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俺の書いたキャラが現れた。そいつを消さないと世界が終わるらしい。―グロキシニアの凱旋  作者: ひろほね
第二章:均衡装置

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第九話:歪みの中心

歪みの発生頻度は、さらに上がっていた。


本部内。


慌ただしい足音。


端末の警告音。


「……おかしいな」


デイジーが呟く。


「増え方が急すぎる」


カイトが腕を組む。


「原因、分かんねえのかよ」


「分かってたらこんなことになってない」


即答だった。


ユウリは黙っている。


腕を押さえている。


ヒビ。


もう隠しきれない。


レンが壁にもたれながら言う。


「中心があるはずだ」


「どっかで詰まってる」


デイジーが頷く。


「うん。それはほぼ確定」


端末を操作する。


空中にマップが浮かぶ。


歪みの分布。


一箇所に、偏っている。


「ここ」


指さす。


「コア・シンクロニクス中枢ライン」


カイトが眉をひそめる。


「……リアクターの近くじゃねえか」


「そう」


デイジーは低く言う。


「一番まずい場所」


その時、音がした。


足音。


コツ、コツ、コツ。


規則的で、無駄がない。


その場にいた全員の動きが、


わずかに止まる。


空気が変わる。


重くなり、張り詰める。


カイトだけが、


理由が分からないまま振り向く。


そこに、一人の女が立っていた。


黒を基調とした装備。


無駄のないシルエット。


胸元には、小さなバッジ。


視線が鋭い。


ただ立っているだけで、場の主導権を握るような存在感。


「……報告は」


低い声。


感情を抑えた、静かな圧。


デイジーが少しだけ姿勢を正す。


「歪みの集中地点、特定しました」


「中枢ライン付近」


女は一瞬だけ目を細める。


「予想通りか」


短く言う。


レンが軽く手を上げる。


「よう、エヴァ」


女――エヴァが視線を向ける。


その瞬間。


空気がさらに重くなる。


カイトでも分かる。


“格が違う”


エヴァはレンの装備を見る。


黒を基調に、青のライン。


一等兵の証。


「遅い」


一言。


レンが苦笑する。


「悪かったな」


だが、軽口はそこまでだった。


エヴァの視線が、カイトに向く。


一瞬で、見抜く目。


「……それが外側か」


カイトは無意識に背筋を伸ばす。


「……カイトだ」


エヴァは頷きもしない。


ただ、数秒だけ観察する。


そして。


「不安定だな」


それだけ言う。


デイジーが口を挟む。


「でも使えます」


エヴァの視線が戻る。


「根拠は」


デイジーが即答する。


「ストーリーロック、確認済み」


一瞬。本当に一瞬だけ。


エヴァの目が変わる。


「……そうか」


それだけで理解する。


カイトの背中に、冷たい汗が流れる。


エヴァが言う。


「編成を変更する」


「レン」


「はいよ」


軽く返すが、姿勢は崩さない。


「前衛を維持」


「了解」


「デイジー」


「はい」


「後方支援準備」


そして、一瞬だけ間を置く。


「カイト」


名前を呼ばれる。


それだけで、空気が締まる。


「前には出るな」


短く言う。


「支援に徹しろ」


カイトは一瞬言葉に詰まる。


だが、すぐに頷く。


「……分かってる」


エヴァはそれ以上何も言わない。


ただ、手を上げる。


空間に光が集まる。


形になる。


銃。


洗練されたフォルム。


揺らぐ光。


レゾナンスシューター。


カイトが息を飲む。


「……それが」


デイジーが小さく言う。


「後方支援用の共鳴兵装」


エヴァが構える。


無駄のない動き。


「行く」


それだけで、全員が動く。


中枢ラインへ続く通路。


歪みが、濃い。


重い。


空気が歪んでいる。


ユウリの腕が、強く光る。


ヒビが、軋む。


「……近い」


小さく言う。


その瞬間。


前方の空間が裂ける。


現れる、巨大な歪み。


これまでとは、比べ物にならない。


「……当たりか」


レンがブレードを構える。


エヴァは動じない。


銃を構える。


照準。


一切の迷いがない。


「固定、三秒」


低く言う。


カイトが反応する。


「……え?」


エヴァの視線が一瞬だけ向く。


「できるな」


断定だった。


命令でも、依頼でもない。


“前提”


カイトは歯を食いしばる。


ノートを開く。


ユウリを見る。


ヒビ。


限界。


迷う時間はない。


「……やる」


ペンを握る。


“敵は、三秒間、動きを止める”


発動。


世界が止まる。


その瞬間。


エヴァが引き金を引く。


音はしない。


だが、空気が震える。


光弾が放たれる。


歪みに当たる。


共鳴。


内部から崩壊する。


レンが踏み込む。


一閃。


完全破壊。


三秒。


終了。


世界が戻る。


歪みは、消えていた。


完全に。


静寂。


カイトは息を吐く。


ユウリを見る。


ヒビ。


――さらに広がっている。


さっきより、明らかに。


エヴァもそれを見る。


一瞬だけ。


ほんのわずかに、


眉が動く。


だが何も言わない。


代わりに、カイトを見る。


「使いすぎるな」


それだけ言う。


短くだが、重い。


カイトは何も言えない。


ただ、ノートを握る。


強く。


遠くで、


さらに大きな歪みが、脈打っていた。

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