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俺の書いたキャラが現れた。そいつを消さないと世界が終わるらしい。―グロキシニアの凱旋  作者: ひろほね
第二章:均衡装置

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第七話:制御できない力

戻る道が、やけに長く感じた。


本部へ続く通路。


誰も喋らない。


さっきの戦闘。あの三秒。


頭から離れない。


カイトはノートを見ていた。


書かれた一行。


“敵は、三秒間、動きを止める”


たったそれだけで、現実が変わった。


そして――


ユウリのヒビ。


「……」


視線を逸らす。


考えたくない。


だが、「考えろ」後ろから声。


レンだった。


「使うならな」


カイトが振り向く。


「……あれ、使えって言うのかよ」


レンは肩をすくめる。


「使わなきゃ終わる」


シンプルだった。


「使えば、削れる」


ユウリを見る。


「どっちにしろ、楽じゃねえ」


現実、逃げ場のない選択。


カイトは何も言えない。


本部、デイジーが待っていた。


いつもの軽さはない。


真剣な顔。


「座って」


短く言う。


カイトは従う。


ユウリも隣に座る。


レンは壁にもたれる。


デイジーが端末を操作する。


すぐに、さっきのデータが表示される。


「まず結論」


間を置く。


「それ、連発したら終わる」


カイトが眉をひそめる。


「どっちが」


デイジーは即答する。


「両方」


空気が止まる。


「世界も、ユウリも」


指を動かす。


波形が荒れる。


「ストーリーロックは“強制固定”」


「本来流れるはずのものを、無理やり止める」


「だから反動が出る」


カイトが小さく言う。


「……全部、ユウリに行くのか」


デイジーは首を振る。


「全部じゃない。でも大部分は行く。」


ユウリは黙っている。


否定しない。


デイジーが続ける。


「あともう一つ」


画面を切り替える。


カイトの波形。


歪み。


さらに乱れている。


「君にも来てる」


カイトの表情が固まる。


「……何が」


「ズレ」


短く言う。


「現実との乖離」


レンが小さく笑う。


「簡単に言うと?」


デイジーは肩をすくめる。


「使いすぎると、“こっち側じゃなくなる”」


沈黙。


カイトがゆっくり言う。


「……それ、どうなる」


デイジーは少しだけ言葉を選ぶ。


「最悪、“書く側”に引っ張られる」


ノートを見る。


「観測者側」


「つまり」


カイトの目を見る。


「物語の外に弾かれる可能性」


空気が冷える。


カイトの手が、わずかに震える。


「……消えるのか」


デイジーはすぐには答えない。


そして、小さく言う。


「消える、とは違う」


「でも」


「戻れなくなる」


重い。


レンが息を吐く。


「リスクしかねえな」


デイジーは頷く。


「だから制御が必要」


指を立てる。


「ルールを決める」


カイトが顔を上げる。


「……ルール?」


デイジーは指を折る。


「一つ、長時間固定は禁止」


「二つ、連続使用は禁止」


「三つ」


少しだけ間を置く。


「“書きすぎない”」


カイトが眉をひそめる。


「それどういう意味だよ」


デイジーはノートを見る。


「物語は、書きすぎると“固定される”」


「自由がなくなる、逃げ場が消える」


ユウリが小さく呟く。


「……終わりが決まる」


その言葉が、妙に重い。


カイトはノートを閉じる。


パタン、と音が響く。


「……じゃあどうしろってんだよ」


デイジーは少しだけ笑う。


「簡単」


指をカイトに向ける。


「必要なときだけ使う」


「最小限で」


「物語を“補助”する」


レンが頷く。


「後ろから支えるってわけか」


デイジーも頷く。


「そう」


カイトは少しだけ考える。


ノート。


ユウリ。


ヒビ。


「……分かった」


小さく言う。


「使い方は、俺が決める」


デイジーがニヤッとする。


「いいね」


レンも笑う。


「それでこそだ」


ユウリは何も言わない。


ただ、ほんの少しだけ、安心したように見えた。


だが、その腕のヒビは、


止まっていない。


ゆっくりと、確実に、広がり続けている。

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