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ひとりぼっちの女子高生は、異世界の地でかつて救った孤独な王に溺愛される  作者: 陽ノ下 咲
二章 異国からの来訪者

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第四十三話 最愛の人

 ガルディア王国の馬車が見えなくなるまで見送った後、楓とステファンは、しばらくその場に立ち尽くしていた。

 ようやく長かった視察が終わったのだと思うと、どこかほっとして気が抜けてしまう。

 けれどそれ以上に、ロザリアに最後の最後で嫉妬していたことを暴露されたせいで、楓はいまだに顔が熱かった。


(どうしよう。何だか凄く気まずくて、ステファンの方が見れない……)


 そう思っていると、不意にステファンが楓の腕を取った。


「……ちょっと来て」

「え?」


 そのまま自然に手を引かれ、王宮の廊下を歩いていく。

 連れて行かれた先は、ステファンの私室だった。

 扉が静かに閉まり、途端に、静けさが二人を包み込んだ。


「座って」


 促されるまま、楓はソファへ腰掛ける。

 その隣へ、ステファンもゆっくりと腰を下ろした。

 触れそうなほど近い距離に、楓の胸がそわそわする。

 けれどステファンは、しばらく何かを考えるように黙っていた。

 けれど、やがて意を決したように口を開いた。


「……さっきの話。カエデも嫉妬してたって、本当?」

「……っ!」


 きっと聞かれるだろうと予想はしていたけれど、実際に聞かれてしまうと身構えていたことなんて全く意味もなく、楓の顔が一気に熱くなってしまった。


「え、えっと……」


 一瞬、ごまかそうかとも思った。

 けれど、ここで隠しても、もう意味がない気がして、楓は観念して小さく頷く。


「……うん」


 恥ずかしくて視線を逸らしながら続けた。


「ずっと、ロザリア王女に嫉妬しちゃってた」

「……」

「ステファンの隣に自然に立てて、政務の話も出来て、堂々としてて……すごく素敵な王女様だなって思って」


 思い返すだけで胸がちくりと痛む。


「だから、その……私、感じ悪かったよね。ごめん」


 すると、隣からくすりと笑う声が聞こえた。


「……え?」


 恐る恐るそちらを見ると、頬を赤らめたステファンがとても嬉しそうに微笑んでいた。


「ああ、そっか……。なんかいつもと違ったの、嫉妬してくれてたからだったんだね」

「……」

「全然気づかなかった」


 そして、少しだけ困ったような表情で笑う。


「カエデも嫉妬してくれてたんだね」

「え?」

「ロザリア王女から聞いても、正直、信じられなかったんだ」


 ステファンは少し肩を竦める。


「ずっと、私ばかりが嫉妬してるんだと思ってたから」

「そ、そうなの?」

「うん。私はいつも、カエデの周りにいる男、全員に嫉妬してるから」

「ぜ、全員!?」


 思わず楓は吹き出した。


「そんなに?」

「うん。そうだよ」


 真顔で頷かれる。


「セドリックにも嫉妬してるし、舞踏会とか会食でカエデに話しかけてくる男にも毎回嫉妬するし、アルベルト様なんて、嫌で仕方なかったよ」


 ステファンが苦笑気味に、視線を伏せた。


「アルベルト様は思っていたよりもずっと立派な人だったから。……視野も広いし、考え方もしっかりしている。歳はそう違わないはずのに、私なんかよりずっと大人だ」


 少しだけ声が沈む。


「だから、カエデがあの人と話しているのを見るたびに、不安だった。彼のことを知れば知るほど、そちらに心を奪われてしまうんじゃないかって」

「確かにアルベルト殿下は、とてもしっかりした考えをお持ちだと思うけど……」


 楓の言葉に、ステファンの表情がわずかに曇る。

 そんな姿さえ愛おしくて、楓は笑みをこぼした。


「だけど、それでも、私がこんなにも愛しいって思うのは、ステファンだけよ」


 そっとステファンを見つめる。


「私だって、嫉妬するよ」

「……」

「ステファンのこと、大好きだもん」


 言った瞬間、自分で恥ずかしくなってしまう。

 けれど今は、ちゃんと言いたかった。


「こんな気持ちになるの初めてだったから……何か恥ずかしくって、ずっと言えなかったんだけど」


 指先をもじもじと動かす。


「もっと早くに言えば良かったね」


 すると次の瞬間、逞しい彼の腕に、ふわりと抱きしめられた。


「……ステファン?」


 優しく、けれどしっかりと抱き込まれる。

 耳元で、幸せそうな声が聞こえた。


「……嬉しい。大好きだよ、カエデ」


 その声音があまりにも甘くて、楓の胸がぎゅっとなる。


「……っ」

「……安心して欲しい」


 抱きしめる腕に、少しだけ力がこもる。


「私の心には、ずっとカエデしかいないからね。だから、他に妃を迎えるつもりもないよ」


 そう言ったあと、ステファンは少し照れたように頬を赤く染める。


「けど、君との子どもなら、何人居ても幸せだから……だから結婚したら、覚悟しておいてね」


 何を、とまでは言われなくてもその言い方で意味を察して、楓の頬も真っ赤に染まった。


「う……うん、分かった」


 楓が小さく頷くと、ステファンはとても嬉しそうに微笑んだ。

 そして、楓の唇に彼のそれを重ねた。

 愛しさを確かめるような優しい口づけに、楓の胸にじんわりと熱が広がった。


「私の心の中にも、あなたしかいないわ。……ステファン、大好きよ」


 そう言うと、今度は楓からステファンの唇に、そっとキスを落とした。

 唇を離すと、熱を帯びた碧い瞳が真っ直ぐ楓を見つめていた。

 その強い眼差しに、思わず息をのむ。

 次の瞬間、愛しさを抑えきれなくなったように、ステファンは抱きしめる腕に力を込め、再び深く口づけた。

 先ほどよりも更に甘さの増したその口づけに、胸の奥まで満たされるような幸福を感じながら、楓は彼に寄り添った。




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