の馬車に言葉を失いました。

 

「な……なんだ、あの美しい馬車は!? お伽話から抜け出してきたのか!?」

 

「あらあら、まあ。……皆さん、お待たせしましたね。……はい、おやつのかぼちゃプリンですよ。……スノウさん、皆さんに冷たいデザートを」

 

馬車の扉が開くと、中にはスノウさんが冷気で作った「かぼちゃの氷彫刻」と、セシルさんが異界の『調理の精霊』を総動員して作った、一万食分のかぼちゃ料理が詰まっていました。

 

「……かぼちゃプリン、どうぞ。……私、最高に、冷やした。……秋の、お日様、みたいに、甘い」

 

スノウさんは、初めて街の子供たちと触れ合い、少しだけはにかみながらプリンを配り歩きました。


彼女の周りには自然と笑顔の花が咲き、セシルさんが「おしとやかに」演出した、世界で一番贅沢で温かな「収穫祭パレード」が幕を開けたのです。

 

【ワールドイベント:『おばあちゃんの収穫パレード』が完遂されました】

【バフ付与:『満腹の至福』。今後一ヶ月、空腹ゲージが減らなくなり、全パラメータが30%上昇します】

 

4.掲示板の伝説:南瓜馬車革命編

 

その夢のような光景は、またもや全プレイヤーを驚愕と感動の渦に。

 

【オチャノマスレ 044】

 

400:名無しのアタッカー

全プレイヤー、速報! 今、空を「かぼちゃ」が飛んでいった! しかも、めちゃくちゃゴージャスなやつだ!

 

401:名無しの大魔道士

見てる。……あの馬車、鑑定したら『最高速度:夢の速さ(計測不能)』って出たぞ。

しかも、タイヤが通った後の地面に「肥料」が撒かれて、一瞬で花が咲いてる。

 

402:名無しの密偵

攻略組のトップが、馬車から配られたプリンを食って「俺、勇者やめてパティシエになるわ」って、今キヨちゃんの前で弟子入り志願してるぞ。

 

403:名無しのアタッカー

かぼちゃの馬車(現在は世界最強の物流・配送システム)

 

404:名無しの聖職者

運営の公式ブログ:『今年のハロウィンイベントは、おばあちゃんの馬車により「世界一平和な炊き出し祭り」に強制変更されました。モンスターを倒すより、おばあちゃんの手伝いをする方がレア装備が落ちる設定に変更します』

 

405:運営の悲鳴(プリン摂取中)

【最終告知】おばあちゃんの「お節介」が、システムの難易度という概念を破壊しました。

ハロウィンの「悪戯」は禁止。これからは「お裾分け」を基本ルールとします。皆さん、お腹を壊さない程度に食べてください。

 

「ふぅ。皆さん、お腹いっぱいになって良かったですねぇ、セシルさん」

 

夕暮れ時。王都の広場で、私たちは空っぽになった巨大なかぼちゃ馬車の横に座り、街の皆さんと一緒に月を眺めていました。

 

スノウさんは私の膝の上で、子供たちから貰った「お礼の手紙」を大切そうに読みながら、小さく「……おばあちゃん。……私、シンデレラ、より、幸せ」と呟きました。

 

「はい、キヨ様。……おしとやかに、次は異界の『焚き火の守護聖』を召喚して、収穫の終わった畑で『世界一巨大な焼き芋大会』を開催いたしましょうか」

 

「……やきいも。……ホクホク。……私、お芋、守る。……みんなの、お腹、温める」

 

スノウさんの力強い宣言に、リタさんの「焼き芋は私の得意分野よ!」という幸せそうなツッコミが、秋の深まる夜空に心地よく響き渡りました。

 

百歳の少女(魂)の「収穫祭」は、世界の格差を、最高に甘くて温かな「喜びの共有」へと変えてしまったのでした。

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